高等学校情報/情報の科学/負数と小数のデジタル表現 - Wikibooks の「関連する用語」の記述がひどい,と私の中で話題に.

高等学校情報/情報の科学/負数と小数のデジタル表現 - Wikibooks の「関連する用語」の記述がひどい,と私の中で話題に.

そこでは次のように書かれています.

さて、情報科学で「ガロア体」(ガロアたい)という用語があるのだが、その正体は、単なる合同式、もしくは、その合同式の理論を必要に応じて定義拡張しただけのものである。

ガロアというと、数学史などでも紹介される偉大な天才数学者だが、しかし「ガロア体」という用語は、かってに情報科学者どもが使ってるだけな用語なので、もし大学などでガロア体という用語を聞いたら「でも単なる合同式だろ」と読者は脳内で置き換えよう。

※ けっして独自研究wikibooks編集者の「『ガロア体』なんて概念は無駄だし、存在しない」とか(独自研究で)言ってるのでなく、出版社名は忘れてしまったが2001年ごろに出版されていた離散数学(りさんすうがく)の大学1年レベルの数学書で、ある数学者が、そう指摘していた。
世間での知識人の割合としては、(数学者のように)教科書を批判検証できる賢い人物の数よりも、(情報科学者のように)用語の丸暗記しかできないバカのほうが人数が多いので、「ガロア体」のような珍妙な用語があいにく2020年代の現代にもマカりとおってる。大卒を採用する日本の経団連企業などもバカなので、事態はまったく改善されない。


なので、数学にとっては「ガロア体」への興味もうすく、よって数学者の書いた大学数学の教材では「ガロア体」という用語を紹介していない。情報科学者たちが「ガロア体」という用語を好んでつかっている。


数学の「群論」(ぐんろん)といわれる分野のひとつに(または関連分野として)、「体論」(たいろん)というのがあって、その体論に「有限体」というのがある。ガロア体とは、単に、この有限体の考えかたの一部を使って、合同式を説明しただけのものである。

ガロア体」には、あまり数学的に「合同式」や「群論・体論」のほかの意味が無いので、情報科学の教科書にある「ガロア体」という用語は鵜呑みにしないほうがいい。欧米の科学者のなかには、あまり頭のよくない人もいるのであり、丸暗記のガリベン野郎みたいな人でも科学者をしてたりするのであり、そういうっ人が意味ありげな用語を使用してたりして、日本でも科学者が欧米大学などの研究費ほしさに欧米のサル真似をして、そういう人も科学者をしてるのだ。

これを書いた方は何を思ってこれを書いたんでしょう.はじめは「笑える」と思ってたのですが,だんだん腹が立ってきたので,残しておくことにします.

調べてみましたが,『岩波数学辞典第4版』 (778ページ) には次のような記述があります.

有限体は É. Galois (1830) が初めて考えたのでGalois 体 (Galois field) ともいわれる. 

たぶん,私がはじめてGalois fieldという用語に出会ったのは (数学をまじめに勉強していないので) Oxleyの"Matroid Theory"だと思います.いま確認すると2ページに出てます."Matroid Theory"は純粋な数学書です (Oxford Graduate Texsts in Mathematicsの一巻です).

冒頭の引用部は文章として悪いところがたくさんあります (それを指摘することは「日本語表現法」のよい演習になると思います).このような文章で高校生が勉強しないことを祈ります.

作図メモ:三角形の1辺と平行な線分

備忘録として.

問題は三角形ABCが与えられたとき,次のような点DとEを見つけたい,というもの.

  • Dは辺AB上,Eは辺BC上にある.
  • ACとDEは平行.
  • ADの長さ=DEの長さ.

これを定規とコンパスでやりたい.

f:id:okamoto7:20200323162641p:plain

以下のような手順でできる.

1. BCを延長する.Cの方に十分長く伸ばして,伸ばした先をFとする.f:id:okamoto7:20200323162941p:plain

2. ∠ACF=∠BAGとなる点GをCF上に定める.角の複製は,

How to copy an angle with compass and straightedge or ruler - Math Open Reference

に書いてある.

f:id:okamoto7:20200323163329p:plain

3. ∠AGBの二等分線を描き,ABとの交点を定める.角の二等分線は,

How to bisect an angle with compass and straightedge or ruler - Math Open Reference

に書いてある.

f:id:okamoto7:20200323163700p:plain

4. いま描いた角の二等分線とABの交点がDになる.Dを中心として,Aを通る円を描くと,その円とBCの交点がEになる.

f:id:okamoto7:20200323163803p:plain

 

数学セミナー2019年7月号

数学セミナー 2019年 07 月号 [雑誌]

数学セミナー 2019年 07 月号 [雑誌]

 

 グラハム数に関して記事を書きましたが,焦点はラムゼー理論にあります.他の記事もとても面白いです.ぜひご覧ください.

