児童ポルノ・児童買春・児童福祉法・監護者わいせつ・不同意わいせつ・強制わいせつ・青少年条例・不正アクセス禁止法・わいせつ電磁的記録弁護人 奥村徹弁護士の見解(弁護士直通050-5861-8888 sodanokumurabengoshi@gmail.com)

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青少年条例が、法律の範囲を超えて、16歳から17 歳までの者の性的行為の自由及びそれらの者との性的行為の自由を不当に制限するとして規定違憲をいう点は、同条例が、青少年をその健全な成長を阻害する行為から保護し、青少年の健全な育成を図ることを目的とするものであるから、前提を欠く(最決R6.4.8)

青少年条例が、法律の範囲を超えて、16歳から17 歳までの者の性的行為の自由及びそれらの者との性的行為の自由を不当に制限するとして規定違憲をいう点は、同条例が、青少年をその健全な成長を阻害する行為から保護し、青少年の健全な育成を図ることを目的とするものであるから、前提を欠く(最決R6.4.8)

 原判決はR5.12で、確定をR6.4以降に延ばすというミッションは達成。ほとんどは4ヶ月以内に棄却されるし、事実誤認だけだと上告趣意書差出最終日から2週間くらいで棄却されることもある。
 そういうときは、控訴理由の段階で、最高裁の判断がない論点を挙げる。
 よくわからないので、文献を羅列するだけの主張になっている。上告趣意書起案段階で憲法学者のコメントをもらって構成を修正している。
 なお、同じ控訴理由について、別件の東京高裁R6.4.10でさらに詳しい判断が出ている。

上告理由第1 法令違反~17歳との性行為は、国法上許容されるに至っているから、憲法94条違反で無効となり、刑の廃止による免訴(刑訴法337条2号)にすべきであった。 4
1 青少年条例は刑法の性犯罪規定とは補充関係にある 4
2 青少年の性的行為の実情 9
3 最近の未成年者法の動き 11
4 福岡県青少年保護育成条例違反被告事件大法廷判決(最大判S60.10.23)の合憲理由の大半が失われたこと。 13
5 憲法94条違反 17
木村光江「性的自由に対する罪」再考法曹時報第76巻01号p19 17
6 本件被害青少年の成熟度 28
7 刑の廃止 30
8 17歳後半の青少年との性行為を懲役刑を以て規制する青少年条例は「法律の範囲内」(憲法94条)に収まらないから無効である。 33
9 原判決とその問題点 37
上告理由第2 憲法違反~国法上許容されることになった17歳との性行為を条例で懲役刑を以て規制することは、青少年の性的行為の自由+その相手方の性的行為の自由を不当に制限するものあって、条例の当該部分は憲法13条・24条に違反して無効である。 41
1 原判決は根拠規定も合憲性判定基準も示さずに合憲とした 41
憲法と青少年―未成年者の人権をめぐって2021 42
2 青少年側の性的権利について 43
(1)未成年者の人権享有主体性 43
佐藤幸司 日本国憲法論 第2版P155 44
米沢「未成年者の自由」憲法の争点[旧]〔新版〕71頁) 47
(2)青少年側の性的権利について~最高裁の判断はまだ無い 49
憲法と青少年―未成年者の人権をめぐって2021 50
村西良太「刑罰法規の不明確性と広範性―福岡県青少年保護育成条例事件―」『憲法判例百選Ⅱ 第7 版』(別冊Jurist No.246)有斐閣, 2019, pp.240-241 51
(3) 現行刑法は、青少年側の決定権を重視して、13~15歳に対する性的行為を明文で許容したこと(5歳差ルール) 52
【逐条説明】刑法及び刑事訴訟法の一部を改正する法律案 54
梶検事の説明 55
城祐一郎元検事も「対等性」を理由とする。 56
米沢「未成年者の自由」憲法の争点[旧]〔新版〕71頁) 58
3 根拠規定 60
(1)原判決は根拠規定を示さない。 60
(2) 幸福追求権(13条)侵害 61
①文献 61
ア 最高裁判例解説s60 61
イ 安部哲夫「青少年の性的保護と刑事規制の限界「青少年保護育成条例」を中心に 63
ウ 米沢広一 子ども,親,政府--アメリカの憲法理論を素材として神戸学院法学15巻3号 65
オ 横田耕一:九州大学教授 ジュリスト853号 44頁 1986年2月1日発行 特集・青少年保護育成条例大法廷判決 青少年に対する淫行の条例による規制と憲法 68
カ 福岡 久美子「青少年保護条例による性的自由の制限」 70
キ 羽渕雅裕「親密な人間関係と憲法」 71
ク 竹中勲:京都産業大学教授法学教室176号 49頁 1995年5月1日発行 重点講座【現代人権展望】〔2〕親密な人的結合の自由(Ⅰ 自由と自己決定) 72
②裁判例では青少年側の性的行為の自由への言及はない 74
名古屋高裁s53.10.25*4 74
福岡高裁s55.10.30*5 74
(3) 家族生活における個人の尊厳と両性の平等(24条)侵害 74
松井茂記日本国憲法 第3 版』有斐閣, 2007, pp.549-550 75
(4)青少年のリプロダクティブ・ヘルス / ライツ(子どもの権利条約34条) 77
4 青少年の性的自己決定権の限界・合憲性判定基準 78
辻村みよ子 憲法第7版p107 79
佐藤幸治 人権の観念と主体 79
岩村正彦 岩波講座 現代の法14 自己決定権と法 P165 81
5 青少年の相手方(被告人)の性的権利について~最高裁の判示がないこと 84
(1) 幸福追求権(13条)侵害 84
①文献 84
ア 最高裁判例解説s60 84
②裁判例 86
名古屋高裁s53.10.25*6 86
福岡高裁s55.10.30*7 86
(2)本件について 86
上告理由第3 青少年のリプロダクティブ・ヘルス / ライツ(子どもの権利条約34条)違反 87

最決r6.4.8
主文
本件上告を棄却する。
当審における訴訟費用は被告人の負担とする。
理由
弁護人○○の上告趣意は、憲法違反、判例違反をいう点を含め、実質は単なる法令違反、事実誤認、量刑不当の主張であり、弁護人奥村徹の上告趣意のうち、青少年条例○条、○条が、法律の範囲を超えて、16歳から17 歳までの者の性的行為の自由及びそれらの者との性的行為の自由を不当に制限するとして規定違憲をいう点は、同条例が、青少年をその健全な成長を阻害する行為から保護し、青少年の健全な育成を図ることを目的とするものであるから、前提を欠き、その余は、憲法違反をいう点を含め、実質は単なる法令違反、量刑不当の主張であって、いずれも刑訴法405条の上告理由に当たらない。
よって、同法41 4条、38 6条1項3号、18 1条1項本文により、裁判官全員一致の意見で、主文のとおり決定する。
令和6年4月8日
最高裁判所第三小法廷

東京高裁令和6年4月10日
上記(2)の主張は、控訴趣意書差出最終日経過後の新たなものであるから、不適法と解されるが、 上記(1)の主張の前提となることにも鑑みて、職権で検討する。
所論は、本件各罰則規定は、いずれも憲法13条が保障する青少年の性的自由を一律かつ広汎に制約し、 しかも青少年の性的行為を相手方の処罰により禁止するものであり、このような強度の規制に正当性はなく、規定自体が憲法13条、 24条に違反し文面上無効である、そうでなくとも、当時○○歳で性的行為に対する十分な判断能力がある被害者に保護の必要はないから、本件各罰則規定を適用して被告人を処罰することは、被害者の性的自由に対する過度の介入であり、憲法13条に違反する、 というのである。
検討するに、両条例における本件各罰則規定は、いずれも、 18歳未満の青少年は、その心身の未成熟などから、 性的行為について有効に自由な意思決定をする前提となる能力が十分に備わっているといえないことなどを踏まえて、青少年の育成を阻害するおそれのある行為を禁止すべく、 「みだらな性行為」(A県条例) ないし 「みだらな性交」 (B県条例)を処罰の対象としたものと解され、結婚その他正当な理由がないのに、単に自己の性的欲望を満たす目的でする性行為ないし性交は、この要件を満たすものである。
所論がいうように、かかる罰則規定の適用により、青少年の性的行動に事実上の制約を及ぼす面があるとしても、本件各罰則規定は、いずれも青少年の育成を阻害するおそれのある行為を禁止する目的に基づきこれを達するに必要な罰則を定めたものといえ憲法13条、24条に違反するものでないことはもとより、本件各行為に適用することが憲法13条に違反するともいえない。
所論は、令和5年改正に係る刑法176条3項、 177条3項においては、行為者と相手方の年齢差が5歳以上でない限り13歳以上16歳未満の者とのわいせつな行為、性交等が許容され、 青少年の性的自由が認められているというが、上記の刑法改正においても16歳未満の者には性的行為について有効に自由な意思決定をする前提となる能力が十分に備わっているといえないことが前提になっているものであり、 上記の刑法改正によっても、本件各罰則規定の文面及び適用に係る憲法適合性の判断が左右されるものではない。
本件の被害者に性的行為に関し十分な判断能力がある旨をいう所論についても、 原審記録を調査しても、本件の被害者が本件各罰則規定における青少年から除外されるべき事情は認められない。

児童を脅迫して裸の画像を撮影・送信させた行為を、強要+児童ポルノ製造罪の観念的競合とした事例(佐世保支部r6.2.21)

児童を脅迫して裸の画像を撮影・送信させた行為を、強要+児童ポルノ製造罪の観念的競合とした事例(佐世保支部r6.2.21)
 最近は、強制わいせつ罪・不同意わいせつ罪+製造罪の観念的競合で処理されています。
 「送信させ」をわいせつ行為とするのを躊躇して、強要罪で起訴されることがあるようです。
 強要罪と製造罪とは併合罪とするのが判例です。強制わいせつ罪とは観念的競合。「一個の行為とは、法的評価を離れ、構成要件的観点を捨象した自然的観察の下で、行為者の動態が社会的見解上一個のものと評価される場合をいう。(最大判昭49・5・29)」というものの、構成要件的観点が捨象されていません。
 

東京高裁平成28年2月19日
なお,原判決は,本件において,強要罪と3項製造罪を観念的競合であるとしたが,本件のように被害者を脅迫してその乳房,性器等を撮影させ,その画像データを送信させ,被告人使用の携帯電話機でこれを受信・記録して児童ポルノを製造した場合においては,強要罪に触れる行為と3項製造罪に触れる行為とは,一部重なる点はあるものの,両行為が通常伴う関係にあるとはいえず,両行為の性質等にも鑑みると,両行為は社会的見解上別個のものと評価すべきであるから,これらは併合罪の関係にあるというべきである。したがって,本件においては,3項製造罪につき懲役刑を選択し,強要罪と3項製造罪を刑法45条前段の併合罪として,同法47条本文,10条により犯情の重い強要罪の刑に法定の加重をした刑期の範囲内で処断すべきであったところ,原判決には上記のとおり法令の適用に誤りがある 平成28年2月19日
東京高等裁判所第5刑事部
裁判長裁判官 藤井敏明
裁判官 福士利博
裁判官 山田裕文

