リプロな日記

中絶問題研究者~中絶ケア・カウンセラーの塚原久美のブログです

あまりにも頻繁に否定され、あまりにも頻繁に無視される:女性の性的権利。セクシュアリティに対する包括的で前向きなアプローチの意味、論争、必要性について

CELLE, CARLOTTA, 2021/2022

Too often denied, too often neglected: women's sexual rights. On the meanings, controversies and the need for a comprehensive, positive approach to sexuality

仮訳します。

要旨
 セクシュアル&リプロダクティブ・ヘルス&ライツは、国際的な場でますます認識されるようになってきたが、その発展や範囲と内容の定義に論争がなかったわけではない。本論文の目的は、国際的な場における性と生殖に関する権利の歴史的変遷を概観することである。言説の複雑さを把握するため、より広範な社会的・政治的運動、イデオロギー、宗教、革命を考慮に入れて、これらの権利の変遷を分析する。これらを念頭に置きながら、SRHRが国際人権法にどのように組み込まれてきたかを概説することから始める。人権言説におけるセクシュアリティの登場から始まり、セクシュアル・ヘルス&ライツの概念の発展、そして女性やセクシュアル・マイノリティに対するその意味合いを探っていく。第2章では、性的行動の規制における法の役割、性的権利の共通原則の必要性、そうした原則の定義における障害など、言説のいくつかの問題点を分析する。第3章では、性的権利の定義と認識における困難を克服するためにフェミニズムの枠組みを採用し、その結果、セクシュアリティへの包括的かつ積極的なアプローチを支持する観点から、すべての人のための性的正義と自由に到達するための解決策を提案する。

結婚も出産も女性主導から“自分のタイミング”で 精子凍結する男性たちの意識の変化

プレコンセプションケアって……もしかしたら不妊治療よりも賢明なのかもしれないが……

”自分のタイミング”で産み育てる……ということは、リプロの権利からしたら王道の考え方。

これまで「プレコンセプションケア」とは、女に産ませるために女に行われるものだと思って眉唾に感じてきたけど、男性が早期に精子凍結することも視野に入れるとなるとますます混迷に陥ってしまう。すでに近未来の「出産」は、一部のお金のある人達のものになりつつあるのかもしれない……。

結婚も出産も女性主導から“自分のタイミング”で 精子凍結する男性たちの意識の変化 | AERA dot. (アエラドット)

経口中絶薬メフィーゴパック 発売半年で724人が服用、副作用14件も重篤例なし

中絶薬承認1年になるが……アクセス延びず

経口中絶薬メフィーゴパックが承認されてから4月28日で1年になるけど、母体保護法指定医師のいる4176医療機関(2000年)のうち使えるところは3%だけ。讀賣新聞によれば、発売後6か月間の使用者も724人にすぎなかった。最近の年間中絶件数の半分6万件と比べると、わずか1.2%だ。
国内初の飲む中絶薬「メフィーゴパック」、発売半年で724人服用…副作用14件も重篤例なし : 読売新聞


重篤な副作用がなかったというのは良い知らせだけど、予想ができていたことでもある。日本ほど「慎重」な服用法を取っていたら、少なくとも「からだ」に被害はでないはずだ。ただし、どんな扱いだったのか、こころに傷を負っていないか……も、調べるべきではないだろうか。


中絶薬が広まらないネックになっているのは、「指定医師制度」「高額料金」「入院要件」「配偶者同意要件」であり、承認後25年経っても使用率が2~3%の経口避妊薬の二の舞になりかねない。黙っていては決してアクセスは改善されない。選択肢を広め、アクセスを改善するため、声を挙げて行こう!


フィーゴパック は、1回で中絶完了しなくても、流産が途中で止まった際にも、国連の推奨方法どおりに1回100円程度の追加薬を3時間毎にくりかえし服用すれば、成功率はほぼ100%に上がり、外科処置は不要になる。厚労省は適用外使用を認めて、「薬だけで終わらなければ追加料金5万円」を禁止すべきだ。

メフィーゴパック:724人服用…副作用14件も重篤例なし

讀賣新聞 2024/04/22 00:00

ようやく出ました。発売後6か月間調査の結果!

