リプロな日記

中絶問題研究者~中絶ケア・カウンセラーの塚原久美のブログです

政権と女性 尊厳なければ輝けぬ

朝日新聞社説 2020年9月10日

新聞切り抜きが出てきた。
今になっても全面同感! 書き写します!!
さて、「次」の首相は……?

 すべての女性が輝く社会に。女性活躍の旗を高く掲げる――安倍首相が繰り返した約束である。政権の7年8ヵ月で変化はどれほどあっただろうか。
 きのう自民党本部で会った総裁選の討論会で、各候補は女性支援や男女格差の是正を訴えた。だが、本当に議論を深めるには、これまでの政策の功罪を見すえる必要がある。
 安倍政権の女性をめぐる諸策は総じて、経済主導の側面が強かった。人口減のなかで経済成長するために、女性の労働力を活用する考えが垣間見えた。
 子育て後の再就職・起業支援や育児休業の延長、待機児童解消策などは終業を後押しした。働く女性は昨年、初めて3千万人を超え、就業率はこの8年で6割から7割強になった。
 ただ、その過半数はパートなどの非正規雇用だ。コロナ禍では真っ先に解雇や雇止めにされ、この4月に減った非正規職97万人(前年比)のうち、7割以上が女性だった。
 5年前に成立した女性活躍推進法は、大手企業や自治体に女性登用の数値目標づくりなどを義務付けた。具体的な行動計画を促した点は評価できる。 だが政府は、「2020年までに指導的地位における女性の割合を30%程度にする」とした目標を断念し、「20年代の可能な限り早期に」というあいまいな表現で先送りにした。
 最も格差がひどいのは政治分野で、衆院議員の男性9割は世界最低レベルだ。一昨年に候補者男女均等法ができたが、昨年の参院選で候補者全体のうち女性は3割に満たなかった。
 世界経済フォーラムによる男女格差指数によると、8年前に101位だった日本は昨年、121位に後退した。主因は政治の遅れだ。国会議席のクオータ制や罰則なども含め、踏み込んだ検討をする時ではないか。
 問題の根底には、女性の人権を軽んじる文化が根強くある。
 近年も財務事務次官による女性記者へのセクハラや、大学医学部での女子受験者差別などが相次いだ。男女の固定的な役割意識を変えようという、社会的な作業がなされてこなかったことの裏返しだろう。
 選択的夫婦別姓も、世論調査で賛成が反対を大きく上回るなか、安倍政権は保守的な家族観を重視する議員や支持層に配慮し、何も動かなかった。
 暮らしのなかでの格差撤廃、官民の高位ポストへの妊孕、そして、女性の尊厳を守る社会的合意の形成。こうした旧来の課題が重く残されている。
 次の首相には、確かな変化をもたらす決意を切に求めたい。真のジェンダー平等のもとでしか、女性は輝かない。

女性のエンパワーメントと女性の健康・権利を基本にすえた政策展開を

日本の少子化対策に欠けているもの:ジェンダーの視点に立った実態把握と必要な支援の実施

浅倉むつ子戒能民江・若尾典子共著『femニズム法学——生活と法の新しい関係』明石書店 2004年
第3章 人口論と女性の身体
7 日本の少子化社会の問題点

ここ大事。抜き書きします。

(人口政策に)女性のエンパワーメントと女性の健康・権利を基本にすえた政策展開が、求められている。…… 
 日本が直面している少子化問題こそ、【前述のような】人口問題に関する国際的な政策アプローチが必要である。人口問題を政策として検討することは、その内容が人口の抑制であれ増加であれ、女性の出産行動を対象にすることになる。その場合、人間の数を問題にする視点は、人間の質の確保と言う問題と連動し、女性の出産行動を上から監視することに結び付きやすい。ブカレスト会議以後、途上国の女性が直面した問題は、途上国の特殊性、すなわち貧困で公衆衛生が保障されず、先進国の支援という名の圧力に屈しなければならなかったという点だけが原因ではない。なにより各国政府が、女性たちの直面している問題に取り組む姿勢をもつか否かによって、人口政策の成否が分かれた。多産であれ、少産であれ、どこにどのような問題を女性たちが抱えているのか。正確な実態把握と、必要な支援策の実施が必要である。これが、カイロ行動計画における、女性のエンパワーメントとリプロダクティヴ・ヘルス/ライツの要請である。……
……
 日本の少子化社会は、子育てを個人、とりわけ女性の負担に委ねているところに問題がある。求められているのは子育てを支援する具体的な施策・法制度である。ところが施策の充実を放置したまま、少子化社会対策基本法という、これまた理念を掲げる法律を追加した。しかも、この基本法は、家庭や子育てに夢をもつことができる社会の実現に努めることを、「国民の責務」とまでしている。これでは、日本政府・少子化社会対策基本法の狙いは、出産・子育てという社会的な支援を必要とする領域で、具体的な施策を講ずることなく、子を産まない女性を非難し、女性に子産みを強要するものではないか、という疑念さえ生じる。日本の少子化にたいする基本視せ右派、女性のエンパワーメントと、リプロダクティヴ・ヘルス/ライツの保障を、欠落しているところに、重大な問題がある。

