リプロな日記

中絶問題研究者~中絶ケア・カウンセラーの塚原久美のブログです

「少子化」 問題のジェンダー分析

人口問題研究 (J. of Population Problems) 56-4 (2000. 12) pp. 38~69 特集:少子化と家族・労働政策 その2

「少子化」 問題のジェンダー分析 目黒依子他2000年

要旨より結論部分

……少子化現象の要因分析から, とくに, 「結婚・出産・育児コスト感」 の軽減が急務である. そのためには, 「少子化対策」 として以下に示す3つのレベルの政策提言をする.
 第1に出産・医療システムのなかにリプロダクティブ・ライツ及びヘルスの観念を殖えつけ, 女性の生涯健康という観点に立ったシステムに組み直す, また地域の実情に即した育児サポート・システムを整備する,
 第2に 「男性は稼ぎ手, 女性は専業主婦」 という固定的な性役割を前提としたジェンダーシステムを変革する,
 第3に, 学校教育や市民教育を通じて新しいジェンダー意識やリプロダクティブ・ライツ及びヘルスの観念を普及させる, などの施策を推進する必要がある.

日本における少子化問題の特殊事情 ―晩婚・晩産化とリプロダクティブ・ヘルス/ライツ ―(2)河内優子

共立国際研究 : 共立女子大学国際学部紀要

https://kyoritsu.repo.nii.ac.jp/record/2306/files/%E5%85%B1%E7%AB%8B%E5%9B%BD%E9%9A%9B%E7%A0%94%E7%A9%B629_3kawauchi.pdf:title=日本における少子化問題の特殊事情 ―晩婚・晩産化とリプロダクティブ・ヘルス/ライツ ―(1)河内優子(2012)]

日本における少子化問題の特殊事情 ―晩婚・晩産化とリプロダクティブ・ヘルス/ライツ ―(2)河内優子(2019)