国内初の飲む中絶薬「メフィーゴパック」、発売半年で724人服用…副作用14件も重篤例なし : 読売新聞

写真キャプション:昨年5月、国内での販売が始まった「メフィーゴパック」。2種類の薬を組み合わせて使う(ラインファーマ提供)



 人工妊娠中絶のために使う国内初の飲み薬「メフィーゴパック」について、昨年5月の販売開始から半年間で724人が服用したことが分かった。11人に計14件の副作用があったが、重篤な例はなかった。横浜市で開かれた日本産科婦人科学会で21日、発表された。


 発表データは、製造販売元のラインファーマがまとめた。販売された昨年5月16日から半年間に82施設(25病院、57診療所)に納入された。副作用は 嘔吐おうと 4件、出血と下腹部痛が各3件、吐き気2件、じんましんと発熱が各1件だった。

 薬は母体保護法指定医のもと妊娠9週0日までに使う。世界保健機関(WHO)が安全で効果的な方法と推奨するが国内では長年、手術しか認められていなかった。2022年度は約12万件の中絶が行われた。

 発表した日本産婦人科医会常務理事の石谷健・日本鋼管病院婦人科部長は「大きなトラブルの報告はなかった。必要な女性が使いやすい体制に向けて議論してゆくべきではないか」としている。

「不妊治療と仕事の両立に係る諸問題についての総合的調査」結果について

厚生労働省不妊治療と仕事の両立に係る諸問題についての総合的調査」結果について 令和6年3月29日(金)

「不妊治療と仕事の両立に係る諸問題についての総合的調査」結果について|厚生労働省

【調査結果のポイント】

不妊治療を行っている従業員が受けられる支援制度等がある企業の割合は26.5%
不妊治療をしたことがある又は近い将来予定していると答えた人の割合は14.5%
不妊治療をしたことがあると答えた人のうち、不妊治療と仕事の両立ができずに仕事を辞めた人は10.9%
・労働者が、行政に望む支援として一番多い回答は、「企業における不妊治療と仕事との両立を支援するための勤務時間、休暇等に関する制度の導入を促す」

・ 「不妊治療と仕事の両立に係る諸問題についての総合的調査」結果概要[585KB]
・「不妊治療と仕事の両立に係る諸問題についての総合的調査」[2.3MB]

政府における子育て支援の当事者・支援者の思いからの乖離

子育て支援施策の変遷~1990年以降の子育て支援施策を中心として~ 齋藤克子(佳津子)

http://repo.kyoto-wu.ac.jp/dspace/bitstream/11173/224/1/0140_001_004.pdf研究ノート

3.3 政府主催の「有識者会議」「閣僚会議」「国民会議」の設置
 1998年 7 月から12月には、総理主催の「少子化への対応を考える有識者会議」が開催された。委員の半数は公募され、子育て中の親、支援者、専門職等の30~40歳代が委員として参加した。二つの分科会で討論した結果を「夢ある家庭づくりや子育てができる社会を築くために」という報告書にまとめた。この有識者会議の出席者でもある「子育て環境研究所」代表の杉山千佳は、行政の提言書としては、先駆的であり、かつ誰もが納得できるものが述べられていたと振り返る。(杉山,2005:95)また、1999年 5 月には、19閣僚からなる「少子化対策推進関係閣僚会議」が発足し、同年 6 月には、労働組合、企業経営者などの各界メンバーからなる「少子化への対応を推進する国民会議」が設置された。「日本子ども家庭総合研究所」の小山修は、これらの「有識者会議」「閣僚会議」「国民会議」から新エンゼルプランに向ける一連の流れに注目し、国民参加型の政策提案としては画期的であると大いに評価している。さらに、小山は、地方行政の推進に当たっては、当事者を巻き込んだ政策立案を期待していると述べている。(小山, 2002:69-72)国レベルでの政策提案には、小山や杉山が指摘するように、当事者や子育て支援実践者の意見が大きく反映されたが、地域での具体的な策定にあたっては、国の予算措置も少なく、地域住民の声は反映されなかった。「地方版エンゼルプラン」を策定した市町村は 4 割あまりで、中にはコンサルタント会社に丸投げをしていた例もあるという。(岩渕, 2004:178-179)この時期に、住民や有識者の意見が反映されなかったことが、2000年以降における、市民の「子育て支援実践」と「地方行政の施策」の乖離に繋がっていったのではないかと思われる。

少子化に関する基本的考え方について-人口減少社会、未来への責任と選択-

人口問題審議会(平成9年10月)
優先順位が逆転 根本的な考え方ではなく「結婚や出産を阻む要因の除去」が最初に

少子化の要因への対応
(1) 少子化の要因への対応の是非
-個人の望む結婚や出産を阻む要因を取り除く対応を図るべき-
……
(2) 少子化の要因への対応のあり方
-固定的な男女の役割分業や雇用慣行を是正し、子育て支援の効果的な推進を図る-
……
(3) 今後、更に議論が深められるべき課題
1.不妊が原因で子どもができない男女への対応等
……
2.多様な形態の家族のあり方
……

少子化に関する最近の動きについて

内閣府男女共同参画局総務課まとめ
図参照

男女共同参画局まとめ

国連における女性の健康保護の進展(2016年まで)