リプロダクティブ・ライツは「産む」「産まない」の自己決定権と、両方のリプロ・ヘルスケアが保障される権利

従来、「リプロダクティブ・ライツ」「自己決定権」は「中絶」の問題として狭く考えられがちだった。

以下はその事例です。

……自分の身体に対する自己決定権は、どのようになされようとも、それ自体で他者の人権と衝突することはありえない。この自己決定権は身体に対するものであるが、精神とかけはなれて存在する人間の身体はありえないのだから一面では精神の自由とも深く関わってくる。「性」が精神と身体との両方に係るものであることの結果でもある。
 女性の身体に対する自己決定権を認めないということは、中絶の権利を否定するとともに、中絶が他者の意思によって行われてしまうということをも認めることになる。中絶の権利性の論証のためにだけではなく、不当に中絶されない権利の確立のためにも自己決定権は必須だと私は考えている。……
 「産まない権利」はまた「産む権利」の問題なのだ。この二つの権利がコインの裏表であるのは、産むことの奨励が、産まないことへの非難であることと同じことである。
 産む選択も、産まない選択も女性のものであり、他者が介入したり強制したりすることは許されない基本的人権であることが根づく社会をめざしたい。
 そのためには、堕胎罪と優生保護法を廃止するだけでは不十分である。性と生殖に関する自己決定権を保障する新しい法律が必要だ。……
 そして、この新しい法律は、不当に中絶や優生手術を強制されない権利をも保障するものでなければならない。
――角田由紀子『性の法律学有斐閣 1991年
※産む権利は考えられているが、産む場合、産まない場合の両方向のリプロダクティブ・ヘルスケアを保障する権利は考えられていない。

「女性の自己決定権」、すなわち第二波フェミニズムが取り組んできた、「性と生殖にかかわる女性の権利」、現在の言い方では「セクシュアル・ライツ」とか「リプロダクティブ・ヘルス/ライツ」という問題があります。
 女性の自己決定権」というと、通常は「産む/産まない」を決める権利、もっと具体的に言えば合法的に人工妊娠中絶を受けられる権利を指します。
――江原由美子『自己決定権とジェンダー岩波書店 2002年

リプロダクティブ・ライツは、言い換えれば、自己の生殖をコントロールする権利である。……リプロダクティブ・ライツは、幸福追求権の一部として考えられるべきものといえよう*1
 リプロダクティブ・ライツは、子どもを産むか否かを決定する権利にとどまらず、子を産まないという決定あるいは子を産むという決定を実現する権利も含む。ここでは、まず、子を産まない権利に関して人工妊娠中絶を、次に子を産む権利に関して生殖補助医療を、次に子を産む権利に関して生殖補助医療を取り上げて、わが国のリプロダクティブ・ライツの現状と問題点を明らかにしたい。
――石井美智子「リプロダクティブ・ヘルス/ライツ」『ジュリスト』No.1237 有斐閣 2003年
※「産む権利」を考えてはいるが、生殖補助医療と絡めてしまったことで、シンプルに「産むこと」の権利は考察されていない。

2 自己決定権とリプロダクティブ・ライツ
(2) 人工妊娠中絶と自己決定権——「産まない権利」
4) 日本の議論と課題
 ……これらの問題は、女性の生殖に関する自己決定権として憲法13条で構成することが一般的であるが、ドイツ憲法研究の成果*2をもふまえて、胎児の生命権や人間の尊厳と女性の人権との関係で議論を深める必要がある。
――辻村みよ子『比較憲法 第3版』岩波書店 2018年

なお、国連は2017年の段階で「胎児」と「女性」を拮抗させる考え方を否定している。「人権」は「生まれつき」備わっているものであり、「未生」の存在には与えられていないということを再確認したためだ。それ以来、胎児生命を尊重する思想をもつのは人の自由だが、それを法律にすることで、国が女性の「人権」を侵害することは許されないと考えられるようになっている。