(2)の方から少し書き出してみる。

本来,リプロダクティブ・ライツは,女性のみに限定することなく男性,女性双方の人間の基本的権利と考え
られるものである。だが歴史的にみて女性が妊娠・出産についての主導権を持たず,性的に抑圧されてきたという現実があること,また妊娠・出産,人口妊娠中絶,育児といった人間の実際の再生産プロセスにおいて,女性が担い,課される身体的,精神的,社会的負担が男性に比べ圧倒的に大きい,といった状況が重視され,主として女性の「リプロダクティブ・ライツ」に力点が置かれるようになった(4)。
 たとえば伊佐智子は「出産はもっぱら女性の身体に生じる現象であり,基本的人権における『身体の不可侵性』の原則,ならびに,これからの人生への選択,という意味での自由,幸福追求という原則にもとづいて,生むかいなかの決定は女性自身にその権限があり,リプロダクティブ・ライツは,女性の基本的な人権としての性格を持つと考えられる」と主張している。
 ところで,このリプロダクティブ・ライツ概念の出現には,歴史的に遡り,大きく二つの流れがある。第1 に欧米における中絶権獲得の動き,そして第2 に人口問題への反発である。そして後者にはさらに二つの流れがある。一つは途上諸国に広がる人口爆発に対する人口管理政策(Birth Control)への抵抗であり,もう一つが欧米先進諸国での優生学に基づく人口管理政策に対する女性の抵抗である(5)。いずれもその中心には,国家管理に対する女性の自己決定権の獲得が据えられている。
 第1 の流れは,1960 年代,欧米で勢いをもった第2 派フェミニズム運動に始まる。当時,男女平等の制度の確立と女性の労働権を求める機運の高まりとともに,経済的自立と身体と性の自立を求め,自分の身体をコントロールする声が女性の中からわきあがった。さまざまな「セルフ・ヘルプ(自助)」グループが作られ,性と生殖に関する女性の選択権を要求として掲げる「リプロダクティブ・フリーダム」獲得運動へと展開していった。
 旧来,女性は受け身で,性,セックス,生殖などについて何も知らない方がよいとされ,自分で決めることもできず,夫に重要な決定を委ねてきた歴史がある。だが,そうした旧弊に抵抗し,自分の身体を知り,自分でコントロールしようという「身体こそ,わたしたち自身」という考え方が,まず広がり,それが「子どもを産むか産まないかのところで自決権がなければ,女性の本当の自立はない」という主張につながっていった(6)。
 こうした「リプロダクティブ・フリーダム」を保障する権利がリプロダクティブ・ライツであり,女性の自立を求める運動として,妊娠中絶における女性の自己決定権を求める(7)運動が世界的に波及していった。そして実際,欧米各国で,イギリス1968 年,アメリカ1973 年,フランス1975 年と,中絶合法化が相次ぎ実現していった。ちなみに日本では例外的に,戦後の特殊事情を背景に定められた1948 年の優生保護法の規定により堕胎罪が空文化され,中絶は戦後早い段階で実質的に合法化されていた(8)。
 だが中絶論争においては,複雑に絡む問題があった。女性の特質としての母性への根強い価値観,人種差別や民族浄化の歴史に不妊,堕胎の強制があったこと,世界の文化・宗教の独自性の尊重,といったことなどである。それらをめぐる議論は容易に帰着点を見出せるものではない。中絶法反対を無批判に訴えることはできず,そうした問題をめぐる論争が,当時のフェミニズム内部にも存在した(9)。また今日もなおこうした点は,リプロダクティブ・ライツをめぐる議論において,正当性をめぐる混乱に通じているように思われる。
 第2 の流れは,1972 年に出版されたローマ・クラブの「成長の限界」に代表される,地球的規模での人口爆発の脅威とその資源・環境への破壊的影響,という議論の広がりの中で高まった論調である。とくに途上諸国や欧米貧困層女性への強制的避妊技術,またアメリカで認可されなかった有害な作用のある避妊薬や重大な副作用が確認されていた避妊子宮内リング等が途上国への近代的避妊手段として大量に輸出されたことなどの問題が世界的に問題化した(10)。そしてこうした問題に抵抗する様々な動きが,主として途上諸国の女性達の人口管理政策へ反対する「リプロダクティブ・ライツ」の流れに収斂していったのである。
 1974 年に開催された第1 回ブカレスト世界人口会議では,国連や先進諸国(とくにアメリカ)が,人口調整のために家族計画の重要性を主張した。それに対し途上諸国側は「開発は最善の避妊法である」と主張し,人口問題の解決に経済成長が不可避と主張した。当時,途上諸国が主張していた「新国際経済秩序(NIEO)」がその背景にあった(11)ことはいうまでもない。
 その後1980 年代になると,途上諸国のフェミニスト達に,欧米に端を発した性と生殖に関する自己決定権を柱とする「リプロダクティブ・ライツ」概念が急速に広がっていった。彼女たちは,途上世界の出生率低下は女性自身による出産コントロールにかかっており,それは基本的に女性の社会的・経済的状態次第であるとした。何より女性が自身の身体に関する決定権がない現状からの脱却こそ最重要であるとの主張であった。先進諸国がグローバルな環境保護追求のために途上世界の出生率低下を図り,その目的のために途上世界の女性へ強行してきた避妊・不妊施策への抵抗にほかならなかった。
 この対立関係は1984 年に表面化し,紛糾した。まず第2 回国際人口会議がメキシコシティーで開催された。アメリ国務省国際開発局により「人間の尊厳と家族の尊重を踏まえた真に自発的な人口プログラム」こそ何より重要,との表明があり(12),人口妊娠中絶,非自発的断種,その他の強制的人口抑制策が一括りで批判され,それらを支援している途上国や国際機関に対する財政援助が停止されることになった(13)。一方,オランダのアムステルダムで同年開催された「女性と健康国際会議」では,“Population Control No ! Women
Decide !(人口管理反対! 女性が決める!)”をスローガンに,南北フェミニストのネットワークが集結した(14)。女性の意思や健康を無視した多くの人口政策の現状が報告され,これを契機に女性の地位改善を出生率引き下げの鍵とする捉え方が広まっていった。
 そして当時,欧米フェミニズムの運動は,たんなる中絶の権利獲得から,幅広く世界的な女性の「リプロダクティブ・ライツ」保障を目指すようになった。人工妊娠中絶承認とともに,強制的不妊処置や不本意な人口妊娠中絶への反対を強調することで,一貫して女性の自己決定権が強力に押し出されるようになった。こうした流れが「リプロダクティブ・ライツ」を権利概念として醸成し,主導する形でカイロ会議へとつながっていったのである。
 かくしてリプロダクティブ・ライツは,「リプロダクティブ・ヘルスケアの権利」と「リプロダクティブ自己決定の権利」という二つの原則から構成される(15)ようになった。つまり,リプロダクティブ・ライツはリプロダクティブ・ヘルスの全分野を包含する権利となり,両者は不可分の関係にある。だがその権利の射程は,リプロダクティブ・ヘルスにとどまらない広がりを有すということなのである。
 このリプロダクティブ・ライツを前面に押し出したカイロ会議は,それ以前の人口会議に比較して,当然,大きな変貌を遂げることとなった。どのように変化したかについて,阿藤誠は以下の3 点を指摘している。
 ⑴  個人,とりわけ女性の妊娠,出産の決定権が強調されたことで,旧来のマクロ的,国家的視点が大幅に後退し,政府による人口抑制政策的アプローチがほとんど姿を消した。
 ⑵  家族計画の必要性には立場を異にする二つの論拠がある。旧来はそれが混在していた。子どもの数の制限が個人の生活水準の向上,社会の経済発展につながるとみる新マルサス主義的な考え方,およびこれが女性の健康と権利拡大のために不可欠とみるM. サンガーなどの考え方であるが,カイロ会議では後者が強調された。
 ⑶  人々(とりわけ女性)が出産の決定権を行使する手段として中絶を受け入れる可能性が出てきた。一大中絶論争に発展し,世界的な注目を集めることとなった。
 国連にとっての人口問題とは世界の人口問題であり,したがってそこで至上課題とされたのは,第一義的に途上世界の人口過剰問題の解消ということになる。何よりもその方途として,ミクロレベルでの個々の女性のリプロダクティブ・ヘルスとライツの確立が重視されるようになったのである。こうした世界的な人口論をめぐる思潮と人口戦略の変化は,「人口政策的アプローチ」から「フェミニスト・アプローチ」への転換(16),と捉えられる(17)。

