リプロな日記

中絶問題研究者~中絶ケア・カウンセラーの塚原久美のブログです

UBCの学生がカナダ人が正しい中絶の種類を選ぶためのウェブサイトを開発

UBC News, Apr 29, 2024

UBC student develops website to help Canadians choose the right type of abortion


仮訳します。

 中絶をすると決めることは、とても個人的な選択です。

 UBCの博士課程の学生であるケイト・ウォール(Kate Wahl)さんは、カナダ人がその決断をする際の手助けをしたいと考えています。彼女はIt's My Choiceというカナダ初のインタラクティブなウェブサイトを開発しました。


 カナダ産科婦人科学会(SOGC)が提供するこのツールは、カナダで利用可能な中絶の2つの方法(中絶薬と中絶手術)について、入手可能な最善のエビデンスを統合しています。ユーザーは、それぞれの選択肢から何を期待するかを学び、安全で匿名のアンケートに答えた後、医療提供者との会話をサポートするように設計されたパーソナライズされた推奨事項を受け取ります。

 ワールさんは、UBCの指導教官であるサラ・マンロー博士、ダルハウジー大学のメリッサ・ブルックス博士、そして研究者、臨床医、患者のパートナーからなるチームとともに「イッツ・マイ・チョイス」というツールを開発しました。この新しいリソースについて、彼女に話を聞きました。


――このツールを作ろうと思ったきっかけは何ですか?
 「イッツ・マイ・チョイス」は、中絶を決意した人が自分に合った方法を選べるようにサポートするためのものです。私たちは何十年にもわたる研究から、ピルも中絶手術も安全で効果的であることを知っています。例えば、ピルは自宅や好きな場所で中絶することができますが、中絶手術はクリニックで行われます。また、両者の作用や体への影響も異なります。私たちは、人々がその違いを理解し、自分にとって最良の選択肢を選べるように手助けしたいと考えました。
 カナダにおける中絶の選択と選択肢について説明したビデオや、中絶ピル、中絶手術とその違いについての使いやすい情報が掲載されています。そして、個々の好みについての質問に答えることができます。例えば、中絶を自宅や自分の選んだ場所で行うことは、あなたにとってどの程度重要ですか?あなたの答えに基づいて、ツールはあなたがどの選択肢を選ぶかを計算します。最後には、あなたの好みの要約と、より身近なところであなたの好みの選択肢を見つけるのに役立つ情報源へのリンクが表示されます。
 ツール全体は匿名であり、クイック終了ボタンや閲覧履歴の消去に関する情報など、プライバシーを保護するための機能も組み込まれています。
 多くの人が中絶にアクセスする障害に直面しています。この事実は、ツールをどのように形作ったのでしょうか? カナダのどこに住んでいようと、誰であろうと、性と生殖に関するヘルスケアにアクセスできることは、人々にとって非常に重要です。It's My Choice』には、地方の遠隔地や北部のコミュニティに住む人々のための仮想ケアの選択肢に関する情報が含まれています。私たちは、どのような医療提供者がケアを提供できるのか、また、人々がコミュニティでサポートを求めることができるその他の場所について説明しました。

 昨年、私たちはカナダ保健省から助成金を受け、It's My Choiceをフランス語、北京語、パンジャブ語に翻訳するチームの一員となりました。実際に患者や臨床医もデザイン・チームのメンバーとして参加し、文化的に包括的なイメージや表現を使用することに役立ちました。


――ツールを試用した患者や医療従事者の反応はどうでしたか?
 開発プロセスの一環として収集したフィードバックを最近公表しましたが、非常に肯定的で励みになりました。潜在的な患者にとって重要なポイントのひとつは、利用可能な選択肢について知ってもらうことでした。多くの人は、家庭医や看護師などのプライマリケア提供者が中絶薬を処方できることを知りませんでした。彼らはまた、このツールが自分用にカスタマイズされていることも気に入ったようです。医療提供者は、このツールは患者へのカウンセリングに役立つと話しています。例えば、患者がこのツールに記入した後、予約の際に要約ページや疑問点について一緒に話し合うことができます。

――中絶医療を求める人々にとって、このツールがどのような影響を与えることを期待していますか?
 「イッツ・マイ・チョイス」によって、中絶を決意した人々が、自分にとって適切な医療を受けられるようサポートできることを願っています。他の医療上の決断と同様に、中絶手術とピルのどちらを選択するかは非常に個人的なものなのです。

スミス・カレッジのサイトで女性の健康運動やリプロダクティブ・ライツに関する資料の山を発見!