年代は前後するけれども、以下の考え方が、国連のリプロダクティブ・ライツの考え方をより良く表していると思います。

「リプロダクティブヘルス(以下、「RH」という。):性と生殖に関する健康」と「リプロダクティブ・ライツ(以下、「RR]という。):性と生殖に関する権利」の両方を含む概念を、ここでは仮に「リプロと総称する(略称)。これらの概念が国際フォーラムに登場し、定義がなされたのは、1994年の第3回国際人口・開発会議(以下、「カイロ会議」という。)である。……
 本項ではとりわけ16条e豪とRRの関係について扱うことにする。しかしながら、RRは権利の性質上、「リプロダクティブ・ヘルスケアへの権利」と「リプロダクションに関する自己決定権」が含まれる。そのため、「リプロダクティブ・ヘルスケアの権利」と12条の関係についても、若干関係してくるために触れる個所があることをお断りしておく。なお、補足であるが、CEDAWと「リプロ」の関係でいえば、関連してくる条項は、4条2項、5条b号、10条h号、11条1項f号・2項・3項、12条、14条2項b号・h号、16条1項e号・2項である。
……
 16条は、「婚姻および家族関係に係わるすべての事項について女性に対する差別を撤廃」するために締約国がなすべき措置を規定する。リプロとの関連で問題となるのは、1項公団において「男女の平等を基礎として【英文引用省略、以下同じ】」定められている8項目のうち、e号「子の数および出産の感覚を自由にかつ責任をもつて決定する同一の権利【英文略】並びにこれらの権利の行使を可能にする情報、教育及び手段を享受する同一の権利【英文略】」である。e号はまた、家族形成権や家族計画に関する権利(女性の出産や出産間隔についての自己決定権」ともいわれ、「家族計画に関する権利の保障のためには、12条1項にもとづいて、家族計画を含む保健サービス享受の機会確保を図ることとあわせ、関連情報の普及や教育・指導のみならず、公費負担や国民医療制度のもとで避妊具の配布や不妊・人工妊娠中絶手術が本人の希望によって行われることが必要である。【注は略す】また、「……産むか、産まないかの選択の自由を含む、「生殖にかかわる権利(reproductive right)」についての女性の自己決定権の確立とともに、人工妊娠中絶の禁止も緩和されてきている。……
 リプロの抱える問題は非常に公判であり、また、宗教的、倫理的規範などと相いれないものとして扱われる。はじめて国際フォーラムの場で、RH/RRに関して詳細に定義をしたカイロ会議は、持続可能な発展を進めるための人口政策をテーマとして開催された。特に女性の人権・女性の地位向上と人口抑制政策とのかかわりがクローズアップされ、「女性の地位向上、役割拡大、RH」の3点が人口問題を解決する鍵とされたのである。とりわけ、女性の意思によらない避妊方法、不妊手術、人工妊娠中絶問題など、それまで女性が国家の管理対象となった人口抑制政策が問題となり、かわって女性の人生の選択の幅を広げることが最終的には人口抑制に繋がるとして、個人重視の姿勢を強く打ち出した。女性の健康や身体に関する決定には、国家の政策や男性の考え方よりも、女性自身の主体性が尊重されなければならないとするRH/RRという概念であるが、この議論にカイロ会議は多くの時間を費やした。
――国際女性の地位協会編(編集委員:山下泰子、辻村美代子、浅倉むつ子戒能民江)『コンメンタール 女性差別撤廃条約』尚学社 2010年

*1:「筆者は、リプロダクティブ・ライツを、家族形成権の中に位置づけて考えている。」との注記あり。

*2:直前の項「3)ドイツの意見判決と胎児保護義務」の中で、「未生児の生命権に対する国の保護義務を根拠として中絶を原則として禁止しうることを前提に、女性の憲法的地位は例外状況でのみ許容されうる、として女性の自己決定権を相対化した」と説明している。

日本人の合法的中絶への態度

「違法にすべき」は非常に少ないが「分からない」がやたらと多い

Ipsos社がほぼ毎年行っている「中絶は合法にすべきと思うかどうか」の調査で、日本が比較対象国に選ばれている最新の2022年のグラフは次の通り。

Ipsos: Global Advisor-Global Opinion on Abortion 2022


日本は「すべてのケースで合法にすべき」17%、「ほとんどのケースで合法にすべき」32%で合わせて49%が合法にすべきと答えている一方、「ほとんどのケースで違法にすべき」7%、「すべてのケースで違法にすべき」2%で、違法にすべきと考えているのはわずか9%。ところが、「分からない」と答えた人が43%で、比較対象国28ヵ国中で最も多い。


2020年の同じ統計について、カリフォルニア大学サンフランシスコ校の産婦人科・リプロダクティブ・サイエンス科部門のダニエル・グロスマン教授は、「中絶への許容度が最も低い上位10ヶ国に入ったうち先進国であるのは合州国(64%)と日本(66%)だけだ」とコメントしていた*1。2022年も同じことが起きているばかりか、許容度は両国とも2年前の方が高かった。アメリカがこの年、ドブス判決を出したことを考えると、少々心配な気持ちになる。

Ipsos: Global Advisor-Global Opinion on Abortion 2020


2014年から2021年までの「許容度」はほとんど横ばいだった。

Ipsos: Global Advisor-Global Opinion on Abortion 2021


日本の場合は、「中絶薬」の導入によって従来の「中絶観」が揺らぎ、「どう考えればいいのか」分からなくなった人々が急増したのかもしれない。


今後も注目していきたい。

アリゾナで160年前の中絶禁止法が復活する?