止まらない「少子化」、対策をいくら講じても…背景に潜む〈重すぎる社会保障〉の問題【経済学者が解説】

The Gold Online 2023.12.25

止まらない「少子化」、対策をいくら講じても…背景に潜む〈重すぎる社会保障〉の問題【経済学者が解説】 | ゴールドオンライン

いくら対策を講じても、全く改善の兆しがない日本の少子化。その理由として、歴代政権が行ってきた高齢者への手厚い社会保障制度がある。実情を見ていく。※本連載は島澤諭氏の著書『教養としての財政問題』(ウェッジ)より一部を抜粋・再編集したものです。

以下は、さらにその中から結論部分だけを抜き書きする。

……高齢者向け社会保障給付のスリム化が実現できれば、異次元の少子化対策や月々5000円程度の追加的な給付に期待しなくても大幅に手取り所得増になるし、そうなれば結婚や子どもを諦めていた若者にも希望が出てくる。
 したがって、岸田首相が、シルバー民主主義に真っ向から挑戦して高齢者向け社会保障制度のスリム化を実現し、バラマキ政治とクレクレ民主主義から決別できれば、それこそ「異次元の少子化対策」が実現される。そのためには、バラマキ政治とクレクレ民主主義が導く「大きすぎる政府」から「適正な政府」へと舵を切ることが必要だ。
 結局、日本の少子化対策とは、実際には出生増対策なので、筆者は、現在の少子化対策は高い確率で失敗に終わると見ている。しかし、同時に、こうした失敗の責任がある特定のグループに負わされるのではないかという点を危惧している。
 つまり、これだけの国費をつぎ込んで「異次元の少子化対策」を実行したにもかかわらず少子化に歯止めがかからないのは、若者が子を持とうとしないからだ、特に、若い女性がわがままだからだという批判が出るのではないかと心配している。子を産めない人や子を持たない選択をした人たちへの社会的なバッシングも起きるだろう。
 繰り返しになるが、日本の少子化に即応しようと思えば、移民の導入は不可避である。しかし、現行の外国人移民に頼らない少子化対策路線を取るのであれば、日本人女性に子を産んでもらうほか解決方法がない。
 視点を変えると、政府が政策によって、出生を強制する、あるいは社会的に出生を奨励する風潮を作ることは、女性の人権を侵害する可能性を孕んでいることに留意が必要だ。
 かつて時の厚生労働大臣が「15から50歳の女性の数は決まっている。産む機械、装置の数は決まっている」、「機械というのはなんだけど、あとは一人頭で頑張ってもらうしかないと思う」と発言し批判を浴びたことがあったが、実はこの発言は国による少子化対策は女性の人権侵害という側面を併せ持っているという本質をついている。
 国難を救うための少子化対策と称して、子を生むか生まないか、結婚するかしないかで、政府によって優遇されたり、冷遇されたりする世の中では、たとえ、移民を受け入れて一時的に少子化に歯止めがかかったとしても、また少子化が進行してしまうだろう。
 大多数の国民は国の命運を外国人に頼るのは心許ないと考えているに違いない。だから、出生対策に頼ろうとするのも理解できる。
 しかし、だからこそ、失敗続きの「日本人を増やす」という「逃げ」の少子化対策に走るのではなく、子を持つ持たない、結婚するしないという意思決定にゆがみを与えない、そうした意思決定に中立的な雇用環境や税制、社会保障制度を構築する方が、国民の幸福も増すだろうし、国家の持続可能性も増すはずだ。
 社会保障のスリム化にあわせ、戦後の高度成長期という日本史上イレギュラーな時期に形成された右肩上がりの人口・経済を前提とする社会・経済の諸制度を、人口構造から中立的な制度へ変更することからも逃げてはならない。

政権と女性 尊厳なければ輝けぬ

朝日新聞社説 2020年9月10日

新聞切り抜きが出てきた。
今になっても全面同感! 書き写します!!
さて、「次」の首相は……?