忘備録

International Women's Health Coalition(IWHC)のことと、初代会長のJoan Dunlopについて調べていたら、Smith Collegeに素晴らしい記録の山があることに気づいた。

とりあえず次のページを貼り付けておくが、まだまだ他にも貴重な記録がありそう!
Population and Reproductive Health Oral History Project oral histories

Reproductive rights

Population and Reproductive Health Oral History Project, Sophia Smith Collection, Smith College, Northampton, MA

ICPD+30の報告書と日本の外務大臣演説の厳然たるギャップ

これを無視していいのか――カイロ会議から30周年のイベントの成果を無視し勝手に捻じ曲げ、人々の権利侵害を放置している日本

該当する国連文書ECE/AC.32/2023/2


30th anniversary of the International Conference on Population and Development (ICPD30), 5 September 2023 - 23 September 2024

報告書はICPD+30: SEXUAL AND REPRODUCTIVE HEALTH AND RIGHTS, Sivananthi Thanenthiran, ARROWであり、タイトルからしてSRHRが中心であることが一目瞭然である。

*中絶法とソドミー法がよく言及されるが、これらの法律には、個人やカップルのセクシュアリティ、主体性、自律性、プライバシーに対する前提が内在しており、それがセクシュアル/リプロダクティブ・ライツの完全な達成を妨げている。 中絶が合法化されている地域では、特に期間の制限に関して、中絶へのアクセスに問題があり続けている。費用、距離、交通の障壁のために、中絶サービスを受けに来るのは、より貧しく社会から疎外された女性であることが多い。リプロダクティブ・ジャスティスの枠組みにおける中絶の重要性を強化する必要がある。望まない妊娠は、経済、暴力、医療制度やサービスへのアクセス、情報と教育、適切な避妊方法へのアクセス、避妊具やリプロダクティブ・ヘルス・サービスをカバーする医療保険、そして自律性といった、周縁化や脆弱性、失敗が交錯した結果である。
* 待機期間、親や配偶者の同意、裁判所命令、精神鑑定など、法律や医療提供者によって引き起こされる遅延は、貧しい人、若い人、遠隔地に住む人、移住者、障害者、先住民、低カーストトランスフォーマーなど社会的に疎外された立場にある人にとって、必要な中絶サービスを利用することを難しくしている。

ICPD+30に関する日本の対応

日・UNFPA政策協議(2024年)の開催(結果概要)|外務省

日本の外務大臣がICPD+30のために行ったスピーチはICPD+30の趣旨とは全く無関係で、かつUHCの概念を勝手にねじまげて日本がSRHR、特に女性のそれを「無視してきた」事実を看過している。こんなとんちんかんなスピーチについて、マスコミが全く批判どころか、報じてすらいないことも、嘆かわしい実態である。

国会議員会議「ICPD30:誰一人取り残さない高齢化社会の実現に向けて」での上川外務大臣の挨拶 令和6年4月23日>>(演説の骨子)
国会議員会議「ICPD30:誰一人取り残さない高齢化社会の実現に向けて」

外務大臣挨拶


冒頭
●本日、アジア人口・開発協会(APDA)、人口と開発に関するアジア議員フォーラム(AFPPD)、そして国際人口問題議員懇談会(JPFP)の主催のもと、『国会議員会議「ICPD30:誰一人取り残さない高齢化社会の実現に向けて」』が開催されることに、心からお祝い申し上げます。
●私も第7代 JPFP 会長として人口問題に取り組んできた立場から、ICPD30 周年及び JPFP 設立 50 年を迎えることを感慨深く思います。
●また、本会議の開催にあたりご尽力いただきました、福田康夫内閣総理大臣・APDA 理事長、武見敬三 厚生労働大臣・AFPPD 議長、黄川田仁志 JPFP事務総長に敬意を表します。


人口と高齢化社会
●人口問題は、世界の全ての国々に共通の課題です。特に、本会議のテーマである「高齢化」は人口問題を考える上では不可欠な要素です。
●我が国では高齢化が欧米諸国に比べても急激に進行しており、総人口に占める 65 歳以上人口の割合は 29.0%です。また、我が国の健康寿命は世界でも有数の水準として延伸傾向にあります。


健康な高齢化
●こうした健康寿命の延伸には、乳幼児期から老年期までのライフサイクルの各時期において「健康とウェルビーイング」を重視した、脆弱層に着目し、誰ひとり取り残さない、ユニバーサル・ヘルス・カバレッジ(UHC)*1という視点を取り入れた、我が国ならではの経験があります。
●日本は、自らの知見や経験をもとに、国連総会、WHO 総会、G7、G20TICAD等の国際的な議論の場において、UHC の推進を積極的に主張し、その中で、健康な高齢化を推進してきました。
●2020 年 12 月には、我が国及びチリが共同ファシリテーターとして国連総会本会議に提出した「健康な高齢化の 10 年」決議案が採択されたことはその最たるものと言えるでしょう。
●更に、我が国はこれまで開発途上国において高齢化対策や社会保障制度整備の支援、専門家の派遣、研修等の取組を通じ、日本の高齢化対策等に関する経験・知見の共有を行ってきました。