提供 TKC
【文献番号】 25598401
【文献種別】 判決/長崎地方裁判所佐世保支部(第一審)
【裁判年月日】 令和 6年 2月21日
【事件名】 長崎県少年保護育成条例違反、強要、児童買春、児童ポルノに係る行為等の規制及び処罰並びに児童の保護等に関する法律違反、強制性交等被告事件
【裁判結果】 有罪
【裁判官】 柴田寿宏 大島泰史 新納亜美
第2(令和5年7月11日付け起訴状公訴事実第2、第3の分)
 被告人は、B(当時13歳)から入手した同人のわいせつな画像データ等を拡散する旨告げるなどして同人を脅迫し、同人のわいせつな動画データを送信させようと考え、令和4年11月19日午前10時42分頃から同日午前10時57分頃までの間、長崎県内又はその周辺において、被告人の携帯電話機のアプリケーションソフト「インスタグラム」のメッセージ機能を使用して、Bが使用する携帯電話機に、「許せないです」「頼んだ時に言ったように見せてくれるなら許します」「バラします」「じゃあ出す動画撮って」などと記載したメッセージを送信してBに閲読させ、同人の陰部等を撮影した動画データを送信するよう要求し、この要求に応じなければ、同人のわいせつな画像データ等を拡散して同人の名誉等に危害を加える旨告知して脅迫し、よって、同日午前10時48分頃から同日午前11時2分頃までの間、3回にわたり、同人に、その陰部を露出した姿態をとらせてこれを同人の携帯電話機で動画撮影させた上、その動画データ3点を前記インスタグラムのメッセージ機能を使用して被告人の携帯電話機に送信させ,もってBに義務のないことを行わせるとともに、Bが18歳に満たない児童であることを知りながら、前記動画データ3点を、前記インスタグラムを運営する「c,Inc.」が管理する場所不詳に設置されたサーバコンピュータに記録・保存させ、もって衣服の全部又は一部を着けない児童の姿態であって、殊更に児童の性的な部位が露出され又は強調されているものであり、かつ、性欲を興奮させ又は刺激するものを視覚により認識することができる方法により描写した電磁的記録に係る記録媒体である児童ポルノを製造した。
第3(令和5年7月11日付け起訴状公訴事実第4、第5の分)
 被告人は、第2と同様に考え、令和4年11月22日午後9時54分頃から同日午後10時23分頃までの間、佐賀県内又はその周辺において、被告人の携帯電話機の前記インスタグラムのメッセージ機能を使用して、Bが使用する携帯電話機に、「腰振る動画撮って」「布団に擦り付けてって言ってるじゃん」「遅い」などと記載したメッセージを送信してBに閲読させ、同人の陰部等を撮影した動画データを送信するよう要求し、この要求に応じなければ、同人のわいせつな画像データ等を拡散して同人の名誉等に危害を加える旨告知して脅迫し、よって、同日午後9時54分頃から同日午後10時28分頃までの間、5回にわたり、同人に、その陰部等を露出した姿態をとらせてこれを同人の携帯電話機で動画撮影させた上、その動画データ5点を前記インスタグラムのメッセージ機能を使用して被告人の携帯電話機に送信させ、もってBに義務のないことを行わせるとともに、Bが18歳に満たない児童であることを知りながら、前記動画データ5点を、前記サーバコンピュータに記録・保存させ、もって衣服の全部又は一部を着けない児童の姿態であって、殊更に児童の性的な部位が露出され又は強調されているものであり、かつ、性欲を興奮させ又は刺激するものを視覚により認識することができる方法により描写した電磁的記録に係る記録媒体である児童ポルノを製造した。 
(法令の適用)
罰条
判示第1の所為 長崎県少年保護育成条例22条1項1号、16条1項
判示第2、第3の各所為
いずれも強要の点は刑法223条1項、児童ポルノ製造の点は包括して児童買春、児童ポルノに係る行為等の規制及び処罰並びに児童の保護等に関する法律7条4項、2項、2条3項3号
判示第4、第6の各所為
いずれも令和5年法律第66号附則2条1項により同法による改正前の刑法177条前段
判示第5、第7の各所為
いずれも包括して児童買春、児童ポルノに係る行為等の規制及び処罰並びに児童の保護等に関する法律7条4項、2項、2条3項1号
科刑上一罪の処理
判示第2、第3の各罪
いずれも1個の行為が2個の罪名に触れる場合である(被害者を脅迫して動画データを送信させ、サーバコンピュータに記録・保存させるという強要の行為がそのまま児童ポルノ製造罪の行為となっている。)から、刑法54条1項前段、10条により1罪として犯情の重い強要罪の刑で処断
刑種の選択 判示第1、第5及び第7の各罪についていずれも懲役刑を選択
併合罪の処理
刑法45条前段、47条本文、10条により刑及び犯情の最も重い判示第6の罪の刑に法定の加重
未決勾留日数の算入 刑法21条
訴訟費用の不負担 刑事訴訟法181条1項ただし書

令和6年2月21日
長崎地方裁判所佐世保支部
裁判長裁判官 柴田寿宏 裁判官 大島泰史 裁判官 新納亜美

強姦・強制性交罪で懲役20年以上になった裁判例

強姦・強制性交罪で懲役20年以上になった裁判例

 

            最年少被害者  
広島 地裁   H21.9.14 懲役30年 95罪 10才 師弟
大阪 地裁 H21.3.19 懲役25年 13罪 18才 凶器
宮崎 地裁   H20.7.17 懲役20年 10罪 20才 霊能力
神戸 地裁   H24.7.19 懲役20年 08罪 05才  
千葉 地裁   H24.8.28 懲役30年 06罪 11才 凶器
福岡 地裁 飯塚 H26.3.27 懲役23年 11罪 12才 交際相手の娘
名古屋 地裁 岡崎 H26.8.28 懲役26年 16罪 11才 師弟

アスリート盗撮の構成要件がまとまっていない

 法制審議会でも話題になっていますが、「広島県のケースのように迷惑防止条例を適用して対処しようにも、性被害に詳しい上谷さくら弁護士(東京)は「選手の全身を撮影している場合は単なるファンと同じで、罪に問えない」と話す。23年の刑法改正で性的姿態撮影罪が新設されたが、ユニホーム姿は「性的な意図の線引きが難しい」と対象外になった。」というよりは、アスリート盗撮の犯罪化を求める側が構成要件をまとめられなかった感じですよね。胸部・股間を強調して撮影・トリミングする行為の犯罪化

法制審議会 刑事法(性犯罪関係)部会
第5回会議 議事録
○長谷川幹事
もう一点は、撮影の対象です。スポーツ選手のユニフォームなどが問題となってくるのですが、衣服に覆われているということでこの犯罪の対象から一律除外されるということはないようにというか、それも検討に残しておきたいと思っています。下着が明確に入ったら、それはそれでいいのですが、ユニフォームなどについても、これは、例えばスポーツジャーナリストの写真はどうだとか、そういう区別の難しさはあるのですが、実際に撮影されたものが、見る者をしてやはり性的な羞恥心を覚えさせるような形で、着衣の上からでも撮影されているようなものについては、犯罪化の検討は論点として残しておいていただきたいと思います。
○井田部会長 それは、スポーツ選手が競技しているところを撮影する行為をすべて処罰すべきだということではないですよね。どういう場合に処罰すべきだということなのでしょうか。
○長谷川幹事 撮影行為と撮影の成果物、なかなか切り離すのが難しいかもしれないですけれども、撮影された者がスポーツをしているところを普通に撮影しているものと評価されないもの、例えば、殊更に、胸の谷間のところを強調して撮影しているだとか、見ている人が性的な羞恥心を覚えたりするようなものについては対象とすると、そういうものを撮影したことが構成要件としてなっていく形を考えています。
○橋爪委員 一点質問させていただきたいのですが、具体的にどのような処罰規定を設けるべきという御提案でしょうか。
○長谷川幹事 処罰規定というのは、法定刑などでしょうか。
○橋爪委員 むしろ具体的な構成要件の内容です。スポーツ選手の臀部や胸部などをアップにする写真を撮影する行為を対象にされていると思いますが、具体的にどのような行為態様を規定した上で、どのような構成要件を設けるべきとお考えかについて、お伺いさせてください。
○長谷川幹事 ほかの要件についてまだ分からないのですけれども、着衣の有無にかかわらず、人の性的な部位、臀部とか、そこの定め方は少し置いておきますが、そういったものを強調又は露出するような方法で、かつ、人に羞恥心をもたらすような画像とか、何かそのような、すみません、まだ練れていないですが。わいせつ物頒布罪の判例の定義とか、いろいろな定義を参考にして持ってきたらと思うのですが、そういう二つの要素を構成要件にした形を考えています。

ジェンダー その先へ #五輪イヤー=アスリート盗撮 対策苦慮 相次ぐ被害、ネット流出も 条例規制も「性的意図」判断難しく
2024.03.30 西日本新聞
 22年にはこの競技場でカメラをかばんや車の下に隠して撮影していた男に出入り禁止を言い渡した。男は23年8月、広島県で女子陸上選手の下半身を撮影したとして県迷惑防止条例違反(卑わいな言動)容疑で逮捕された。だが福岡陸協の大神和彦常務理事(69)は「わが子を撮影する保護者も多く、性的な目的の撮影を見破るのが難しい」と話す。
・・・

 広島県のケースのように迷惑防止条例を適用して対処しようにも、性被害に詳しい上谷さくら弁護士(東京)は「選手の全身を撮影している場合は単なるファンと同じで、罪に問えない」と話す。23年の刑法改正で性的姿態撮影罪が新設されたが、ユニホーム姿は「性的な意図の線引きが難しい」と対象外になった。
西日本新聞社

提供目的製造行為を、姿態をとらせて製造罪で起訴していいのか~4項製造罪と7項製造罪との関係

提供目的製造行為を、姿態をとらせて製造罪で起訴していいのか~4項製造罪と7項製造罪との関係
 島戸さんらの解説では、各項の製造罪の守備範囲は重ならないとされていたのですが、提供目的で姿態をとらせて製造したとか、ひそかに姿態をとらせて製造したような事案が出てきたので、最近はそうるさいこというなよ、優先順位はないよという高裁判例が続いています。
 訴追裁量論でごまかしているような気がします。

島戸純「児童買春,児童ポルノに係る行為等の処罰及び児童の保護等に関する法律の一部を改正する法律について」警察学論集57-08(2004.8.10)
p97
ウ構成要件
第2項に規定するもののほか、児童に第2条第3項各号のいずれかに掲げる姿態をとらせ、これを写真、電磁的記録に係る記録媒体その他の物に描写することにより、当該児童に係る児童ポルノを製造する行為である。
(ア) 姿態をとらせ」
「姿態をとらせ」とは、行為者の言動等により、当該児童が当該姿態をとるに至ったことをいい、強制によることは要しない。
いわゆる盗撮については、本項の罪に当たらない。一般的にそれ自体が軽犯罪法に触れるほか、盗撮した写真、ビデオ等を配布すれば名誉致損の罪も成立し得るし、他人に提供する目的で児童ポルノを製造すれば、第7条第2項、第5項により処罰されることとなる。
(イ) 第1項の目的で児童ポルノを製造した場合は本項の罪からは除かれる。これは単に重複を避けるための技術的なものにすぎない。
・・
p98
オ他罪との関係
他人に提供する目的又は公然陳列目的をもって第7条第3項に規定する児童ポルノの製造行為を行った場合、第7条第3項は、第2項に規定するものを除いているので、他人に提供する目的等があった場合には、その第3項の犯罪は成立しない。
なお、第2項は、第5項に該当する場合を含むものであり、第3項においては、第2項に規定する場合のみを除けば、当然に第5項に該当する場合も除くこととなるものであるから、第3項において、第5項に該当する場合を除くこととはしなかったものである。

阪高裁令和2年10月27日
被告人とOを4項製造罪の共犯として認定した点に関する主張
被告人とOを4項製造罪の共犯として構成した原判示第5に関し,実行行為をしたOには,提供する目的があるから加重類型である7項製造罪が成立し,被告人には提供目的がないから7項製造罪の幇助に止まるが,幇助の故意がないから無罪であって, この点,原判決には,法令適用の誤りがある,というものである。
そこで,検討すると,上記1で説示した通り,検察官が,その訴追裁量にしたがって,実行犯であるOについて, 7項製造罪ではなく4項製造罪として公訴提起するとともに,被告人が4項製造罪の共犯に当たるとして公訴提起したものであるから,裁判所は,その成否についてのみ認定判断すれば足りるところ,原審裁判所が,被告人には4項製造罪につきOとの共謀共同正犯が成立すると認定判断した上で,その旨の法令を適用したことはもとより正当であって,法令適用の誤りはない。
5 4項製造罪の罪となるべき事実に関する主張
被告人に4項製造罪を認めた原判示第2,第5に関し, 「前項に規定するもののほか」として3項製造罪の不成立を認定しておらず,原判決には,理由不備がある, というものである。
そこで,検討すると, 「前項に規定するもののほか」という文言が構成要件であるというのは,弁護人独自の主張であって, 4項製造罪は, 3項で処罰されないものについても,新たに児童ポルノを製造する行為は,児童に悪影響を与えるものであるから, これを処罰しようとするものであって, 3項製造罪の不成立は,構成要件になっているものではない。したがって,原判示第2,第5に理由不備はない。