2010年10月8日 国連総会 人権理事会 第15会期 議題3

A/HRC/RES/15/23
開発への権利を含む、市民的、政治的、経済的、社会的、文化的権利、すべての人権の促進と保護
人権理事会で採択された決議
15/23
女性差別の撤廃

第33回会議
2010年10月1日
[投票なしに採択]



2012年7月2日 国連総会 人権理事会 第20会期 議題2および3

A/HRC/21/22

市民的、政治的、経済的、社会的、文化的権利、開発の権利を含むすべての人権の促進と保護

法律上および実践上の女性差別問題に関する作業部会報告書

要約:
 法律上および実践上の女性差別問題に関する作業部会は、2010年10月1日の人権理事会決議15/23に従って設立された。
 人権理事会に対するこの最初の報告書において、作業部会は、そのマンデートの確立に至る出来事の簡単な歴史的概観を提供する(第Ⅱ部)。また、平等と非差別に関連する問題の分析の指針となる概念的枠組みを作成し(第III部)、2012~2013年のテーマ別優先課題を強調する。この優先課題は、政治的・公的生活および経済的・社会的生活における、法律上および実践上の女性差別である(第IV部)。作業部会は、合意された作業方法(第 V 章)と、発足以来行ってきた活動の概要(第 VI 章)を提出する。第VII部には結論が述べられている。

II. 一般原則
8. 人権とは、セクシュアル&リプロダクティブ・ヘルス(性と生殖に関する健康)を含む、人々の生活の特定の側面に関する権利とエンパワーメントのことである。 国際人権法には、女性が性と生殖に関する健康上の権利を享受し、尊厳のある生活を送ることの一環として、妊娠と出産を切り抜けることができるようにするという国家の基本的な約束が含まれている。健全な公衆衛生の実践は、国家がこれらの基本的権利を果たすことを可能にするために極めて重要であるが、それは女性のエンパワーメントに取り組む、より広範な措置によって補完されなければならない。

31. 国際法上、国家は適切な措置を採用する義務がある。適切な措置とは、エビデンスに基づく措置である。すべての措置は、利用可能な最高レベルのエビデンスを反映し、新たなエビデンスが出現した場合には定期的に更新される、国際的なガイドラインを含む権威ある公衆衛生ガイダンスに基づくべきである[25] 。権利の実現において国家は裁量の余地を享受しているが、政府は、政策の選択と優先順位、およびそれらがなされた根拠を公に正当化できなければならない[26]。

[25] Partnership for Maternal, Newborn and Child Health, A Global Review of the Key Interventions Related to Reproductive, Maternal, Newborn and Child Health, Geneva, 2011; WHO, Packages of Interventions for Family Planning, Safe Abortion Care, Maternal, Newborn and Child Health, Geneva, 2010.
[26] Committee on Economic, Social and Cultural Rights, general comment No. 3, para. 4; see also E/C.12/2000/4, para. 53.

33. 権威ある公衆衛生のガイドラインは、妊産婦の健康改善 に不可欠なものとして、国家計画において普遍的なアクセス が効果的に確保されるべき、以下の介入策を挙げている: 家族計画サービス、HIVを含む性感染症の予防と管理、合法である場合は安全な中絶サービ スへのアクセスと中絶後のケアを含む意図しない妊娠の管理、適切な妊産婦ケア、ドメスティック・バイオレンスの発見、分娩前の破膜と早産の管理、妊娠遷延のための陣痛誘発、分娩後の出血の予防と管理、帝王切開、適切な産後ケアである。[28] ベストプラクティスによれば、新生児ケアは、女性の分娩および産後ケアとともに提供されるべきである。

[28] Partnership for Maternal, Newborn and Child Health, A Global Review (see footnote 25).

2012年10月9日 国連総会 人権理事会 第21会期 議題3

市民的、政治的、経済的、社会的、文化的権利、開発の権利を含むすべての人権の促進と保護
A/HRC/RES/21/6
人権理事会が採択した決議*1

1. すべての国に対し、予防可能な妊産婦の死亡率および罹患率を地域、国、地域および国際レベルで撤廃するための政治的コミットメントを新たにし、人権義務、北京宣言と行動綱領、国際人口開発会議の行動計画およびその見直しプロセスの完全かつ効果的な実施を確保するための努力を倍加するよう要請する、 ミレニアム宣言とミレニアム開発目標、特に妊産婦の健康の改善とジェンダーの平等の促進および女性のエンパワーメントに関する目標を含む;

2015年4月2日 国連総会 人権理事会 第29会期 議題3

開発の権利を含む、市民的、政治的、経済的、社会的、文化的権利など、すべての人権の促進と保護
A/HRC/29/40
法律上および実践上の女性差別問題に関する作業部会報告書