 

数学セミナー2018年4月号

「エレガントな解答を求む」にて,約1年ぶりの出題をしました.よろしくお願いします.また,特集記事は数学に関係する人だけではなく,ぜひ一般の方々にも読んでいただきたいほど,素晴らしいものです.お勧めします.

数学ガイダンス2018

「情報系の数学」という記事を書きました.大したものではありませんが,ご笑覧下さい.

10/7-8 @ 地元

40歳を過ぎても通過儀礼があるというのはなんか変な気がするけれども,自分にとってはそんな気持ちで地元に帰った.

地元の祭りの主役は厄年の者たち.お世話になった皆さんにお礼を言ったり,ふるまいをするという機会.ちょうど今年それにあたる.いわゆる42歳の厄年なのだ.10月7日に宵祭,10月8日に本祭が行われた.

ちなみに,25歳の厄年とその前厄の24歳のときにも祭りに参加している.25歳の厄年のときはまだ学生で,東京に住んでた.その後,自分は留学して,豊橋,東京,石川,東京と職場を転々としながら何とか生活している.あまり地元に帰ることもないので,このような機会に同級生と会えるのはうれしいし,ありがたい.準備については何も協力ができなかったけど,暖かく迎えていただいた.感謝の念に限りはない.

地元の祭りの本当の主役は山車で,http://tamaguruma.blog51.fc2.com/ に山車保存会の活動が紹介されている.厄年の者も山車の巡行を手伝うことになっている.宵祭のときには今年新調した提灯がともされた.この提灯は私たち厄年の者から贈らせていただいたもので,それがきれいについたときにはうれしかった.また,本祭のときには,新川町駅からあいくるまで舵棒に入れてもらった.こんな経験はめったにないので,本当に楽しんだ.なお,この舵棒はかなりの力仕事で,運動を普段しない身にとってはなかなか辛い場面もある.この区間はちょっとした上り坂でもあったのだ (もちろん知ってたけど).

山車の巡行はその後も続き,最終的に神社の中で引き回しを行う.これは勇壮な場面であって,祭りのクライマックスの一つでもある.24歳の前厄のときには引き回しで舵棒に入っていたことを思い出す.まだ若かったから動けた.今年はやぐらの上から声援を送った.無事に3周の引き回しは終わり,その後,三番叟の奉納が行われた.

そしていよいよ,祭りのもう一つのクライマックス,餅投げ.これをやらないと厄払いができないし,それをするために来てるのだということを忘れてはいけない.やぐらの上から投げている最中は,テンションが上がりまくって,「声が小さい!」とか叫んだりしていた.運動を普段しない割に,遠くまで餅が投げられていた気がして少し驚いた.そうこうしているうちに,餅投げも終了.その後は景品交換を行い,板流しを経てその日に予定されていた内容はすべて終わった.ちょっと興奮状態にあったのか,疲れているはずなのに,すぐ寝るということはできなかった.

いまは心地良い筋肉痛に浸っている.この痛みが引くまでは余韻を味わいたい.

この祭りと山車の巡行に多くの人々が携わっていて,自分がそのような文化的土壌で育ってきたのだということを改めて深く感じさせてもらえた.一方で,厄年に参加する人が減ってきているようで,それは残念な気分にもなる.もちろん,この日のために長期間積み立てをして,それはそれで大変であるし,当日までの準備も (私自身は全く協力できていないが,想像するだけでも) 気を配る必要のある細かいことはいくらでもある.私自身も,いまとなっては転居を繰り返し,地元へ頻繁にかえるわけではないという暮らしをしている.しかし,この42歳の厄年の祭りはやらなくてはいけない通過儀礼のようなものだと位置づけていた.今年,山車の先をひっぱる縄の先頭を取り合う少年たちを見て,昔,自分が子供の頃,山車を見にいったり,餅投げにいったときの記憶が蘇ってきた.自分の根底に残された故郷に対する思いに気付かされた.その子たちが大人になったときに思い出せるような記憶を私が与えられたのか,正直なところ自信はないけれど,それを積み重ねていかなければ,文化は継承していけないのではないかと感じた.

数学セミナー2017年5月号

久々に「エレガントな解答を求む」に出題しました.ぜひ挑戦して下さい!