 すべての女性が輝く社会に。女性活躍の旗を高く掲げる――安倍首相が繰り返した約束である。政権の7年8ヵ月で変化はどれほどあっただろうか。
 きのう自民党本部で会った総裁選の討論会で、各候補は女性支援や男女格差の是正を訴えた。だが、本当に議論を深めるには、これまでの政策の功罪を見すえる必要がある。
 安倍政権の女性をめぐる諸策は総じて、経済主導の側面が強かった。人口減のなかで経済成長するために、女性の労働力を活用する考えが垣間見えた。
 子育て後の再就職・起業支援や育児休業の延長、待機児童解消策などは終業を後押しした。働く女性は昨年、初めて3千万人を超え、就業率はこの8年で6割から7割強になった。
 ただ、その過半数はパートなどの非正規雇用だ。コロナ禍では真っ先に解雇や雇止めにされ、この4月に減った非正規職97万人(前年比)のうち、7割以上が女性だった。
 5年前に成立した女性活躍推進法は、大手企業や自治体に女性登用の数値目標づくりなどを義務付けた。具体的な行動計画を促した点は評価できる。 だが政府は、「2020年までに指導的地位における女性の割合を30%程度にする」とした目標を断念し、「20年代の可能な限り早期に」というあいまいな表現で先送りにした。
 最も格差がひどいのは政治分野で、衆院議員の男性9割は世界最低レベルだ。一昨年に候補者男女均等法ができたが、昨年の参院選で候補者全体のうち女性は3割に満たなかった。
 世界経済フォーラムによる男女格差指数によると、8年前に101位だった日本は昨年、121位に後退した。主因は政治の遅れだ。国会議席のクオータ制や罰則なども含め、踏み込んだ検討をする時ではないか。
 問題の根底には、女性の人権を軽んじる文化が根強くある。
 近年も財務事務次官による女性記者へのセクハラや、大学医学部での女子受験者差別などが相次いだ。男女の固定的な役割意識を変えようという、社会的な作業がなされてこなかったことの裏返しだろう。
 選択的夫婦別姓も、世論調査で賛成が反対を大きく上回るなか、安倍政権は保守的な家族観を重視する議員や支持層に配慮し、何も動かなかった。
 暮らしのなかでの格差撤廃、官民の高位ポストへの妊孕、そして、女性の尊厳を守る社会的合意の形成。こうした旧来の課題が重く残されている。
 次の首相には、確かな変化をもたらす決意を切に求めたい。真のジェンダー平等のもとでしか、女性は輝かない。

女性のエンパワーメントと女性の健康・権利を基本にすえた政策展開を

日本の少子化対策に欠けているもの:ジェンダーの視点に立った実態把握と必要な支援の実施

浅倉むつ子戒能民江・若尾典子共著『femニズム法学——生活と法の新しい関係』明石書店 2004年
第3章 人口論と女性の身体
7 日本の少子化社会の問題点

ここ大事。抜き書きします。

(人口政策に)女性のエンパワーメントと女性の健康・権利を基本にすえた政策展開が、求められている。…… 
 日本が直面している少子化問題こそ、【前述のような】人口問題に関する国際的な政策アプローチが必要である。人口問題を政策として検討することは、その内容が人口の抑制であれ増加であれ、女性の出産行動を対象にすることになる。その場合、人間の数を問題にする視点は、人間の質の確保と言う問題と連動し、女性の出産行動を上から監視することに結び付きやすい。ブカレスト会議以後、途上国の女性が直面した問題は、途上国の特殊性、すなわち貧困で公衆衛生が保障されず、先進国の支援という名の圧力に屈しなければならなかったという点だけが原因ではない。なにより各国政府が、女性たちの直面している問題に取り組む姿勢をもつか否かによって、人口政策の成否が分かれた。多産であれ、少産であれ、どこにどのような問題を女性たちが抱えているのか。正確な実態把握と、必要な支援策の実施が必要である。これが、カイロ行動計画における、女性のエンパワーメントとリプロダクティヴ・ヘルス/ライツの要請である。……
……
 日本の少子化社会は、子育てを個人、とりわけ女性の負担に委ねているところに問題がある。求められているのは子育てを支援する具体的な施策・法制度である。ところが施策の充実を放置したまま、少子化社会対策基本法という、これまた理念を掲げる法律を追加した。しかも、この基本法は、家庭や子育てに夢をもつことができる社会の実現に努めることを、「国民の責務」とまでしている。これでは、日本政府・少子化社会対策基本法の狙いは、出産・子育てという社会的な支援を必要とする領域で、具体的な施策を講ずることなく、子を産まない女性を非難し、女性に子産みを強要するものではないか、という疑念さえ生じる。日本の少子化にたいする基本視せ右派、女性のエンパワーメントと、リプロダクティヴ・ヘルス/ライツの保障を、欠落しているところに、重大な問題がある。