阪高裁r02.10.2
3 原判示第4の事実に関する理由不備,理由齟齬,法令適用の誤りの各主張について
(1)論旨は,児童ポルノの製造に係る行為について児童ポルノ法7条3項の罪が成立する場合には,同行為が同条4項の罪に該当する場合であっても,法条競合により同項の罪は成立せず,同条3項の罪が成立しないことが同条4項の罪の構成要件になるという解釈を前提に,原判決が原判示第4の事実について,①(罪となるべき事実)の項において,同条3項の罪が成立しないことを摘示しなかったことは理由不備の違法に当たり,②提供目的により本件の児童ポルノの製造に及んだ旨の被告人の供述を含む供述調書を(証拠の標目)の項に掲げ,(量刑の理由)の項でも提供目的を認定しながら,(罪となるべき事実)の項で同条4項に係る事実を認定したことは理由齟齬の違法に当たり,③同条3項の罪が成立する本件の事実関係において同条4項の罪の成立を認めたことは,判決に影響を及ぼすことが明らかな法令適用の誤りに当たる,というのである。
(2)そこで原審記録を調査して検討するに,児童ポルノ法7条4項の「前項に規定するもののほか」との規定ぶりからして,同項は同条3項の補充規定であり,両規定に係る罪はいわゆる法条競合の関係に立つと解されるが,これは,ある事実が同条3項に該当する場合に実体法上およそ同条4項の罪が成立し得ないということまでをも意味するものではなく,当該事実に同条3項を適用する場合には,同事実について同条4項の適用が排除されることを意味し,同条3項の罪が成立しないことが同条4項の罪の構成要件になるとは解されない。
 したがって,原判決の理由不備の違法をいう論旨は,そのよって立つ解釈自体が採用し得ないから,失当である。
(3)そして,訴因の構成・設定は検察官の合理的な裁量に委ねられており,検察官は,実体的には児童ポルノ法7条3項を構成すると評価し得る行為についても,立証の難易等諸般の事情を考慮して同条4項の訴因により公訴提起することは許容され,裁判所も,当該公訴事実に掲げられた行為について,同条4項の成立に証拠上欠けるところがないのであれば,原則として,その公訴事実に沿ってこれを認定すれば足りるというべきである。本件では,原判示第4の事実に係る起訴状の記載を見ると,検察官が児童ポルノ法7条4項の罪に当たる行為について起訴していることは明らかであり,原審記録に照らしてその罪の成立に必要な事実関係について証拠上欠けるところも見当たらないから,検察官が設定した訴因に沿って原裁判所が原判示第4の事実を認定したことに何ら違法とすべきところはない。
 所論は,冒頭陳述の記載,検察官請求証拠の立証趣旨や証拠の内容,論告の記載等からすると,検察官は,提供目的での児童ポルノ製造行為を起訴しており,原判決の(証拠の標目)や(量刑の理由)の各項の記載等からすると,裁判所もこれに沿って同目的を認定したとみるのが相当であるなどと主張する。
 しかし,所論が指摘する冒頭陳述の記載は,被告人がこれまでに販売目的で児童から裸の画像を入手するなどの行為を繰り返していた旨の本件犯行に至る経緯を記載しているにすぎず,これに関する検察官請求証拠の立証趣旨をみても,このような経緯を立証するために請求されたものと解される。また,請求証拠の一部に販売目的で本件犯行に及んだ旨の被告人の供述が記載されていたとしても,検察官が自ら設定した訴因を超えて,提供目的による児童ポルノ製造罪の処罰を求める趣旨でそれらの証拠請求をしたとみることはできない。さらに,検察官が論告において,被告人が画像等のデータを販売するために本件犯行に及んだ旨指摘している部分をみても,あくまで本件の動機や経緯の一事情としての記載にすぎず,検察官が証拠調べの結果を踏まえて,提供目的による製造罪での処罰を求める趣旨で指摘したものとみることもできない。加えて,原判決の(量刑の理由)の項における説示をみても,冒頭陳述の記載と同様,被告人が従前から販売目的で児童から裸の画像を入手するなどしていたとの経緯を指摘しているにすぎず,(証拠の標目)に掲げられた被告人の供述調書中に,被告人が販売目的で本件の児童ポルノ製造に及んだ旨の供述が含まれていたとしても,原判決が提供目的での児童ポルノ製造罪の認定根拠としたなどとみることはできない。
 所論は採用できず,原判決の理由齟齬の違法及び法令適用の誤りをいう論旨は,いずれも理由がない。

非接触型わいせつ行為の文献

接触型わいせつ行為の文献
薄井論文に引用されているとこ

薄井真由子「強制わいせつ罪における「性的意図」」植村立郎「刑事事実認定重要判決50選_上_《第3版》」
3「わいせつな行為」該当性の判断について
(1)本判決の分析
 本判決は,あくまで性的意図の要否について判断したものであって,性的意図を強制わいせつ罪の成立要件でないとしたことに関連して,行為者の主観的事情が「わいせつな行為」該当性の判断要素の一つとなることがあり得るとしたにすぎない。したがって,本判決は,刑法176条の「わいせつな行為」の定義を直接判示するものではない。もっとも,その判示内容からすると,「わいせつな行為」該当性についても,次のとおりの判断枠組みを示しているとみることができる。
 ア 判断基準
 第1に,判断基準として,「いかなる行為に性的な意味があり,同条による処罰に値する行為とみるべきかは,規範的評価として,その時代の性的な被害に係る犯罪の一般的な受け止め方を考盧しつつ客観的に判断されるべき」であるとする。これは,一般人からみて刑法176条の「性的な被害」と評価できるかという観点の検討を求めているものと考えられる 5)。強制わいせつ罪のわいせつ概念については,「性的性質を有する一定の重大な侵襲」と定義する見解が示されている 6) が,本判決もこの見解に親和的と解される 7)。
 イ 具体的判断方法
 第2に,具体的判断方法としては,まず,①行為そのものが持つ性的性質が明確で,直ちにわいせつな行為と評価できる行為と,②当該行為が行われた際の具体的状況等をも考慮に入れなければ当該行為に性的な意味があるかどうかが評価し難いような行為があるとした。そして,②の行為については,当該行為が行われた際の具体的状況等の諸般の事情をも総合考慮し,○アその行為に性的な意味があるといえるか否かや,○イその性的な意味合いの強さを個別事案に応じた具体的事実関係に基づいて判断するものとした。その上で,そのような個別具体的な事情の一つとして,行為者の目的等の主観的事情を判断要素として考慮すべき場合があるというのである。
 したがって,「わいせつな行為」該当性の判断に当たっては,まず,「行為そのものが持つ性的性質」を検討することになる。
(2)行為そのものが持つ性的性質の判断について 8)
 上記(1)イ①行為そのものが持つ性的性質が明確で,直ちにわいせつな行為と評価できる場合とはどのような行為であろうか。
 本判決で問題となった「被害者に対し,被告人の陰茎を触らせ,口にくわえさせ,被害者の陰部を触るなど」の行為が,①の場合に当たることは異論のないところである(なお,平成29年改正により刑法177条の強姦罪は強制性交等罪となり,同罪の処罰対象となる性交等に膣性交のほか口腔性交・肛門性交が含まれるようになったため,現在ではそもそも陰茎を口にくわえさせる行為は176条ではなく177条による処罰対象となっている。)が,①の場合に当たる行為について,部位と態様の2つの側面から検討することとしたい 9)。

6)佐藤陽子「強制わいせつ罪におけるわいせつ概念について」法時88・11・60。この見解は,①刑法176条の保護法益が個人の性的自己決定権であること,一方,②「被害者の性的羞恥心を害する行為」「被害者の性的自由を害する行為」との定義では幼児など性的羞恥心・判断力を持たない者に対する保護が及ばないかのような誤った印象を与えうること,③同条の法定刑は比較的高く,迷惑防止条例における「卑猥な行為」などがより軽く処罰されている以上,ある程度の重大性が必要であることを理由とする。
8) 佐藤・前掲注6)63以下では,ドイツの議論を参考とし,刑法176条の「わいせつな行為」の判断に当たっては,全事情を評価し,その評価の基準は一般人の通常の感覚に求められるとする。そして,全事情の中でも,①関係する部位,②接触の有無・方法,③継続性,④強度,⑤性的意図,⑥その他の状況といった要素が重視される。最も重要なのは①②であり,③④は行為者と被害者の身体が接触するような行為態様において①②に準じる重要性を有するのに対して,⑤⑥の要素は①~④による判断を補う程度の重要性しか有していないとしており,参考となる。
 なお,①関係する部位については,関係する部位に性的要素が強いほど,重大な性的性質は認められやすくなること,同じ性器であっても,被害者側の性器が関係している場合と行為者側の性器が関係している場合とでは,被害者側に関係する方が性的自己決定権侵害の程度が高く,重大といえること,性器や性を象徴する部位以外の部位では,性器等と

9)嘉門優「日本におけるハラスメントの法規制―セクハラに対する処罰のあり方について」刑ジャ60・27では,裁判例を分析すると,強制わいせつ罪におけるわいせつ行為として理解されるものは,大きく分けて接触型・非接触型があり,さらに部位,態様等により8類型に分類することができるとしている。

嘉門優「日本におけるハラスメントの法規制―セクハラに対する処罰のあり方について」刑事法ジャーナル60号p27
また、性的侵害性判断においては、接触が基本的な要素であるため、非接触型(G・H類型)については(19,基本的にはその性的侵害性は低いという位置づけになり、それを補うために強制という要素が強く要求されることになる。つまり、被害者は、目をつぶるなどして「見ない」という形で被害を避けることもできると考えられるため、この類型の性的侵襲の重大性を根拠づけるために、裁判例において、被害者が見ることを「強いられた」ということがより強く要求されてきたのである20)
以上のように、強制わいせつ罪の判断においても、判例上、柔軟な解釈によって非接触型を含めてかなりの範囲の性的嫌がらせを捕捉することが可能となっているものの、その判断において一定の重大な性的侵害性が要求されてきたと分析しうる。そのため、被害者の性的部位を服の上から触るような場合や、オフィスで、ポルノ写真を部下である被害者に見せるといった環境型のセクハラの場合については、原則、強制わいせつ罪の対象とはならないということになる。