 アリゾナ州の中絶提供者は、160年前の中絶禁止令に強制力があるとの判決を受け、混乱に直面している。フェニックスを拠点とするデザート・スター・インスティテュート・フォー・ファミリー・プランニングの創設者兼社長であるデショーン・テイラー医師は、当初、この変更がどの程度早く施行されるのか確信が持てなかったため、火曜日に予約の入っていた7人の患者に電話をかけ、その日のうちに来院するよう依頼するためにスタッフを急がせたと語った。
 「私たちはただ患者を診察することに集中しました」とテイラーは語り、「私たちは中絶を確実に行う必要があった」と付け加えた。
 今回の爆弾判決は、アリゾナ州が州になる前の1864年に制定された、女性の生命を救うため以外のすべての中絶を禁止する法律は、アメリカではもはや中絶する憲法上の権利が保証されていないことを考慮し、施行することができるというものである。

 その後でも、アリゾナ家族計画連盟によれば、州最高裁が最終判決を下してから45日経たないと、この禁止令は発効しないとのことである。
 アリゾナ州の医療提供者たちは、火曜日は患者からの質問に答えたり、中絶の予約がキャンセルされるのではないかという不安を和らげたりして過ごしたという。
 テンピにある家族計画連盟のクリニックでは、アリゾナ家族計画連盟のチーフ・メディカル・ディレクターであるジル・ギブソン医師が、判決がいつ発効するかわからないことが患者の不安を引き起こしたと語った。
 「私たちが目にしている混乱と混沌は、私が患者に説明しなければならないものです」と彼女は火曜日に語った。
 「患者たちは、ニュースを見て、自分の予約が今日守られるのかどうか、すでに尋ねてきています」。
 家族計画アリゾナ協会のアンジェラ・フローレス会長兼CEOは火曜日、記者団に対し、アリゾナ州にある同協会のクリニックは "非常に短い期間 "中絶サービスを提供し続けると語った。その後、カリフォルニア州を含む近隣の州と協力し、中絶を受けるために必要であれば、州境を越えることができるように支援する、と彼女は言った。
 「本当に甘く見てはいけない。今日はアリゾナ州にとって暗黒の日です」。ロサンゼルス郡公衆衛生局は声明の中で、医療提供者、擁護者、企業と協力し、自国で中絶を受けられない人々を歓迎することを約束すると述べた。
 テイラーは、2022年に当時のダグ・デューシー州知事が州内の人工妊娠中絶を妊娠15週までに制限する法律に署名した日と似ていることから、その日の必死のペースは「デジャブ」のように感じたと語った。それ以前、テイラーのクリニックは妊娠第2期まで中絶を行っていた。
 2022年の法律により、テイラーは診察と中絶の間に短いターンアラウンドを確保するために、彼女のクリニックのスケジューリングシステムを変更することになった。テイラーは、迫り来る禁止令は彼女の小さなクリニックの将来を危うくすると付け加えた。
 「私たちはママとパパのクリニックです。スタッフと患者の間には、お互いに尊敬し合う関係があります。「私たちは多様性に富み、低所得で、医療が行き届いていない場所にあります。彼らは私たちを頼りにしているのです」。フェニックスにあるアカシア女性センターのロナルド・ユニス医師は、彼のクリニックでは「弁護士ができないと言うまで」中絶手術を続けるつもりだと語った。
 「私たちは主にスペイン語を話す患者を受け入れています。彼らは大きな被害を受けるでしょう。「最も弱い立場の人々に対する戦争なのです」。
 アリゾナ州における人工妊娠中絶の将来については、多くの疑問が残っている。民主党のケイティ・ホッブス知事は、共和党が支配するアリゾナ州議会に対し、1864年の法律を廃止するよう求めた。
 「今後45日間はアリゾナ州の15週禁止法が適用されるが、それ以後は裁判所からの更なる措置がなければ、この全面禁止法がアリゾナ州の法律となる」とホッブス知事は火曜日、MSNBCのローレンス・オドネルに語った。「立法府が正しいことをし、私が要求したことを実行し、この禁止を撤廃することを望む。 アリゾナ州下院の民主党は水曜日、1864年の禁止令の廃止案を提出しようとしたが、共和党に阻まれた。」
 一方、アリゾナ州検事総長のクリス・メイズ氏(民主党)は火曜日、自分が在職している限り、中絶を理由に女性や医師が起訴されることはないと述べた。メイズ氏は火曜日、MSNBCのクリス・ヘイズ氏に対し、「私はこの非人道的な法律では誰も起訴しないと言っているが、中絶へのアクセスに冷ややかな影響を与えることは明らかだ」と語った。
 ホッブスは昨年、中絶関連の訴追権限を州司法長官に委譲する行政命令に署名した。 アリゾナ州のリプロダクティブ・ライツ(性と生殖に関する権利)団体の連合は今月、中絶関連の憲法修正案を11月の投票にかけるのに十分な請願署名を集めたと発表した。つまり有権者は、アリゾナ州において胎児が生存可能となるまで中絶を基本的権利として確立するかどうかを決定する可能性が高いということである。
 「 私たちはすでに50万人以上の署名を集めましたが、アリゾナ州民は政治的なスペクトルを超えてリプロダクティブ・フリーダムを信じているので、私たちは少しもペースを落とすつもりはありません」と、「中絶アクセスのためのアリゾナ」と呼ばれるグループのスポークスマン、クリス・ラブは火曜日の記者会見で語った。
 「私たちは、患者が医療提供者や家族と相談しながら、自分たちの医療をコントロールする権利を持っていると信じている。そして私たちは、11月の投票箱でそれをきっぱりと証明したいと思っています」。
 しかし、中絶権反対派は州最高裁の判決を称賛した。
 「私たちは、胎児とその母親のためのこの大きな勝利を祝う。アリゾナ州のプロライフ法を復活させることで、妊娠のあらゆる段階で毎年11,000人以上の赤ちゃんが保護され、同時に母体の生命については例外となる」と、米国での中絶廃止を目指す非営利団体スーザン・B・アンソニー・プロライフ・アメリカのマージョリー・ダネンフェルザー代表は声明で述べた。
 しかし、アリゾナ州の著名な共和党議員の中には判決に反対する声明を発表した者もおり、ドナルド・トランプ前大統領はアリゾナ州の裁判所は行き過ぎだと述べた。混乱の中、マリコパ郡のレイチェル・ミッチェル検事は、アリゾナ州法では中絶した女性は起訴されないことを明らかにしようとした。
 州最高裁の判決は「それを変えるものではない」と彼女は声明で述べた。 アリゾナ州の現行の15週目の中絶政策も、1864年に制定された法律も、中絶手術を受ける患者ではなく、中絶手術を施したり提供したりする人々に関係している。