リプロダクティブ・ライツは「産む」「産まない」の自己決定権と、両方のリプロ・ヘルスケアが保障される権利

従来、「リプロダクティブ・ライツ」「自己決定権」は「中絶」の問題として狭く考えられがちだった。

以下はその事例です。

……自分の身体に対する自己決定権は、どのようになされようとも、それ自体で他者の人権と衝突することはありえない。この自己決定権は身体に対するものであるが、精神とかけはなれて存在する人間の身体はありえないのだから一面では精神の自由とも深く関わってくる。「性」が精神と身体との両方に係るものであることの結果でもある。
 女性の身体に対する自己決定権を認めないということは、中絶の権利を否定するとともに、中絶が他者の意思によって行われてしまうということをも認めることになる。中絶の権利性の論証のためにだけではなく、不当に中絶されない権利の確立のためにも自己決定権は必須だと私は考えている。……
 「産まない権利」はまた「産む権利」の問題なのだ。この二つの権利がコインの裏表であるのは、産むことの奨励が、産まないことへの非難であることと同じことである。
 産む選択も、産まない選択も女性のものであり、他者が介入したり強制したりすることは許されない基本的人権であることが根づく社会をめざしたい。
 そのためには、堕胎罪と優生保護法を廃止するだけでは不十分である。性と生殖に関する自己決定権を保障する新しい法律が必要だ。……
 そして、この新しい法律は、不当に中絶や優生手術を強制されない権利をも保障するものでなければならない。
――角田由紀子『性の法律学有斐閣 1991年
※産む権利は考えられているが、産む場合、産まない場合の両方向のリプロダクティブ・ヘルスケアを保障する権利は考えられていない。

「女性の自己決定権」、すなわち第二波フェミニズムが取り組んできた、「性と生殖にかかわる女性の権利」、現在の言い方では「セクシュアル・ライツ」とか「リプロダクティブ・ヘルス/ライツ」という問題があります。
 女性の自己決定権」というと、通常は「産む/産まない」を決める権利、もっと具体的に言えば合法的に人工妊娠中絶を受けられる権利を指します。
――江原由美子『自己決定権とジェンダー岩波書店 2002年

リプロダクティブ・ライツは、言い換えれば、自己の生殖をコントロールする権利である。……リプロダクティブ・ライツは、幸福追求権の一部として考えられるべきものといえよう*1
 リプロダクティブ・ライツは、子どもを産むか否かを決定する権利にとどまらず、子を産まないという決定あるいは子を産むという決定を実現する権利も含む。ここでは、まず、子を産まない権利に関して人工妊娠中絶を、次に子を産む権利に関して生殖補助医療を、次に子を産む権利に関して生殖補助医療を取り上げて、わが国のリプロダクティブ・ライツの現状と問題点を明らかにしたい。
――石井美智子「リプロダクティブ・ヘルス/ライツ」『ジュリスト』No.1237 有斐閣 2003年
※「産む権利」を考えてはいるが、生殖補助医療と絡めてしまったことで、シンプルに「産むこと」の権利は考察されていない。

2 自己決定権とリプロダクティブ・ライツ
(2) 人工妊娠中絶と自己決定権——「産まない権利」
4) 日本の議論と課題
 ……これらの問題は、女性の生殖に関する自己決定権として憲法13条で構成することが一般的であるが、ドイツ憲法研究の成果*2をもふまえて、胎児の生命権や人間の尊厳と女性の人権との関係で議論を深める必要がある。
――辻村みよ子『比較憲法 第3版』岩波書店 2018年

なお、国連は2017年の段階で「胎児」と「女性」を拮抗させる考え方を否定している。「人権」は「生まれつき」備わっているものであり、「未生」の存在には与えられていないということを再確認したためだ。それ以来、胎児生命を尊重する思想をもつのは人の自由だが、それを法律にすることで、国が女性の「人権」を侵害することは許されないと考えられるようになっている。