佐藤陽子「強制わいせつ罪におけるわいせつ概念について」法律時報第88巻第11号P60
(2)我が国における判断方法
(a)基本的視点
ドイツの議論を参考にすると、176条の「わいせつな行為」の判断にあたっては、全事情を評価の基礎とし、その評価の基準は一般人の通常の感覚に求められうる。
確かに一般人の通常感覚は基準足りえないとの批判もありえよう。
しかし、性的か否かは、科学的に検証可能な概念ではなく、その評価は社会通念に依存するのであるから、この基準が妥当というべきである。
そして、176条の「わいせつな行為」、すなわち、性的性質を有する一定の重大な侵襲に該当するかを判断する際には、①客観的にみて、行為がわずかでも性的性質を帯びていることが必須である。
およそ性的でない行為は176条には含まれ得ない。
さらに、②性的性質を有するすべての行為がわいせつなのではなく、その行為に法定刑にふさわしい一定の重大性が必要である。
(b) 具体的指針
それでは、全事情の中でもいかなる要素が、わいせつ性判断の際にとりわけ重視されるべきであろうか。
これまでの我が国の裁判例及びドイツの議論を参考にすれば、
(i)関係する部位、
(ii)接触の有無.方法、
(iii)継続性、
(iv)強度、
(v)性的意図、
(ⅵ)その他の状況
が挙げられるように思われる。
(i) 関係する部位は、最も重要な考慮要素であろう")。
たとえばドイツでは性器はタブーゾーンと呼ばれ、この部位が行為に関係していれば重大な性的性質は容易に認められる。
また性器以外の性を象徴する部位(胸、緯部)も、重大な性的性質が認められやすいとされる。
我が国でも、このような関係する部位による区別はすでに行われている。
関係する部位に性的要素が強いほど、重大な性的性質は認められやすくなり、弱いほど、それを補う別の要素が必要になるとの基準は、我が国の社会通念においても十分認められるだろう。
そして同じ性器であっても、被害者側の性器が関係している場合と行為者側の性器が関係している場合とでは、被害者側に関係する方が性的自己決定権侵害の程度が高く、重大といえよう。
また、性器や性を象徴する部位(性器等)以外の部位では、性器等との距離が重要となる。
太ももの付け根部分と足首とでは太ももの方が性器に近く、性的要素が強いというべきである。
他方で、性的部位とまではいえないものの、我が国におけるキスに対する社会通念に鑑みると、唇、口腔、舌にも性的要素は強く認められうるであろう。
なお、男性・児童の胸や臂部は女性のそれと同視できない(36)との理解は、少なくとも176条においてはもはや通用しないであろう。
セクシャル.マイノリティーの保護、そしてペドフィリアからの児童の保護に鑑みて、それらも性的要素の強い部位と解されるべきである(37)。(ⅱ)接触の有無・方法に関しては、原則として、物理的接触があるほど侵襲の程度は高くなろう。
また同じ接触であっても、被害者の肌と行為者の肌が触れ合うほど、重大な侵襄性が認められる。
このような基準は、実際我が国の刑事実務においても用いられているように思われる。
たとえば、臂部を着衣の上から触った場合は迷惑防止条例上の罪になるが、着衣の中に手を入れて触った場合は強制わいせつ罪であるというような区別である(38)。
それに加えて、道具を用いた行為は、その道具の性質も考慮されるべきである。
服の上からの接触であっても性具を用いた場合は、その他の道具を用いた場合よりも重大な性的性質を認めやすい39)。
性具はまさに性を象徴する道具だからである。
(ⅲ)継続性も重要である。
短期間一回きり触るより、執勧に触った方が重大であるのは自明であろう.。
(iv)強度もまた重要である。
胸を手の甲でさっと触るより、掌でしっかり握った方が重大であるといえよう。
なお、性器を切り落とすような場合は、侵襲性は極度に重大ではあるが、社会通念上、性的と評価されないため、176条のわいせつ該当性は否定されうるだろう。
(v)性的意図については、最高裁判例において必須とされている‘皿)。
しかし、そもそも伝統的わいせつ概念では性的意図が要件になるものであるのに対し、本稿のように被害者の性的自己決定権を重視する定義においては、行為者の性的意図を必須の要素として求める理由がない。
176条の成立において行為者の内面における性的な堕落は重要ではないのである。
性的意図以外の要素に基づいて既に重大な性的性質が認められている場合、性的意図の欠如はわいせつな行為を否定する根拠になりえない。
嫌がらせ目的にせよ、戯れにせよ、幼児の陰部に物を挿入した場合42)には、重大な性的性質が認められるから、行為態様から性的意図を推認せずとも、176条のわいせつな行為は肯定されるというべきである.43)。
一方、性的意図は必須ではないとしても、一つの考慮要素にはなりえよう4''。
例えば、児童を抱きしめて体を撫でる行為であっても、性的意図なく愛情から撫でる場合と、性的意図をもって撫でる場合とでは、重大な性的性質が異なるというべきである。
性的性質の弱い行為であっても、性的意図があることにより、わいせつな行為として認められるようになるのである。
本稿のように、性的意図をわいせつな行為の-考慮要素とすれば、①治療行為や②フェティシズム行為において、性的意図がどのような影響を与えるかが問題になろう。
①我が国の裁判例においては、治療行為についても性的意図を重視する傾向にあるように思われる45)。
しかし、治療行為は社会通念上、およそ性的性質を有さないであろう。
同じ陰部に指を挿入する行為であっても、婦人科医が診察行為としてそれを行う場合はもはや社会的評価が異なるといえる。
さもなければ、客観的に全く正当な治療行為46)をおこなった医師に犯罪が成立しうることになるだろう。
確かに、仮に行為者の性的意図が被害者に明らかになれば、被害者の董恥心が著しく害されることになるだろうが.47)、内心に性的意図が|隠れていることだけを理由として、客観的に正当な治療行為を処罰することは不当であろう.48)。
②性的意図だけで処罰できないという点では、フェティシズム行為も同様であろう。
たとえば、女性が嘔吐する姿に性的興奮を覚える者が、女性の口に指を入れて嘔吐させる行為(49)は、社会通念上ほとんど性的性質を有さない行為であるため、単に行為者に性的意図があったことを理由に、176条で処罰すべきではないだろう50)。
(vi) その他の状況として、行為時のひわいな言動が行為の性的性質を高めうることについては我が国の社会通念上、認められるであろう51)。
その他の状況に関係して、ドイツでは、暴行.脅迫の強度が重大性の判断に影響を与えるかが争われている52)。
例えば、同じく着衣の上から幼児の胸部を数回なでる行為でも、満員電車で身動きできない状況を利用する場合と、被害者を力ずくで壁に押さえつけるなど強度の暴行を行った場合では、強制わいせつ罪の成否の判断が分かれうるかという議論である。
暴行・脅迫の強度は行為の性的性質とは無関係であるが、我が国の実務には、暴行の強度を強制わいせつを認める要素に取り込んでいるように見える裁判例も存在する53)。
確かに、暴行・脅迫は行為の性的性質に関係しておらず、重大性の判断とは無関係なように思われる。
しかし、そもそも性的性質に一定の重大性を求めたのは、法定刑に見合った侵害レベルを求めるためであった。
だとすれば性的性質の程度が弱くとも、強度の暴行・脅迫かそれを補うことも例外的にありうるように思われる54)。
ただし、その際には、暴行・脅迫が性的性質に影響を与えない以上、問題となる行為に-.定程度を超えた性的性質が最初から備わっていなければならないであろう。
また、性的性質は弱くとも、付随する行為の侵襲性の強度によって一定の重大性を補うという考え方は、行為が密室で行われるような場合にも妥当するように思われる。
密室による心理的圧迫は侵婆性を高めるからである55)
以上が、わいせつの判断要素である。
これらの中で最も重要なのは(i)(ii)であろう。
(iii)(iv)は、行為者と被害者の身体が接触するような行為態様において(i)(ii)に準じる重要性を有する。
これに対して、(v)(、Ii)の要素は、(i)~(iv)による判断を補う程度の重要性しか有していないといえよう。

「プールでの水遊び、泥遊び、体に絵の具を塗って遊ぶボディーペイント、乾布摩擦、内科検診など。その多くは下半身や胸などを露出した半裸の状態で、全裸の園児が掲載されているケース」は児童ポルノか

「プールでの水遊び、泥遊び、体に絵の具を塗って遊ぶボディーペイント、乾布摩擦、内科検診など。その多くは下半身や胸などを露出した半裸の状態で、全裸の園児が掲載されているケース」は児童ポルノ罪か

 3号ポルノの「性欲を興奮させ又は刺激するもの」という要件の問題です。

児童買春、児童ポルノに係る行為等の規制及び処罰並びに児童の保護等に関する法律
第2条
3この法律において「児童ポルノ」とは、写真、電磁的記録(電子的方式、磁気的方式その他人の知覚によっては認識することができない方式で作られる記録であって、電子計算機による情報処理の用に供されるものをいう。以下同じ。)に係る記録媒体その他の物であって、次の各号のいずれかに掲げる児童の姿態を視覚により認識することができる方法により描写したものをいう。
二 他人が児童の性器等を触る行為又は児童が他人の性器等を触る行為に係る児童の姿態であって性欲を興奮させ又は刺激するもの
三 衣服の全部又は一部を着けない児童の姿態であって、殊更に児童の性的な部位(性器等若しくはその周辺部、臀でん部又は胸部をいう。)が露出され又は強調されているものであり、かつ、性欲を興奮させ又は刺激するもの

 一般人基準だと、普通は興奮しないから、児童ポルノには当たらないはずと説明されていますが、判例はかなり厳しく、親が撮っても児童ポルノにあたる(東京高裁h30.1.30)としています。

森山野田「よくわかる改正児童買春ポルノ法」P201
Q49
第7条第3項で、他人に提供する目的がないのに児童ポルノを製造する行為を処罰することにすると、親が自己の子どもの入浴、水遊びの情景を写真撮影する等の行為についても処罰の対象になるのではないですか。

このような情景を撮影した写真に関しては、現行法第2条第3項第3号に該当するか否かが問題とされるのかもしれませんが、同号については、その要件として「性欲を興奮させ又は刺激する」との要件がついており、子どもの入浴、水遊びの情景を見て通常、一般人は性欲を興奮させ、刺激するというところまで至らないと思いますので、このような写真は児童ポルノに当たらず、その撮影行為についても改正後の第7条第3項の犯罪が成立しない場合が多いのではないかと思われます。
・・・
Q38 第2条第3項第2号・第3号には「性欲を興奮させ又は刺激する」とありますが、だれの性欲を興奮させ又は刺激するのでしょうか。また、この要件に該当するか否かは、だれが判断するのでしょうか。
大多数の者に対して、児童の(特に低年齢児童の)裸体は性欲を興奮させ又は刺激するとは考えられないという考えもありますが、どうでしょうか。
一部の少数者の性欲を興奮させ又は刺激するものも児童ポルノとして処制の対象になりますか。

「性欲を興奮させ又は刺激する」 とは、一般人の性欲を興奮させ又は刺激することをいうものと解しています。
これに該当するか否かの判断は、犯罪構成要件に該当するか否かの判断ですので、最終的な判断は刑事事件において裁判所がするものとなります。
児童の裸体が一般人の性欲を興奮させ又は刺激するかどうかについては、性的に未熟な女児の陰部等を描写した写真が刑法のわいせつに当たるとした判例があり、必ずしも年少者の裸体が一般人の性欲を興奮させ又は刺激することがないとはいえないと考えております。
なお、一部の少数者の性欲を興奮させ又は刺激するものは、一般人の性欲を興奮させ又は刺激するものでない限り、児童ポルノには当たりません。

 高裁判例では児童ポルノとされます。

阪高裁平成24年7月12日
2 控訴趣意中,その余の法令適用の誤りの主張について
 論旨は,(1)本件各画像は,児童の裸が撮影されているが,一般人を基準とすると「性欲を興奮させ又は刺激するもの」ではないから,児童ポルノ法7条2項の製造罪(以下「2項製造罪」という。)は成立しないのに,原判決は原判示罪となるべき事実に同法7条2項,1項,2条3項3号を適用しており,また,(2)本件は,公衆浴場内での4件の2項製造罪であって,常習的に撮影,提供がされていたのであるから,それらは包括一罪となり,また,被害児童が特定されているのは1件だけであり,3件は被害児童が特定されておらず,結局被害児童は1名としか認定できないから,その意味でも包括一罪とすべきであるのに,原判決は,併合罪として処理しており,以上の各点で,原判決には,判決に影響を及ぼすことが明らかな法令適用の誤りがある,というものである。
 そこで検討するに,(1)の点は,本件各画像が「性欲を興奮させ又は刺激するもの」といえるかどうかについては一般人を基準として判断すべきものであることはそのとおりである。しかし,その判断の基準とすべき「一般人」という概念は幅が広いものと考えられる。すなわち,「一般人」の中には,本件のような児童の画像で性的興奮や刺激を感じる人もいれば,感じない人もいるものと考えられる。本件は,公衆浴場の男湯に入浴中の女児の裸の画像が対象になっており,そこには大人の男性が多数入浴しており,その多くの男性は違和感なく共に入浴している。そのことからすると,一般人の中の比較的多くの人がそれらの画像では性的興奮や刺激を特に感じないということもできる。しかし,その一方で被告人のようにその女児の裸の画像を他の者から分からないように隠し撮りし,これを大切に保存し,これを密かに見るなどしている者もおり,その者らはこれら画像で性的興奮や刺激を感じるからこそ,これら画像を撮影し,保存するなどしているのである。そして,これらの人も一般人の中にいて,社会生活を送っているのである。ところで,児童ポルノ法が規制をしようとしているのはこれらの人々を対象にしているのであって,これらの人々が「一般人」の中にいることを前提に違法であるか否かを考える必要があると思われる。他人に提供する目的で本件のような低年齢の女児を対象とする3号ポルノを製造する場合は,提供を予定されている人は一般人の中でそれらの画像で性的興奮や刺激を感じる人達が対象として想定されているものであり,そのような人に提供する目的での3号ポルノの製造も処罰しなければ,2項製造罪の規定の意味がそのような3号ポルノの範囲では没却されるものである。したがって,比較的低年齢の女児の裸の画像では性的興奮や刺激を感じない人が一般人の中では比較的多数であるとしても,普通に社会生活を営んでいるいわゆる一般の人達の中にそれらの画像で性的興奮や刺激を感じる人がいれば,それらの画像は,一般人を基準としても,「性欲を興奮させ又は刺激するもの」であると解するのが相当である。
 したがって,原判決が原判示各事実に児童ポルノ法7条2項,1項,2条3項3号を適用したのは正当である。