 しかし、日本だって旧刑法1888年)も現刑法(1907年)も「日本帝国」下で作られた136年前もしくは117年前の法律である。当時はまだ「日本国」はなかった。その意味では、アリゾナの状況と似たり寄ったりだ。

「強制母性」:中絶禁止でホンジュラスが国連に報告

FROM AFP NEWS, By AFP - Agence France Presse, April 10, 2024

'Forced Motherhood': Honduras Reported To UN For Abortion Ban

仮訳します。

 先住民の女性が、レイプされた後に中絶を拒否されたとして、自国のホンジュラスを国連人権委員会に報告したと、権利団体が水曜日に発表した。

 中米のホンジュラスが国連に提訴されたのは初めてのことで、その絶対的な中絶禁止令は、数え切れないほどの女性や少女たちに「強制母性」を押しつけていると、ファウシアと名乗る女性によって提訴されたNGO団体「リプロダクティブ・ライツ・センター」は述べた。

 ホンジュラスでは毎日3人の14歳未満の少女が「レイプによる妊娠を維持し、母親になることを余儀なくされている」と、同センターは他の4つのNGOとともに、2022年の保健省のデータを引用して声明を発表した。

 「緊急避妊ピル(ECP)へのアクセスの欠如と中絶の犯罪化は、生命、健康、完全性、平等、非差別に対する彼らの権利に影響を与える」と同センターは付け加えた。

 ラテンアメリカでは、選択的中絶はメキシコ、アルゼンチン、コロンビア、キューバウルグアイでは合法である。

 エルサルバドルニカラグアホンジュラス、ハイチ、ドミニカ共和国では、健康上のリスクやその他の事情による例外なしに、全面的に禁止されている。

 いわゆるモーニングアフターピルも最近までホンジュラスでは禁止されており、当時34歳だったファウシアは入手できなかった。

 ファウシアの裁判を支援しているホンジュラス女性の権利センターのレジーナ・フォンセカは、原告は「正義を達成するためにあらゆる手段を尽くす」ことを望んでおり、他の女性たちが同じような運命をたどらないことを願っていると述べた。NGOの声明によると、ファウシアは「環境人権擁護者として土地を守る活動に対する報復として」2人の男に襲われ、そのうちの1人にレイプされた。
その結果、彼女は妊娠し、「深刻な肉体的・精神的苦痛が引き起こされた」。近年、彼女は脅迫のために10回も引っ越さなければならなかった、とフォンセカは言う。「この事件により、参加団体は、ホンジュラス国家にその法的枠組みを改正するよう義務づける国連人権委員会からの指令を確保することを切望している」と声明は述べている。