年代は前後するけれども、以下の考え方が、国連のリプロダクティブ・ライツの考え方をより良く表していると思います。

「リプロダクティブヘルス(以下、「RH」という。):性と生殖に関する健康」と「リプロダクティブ・ライツ(以下、「RR]という。):性と生殖に関する権利」の両方を含む概念を、ここでは仮に「リプロと総称する(略称)。これらの概念が国際フォーラムに登場し、定義がなされたのは、1994年の第3回国際人口・開発会議(以下、「カイロ会議」という。)である。……
 本項ではとりわけ16条e豪とRRの関係について扱うことにする。しかしながら、RRは権利の性質上、「リプロダクティブ・ヘルスケアへの権利」と「リプロダクションに関する自己決定権」が含まれる。そのため、「リプロダクティブ・ヘルスケアの権利」と12条の関係についても、若干関係してくるために触れる個所があることをお断りしておく。なお、補足であるが、CEDAWと「リプロ」の関係でいえば、関連してくる条項は、4条2項、5条b号、10条h号、11条1項f号・2項・3項、12条、14条2項b号・h号、16条1項e号・2項である。
……
 16条は、「婚姻および家族関係に係わるすべての事項について女性に対する差別を撤廃」するために締約国がなすべき措置を規定する。リプロとの関連で問題となるのは、1項公団において「男女の平等を基礎として【英文引用省略、以下同じ】」定められている8項目のうち、e号「子の数および出産の感覚を自由にかつ責任をもつて決定する同一の権利【英文略】並びにこれらの権利の行使を可能にする情報、教育及び手段を享受する同一の権利【英文略】」である。e号はまた、家族形成権や家族計画に関する権利(女性の出産や出産間隔についての自己決定権」ともいわれ、「家族計画に関する権利の保障のためには、12条1項にもとづいて、家族計画を含む保健サービス享受の機会確保を図ることとあわせ、関連情報の普及や教育・指導のみならず、公費負担や国民医療制度のもとで避妊具の配布や不妊・人工妊娠中絶手術が本人の希望によって行われることが必要である。【注は略す】また、「……産むか、産まないかの選択の自由を含む、「生殖にかかわる権利(reproductive right)」についての女性の自己決定権の確立とともに、人工妊娠中絶の禁止も緩和されてきている。……
 リプロの抱える問題は非常に公判であり、また、宗教的、倫理的規範などと相いれないものとして扱われる。はじめて国際フォーラムの場で、RH/RRに関して詳細に定義をしたカイロ会議は、持続可能な発展を進めるための人口政策をテーマとして開催された。特に女性の人権・女性の地位向上と人口抑制政策とのかかわりがクローズアップされ、「女性の地位向上、役割拡大、RH」の3点が人口問題を解決する鍵とされたのである。とりわけ、女性の意思によらない避妊方法、不妊手術、人工妊娠中絶問題など、それまで女性が国家の管理対象となった人口抑制政策が問題となり、かわって女性の人生の選択の幅を広げることが最終的には人口抑制に繋がるとして、個人重視の姿勢を強く打ち出した。女性の健康や身体に関する決定には、国家の政策や男性の考え方よりも、女性自身の主体性が尊重されなければならないとするRH/RRという概念であるが、この議論にカイロ会議は多くの時間を費やした。
――国際女性の地位協会編(編集委員:山下泰子、辻村美代子、浅倉むつ子戒能民江)『コンメンタール 女性差別撤廃条約』尚学社 2010年

*1:「筆者は、リプロダクティブ・ライツを、家族形成権の中に位置づけて考えている。」との注記あり。

*2:直前の項「3)ドイツの意見判決と胎児保護義務」の中で、「未生児の生命権に対する国の保護義務を根拠として中絶を原則として禁止しうることを前提に、女性の憲法的地位は例外状況でのみ許容されうる、として女性の自己決定権を相対化した」と説明している。

日本人の合法的中絶への態度

「違法にすべき」は非常に少ないが「分からない」がやたらと多い

Ipsos社がほぼ毎年行っている「中絶は合法にすべきと思うかどうか」の調査で、日本が比較対象国に選ばれている最新の2022年のグラフは次の通り。

Ipsos: Global Advisor-Global Opinion on Abortion 2022


日本は「すべてのケースで合法にすべき」17%、「ほとんどのケースで合法にすべき」32%で合わせて49%が合法にすべきと答えている一方、「ほとんどのケースで違法にすべき」7%、「すべてのケースで違法にすべき」2%で、違法にすべきと考えているのはわずか9%。ところが、「分からない」と答えた人が43%で、比較対象国28ヵ国中で最も多い。


2020年の同じ統計について、カリフォルニア大学サンフランシスコ校の産婦人科・リプロダクティブ・サイエンス科部門のダニエル・グロスマン教授は、「中絶への許容度が最も低い上位10ヶ国に入ったうち先進国であるのは合州国(64%)と日本(66%)だけだ」とコメントしていた*1。2022年も同じことが起きているばかりか、許容度は両国とも2年前の方が高かった。アメリカがこの年、ドブス判決を出したことを考えると、少々心配な気持ちになる。

Ipsos: Global Advisor-Global Opinion on Abortion 2020


2014年から2021年までの「許容度」はほとんど横ばいだった。

Ipsos: Global Advisor-Global Opinion on Abortion 2021


日本の場合は、「中絶薬」の導入によって従来の「中絶観」が揺らぎ、「どう考えればいいのか」分からなくなった人々が急増したのかもしれない。


今後も注目していきたい。

アリゾナで160年前の中絶禁止法が復活する?