保護責任者遺棄致傷,強制わいせつ,児童買春,児童ポルノに係る行為等の処罰及び児童の保護等に関する法律違反,強制わいせつ(変更後の訴因わいせつ誘拐,強制わいせつ),殺人,強制わいせつ致傷被告事件
【事件番号】 東京高等裁判所判決【判決日付】 平成30年1月30日
【掲載誌】  高等裁判所刑事裁判速報集平成30年80頁
       LLI/DB 判例秘書登載
【評釈論文】 法学教室458号145頁
       法学研究(北海学園大)54巻2号209頁
2 低年齢児等に対する児童ポルノ製造罪(原判示第1,第2の3,5,第5の2,4,6,第7から第11まで)の成否について
  (1) 論旨は,まず,6歳未満の児童の姿態は,「性欲を興奮させ又は刺激するもの」に該当せず,その姿態を撮影しても児童ポルノ製造罪は成立しないから,零歳から5歳までの児童の姿態を撮影した行為について同罪を認めた原判決には,判決に影響を及ぼすことが明らかな法令適用の誤りがある,というのである。
 しかし,6歳未満の低年齢児の姿態でも一般人が性的な意味があると評価するものがあることは既述のとおりであり,画像の対象が6歳未満の児童であるというだけで性的搾取及び性的虐待から児童の権利を擁護することを立法趣旨とする児童買春等処罰法における児童ポルノに該当しないとの所論は,同法が「児童」の定義を「18歳に満たない者」と定め(同法2条1項),下限を設けていないことなどにも照らし,採用の余地がない。
  (2) 論旨は,また,原判決が児童ポルノと認めた画像の中には,一般人の性欲を興奮又は刺激させないものが含まれているとして,具体的には,トイレに座る画像,一部着衣してあどけなく座る画像,児童を拘束している画像,上半身裸の男児の目や口をガムテープで塞ぎ両手を緊縛した画像で性器が映っていないもの,児童が突っ立っている画像を挙げ,これらの画像を撮影した行為について児童ポルノ製造罪を認めた原判決には,判決に影響を及ぼすことが明らかな法令適用の誤りがある,というのである。
 しかし,原判決は,公訴事実に含まれる各画像を個別に検討し,一部の画像を性欲を興奮させ又は刺激するものに該当しないとするなど,児童ポルノの該当性を慎重に判断しており,所論指摘の画像の撮影行為をいずれも児童ポルノに該当するとした原判決の判断は不合理ではない。トイレに座る画像,一部着衣してあどけなく座る画像,児童が突っ立っている画像であって,児童に殊更扇情的な姿態をとらせたものではなくても,性器を殊更露出させたものであれば,一般人の性欲を興奮させ又は刺激するものといえる。また,全裸で両手を縛った画像や性器をひもで緊縛するなどして児童を拘束している画像や,上半身裸の男児の目,口をガムテープで塞ぎ両手を緊縛した画像も,一般人の性欲を興奮させ又は刺激するものといえる。所論は,少年アイドルの上半身裸の写真や小学生の水泳の写真と同視でき,児童ポルノに該当しないとも主張するが,それらは,画像から読み取れる姿態,場面,周囲の状況,構図等を総合的に考慮して判断するならば,一般人の性欲を興奮させ又は刺激するものとはいえないと評価されるにすぎない。なお,保護者が陰茎をつまんで撮影した写真は,児童ポルノに該当するが,その製造,所持の目的が,子供の成長の記録のためであるなどして,性的好奇心を満たす目的等に欠ける場合には,犯罪を構成しないと評価されるだけである。

https://mainichi.jp/articles/20240324/k00/00m/040/145000c?inb=ys
毎日新聞SNSなどで啓発している市民団体「子どもを児童ポルノから守る会」(守る会)の協力を得て、2023年7月以降、ネット上で同様の画像を検索するなどして実態を調べた。

 その結果、全国の保育園、幼稚園、認定こども園など、少なくとも135園がブログなどに園児が裸で写る画像を掲載していた。現在は削除している園もある。

 撮影時の状況はプールでの水遊び、泥遊び、体に絵の具を塗って遊ぶボディーペイント、乾布摩擦、内科検診など。その多くは下半身や胸などを露出した半裸の状態で、全裸の園児が掲載されているケースもあった。

 135園のうち、画像が海外のポルノサイトなどに転載されているのが確認されたのは12園。画像を含むページごと外部のサイトに複製・保存されていたのは6割の80園に上った。

 東日本のある保育園はブログに、10年以上前のお泊まり保育で撮影した園児の入浴画像を掲載。かつて外部の指摘で全て削除したつもりだったが、1枚だけ消し忘れていた。

 園長がブログの検索履歴を調べると、ブログ内の検索ボックスに何者かが「子ども 裸」「子ども お風呂」と入力した形跡があったという。

 そもそも、園側はなぜ、裸の画像をブログなどに掲載してきたのだろうか。

 ある保育士の男性(32)は「数十年前に乾布摩擦や裸足での教育が流行し、今でも『子どもは裸で元気よく』という価値観が残っている」と指摘する。

違法性は? 国は規制に及び腰
 ポルノサイトなどへの転載は規制できないのか。

園児の画像悪用に関する調査結果
写真一覧
 児童ポルノ対策に詳しい森亮二弁護士(第一東京弁護士会)によると、保育園が園児の日常生活として裸の画像を掲載する場合、児童ポルノ禁止法が禁じる「殊更に性的な部位が露出または強調されているもの」「性欲を興奮させ、刺激するもの」には当たらないという。

 一方、同じ画像でも、どこに掲載するかによって問題になる場合がある。森弁護士は「ポルノサイトに転載すれば児童ポルノの提供として処罰される可能性はある」と指摘する。

「ひそかに、同所側溝内に動画撮影状態にしたスマートフォンを設置し、同スマートフォンで同側溝上を通行中の氏名不詳者12名が身に着けている下着の性的な部位を覆っている部分を撮影した」という性的姿態撮影罪は包括一罪(神戸地裁r6.1.26)

「ひそかに、同所側溝内に動画撮影状態にしたスマートフォンを設置し、同スマートフォンで同側溝上を通行中の氏名不詳者12名が身に着けている下着の性的な部位を覆っている部分を撮影した」という性的姿態撮影罪は包括一罪(神戸地裁r6.1.26)
 性的姿態撮影罪の保護法益は不同意わいせつ罪と接近した個人的法益だと説明されていますが、足下からの下着盗撮はわいせつ行為ではないので個人的法益が薄まって12人でも包括一罪になりますかね。
 

法務省逐条説明
第2章前説
【説明】
第2条から第6条までの各罪は、人の意思に反して性的な姿態を撮影したり、これにより生成された性的な姿態の記録を提供するといった行為がなされれば、当該記録の存在・流通等により、性的な姿態が当該姿態をとった時以外の機会に他人に見られる危険が生じ、ひいては、不特定又は多数の者に見られるという重大な事態を生じる危険があることから、それらの行為を処罰するものであり、その保護法益は、
〇自己の性的な姿態を他の機会(すなわち、当該姿態をとった時以外の他の機会)に他人に見られるかどうか
という意味での被害者の性的自由・性的自己決定権である。
(注3)強制わいせつ罪(刑法第176条)にいう「わいせつ」は、行為が持つ性的性質の程度を問題にする概念である(最高裁判所判例解説刑事篇平成29年度202~205頁〔向井香津子〕)。
これに対し、性的姿態等撮影罪の保護法益は、自己の性的な姿態を他の機会に他人に見られるかどうかという意味での性的自由・性的自己決定権であるところ、被害者が、行為が持つ性的性質の程度について誤信していなくても、行為が持つ性的性質について誤信して撮影行為に応じたものであれば、保護法益の侵害が認められると考えられることからすれば、行為が持つ性的性質の程度を問題にする刑法第176条の「わいせつ」から離れて誤信の対象を定めるのが適当と考えられる。
その上で、性的姿態等撮影罪は、「性的な部位等」や「わいせつな行為又は性交等がされている間における人の姿態」を対象とするものであり、基本的に行為の性質は性的なものであると考えられるものの、被害者が、四囲の状況や行為者の主観について誤信しているために、行為の性質が性的なものでないと誤信している場合には、被害者が、撮影行為に応じるかどうかについて自由な意思決定をしたとはいえず、保護法益の侵害が生じると考えられる。
そこで、本条第1項第3号においては、「行為の性質が性的なものではないと誤信させ、・・・又はその旨の誤信をしていることに乗じ」た撮影行為を処罰対象としている。
(注4)罪数関係については、個別の事案ごとに、具体的な事実関係も踏まえて判断される
べき事柄であるが、一般論としては、性的姿態等撮影罪に当たる撮影行為が行われ、当該撮影行為が強制わいせつ罪又は監護者わいせつ罪にも該当する場合、
○ 性的姿態等撮影罪は、性的な姿態を他の機会に他人に見られるかどうかという意味での被害者の性的自由・性的自己決定権を保護法益として設けるものであり、また、侵害の態様も性的な姿態の影像を記録して固定化するというものであることからすると、性的な行為を行うかどうかの自由が問題となる強制わいせつ罪・監護者わいせつ罪との法益侵害の同一性があるとはいえない
ことから、強制わいせつ罪又は監護者わいせつ罪と性的姿態等撮影罪の両罪が成立するものと考えられる。
その上で、社会的見解上の行為が一個であれば、観念的競合(一個でなければ併合罪)となる。

 児童ポルノひそかに製造罪でも被害者の個性は重視されません。

【文献番号】25596585
横浜地方裁判所令和4年(わ)第687号、令和4年(わ)第1028号
令和5年12月6日第1刑事部判決
 上記の者に対する強制わいせつ、建造物侵入、栃木県公衆に著しく迷惑をかける行為等の防止に関する条例違反、児童買春、児童ポルノに係る行為等の規制及び処罰並びに児童の保護等に関する法律違反、窃盗被告事件について、当裁判所は、検察官地引彩乃並びに弁護人小松圭介(主任)、奥村徹及び彦坂幸伸出席の上審理し、次のとおり判決する。
(罪となるべき事実)
 被告人は、
第1 別紙記載の小学校において、下記の同校の女子生徒が18歳に満たない児童であることを知りながら、
1 平成31年4月17日午前9時頃から同日午前11時25分頃までの間に、ひそかに、同校保健室内に小型カメラを設置して健康診断のため露出した女子生徒71名の胸部等を動画撮影し、その動画データを同カメラに装着されたマイクロSDカードに記録させた上、同日午後11時47分頃から同日午後11時50分頃までの間に、同市α区β××××番地××の当時の被告人方において、同マイクロSDカードから同動画データを被告人が使用するノートパソコンに接続された電磁的記録媒体である外付けハードディスク内に記録して保存し、
2 令和2年10月6日午前10時15分頃から同日午前11時25分頃までの間に、ひそかに、同校なかよしルーム内に小型カメラを設置して着替えのため露出した女子生徒6名の胸部等を動画撮影し、その動画データを同カメラに装着されたマイクロSDカードに記録させた上、同月7日午前零時27分頃から同日午前零時28分頃までの間、前記被告人方において、同マイクロSDカードから同動画データを被告人が使用するパソコンに接続された電磁的記録媒体である外付けハードディスク内に記録して保存し、
3 同月13日午前8時30分頃から同日午前11時35分頃までの間に、ひそかに、同校教室内に小型カメラを設置して着替えのために露出した女子生徒3名の胸部等を動画撮影し、その動画データを同カメラに装着されたマイクロSDカードに記録させた上、令和3年7月30日午後8時56分頃から同日午後8時58分頃までの間、前記被告人方において、同マイクロSDカードから同動画データを被告人が使用するパソコンに接続された電磁的記録媒体である外付けハードディスク内に記録して保存し、
4 同年4月22日午前9時頃から同日午前11時25分頃までの間に,ひそかに、同校保健室内に小型カメラ2台を設置して健康診断のため露出した女子生徒23名の胸部等を動画撮影し、その動画データを同カメラ2台にそれぞれ装着されたマイクロSDカードに記録させた上、同年7月30日午後9時6分頃、前記被告人方において、前記各マイクロSDカードから同動画データを被告人が使用するパソコンに接続された電磁的記録媒体である外付けハードディスク内に記録して保存し、
5 令和3年10月28日午前9時頃から同日午前10時20分頃までの間に、ひそかに、同校保健室内に小型カメラを設置して内科検診のため露出した女子生徒48名の胸部等を動画撮影し、その動画データを同カメラに装着されたマイクロSDカードに記録させた上、同日午後9時59分頃から同日午後10時頃までの間、前記被告人方において、同マイクロSDカードから同動画データを被告人が使用するノートパソコンの内蔵記録装置に記録して保存し、
もってひそかに衣服の全部又は一部を着けない児童の姿態であって、殊更に児童の性的な部位が露出され又は強調されているものであり、かつ、性欲を興奮させ又は刺激するものを視覚により認識することができる方法により電磁的記録に係る記録媒体に描写することにより、児童ポルノを製造し
・・・・・・・