 「ファウシアのケースは、必要不可欠な医療サービスが犯罪化されることによって生じる数々の人権侵害の典型的な例である。」
 だが、ホンジュラスの議会は社会的に保守的な政党が多数を占めているため、法改正の可能性は低いと思われる。

nl/fj/mlr/dw

The Barron's news department was not involved in the creation of the content above. This article was produced by AFP. For more information go to AFP.com.
© Agence France-Presse

ポーランド、中絶のほぼ全面禁止の解除に動きだした

AP通信 バネッサ・ジェラ 2024年4月12日

ポーランドの国会議員、ほぼ全面的な中絶禁止措置の解除に向けた作業を進めることを決議

 ポーランドワルシャワ-ポーランドの議員たちは、ヨーロッパで最も制限的な法律のひとつを持つ、伝統的にローマ・カトリックの国であるこの国で、分裂問題である中絶をほぼ全面的に解禁する提案を進めることを金曜日に投票した。

 議会下院の議員たちは、4つの法案に取り組むことを決定した。そのうちの2つは、ヨーロッパの規範に沿って、妊娠12週目までの中絶を合法化することを提案している。


この裏には8年ぶりの政権交代がある。

ポーランド議会、トゥスク氏を首相に選出、8年ぶりの政権交代(EU、ポーランド) | ビジネス短信 ―ジェトロの海外ニュース - ジェトロ

ポーランド議会は12月11日、2週間前の11月27日に樹立された第3次マテウシュ・モラビエツキ政権(2023年12月5日記事参照)に対し信任投票を行い、賛成190票、反対266票で同政権は不信任となった。同日、下院選で野党勢力を率いたドナルド・トゥスク氏が首相に選出され、9年ぶりに首相の座に返り咲いた。トゥスク新首相は翌12日、議会での所信表明演説ではポーランドの外交活動に比重を置き、親EU路線への回帰を強調したほか、隣国ウクライナへの強力な支援を表明した。所信表明演説後、同首相による内閣の信任投票が行われ、賛成多数で信任された。

うらやましい限り……。

70周年を迎えたFIGO:安全な中絶のための提唱プロジェクトとともに、性と生殖に関する権利の向上に向けた私たちの歩み

国際産婦人科連合(FIGO)70周年を迎えて

FIGO at 70: Our journey towards improving sexual and reproductive rights with the Advocating for Safe Abortion Project | Figo

メッセージを仮訳します。

 FIGOが創立70周年を迎えるにあたり、私たちは「安全な妊娠中絶のための提唱(Advocating for Safe Abortion:ASA)」プロジェクトが、低所得国や中所得国の人々の性と生殖に関する健康と権利を向上させる上で、極めて重要な役割を果たしてきたことを記念します。ここでは、プロジェクトの発展、成功、そして不朽の遺産について振り返ります。


強い基盤の上に立つ
 FIGOのセクシュアル&リプロダクティブ・ライツへの継続的なコミットメントの証であるASAプロジェクトは、安全な人工妊娠中絶へのアクセスを取り巻く重要な問題に取り組むFIGOの取り組みの重要な一部となっています。ASAプロジェクトの活動は、安全な人工妊娠中絶へのアクセスを改善するための多面的な戦略を実施するだけでなく、社会がSRHRのより強力な機関や国のリーダーになるよう支援する二本柱のアプローチを実施することに重点を置いています。