 アリゾナ州の中絶提供者は、160年前の中絶禁止令に強制力があるとの判決を受け、混乱に直面している。フェニックスを拠点とするデザート・スター・インスティテュート・フォー・ファミリー・プランニングの創設者兼社長であるデショーン・テイラー医師は、当初、この変更がどの程度早く施行されるのか確信が持てなかったため、火曜日に予約の入っていた7人の患者に電話をかけ、その日のうちに来院するよう依頼するためにスタッフを急がせたと語った。
 「私たちはただ患者を診察することに集中しました」とテイラーは語り、「私たちは中絶を確実に行う必要があった」と付け加えた。
 今回の爆弾判決は、アリゾナ州が州になる前の1864年に制定された、女性の生命を救うため以外のすべての中絶を禁止する法律は、アメリカではもはや中絶する憲法上の権利が保証されていないことを考慮し、施行することができるというものである。

 その後でも、アリゾナ家族計画連盟によれば、州最高裁が最終判決を下してから45日経たないと、この禁止令は発効しないとのことである。
 アリゾナ州の医療提供者たちは、火曜日は患者からの質問に答えたり、中絶の予約がキャンセルされるのではないかという不安を和らげたりして過ごしたという。
 テンピにある家族計画連盟のクリニックでは、アリゾナ家族計画連盟のチーフ・メディカル・ディレクターであるジル・ギブソン医師が、判決がいつ発効するかわからないことが患者の不安を引き起こしたと語った。
 「私たちが目にしている混乱と混沌は、私が患者に説明しなければならないものです」と彼女は火曜日に語った。
 「患者たちは、ニュースを見て、自分の予約が今日守られるのかどうか、すでに尋ねてきています」。
 家族計画アリゾナ協会のアンジェラ・フローレス会長兼CEOは火曜日、記者団に対し、アリゾナ州にある同協会のクリニックは "非常に短い期間 "中絶サービスを提供し続けると語った。その後、カリフォルニア州を含む近隣の州と協力し、中絶を受けるために必要であれば、州境を越えることができるように支援する、と彼女は言った。
 「本当に甘く見てはいけない。今日はアリゾナ州にとって暗黒の日です」。ロサンゼルス郡公衆衛生局は声明の中で、医療提供者、擁護者、企業と協力し、自国で中絶を受けられない人々を歓迎することを約束すると述べた。
 テイラーは、2022年に当時のダグ・デューシー州知事が州内の人工妊娠中絶を妊娠15週までに制限する法律に署名した日と似ていることから、その日の必死のペースは「デジャブ」のように感じたと語った。それ以前、テイラーのクリニックは妊娠第2期まで中絶を行っていた。
 2022年の法律により、テイラーは診察と中絶の間に短いターンアラウンドを確保するために、彼女のクリニックのスケジューリングシステムを変更することになった。テイラーは、迫り来る禁止令は彼女の小さなクリニックの将来を危うくすると付け加えた。
 「私たちはママとパパのクリニックです。スタッフと患者の間には、お互いに尊敬し合う関係があります。「私たちは多様性に富み、低所得で、医療が行き届いていない場所にあります。彼らは私たちを頼りにしているのです」。フェニックスにあるアカシア女性センターのロナルド・ユニス医師は、彼のクリニックでは「弁護士ができないと言うまで」中絶手術を続けるつもりだと語った。
 「私たちは主にスペイン語を話す患者を受け入れています。彼らは大きな被害を受けるでしょう。「最も弱い立場の人々に対する戦争なのです」。
 アリゾナ州における人工妊娠中絶の将来については、多くの疑問が残っている。民主党のケイティ・ホッブス知事は、共和党が支配するアリゾナ州議会に対し、1864年の法律を廃止するよう求めた。
 「今後45日間はアリゾナ州の15週禁止法が適用されるが、それ以後は裁判所からの更なる措置がなければ、この全面禁止法がアリゾナ州の法律となる」とホッブス知事は火曜日、MSNBCのローレンス・オドネルに語った。「立法府が正しいことをし、私が要求したことを実行し、この禁止を撤廃することを望む。 アリゾナ州下院の民主党は水曜日、1864年の禁止令の廃止案を提出しようとしたが、共和党に阻まれた。」
 一方、アリゾナ州検事総長のクリス・メイズ氏(民主党)は火曜日、自分が在職している限り、中絶を理由に女性や医師が起訴されることはないと述べた。メイズ氏は火曜日、MSNBCのクリス・ヘイズ氏に対し、「私はこの非人道的な法律では誰も起訴しないと言っているが、中絶へのアクセスに冷ややかな影響を与えることは明らかだ」と語った。
 ホッブスは昨年、中絶関連の訴追権限を州司法長官に委譲する行政命令に署名した。 アリゾナ州のリプロダクティブ・ライツ(性と生殖に関する権利)団体の連合は今月、中絶関連の憲法修正案を11月の投票にかけるのに十分な請願署名を集めたと発表した。つまり有権者は、アリゾナ州において胎児が生存可能となるまで中絶を基本的権利として確立するかどうかを決定する可能性が高いということである。
 「 私たちはすでに50万人以上の署名を集めましたが、アリゾナ州民は政治的なスペクトルを超えてリプロダクティブ・フリーダムを信じているので、私たちは少しもペースを落とすつもりはありません」と、「中絶アクセスのためのアリゾナ」と呼ばれるグループのスポークスマン、クリス・ラブは火曜日の記者会見で語った。
 「私たちは、患者が医療提供者や家族と相談しながら、自分たちの医療をコントロールする権利を持っていると信じている。そして私たちは、11月の投票箱でそれをきっぱりと証明したいと思っています」。
 しかし、中絶権反対派は州最高裁の判決を称賛した。
 「私たちは、胎児とその母親のためのこの大きな勝利を祝う。アリゾナ州のプロライフ法を復活させることで、妊娠のあらゆる段階で毎年11,000人以上の赤ちゃんが保護され、同時に母体の生命については例外となる」と、米国での中絶廃止を目指す非営利団体スーザン・B・アンソニー・プロライフ・アメリカのマージョリー・ダネンフェルザー代表は声明で述べた。
 しかし、アリゾナ州の著名な共和党議員の中には判決に反対する声明を発表した者もおり、ドナルド・トランプ前大統領はアリゾナ州の裁判所は行き過ぎだと述べた。混乱の中、マリコパ郡のレイチェル・ミッチェル検事は、アリゾナ州法では中絶した女性は起訴されないことを明らかにしようとした。
 州最高裁の判決は「それを変えるものではない」と彼女は声明で述べた。 アリゾナ州の現行の15週目の中絶政策も、1864年に制定された法律も、中絶手術を受ける患者ではなく、中絶手術を施したり提供したりする人々に関係している。