弁護人の主張に対する判断)
1 弁護人の主張
 判示第1の1~5、第2及び第4の各事実が認められること、また、判示第3の事実について被告人による被害品の窃取行為があったことは当事者間に争いがなく、関係証拠から認めることができる。
 弁護人は、〔1〕判示第1の1~5について、〔ア〕訴因不特定であり刑訴法256条3項に反する、〔イ〕各動画データは児童ポルノに該当しない、〔ウ〕児童ポルノ法7条5項の製造罪は成立しない、〔2〕判示第3について、不法領得の意思がない、〔3〕いずれの事実についても、心神耗弱の状態にあった、と主張するので、以下検討する。
2〔1〕判示第1の1~5について
(1)〔ア〕訴因不特定との主張について
 弁護人は、児童ポルノ製造罪は個人法益に関する罪であり、個人の実在性、年齢、児童ポルノ該当性が訴因において特定されなければならず、判示第1の1~5において「18歳に満たない」「女子生徒71名」等としか記載されていないのは、訴因が特定されておらず刑訴法256条3項に反すると主張する。
 しかし、判示第1の1~5はいずれも、被告人が勤務する小学校内で行われた同校の女子児童に対する盗撮であることを示し、健康診断、着替えなどと撮影の状況も付した上で、犯行時刻、犯行場所を特定していることなどからすれば、審判対象は明確であり、被告人の防御に支障を生じさせるおそれもないから、訴因は特定されているといえる。

神戸地方裁判所令和6年1月26日第4刑事部判決
       判   決
 上記の者に対する性的姿態等撮影、公衆に著しく迷惑をかける暴力的不良行為等の防止に関する条例(昭和38年兵庫県条例第66号)違反被告事件について、当裁判所は、検察官安藤恵実子及び国選弁護人片岡昌樹各出席の上審理し、次のとおり判決する。
       主   文
       理   由
(罪となるべき事実)
 被告人は、
第1 正当な理由がないのに、令和5年9月8日午後2時56分頃から同日午後3時46分頃までの間、神戸市α区β×丁目×番B地下道南側出入口付近において、ひそかに、同所側溝内に動画撮影状態にしたスマートフォンを設置し、同スマートフォンで同側溝上を通行中の氏名不詳者12名が身に着けている下着の性的な部位を覆っている部分を撮影した
第2 常習として、女性のスカート内をのぞき見する目的で、
1 令和5年9月8日午後3時2分頃から同日午後3時48分頃までの間、神戸市α区β△丁目△番△号南西側に設置された側溝に入り、同側溝上を通行する氏名不詳の女性のスカート内をのぞき見し
2 同月13日午前5時33分頃から同日午前10時6分頃までの間、神戸市α区γ×丁目×番×号南東側に設置された側溝に入り、同側溝上を通行する氏名不詳の女性のスカート内をのぞき見し
3 同月14日午後5時24分頃から同日午後5時53分頃までの間、前記1記載の場所に設置された側溝に入り、同側溝上を通行する氏名不詳の女性のスカート内をのぞき見し
もってそれぞれ公共の場所において、人に対する、不安を覚えさせるような卑わいな言動をした
ものである。
(法令の適用)
罰条
判示第1の所為 包括して性的な姿態を撮影する行為等の処罰及び押収物に記録された性的な姿態の影像に係る電磁的記録の消去等に関する法律2条1項1号イ、同法律附則2条
判示第2の所為 公衆に著しく迷惑をかける暴力的不良行為等の防止に関する条例(昭和38年兵庫県条例第66号)15条2項、1項、3条の2第1項1号
刑種の選択 いずれも懲役刑を選択
併合罪の処理 刑法45条前段、47条本文、10条(重い判示第1の罪の刑に47条ただし書の制限内で法定の加重)
刑の執行猶予 刑法25条1項
保護観察 刑法25条の2第1項前段
訴訟費用の不負担 刑事訴訟法181条1項ただし書
(量刑の理由)
神戸地方裁判所第4刑事部
裁判官 荒金慎哉

学校設置者等及び民間教育保育等事業者による児童対象性暴力等の防止等のための措置に関する法律案(日本版DBS)