国内加盟学会との活動 - 推進力のある提唱者、変革の触媒となる
  ASAプロジェクトは、ラテンアメリカとサハラ以南のアフリカにある12の国内加盟学会とのパートナーシップを通じて、多様な状況における医学的専門知識と権利に基づくアドボカシーの交差の必要性を強調してきました。
プロジェクトの一環として、宗教指導者(SOMAGO、マリ)、伝統的なコミュニティ・ヘルス・ワーカー(SOGOC、カメルーン)、結婚カウンセラー(ZAGO、ザンビア)などのグループと新たな提携関係を築くなど、関係するすべての学会が素晴らしい成果を達成しました。
 宗教指導者(SOMAGO、マリ)、伝統的な地域医療従事者(SOGOC、カメルーン)、結婚カウンセラー(ZAGO、ザンビア)などのグループと新たな提携関係を築くなど、プロジェクトに参加したすべての社会が素晴らしい成果を達成しました。
安全な中絶に関する教育を医療機関や医療システム内で強化すること(SPOG、ペルー)、包括的な中絶ケアに関する医療スタッフとの研修会を実施すること(SOGOCI、コートジボワール)、中絶政策を改正刑法に合わせるよう提唱すること(SOGOB、ブルキナファソ)、ガイドラインの実施チェックリストを作成すること(AMOG、モザンビーク)に重点を置いた協会もありました。また、スティグマに立ち向かうことに重点を置き、医療専門家や臨床スタッフを対象に「価値観の明確化、変革の姿勢」といったセッションを実施したところもありました(ウガンダのAOGU、ケニアのKOGS)。
COVID-19のパンデミックは、プロジェクトの実施にいくつかの障害をもたらしたが、同時に、社会がアドボカシーにおける技術の役割を検討する新たな機会も生み出しました。例えば、2つの異なるシステムにまたがる妊産婦の健康に関するデータ収集を統合する方法(SPOG、パナマ)や、遠隔医療がタスク共有を強化する方法(RSOG、ルワンダ)などです。
ベナンのCNGOBは、安全な人工妊娠中絶へのアクセス拡大の切実な必要性を強調する証拠を議会に提出し、2021年12月の法律改正に貢献しました。
 これらの成果の幅広さは、これらの社会がそれぞれの状況においてSRHRへのアクセス拡大を求めて闘った情熱と、その飛躍を物語っています。


ベナン国立産科婦人科病院(Collège National des Gynécologues Obstétriciens du Bénin:CNGOB)は、私たちのパートナーとともに、ベナンの妊産婦死亡と身体障害の主な原因である安全でない人工妊娠中絶の影響に対処するために、政府が私たちの臨床的エビデンスと私たちの直接の洞察を考慮したことを誇りに思います。CNGOBのエビデンスは、新たな法的拘束力のある改正(2021年10月)の実現に貢献し、私たちの国を、女性と女児の性と生殖に関する健康ケアの強化に取り組む国々の最前線に位置づけることになりました。」
Dr Emmanuel Ewanignon, CNGOB Vice-President


地域的なコラボレーション - アフリカのアドボケーツのためのスペース作り
 国境を越え、ASAプロジェクトの影響力は、新たに設立された実践コミュニティを通じて地域レベルへと拡大しました。FIGOは、アドボケイトが互いに学び、計画し、意欲を高め合う場を作ることの重要性を理解し、SAGOおよびECSACOGと提携して、西アフリカと東・中央・南部アフリカにアドボケイトの献身的なネットワークを設立しました。


ECSACOG-FIGO実践共同体
 この活動的なグループは、中絶に関連するスティグマへの対処、医療カリキュラムの強化、燃え尽き症候群の防止、回復力の向上、自己管理中絶の推進といった主要なテーマ別優先事項に焦点を当てています。このグループは、アフリカの専門学会が安全な中絶ケアへのアクセスを強化し、地域全体で安全でない中絶に取り組むために臨床的専門知識を活用するというコミットメントを確認する「リビングストン安全な中絶ケア憲章」を支持しています。


SAGO-FIGO実践コミュニティ
 フランコフォーン・アフリカ全土の20の国内加盟団体の代表と若者のアドボケイトを含む実践コミュニティは、リーダーシップ能力の強化、安全な中絶のためのアドボカシー・トレーニング、制限的な状況下でのアドボカシーのためのピアツーピアの学習と支援に焦点を当ててきました。どちらの地域グループも、専門知識やリソースを共有する機会を提供し、支援や動機付けを提供する役割を果たしています。


「FIGOとアフリカ婦人科学会(SAGO)の協力により、リーダーシップとグッドプラクティスの共有の分野において、加盟国の学会の能力を短期間で大幅に強化することが可能となった。健康問題が努力の結集を必要としている今、このパートナーシップはSAGOにとって最も重要です。」
Professor Abdoulaye Sepou, Président de la SAGO