人口・開発に関する議員活動
●こうした日本の姿勢は今に始まったことではありません。人口問題に対するコミットメントには、長い歴史があります。
●本日の会議を主催する 「国際人口問題議員懇談会(JPFP)」が設立されたのは1974 年です。 日本は戦後復興を果たし、急激な経済成長を実現しました。
●その中で、人口とも関連が深い資源・食料危機といった課題の中で人類が生きていくためにはどうすべきか、言い換えればいかに持続可能な開発を達成するかという強い危機意識がありました。JPFP はその危機意識の中から生まれました。
●JPFP は、日本の戦後復興の経験を共有することで世界的な人口、貧困及び保健の課題に対処してきました。
●目を大きく世界に見開いて先行きの長い人口問題に取り組むという、まさに各国との連帯の精神が、我が国の国会議員から発揮されたものです。
●1982 年には、アジア人口開発協会及び人口と開発に関するアジア議員フォーラム(AFPPD)が設立され、アジア地域の人口と開発に関する行政と立法との連携を促進し、各国の法整備や予算措置を後押ししてきました。
●現在では、この活動は世界中に広がり、世界全ての地域には人口と開発に関する地域議連、多くの国には超党派の議員グループが設立され、活発な活動が続けられています。
●日本政府は、国際家族計画連盟(IPPF)と国連人口基金UNFPA)への拠出を通じて、人口問題への取組を後押ししています。


議員ネットワークへの日本信託基金(JTF)の貢献
●各国のリーダーたる国会議員による貢献は、あらゆる社会・開発問題と密接に関係する人口問題の解決において必須の要素です。
●日本政府としてもこの活動の支援をしており、2003 年に国連人口基金(UNFPA)に日本信託基金(Japan Trust Fund:JTF)を設置したのはそのひとつです。
●日本信託基金では、世界各国の人口と開発問題に関する議員グループの議論、各国の人口事情視察団の派遣、人口と開発に関する国際会議の支援を行ってまいりました。
●本日のこの会議も、日本信託基金事業として実施されており、日本だけでなく、アラブやアジアの人口と開発に取り組む国会議員を中心に、活力ある高齢化に向けた具体的な対応策を共有し、各国の立法・政策立案を後押しすることが目的です。
●これまでも、日本信託基金によって実施された会議に参加した議員の方々の手によって、数多くの人口関係の立法がなされたと承知しています。日本政府としても、このような支援を引き続き行っていきたいと思います。


結語
●本年は国際人口開発会議(ICPD)から 30 周年を迎える記念すべき年です。
●我が国は、来月 15 日-16 日にバングラデシュで行われる ICPD30 グローバル・ダイアログ「Demographic Diversity and Sustainable Development」を共催いたします。
●この会議では、高齢化を含む様々な人口のあり方―「人口の多様性」に対し、持続可能な開発を達成するために必要な視点が議論されます。
●各国国民の代表である国会議員が参集し、活発に議論を行うことは、30 年前の国際人口開発会議で策定された「行動計画」を達成するため、また、多様化する人口に対応するための国際的な協力体制を構築する上で、極めて重要です。
●国際人口開発会議から 30 周年を迎えるこの機会に、活発なご議論をしていただき、高齢化という切り口から、人口と開発の問題への国際的な取り組みの機運を一層高めていただくことを、心から祈念いたします。
●御清聴ありがとうございました。

*1:日本のUHCは女性にとってとりわけ重要なSRHRをほ無化した概念になっているという点で国際的な基準とは全く異なる

あまりにも頻繁に否定され、あまりにも頻繁に無視される:女性の性的権利。セクシュアリティに対する包括的で前向きなアプローチの意味、論争、必要性について

CELLE, CARLOTTA, 2021/2022

Too often denied, too often neglected: women's sexual rights. On the meanings, controversies and the need for a comprehensive, positive approach to sexuality