www.cfa.go.jp

学校設置者等及び民間教育保育等事業者による児童対象性暴力等の防止等のための措置に関する法律
目次
第一章 総則(第一条―第三条)
第二章 学校設置者等が講ずべき措置等(第四条―第十八条)
第三章 民間教育保育等事業者の認定等及び認定事業者等が講ずべき措置等(第十九条―第三十二条)第四章 犯罪事実確認書の交付等(第三十三条―第三十九条)
第五章 雑則(第四十条―第四十二条) 第六章 罰則(第四十三条―第四十八条)附則
第一章 総則
(目的)
第一条 この法律は、児童対象性暴力等が児童等の権利を著しく侵害し、児童等の心身に生涯にわたって回復し難い重大な影響を与えるものであることに鑑み、児童等に対して教育、保育等の役務を提供する事業を行う立場にある学校設置者等及び民間教育保育等事業者が教員等及び教育保育等従事者による児童対象性暴力等の防止等をする責務を有することを明らかにし、学校設置者等が講ずべき措置並びにこれと同等の措置を実施する体制が確保されている民間教育保育等事業者を認定する仕組み及び当該認定を受けた民間教育保育等事業者が講ずべき措置について定めるとともに、教員等及び教育保育等従事者が特定性犯罪事実該当者に該当するか否かに関する情報を国が学校設置者等及び当該認定を受けた民間教育保育等事業者に対して提供する仕組みを設けることとし、もって児童等の心身の健全な発達に寄与することを目的とする。
(定義)
第二条 この法律において「児童等」とは、次に掲げる者をいう。
一 教育職員等による児童生徒性暴力等の防止等に関する法律(令和三年法律第五十七号)第二条第二項に規定する児童生徒等
二 前号に掲げる者のほか、学校教育法(昭和二十二年法律第二十六号)第百十五条に規定する高等専門学校の第一学年から第三学年まで又は第三項第一号ロに規定する専修学校に在学する者
2 この法律において「児童対象性暴力等」とは、教育職員等による児童生徒性暴力等の防止等に関する法律第二条第三項に規定する児童生徒性暴力等及び前項第二号に掲げる者に対して行われるこれに相当する行為をいう。
3 この法律において「学校設置者等」とは、次に掲げる者をいう。一 次に掲げる施設(以下「学校等」という。)を設置する者
イ 学校教育法第一条に規定する学校(同法第八十三条に規定する大学を除く。次項第一号において同じ。)
ロ 学校教育法第百二十四条に規定する専修学校(同法第百二十五条第一項に規定する高等課程に係るものに限る。)
ハ 就学前の子どもに関する教育、保育等の総合的な提供の推進に関する法律(平成十八年法律第七十七号。ニ及び次項第四号並びに第十二条第四号において「認定こども園法」という。)第二条第七項に規定する幼保連携型認定こども園(次項第三号において「幼保連携型認定こども園」という。)
認定こども園法第三条第一項又は第三項の認定を受けた施設及び同条第十項の規定による公示がさ
れた施設
児童福祉法(昭和二十二年法律第百六十四号)第十二条第一項に規定する児童相談所(次項第五号において「児童相談所」という。)
児童福祉法第二十四条の二第一項に規定する指定障害児入所施設等(次項第六号において「指定障害児入所施設等」という。)
児童福祉法第三十七条に規定する乳児院(次項第七号において「乳児院」という。)
児童福祉法第三十八条に規定する母子生活支援施設(次項第八号において「母子生活支援施設」という。)
児童福祉法第三十九条に規定する保育所(次項第九号において「保育所」という。)ヌ 児童福祉法第四十条に規定する児童館(次項第十号において「児童館」という。)
児童福祉法第四十一条に規定する児童養護施設(次項第十一号において「児童養護施設」という。)
児童福祉法第四十二条に規定する障害児入所施設(同法第二十四条の二第一項に規定する指定障害
児入所施設を除く。次項第十二号において「障害児入所施設」という。)
児童福祉法第四十三条の二に規定する児童心理治療施設(次項第十三号において「児童心理治療施設」という。)
児童福祉法第四十四条に規定する児童自立支援施設(次項第十四号において「児童自立支援施設」という。)
二 次に掲げる事業(以下「児童福祉事業」という。)を行う者
児童福祉法第六条の二の二第一項に規定する障害児通所支援事業であって、同法第二十一条の五の三第一項の規定による指定を受けた者が行うもの(次項第十五号及び第五項第四号から第七号までにおいて「指定障害児通所支援事業」という。)
児童福祉法第六条の三第二十三項に規定する乳児等通園支援事業(次項第十六号において「乳児等通園支援事業」という。)
児童福祉法第二十四条第二項に規定する家庭的保育事業等(次項第十七号において「家庭的保育事業等」という。)
4 この法律において「教員等」とは、次に掲げるものをいう。
一 学校教育法第一条に規定する学校の教職員のうち、次に掲げるものイ 校長、園長、副校長、副園長及び教頭
ロ 主幹教諭、指導教諭、教諭、助教諭、養護教諭養護助教諭栄養教諭、講師、実習助手寄宿舎指導員、教授、准教授及び助教
ハ ロに掲げる教職員の業務に類する業務を行う職員として内閣府令で定めるもの
二 前項第一号ロに規定する専修学校の校長、教員及び教員の業務に類する業務を行う職員として内閣府令で定めるもの
三 幼保連携型認定こども園の教職員のうち、次に掲げるものイ 園長、副園長及び教頭
ロ 主幹保育教諭、指導保育教諭、主幹養護教諭、主幹栄養教諭、保育教諭、助保育教諭、講師、養護教諭養護助教諭及び栄養教諭
ハ ロに掲げる教職員の業務に類する業務を行う職員として内閣府令で定めるもの
四 前項第一号ニに掲げる施設の長及び当該施設の従業者のうち子ども(認定こども園法第二条第一項に規定する子どもをいう。)の教育又は保育に関する業務を行うもの
児童相談所の所長及び児童相談所の従業者のうち児童(児童福祉法第四条第一項に規定する児童をいう。以下この条において同じ。)の指導又は一時保護に関する業務を行うもの
六 指定障害児入所施設等の長並びに指定障害児入所施設等の従業者のうち障害児(児童福祉法第四条第二項に規定する障害児をいう。以下この条において同じ。)に対する保護、日常生活における基本的な動作及び独立自活に必要な知識技能の習得のための支援又は治療に関する業務を行うもの
乳児院の長及び乳児院の従業者のうち児童福祉法第三十七条に規定する乳児の養育に関する業務を行うもの
八 母子生活支援施設の長及び母子生活支援施設の従業者のうち児童の保護又は生活の支援に関する業務を行うもの
保育所の長及び保育所の従業者のうち児童の保育に関する業務を行うもの
十 児童館の長及び児童館の従業者のうち児童の遊びの指導に関する業務を行うもの
十一 児童養護施設の長及び児童養護施設の従業者のうち児童の養護に関する業務を行うもの
十二 障害児入所施設の長及び障害児入所施設の従業者のうち障害児に対する児童福祉法第四十二条各号に定める支援に関する業務を行うもの
十三 児童心理治療施設の長及び児童心理治療施設の従業者のうち児童の心理に関する治療又は生活指導に関する業務を行うもの
十四 児童自立支援施設の長及び児童自立支援施設の従業者のうち児童の指導又は自立の支援に関する業務を行うもの
十五 指定障害児通所支援事業を行う事業所の管理者及び指定障害児通所支援事業に従事する者であって次のイからニまでに掲げるもののうち当該イからニまでに定めるもの
児童福祉法第六条の二の二第二項に規定する児童発達支援(次項第四号において「児童発達支援」という。)に従事する者 障害児に対する同条第二項の内閣府令で定める便宜の供与又は同項に規定する治療に関する業務を行う者
児童福祉法第六条の二の二第三項に規定する放課後等デイサービス(次項第五号において「放課後
等デイサービス」という。)に従事する者 障害児に対する同条第三項の便宜の供与に関する業務を行う者
児童福祉法第六条の二の二第四項に規定する居宅訪問型児童発達支援(次項第六号において「居宅訪問型児童発達支援」という。)に従事する者 障害児に対する同条第四項の内閣府令で定める便宜の供与に関する業務を行う者
児童福祉法第六条の二の二第五項に規定する保育所等訪問支援(次項第七号において「保育所等訪問支援」という。)に従事する者 障害児に対する同条第五項の便宜の供与に関する業務を行う者
十六 乳児等通園支援事業を行う事業所の管理者及び乳児等通園支援事業に従事する者のうち児童福祉法第六条の三第二十三項に規定する乳児又は幼児の遊び又は生活の支援に関する業務を行うもの
十七 家庭的保育事業等を行う事業所の管理者及び家庭的保育事業等に従事する者のうち児童の保育に関する業務を行うもの
5 この法律において「民間教育保育等事業者」とは、次に掲げる事業(以下「民間教育保育等事業」という。)を行う者をいう。
一 学校教育法第百二十四条に規定する専修学校(同法第百二十五条第一項に規定する一般課程に係るものに限る。)又は同法第百三十四条第一項に規定する各種学校における児童等を専ら対象とする学校教育に類する教育を行う事業
二 学校教育法第一条に規定する学校以外の教育施設で学校教育に類する教育を行うもののうち当該教育を行うにつき同法以外の法律に特別の規定があるものにおける学校教育法第五十条に規定する高等学校の課程に類する教育を行う事業であって、内閣府令で定めるもの
三 学校等における教育及び前二号に掲げる事業のほか、児童等に対して技芸又は知識の教授を行う事業であって、次に掲げる要件を満たすもの(次項第三号において「民間教育事業」という。)
イ 当該技芸又は知識を習得するための標準的な修業期間が、六月以上であること。ロ 児童等に対して対面による指導を行うものであること。
ハ 当該事業を営む者の事業所その他の当該事業を営む者が当該事業を行うために用意する場所において指導を行うものであること。
ニ 当該事業において当該技芸又は知識の教授を行う者の人数が、児童対象性暴力等を防止し及び児童
対象性暴力等が行われた場合に児童等を保護するための措置を講ずるために必要な人数その他の事情を勘案して政令で定める人数以上であること。
四 児童発達支援を行う事業(指定障害児通所支援事業に係るものを除く。次項第四号において「児童発達支援事業」という。)
五 放課後等デイサービスを行う事業(指定障害児通所支援事業に係るものを除く。次項第五号において
「放課後等デイサービス事業」という。)
六 居宅訪問型児童発達支援を行う事業(指定障害児通所支援事業に係るものを除く。次項第六号において「居宅訪問型児童発達支援事業」という。
保育所等訪問支援を行う事業(指定障害児通所支援事業に係るものを除く。次項第七号において「保育所等訪問支援事業」という。)
児童福祉法第六条の三第一項に規定する児童自立生活援助事業(次項第八号において「児童自立生活援助事業」という。)
児童福祉法第六条の三第二項に規定する放課後児童健全育成事業及びこれに類する事業で学校教育法
第二十九条に規定する小学校、社会教育法(昭和二十四年法律第二百七号)第二十条に規定する公民館その他の内閣府令で定める施設において行われるもの(次項第九号において「放課後児童健全育成事業等」という。)
児童福祉法第六条の三第三項に規定する子育て短期支援事業(次項第十号において「子育て短期支援事業」という。)
十一 児童福祉法第六条の三第七項に規定する一時預かり事業(次項第十一号において「一時預かり事業」という。)
十二 児童福祉法第六条の三第八項に規定する小規模住居型児童養育事業(次項第十二号において「小規模住居型児童養育事業」という。)
十三 児童福祉法第六条の三第十三項に規定する病児保育事業(次項第十三号において「病児保育事業」という。)
十四 児童福祉法第六条の三第十七項に規定する意見表明等支援事業(次項第十四号において「意見表明等支援事業」という。)
十五 児童福祉法第六条の三第十八項に規定する妊産婦等生活援助事業(次項第十五号において「妊産婦等生活援助事業」という。)
十六 児童福祉法第六条の三第二十項に規定する児童育成支援拠点事業(次項第十六号において「児童育成支援拠点事業」という。)
十七 児童福祉法第五十九条の二第一項に規定する施設における同法第六条の三第九項から第十二項まで又は第三十九条第一項に規定する業務を行う事業(次項第十七号において「認可外保育事業」という。)
十八 障害者の日常生活及び社会生活を総合的に支援するための法律(平成十七年法律第百二十三号。以下この号及び次項第十八号において「障害者総合支援法」という。)第二十九条第一項に規定する指定障害福祉サービスを行う事業(障害児に対する障害者総合支援法第五条第二項に規定する居宅介護、同条第四項に規定する同行援護、同条第五項に規定する行動援護、同条第八項に規定する短期入所又は同条第九項に規定する重度障害者等包括支援を行うものに限る。同号において「指定障害福祉サービス事業」という。)
6 この法律において「教育保育等従事者」とは、次に掲げる者をいう。
一 前項第一号の教育を行う同号に規定する専修学校又は各種学校の校長及び当該教育を行う教員二 前項第二号の教育を行う教育施設の長及び当該教育を行う教員
三 民間教育事業を行う事業所の管理者及び民間教育事業に従事する者のうち児童等に対して技芸又は知識の教授を行うもの
四 児童発達支援事業を行う事業所の管理者及び児童発達支援事業に従事する者のうち障害児に対する児童福祉法第六条の二の二第二項の内閣府令で定める便宜の供与又は同項に規定する治療に関する業務を行うもの
五 放課後等デイサービス事業を行う事業所の管理者及び放課後等デイサービス事業に従事する者のうち障害児に対する児童福祉法第六条の二の二第三項の便宜の供与に関する業務を行うもの
六 居宅訪問型児童発達支援事業を行う事業所の管理者及び居宅訪問型児童発達支援事業に従事する者のうち障害児に対する児童福祉法第六条の二の二第四項の内閣府令で定める便宜の供与に関する業務を行うもの
保育所等訪問支援事業を行う事業所の管理者及び保育所等訪問支援事業に従事する者のうち障害児に対する児童福祉法第六条の二の二第五項の便宜の供与に関する業務を行うもの
八 児童自立生活援助事業を行う事業所の管理者及び児童自立生活援助事業に従事する者のうち児童福祉法第六条の三第一項第一号に掲げる者(児童に限る。)に対する同項に規定する児童自立生活援助を行うもの
九 放課後児童健全育成事業等を行う事業所の管理者及び放課後児童健全育成事業等に従事する者のうち児童の遊び又は生活の支援に関する業務を行うもの
十 子育て短期支援事業を行う事業所の管理者及び子育て短期支援事業に従事する者のうち児童に対する児童福祉法第六条の三第三項に規定する支援に関する業務を行うもの
十一 一時預かり事業を行う事業所の管理者及び一時預かり事業に従事する者のうち児童福祉法第六条の三第七項各号に掲げる者の保護に関する業務を行うもの
十二 小規模住居型児童養育事業を行う事業所の管理者及び小規模住居型児童養育事業に従事する者のうち児童の養育に関する業務を行うもの
十三 病児保育事業を行う事業所の管理者及び病児保育事業に従事する者のうち児童の保育に関する業務を行うもの
十四 意見表明等支援事業を行う事業所の管理者及び意見表明等支援事業に従事する者のうち児童の意見若しくは意向の把握又は児童に対する支援に関する業務を行うもの
十五 妊産婦等生活援助事業を行う事業所の管理者及び妊産婦等生活援助事業に従事する者のうち児童に対する日常生活を営むのに必要な便宜の供与に関する業務を行うもの
十六 児童育成支援拠点事業を行う事業所の管理者及び児童育成支援拠点事業に従事する者のうち児童に対する生活の支援、情報の提供及び相談に関する業務を行うもの
十七 認可外保育事業を行う施設の管理者及び認可外保育事業に従事する者のうち児童の保育に関する業務を行うもの