国際的影響力 - 世界の盟友との運動構築
 ASAプロジェクトのアドボカシー活動により、FIGOは主要な国際パートナーとのキャンペーンや提携を通じて、世界的な連帯の場へと移動しました。このプロジェクトにより、FIGOは、80カ国以上のヘルスケア組織との連携を推進し、米国における中絶の法的後退に集団で反対し、アミカスブリーフを通じて各国を支援し、非犯罪化の要請を含む安全な中絶に関するFIGO委員会との声明を発表しました。 中絶提供者を擁護するための「最前線のSRH擁護者の擁護」とアムネスティ・インターナショナルのキャンペーンへのFIGOの関与は、医療従事者の声を高め、私たちは世界的なパートナーとともに、保護と説明責任に向けて前進しています。
FIGOとWHOとの長年にわたる協力関係により、ASAプロジェクトは、2022年中絶ガイドラインの普及と実施を推進するために、国際的・国内的に活動してきました。2024年にIJGOに掲載された中絶に関する補足文書は、WHOとFIGOのゲストエディターによるもう一つの成功したコラボレーションであり、世界中の中絶アクセスの進展に関するポジティブなストーリーを紹介する出版物でした。医学カリキュラムに家族計画と中絶ケアを含めるよう求める研修生団体WATOGとIFMSAとのFIGOの活動から発展して、このプロジェクトは、家族計画と包括的中絶ケアのための能力ベースのカリキュラムのためのWHOの最近のツールキットを世界的に実施する努力も支援しています。
FIGOは、リプロダクティブ・ジャスティス(性と生殖に関する正義)および法的パートナーと協力して、国連(UN)機関に証拠を提出しています。例えば、良心的兵役拒否という重要なトピックについて、FIGOは声明とウェビナーを作成し、国連女性と女児に対する差別に関する作業部会に証拠を提出する道を開き、このトピックに関するポジションペーパーを書くという決定に影響を与えました。FIGOは、良心的に女性と女児に奉仕することを約束する医療従事者を称えつつ、このようなテーマについて、重要なパートナーと協力していきます。


「FIGOは、女性、女児、新生児に一刻を争う必要不可欠なヘルスケアを提供する上で、重要な味方です。私たちが『セクシュアル・リプロダクティブ・ヘルスへのアクセスをすべての人に 』という言葉に酸素を供給するためには、FIGOの産科医と婦人科医のメンバー、研究、直接の洞察、そして人権基準に基づいた臨床のベストプラクティスを活用するユニークな能力は、これまで以上に重要です。 」
Dr Bela Ganatra, Head of the Prevention of Unsafe Abortion Unit, World Health Organization


次は何を?
 今後もFIGOは、誰もが安全で公平なセクシュアル&リプロダクティブ・ヘルスケアサービスを利用できる世界を実現するため、加盟学会、パートナー、同僚と協力していきます。現在、西アフリカに焦点を当てているこのプロジェクトは、中絶は医療であるという明確なメッセージを共有し、世界的な医学の専門知識を活用してこの問題について発言し続けます。ASAプロジェクトは、セクシュアル・リプロダクティブ・ライツ(性と生殖に関する権利)のための世界的な闘いにおけるFIGOの揺るぎないコミットメントの一例として、また世界中の勇気ある仲間とともに際立っており、私たちはこれらの権利が満たされるまで主張し続けます。


産婦人科医と医療従事者の皆さん:すべての女性と女児が安全な中絶を受ける権利、つまり一刻を争う重要な医療を受ける権利を守るために、同盟者として立ち上がる力と義務を決して忘れないでください。
Prof Kihara Anne-Beatrice, FIGO President 2023-2025

メキシコ、画期的な判決を受けて中絶を非犯罪化へ

Canadian Lawyer, By Angelica Dino 2024年4月11日

Mexico moves toward decriminalizing abortion following landmark ruling

冒頭を仮訳します。

メキシコ、画期的な判決を受けて中絶を非犯罪化へ
 メキシコ・シティでは中絶が非犯罪化されたものの、連邦レベルでは犯罪のままだった。



 メキシコの上院議員グループが、連邦刑法から人工妊娠中絶を削除する法案を提出した。これは、昨年秋に最高裁が連邦レベルで人工妊娠中絶を非犯罪化する決定を下したことを受けた重要な動きである、と国際法曹協会が報じた。

 この立法措置は最高裁の指示に直接対応するもので、メキシコ議会は連邦法をこの画期的な判決に合わせることを要求している。歴史的に、メキシコ市と他のいくつかの州は中絶を非犯罪化していたが、連邦レベルでは犯罪として分類されたままであった。2021年、最高裁が一連の判決を通じて、北部のコアウィラ州で中絶を非犯罪化したことで、改革への歩みが前進した。これらの判決は、中絶に対する刑事罰や、中絶サービスを拒否するために使用される「良心的拒否権の拡大」のような制限的措置が違憲であることを強調し、憲法上の先例となった。

メキシコの政治への女性参画状況について
参考
女性政治家は、クオータ導入だけではなかなか増えず、政党候補者のパリテ(男女同数)が功を奏したことが分かる。


プリーア大使の記事も参考になる。
メキシコ大使が語る、女性のエンパワーメントの鍵
「他の人の生き方を決めることはできませんが、大使館内では、ジェンダー平等を反映した考え方や環境を整えることで、基本的な姿勢を確立することはできます」という言葉が印象的だ。