仮訳します。

要旨
 セクシュアル&リプロダクティブ・ヘルス&ライツは、国際的な場でますます認識されるようになってきたが、その発展や範囲と内容の定義に論争がなかったわけではない。本論文の目的は、国際的な場における性と生殖に関する権利の歴史的変遷を概観することである。言説の複雑さを把握するため、より広範な社会的・政治的運動、イデオロギー、宗教、革命を考慮に入れて、これらの権利の変遷を分析する。これらを念頭に置きながら、SRHRが国際人権法にどのように組み込まれてきたかを概説することから始める。人権言説におけるセクシュアリティの登場から始まり、セクシュアル・ヘルス&ライツの概念の発展、そして女性やセクシュアル・マイノリティに対するその意味合いを探っていく。第2章では、性的行動の規制における法の役割、性的権利の共通原則の必要性、そうした原則の定義における障害など、言説のいくつかの問題点を分析する。第3章では、性的権利の定義と認識における困難を克服するためにフェミニズムの枠組みを採用し、その結果、セクシュアリティへの包括的かつ積極的なアプローチを支持する観点から、すべての人のための性的正義と自由に到達するための解決策を提案する。

結婚も出産も女性主導から“自分のタイミング”で 精子凍結する男性たちの意識の変化

プレコンセプションケアって……もしかしたら不妊治療よりも賢明なのかもしれないが……

”自分のタイミング”で産み育てる……ということは、リプロの権利からしたら王道の考え方。

これまで「プレコンセプションケア」とは、女に産ませるために女に行われるものだと思って眉唾に感じてきたけど、男性が早期に精子凍結することも視野に入れるとなるとますます混迷に陥ってしまう。すでに近未来の「出産」は、一部のお金のある人達のものになりつつあるのかもしれない……。

結婚も出産も女性主導から“自分のタイミング”で 精子凍結する男性たちの意識の変化 | AERA dot. (アエラドット)

経口中絶薬メフィーゴパック 発売半年で724人が服用、副作用14件も重篤例なし

中絶薬承認1年になるが……アクセス延びず

経口中絶薬メフィーゴパックが承認されてから4月28日で1年になるけど、母体保護法指定医師のいる4176医療機関(2000年)のうち使えるところは3%だけ。讀賣新聞によれば、発売後6か月間の使用者も724人にすぎなかった。最近の年間中絶件数の半分6万件と比べると、わずか1.2%だ。
国内初の飲む中絶薬「メフィーゴパック」、発売半年で724人服用…副作用14件も重篤例なし : 読売新聞


重篤な副作用がなかったというのは良い知らせだけど、予想ができていたことでもある。日本ほど「慎重」な服用法を取っていたら、少なくとも「からだ」に被害はでないはずだ。ただし、どんな扱いだったのか、こころに傷を負っていないか……も、調べるべきではないだろうか。


中絶薬が広まらないネックになっているのは、「指定医師制度」「高額料金」「入院要件」「配偶者同意要件」であり、承認後25年経っても使用率が2~3%の経口避妊薬の二の舞になりかねない。黙っていては決してアクセスは改善されない。選択肢を広め、アクセスを改善するため、声を挙げて行こう!


フィーゴパック は、1回で中絶完了しなくても、流産が途中で止まった際にも、国連の推奨方法どおりに1回100円程度の追加薬を3時間毎にくりかえし服用すれば、成功率はほぼ100%に上がり、外科処置は不要になる。厚労省は適用外使用を認めて、「薬だけで終わらなければ追加料金5万円」を禁止すべきだ。

メフィーゴパック:724人服用…副作用14件も重篤例なし

讀賣新聞 2024/04/22 00:00

ようやく出ました。発売後6か月間調査の結果!

国内初の飲む中絶薬「メフィーゴパック」、発売半年で724人服用…副作用14件も重篤例なし : 読売新聞

写真キャプション:昨年5月、国内での販売が始まった「メフィーゴパック」。2種類の薬を組み合わせて使う(ラインファーマ提供)



 人工妊娠中絶のために使う国内初の飲み薬「メフィーゴパック」について、昨年5月の販売開始から半年間で724人が服用したことが分かった。11人に計14件の副作用があったが、重篤な例はなかった。横浜市で開かれた日本産科婦人科学会で21日、発表された。


 発表データは、製造販売元のラインファーマがまとめた。販売された昨年5月16日から半年間に82施設(25病院、57診療所)に納入された。副作用は 嘔吐おうと 4件、出血と下腹部痛が各3件、吐き気2件、じんましんと発熱が各1件だった。

 薬は母体保護法指定医のもと妊娠9週0日までに使う。世界保健機関(WHO)が安全で効果的な方法と推奨するが国内では長年、手術しか認められていなかった。2022年度は約12万件の中絶が行われた。

 発表した日本産婦人科医会常務理事の石谷健・日本鋼管病院婦人科部長は「大きなトラブルの報告はなかった。必要な女性が使いやすい体制に向けて議論してゆくべきではないか」としている。