 しかし、日本だって旧刑法1888年)も現刑法(1907年)も「日本帝国」下で作られた136年前もしくは117年前の法律である。当時はまだ「日本国」はなかった。その意味では、アリゾナの状況と似たり寄ったりだ。

「強制母性」:中絶禁止でホンジュラスが国連に報告

FROM AFP NEWS, By AFP - Agence France Presse, April 10, 2024

'Forced Motherhood': Honduras Reported To UN For Abortion Ban

仮訳します。

 先住民の女性が、レイプされた後に中絶を拒否されたとして、自国のホンジュラスを国連人権委員会に報告したと、権利団体が水曜日に発表した。

 中米のホンジュラスが国連に提訴されたのは初めてのことで、その絶対的な中絶禁止令は、数え切れないほどの女性や少女たちに「強制母性」を押しつけていると、ファウシアと名乗る女性によって提訴されたNGO団体「リプロダクティブ・ライツ・センター」は述べた。

 ホンジュラスでは毎日3人の14歳未満の少女が「レイプによる妊娠を維持し、母親になることを余儀なくされている」と、同センターは他の4つのNGOとともに、2022年の保健省のデータを引用して声明を発表した。

 「緊急避妊ピル(ECP)へのアクセスの欠如と中絶の犯罪化は、生命、健康、完全性、平等、非差別に対する彼らの権利に影響を与える」と同センターは付け加えた。

 ラテンアメリカでは、選択的中絶はメキシコ、アルゼンチン、コロンビア、キューバウルグアイでは合法である。

 エルサルバドルニカラグアホンジュラス、ハイチ、ドミニカ共和国では、健康上のリスクやその他の事情による例外なしに、全面的に禁止されている。

 いわゆるモーニングアフターピルも最近までホンジュラスでは禁止されており、当時34歳だったファウシアは入手できなかった。

 ファウシアの裁判を支援しているホンジュラス女性の権利センターのレジーナ・フォンセカは、原告は「正義を達成するためにあらゆる手段を尽くす」ことを望んでおり、他の女性たちが同じような運命をたどらないことを願っていると述べた。NGOの声明によると、ファウシアは「環境人権擁護者として土地を守る活動に対する報復として」2人の男に襲われ、そのうちの1人にレイプされた。
その結果、彼女は妊娠し、「深刻な肉体的・精神的苦痛が引き起こされた」。近年、彼女は脅迫のために10回も引っ越さなければならなかった、とフォンセカは言う。「この事件により、参加団体は、ホンジュラス国家にその法的枠組みを改正するよう義務づける国連人権委員会からの指令を確保することを切望している」と声明は述べている。

 「ファウシアのケースは、必要不可欠な医療サービスが犯罪化されることによって生じる数々の人権侵害の典型的な例である。」
 だが、ホンジュラスの議会は社会的に保守的な政党が多数を占めているため、法改正の可能性は低いと思われる。

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The Barron's news department was not involved in the creation of the content above. This article was produced by AFP. For more information go to AFP.com.
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