要約
 本報告書では、文化的・家族的生活における女性と女児に対する差別について検討する。ジェンダーの文化的構築は、結婚を含む家族内での女性と女児の役割を決定する。社会と家族における女性と女児の平等な権利の享受に対する文化と宗教の影響を分析した後、作業部会はジェンダーの視点を取り入れることによって家族を再定義する。男女間の平等と家族の多様性を再確認するにあたっては、世俗的家族法制度、国家が強制する宗教的家族法制度、複数制度など、あらゆる形態の家族法において、平等に対する女性の権利の原則を適用することが必要である。文化的・家族的生活における女性差別と闘う国家の義務を想起した上で、作業部会は、文化的・家族的生活における真の男女平等の確立のために、優れた実践をもとにいくつかの勧告を行う。

2016年5月2日 国連 経済社会理事会

経済的、社会的及び文化的権利に関する委員会
E/C.12/GC/22
性と生殖に関する健康への権利(経済的、社会的及び文化的権利に関する国際規約第12条)に関する一般的意見第22号(2016年)
全面的にリプロダクティブ・ヘルスと中絶を書き込んだ一般的意見

  • abortion 24回
  • reproductive health 150回

2016年4月8日 国連総会 人権理事会 第32会期 議題3

開発の権利を含む、市民的、政治的、経済的、社会的、文化的権利など、すべての人権の促進と保護
A/HRC/32/44
法律上および実践上の女性差別問題に関する作業部会報告書

事務局によるメモ
 事務局は、理事会決議15/23および26/5に従い、法律上および実践上の女性差別問題に関する作業部会の報告書を人権理事会に提出することを光栄に思う。報告書の中で、作業部会は健康と安全に関する女性差別の問題を取り上げている。女性の身体の道具化は女性差別の核心であり、到達可能な最高水準の健康の達成を妨害している。作業部会は、特に、複合的かつ交差的な理由による差別を経験する女性の健康と安全の状況を強調する。女性の健康に対する権利の非差別的享受は、自律的、効果的かつ安価でなければならず、国家は、保健サービスが民間主体によって提供される場合を含め、法律上および実際上、女性の健康に対する権利を尊重し、保護し、履行する第一義的責任を有する。

*1:人権理事会が採択した決議と決定は、第21会期に関する理事会報告書(A/HRC/21/2)の第1章に記載される。

同一労働同一賃金 遵守へ「報告徴収」積極化 労基署が事前確認し 厚労省・令和6年度運営方針

2024.04.18 【労働新聞 ニュース】

同一労働同一賃金 遵守へ「報告徴収」積極化 労基署が事前確認し 厚労省・令和6年度運営方針|労働新聞 ニュース|労働新聞社

待遇差の理由説明も重視

 厚生労働省は令和6年度地方労働行政運営方針を策定した。非正規雇用労働者の処遇を改善するため、同一労働同一賃金の遵守徹底に向けた取組みを強化する。労働基準監督署の定期監督時に、パート・有期雇用労働者などの待遇の確認を引き続き実施したうえで、その結果を踏まえて都道府県労働局雇用環境・均等部門が実施する報告徴収(雇用管理の実態把握)の件数を増やす方向だ。正社員との間で基本給・賞与の待遇差がある理由を説明できない企業に対しては、労基署が文書で点検・改善を要請する。

日本に新たな国際保健拠点 WHO、世銀と25年設置

東京新聞 2024年4月19日 10時04分 (共同通信

日本に新たな国際保健拠点 WHO、世銀と25年設置:東京新聞 TOKYO Web

リプロのヘルスケアはUHCの必須構成要素です。国内に機関ができたらさすがにごまかせなくなるかも。だって、他国をそう指導しなくちゃならない立場になるのだから。避妊ピルが承認されたのは、バイアグラのスピード承認だけが理由ではなく、海外のリプロを指導するために、自国内で避妊ピルが認められていないことがネックになっていたとも言われている。

 武見敬三厚生労働相は19日、世界保健機関(WHO)と世界銀行と連携し、2025年に国際保健分野の人材育成を担う拠点を日本に設置すると閣議後会見で発表した。誰もが負担可能な費用で適切な医療を受けられる「ユニバーサル・ヘルス・カバレッジ(UHC)」の実現を目指す。
 拠点の名称は「UHCナレッジハブ」。低中所得国で医療保健の財務管理やサービスの体制構築に関わる人材を育成するための研修をする。武見氏は「日本の高齢化における取り組みや経験を生かしながら、国際的に先進的な拠点になるよう準備を進める」と述べた。