十八 指定障害福祉サービス事業を行う事業所の管理者及び指定障害福祉サービス事業に従事する者であって次のイからホまでに掲げるもののうち当該イからホまでに定めるもの
イ 障害者総合支援法第五条第二項に規定する居宅介護に従事する者 障害児に対する同項の主務省令
で定める便宜の供与に関する業務を行う者
ロ 障害者総合支援法第五条第四項に規定する同行援護に従事する者 障害児に対する同項の主務省令で定める便宜の供与に関する業務を行う者
ハ 障害者総合支援法第五条第五項に規定する行動援護に従事する者 障害児に対する同項の主務省令で定める便宜の供与に関する業務を行う者
ニ 障害者総合支援法第五条第八項に規定する短期入所に従事する者 障害児に対する同項の主務省令で定める便宜の供与に関する業務を行う者
ホ 障害者総合支援法第五条第九項に規定する重度障害者等包括支援に従事する者 障害児に対する同項の主務省令で定める障害福祉サービスの提供に関する業務を行う者
7 この法律において「特定性犯罪」とは、次に掲げる罪をいう。
一 刑法(明治四十年法律第四十五号)第百七十六条、第百七十七条、第百七十九条から第百八十二条まで、第二百四十一条第一項若しくは第三項又は第二百四十三条(同項の罪に係る部分に限る。)の罪
二 盗犯等の防止及び処分に関する法律(昭和五年法律第九号)第四条の罪(刑法第二百四十一条第一項
の罪を犯す行為に係るものに限る。)三 児童福祉法第六十条第一項の罪
児童買春、児童ポルノに係る行為等の規制及び処罰並びに児童の保護等に関する法律(平成十一年法律第五十二号)第四条から第八条までの罪
五 性的な姿態を撮影する行為等の処罰及び押収物に記録された性的な姿態の影像に係る電磁的記録の消去等に関する法律(令和五年法律第六十七号)第二条から第六条までの罪
都道府県の条例で定める罪であって、次のイからニまでに掲げる行為のいずれかを罰するものとして政令で定めるもの
イ みだりに人の身体の一部に接触する行為
ロ 正当な理由がなくて、人の通常衣服で隠されている下着若しくは身体をのぞき見し、若しくは写真機その他の機器(以下このロにおいて「写真機等」という。)を用いて撮影し、又は当該下着若しくは身体を撮影する目的で写真機等を差し向け、若しくは設置する行為
ハ みだりに卑わいな言動をする行為(イ又はロに掲げるものを除く。)
ニ 児童と性交し、又は児童に対しわいせつな行為をする行為
8 この法律において「特定性犯罪事実該当者」とは、次の各号のいずれかに該当する者をいう。
一 特定性犯罪について拘禁刑を言い渡す裁判が確定した者(その刑の全部の執行猶予の言渡しを受けた者(当該執行猶予の言渡しが取り消された者を除く。次号において「執行猶予者」という。)を除く。)であって、その刑の執行を終わり、又は執行を受けることがなくなった日から起算して二十年を経過しないもの
二 特定性犯罪について拘禁刑を言い渡す裁判が確定した者のうち執行猶予者であって、当該裁判が確定した日から起算して十年を経過しないもの
三 特定性犯罪について罰金を言い渡す裁判が確定した者であって、その刑の執行を終わり、又は執行を受けることがなくなった日から起算して十年を経過しないもの
(学校設置者等及び民間教育保育等事業者の責務等)
第三条 学校設置者等及び民間教育保育等事業者は、児童等に対して教育、保育等の役務を提供する事業を行う立場にあるものであり、児童等に対して当該役務を提供する業務を行う教員等及び教育保育等従事者
による児童対象性暴力等の防止に努め、仮に児童対象性暴力等が行われた場合には児童等を適切に保護する責務を有する。
2 国は、学校設置者等及び民間教育保育等事業者が前項に定める責務を確実に果たすことができるようにするため、必要な情報の提供、制度の整備その他の施策を実施しなければならない。
第二章 学校設置者等が講ずべき措置等
(犯罪事実確認義務等)
第四条 学校設置者等は、教員等としてその本来の業務に従事させようとする者(施行時現職者(この法律の施行の際現に存在し又は行われている学校等又は児童福祉事業についてこの法律の施行の際現に教員等としてその本来の業務に従事させている者及びこの法律の施行の日(以下この項及び第三項において「施行日」という。)の前日までに当該業務に従事させることを決定していた者であって施行日後に当該業務に従事させるものをいう。同項において同じ。)を除く。次項において同じ。)について、当該業務を行わせるまでに、第三十三条第一項に規定する犯罪事実確認書(以下この章及び次章において「犯罪事実確認書」という。)による特定性犯罪事実該当者であるか否かの確認(以下「犯罪事実確認」という。)を
行わなければならない。
2 学校設置者等は、教員等に急な欠員を生じた場合その他のやむを得ない事情として内閣府令で定めるものにより、教員等としてその本来の業務に従事させようとする者について当該業務を行わせるまでに犯罪事実確認を行ういとまがない場合であって、直ちにその者に当該業務を行わせなければ学校等又は児童福祉事業の運営に著しい支障が生ずるときは、前項の規定にかかわらず、その者の犯罪事実確認は、その者を当該業務に従事させた日から六月以内で政令で定める期間内に行うことができる。ただし、学校設置者等は、犯罪事実確認を行うまでの間は、その者を特定性犯罪事実該当者とみなして必要な措置を講じなければならない。
3 学校設置者等は、施行時現職者については、施行日から起算して三年以内で政令で定める期間を経過する日までに、その全ての者(施行日から当該政令で定める期間を経過する日までの間に当該業務に従事しなくなった者を除く。)について、犯罪事実確認を行わなければならない。
4 学校設置者等は、この条の規定による犯罪事実確認を行った教員等をその者の直近の犯罪事実確認書に記載された確認日(第三十四条第二項に規定する確認日をいう。)の翌日から起算して五年を経過する日
の属する年度の末日を超えて引き続き教員等としてその本来の業務に従事させるときは、当該年度の初日から末日までの間に、改めて、その者について、犯罪事実確認を行わなければならない。
(児童対象性暴力等を把握するための措置)
第五条 学校設置者等は、児童等との面談その他の教員等による児童対象性暴力等が行われるおそれがないかどうかを早期に把握するための措置として内閣府令で定めるものを実施しなければならない。
2 学校設置者等は、教員等による児童対象性暴力等に関して児童等が容易に相談を行うことができるようにするために必要な措置として内閣府令で定めるものを実施しなければならない。
(犯罪事実確認の結果等を踏まえて講ずべき措置)
第六条 学校設置者等は、第四条の規定による犯罪事実確認に係る者について、その犯罪事実確認の結果、前条第一項の措置により把握した状況、同条第二項の児童等からの相談の内容その他の事情を踏まえ、その者による児童対象性暴力等が行われるおそれがあると認めるときは、その者を教員等としてその本来の業務に従事させないことその他の児童対象性暴力等を防止するために必要な措置を講じなければならない。
(児童対象性暴力等が疑われる場合等に講ずべき措置)
第七条 学校設置者等は、教員等による児童対象性暴力等が行われた疑いがあると認めるときは、内閣府令で定めるところにより、その事実の有無及び内容について調査を行わなければならない。
2 学校設置者等は、児童等が教員等による児童対象性暴力等を受けたと認めるときは、内閣府令で定めるところにより、当該児童等の保護及び支援のための措置を講じなければならない。
(研修の実施)
第八条 学校設置者等は、児童対象性暴力等の防止に対する関心を高めるとともに、そのために取り組むべき事項に関する理解を深めるための研修を教員等に受講させなければならない。
(県費負担教職員の場合の特例)
第九条 教員等が県費負担教職員(市町村立学校職員給与負担法(昭和二十三年法律第百三十五号)第一条に規定する小学校、中学校、義務教育学校中等教育学校の前期課程若しくは特別支援学校又は同法第二条に規定する高等学校で定時制の課程を置くものの教員等であって、同法の規定により都道府県がその給与を負担するものをいう。)である場合における第四条及び第六条の規定の適用については、第四条第一
項、第二項本文、第三項及び第四項中「学校設置者等」とあるのは「都道府県の教育委員会」と、同条第二項ただし書及び第六条中「学校設置者等」とあるのは「都道府県の教育委員会及び第九条第二項に規定する市町村の教育委員会」とする。
都道府県の教育委員会は、前項の規定により読み替えて適用する第四条の規定により犯罪事実確認を行ったときは、当該犯罪事実確認に係る教員等が勤務する学校を設置する市(地方自治法(昭和二十二年法律第六十七号)第二百五十二条の十九第一項の指定都市(第三十三条第八項において「指定都市」という。)を除き、特別区を含む。第十一条及び第三十三条第八項において同じ。)町村の教育委員会に対し、前項の規定により読み替えて適用する第六条の措置を講ずるために必要な限度において、当該教員等の犯罪事実確認記録(第三十八条第一項に規定する犯罪事実確認記録をいう。以下この章及び次章において同じ。)を提供するものとする。
(施設等運営者がある場合の特例)
第十条 施設等運営者(学校設置者等から地方自治法第二百四十四条の二第三項若しくは国家戦略特別区域法(平成二十五年法律第百七号)第十二条の三第一項の規定による指定又は委託を受けて当該学校設置者
等が設置する学校等又は当該学校設置者等が行う児童福祉事業に係る事業所を管理する者をいう。以下同じ。)がある場合における第四条から第八条までの規定の適用については、これらの規定中「学校設置者等」とあるのは、「学校設置者等及び第十条第一項に規定する施設等運営者」とする。
2 第三十五条第二項の規定により学校設置者等又は施設等運営者が犯罪事実確認書の交付を受けたときは、その交付を受けた者は、他方の者に対し、犯罪事実確認及び前項の規定により読み替えて適用する第六条の措置の実施に必要な限度において、当該犯罪事実確認書に係る教員等の犯罪事実確認記録を提供することができる。
(犯罪事実確認記録等の管理に関する措置)
第十一条 第四条(第九条第一項又は前条第一項の規定により読み替えて適用する場合を含む。)の規定により犯罪事実確認を行わなければならない者及び第九条第二項の規定により犯罪事実確認記録の提供を受ける市町村の教育委員会(以下この章において「犯罪事実確認実施者等」という。)は、犯罪事実確認記録等(第三十八条第一項に規定する犯罪事実確認記録等をいう。以下この章及び次章において同じ。)の管理責任者の設置その他の犯罪事実確認記録等を適正に管理するために必要な措置として内閣府令で定め
るものを講じなければならない。
(利用目的による制限及び第三者に対する提供の禁止)
第十二条 犯罪事実確認実施者等は、次に掲げる場合を除き、犯罪事実確認記録等を犯罪事実確認若しくは第六条(第九条第一項又は第十条第一項の規定により読み替えて適用する場合を含む。)の措置を実施する目的以外の目的のために利用し、又は第三者に提供してはならない。
一 第九条第二項又は第十条第二項の規定により提供する場合
二 訴訟手続その他の裁判所における手続又は刑事事件の捜査のために提供する場合
情報公開・個人情報保護審査会設置法(平成十五年法律第六十号)第九条第一項の規定により情報公開・個人情報保護審査会に提示する場合
四 第十六条第一項、児童福祉法第二十一条の五の二十二第一項、第二十四条の十五第一項、第三十四条の十七第一項若しくは第四十六条第一項又は認定こども園法第十九条第一項若しくは第三十条第三項の規定により報告若しくは提出若しくは提示を求められ、又は質問若しくは検査に応じる場合
(犯罪事実確認書に記載された情報の漏えい等の報告)
十三条 犯罪事実確認実施者等は、犯罪事実確認書に記載された情報の漏えいその他の犯罪事実確認記録等の管理が適正に行われていないと認められる事態であって個人の権利利益を害するおそれが大きいものとして内閣府令で定めるものが生じたときは、内閣府令で定めるところにより、直ちにその旨を内閣総理大臣に報告しなければならない。
(犯罪事実確認記録等の適正な管理)
第十四条 犯罪事実確認実施者等は、犯罪事実確認記録等を適正に管理しなければならない。
(帳簿の備付け及び定期報告)
第十五条 犯罪事実確認実施者等(国、地方公共団体独立行政法人通則法(平成十一年法律第百三号)第二条第一項に規定する独立行政法人国立大学法人法(平成十五年法律第百十二号)第二条第一項に規定する国立大学法人及び地方独立行政法人法(平成十五年法律第百十八号)第二条第一項に規定する地方独立行政法人並びにこれらの者が設置する学校等又はこれらの者が行う児童福祉事業の事業所の管理を行う施設等運営者を除く。以下この章において同じ。)は、内閣府令で定めるところにより、帳簿を備え、これに犯罪事実確認の実施状況を記載し、これを保存しなければならない。
2 犯罪事実確認実施者等は、犯罪事実確認の実施状況及び犯罪事実確認記録等の管理の状況について、内閣府令で定めるところにより、定期的に、内閣総理大臣に報告しなければならない。
(報告徴収及び立入検査)
第十六条 内閣総理大臣は、犯罪事実確認の適切な実施及び犯罪事実確認記録等の適正な管理を確保するために必要な限度において、犯罪事実確認実施者等に対し、犯罪事実確認の実施状況及び犯罪事実確認記録等の管理の状況に関し必要な報告若しくは資料の提出を求め、又はその職員に、犯罪事実確認実施者等の事務所、学校等の施設、児童福祉事業を行う事業所その他必要な場所に立ち入り、犯罪事実確認の実施状況及び犯罪事実確認記録等の管理の状況に関し質問させ、若しくは帳簿、書類その他の物件を検査させることができる。
2 前項の規定により立入検査をする職員は、その身分を示す証明書を携帯し、関係人の請求があったときは、これを提示しなければならない。
3 第一項の規定による立入検査の権限は、犯罪捜査のために認められたものと解釈してはならない。
(犯罪事実確認義務に違反した場合の公表)
第十七条 内閣総理大臣は、犯罪事実確認実施者等が第四条(第十条第一項の規定により読み替えて適用する場合を含む。)の規定に違反していると認めるときは、当該犯罪事実確認実施者等の氏名又は名称その他内閣府令で定める事項をインターネットの利用その他の方法により公表するものとする。
(是正命令)
第十八条 内閣総理大臣は、犯罪事実確認実施者等が第十一条又は第十四条の規定に違反していると認めるとき(同条の規定の違反にあっては、第十三条内閣府令で定める事態が生じた場合に限る。)は、当該犯罪事実確認実施者等に対し、当該違反を是正するために必要な措置をとるべきことを命ずることができる。
第三章 民間教育保育等事業者の認定等及び認定事業者等が講ずべき措置等
(認定の申請)
第十九条 民間教育保育等事業者は、その行う民間教育保育等事業(事業運営者(民間教育保育等事業者から地方自治法第二百四十四条の二第三項の規定による指定又は委託を受けて当該民間教育保育等事業者が行う民間教育保育等事業に係る事業所を管理する者をいう。以下同じ。)がある場合にあっては、当該事
業運営者が管理する事業所において行われるものを除く。)について、前章の規定により学校設置者等が講ずべき措置と同等のものを実施する体制が確保されている旨の内閣総理大臣の認定(以下この章(第二十一条第一項を除く。)において「認定」という。)を受けることができる。
2 認定は、認定を受けようとする民間教育保育等事業者の申請により行う。
3 認定を受けようとする民間教育保育等事業者は、内閣府令で定めるところにより、次に掲げる事項を記載した申請書を内閣総理大臣に提出しなければならない。
一 認定を受けようとする民間教育保育等事業者の氏名又は名称及び住所又は所在地並びに法人にあってはその代表者の氏名
二 その行う民間教育保育等事業(事業運営者が管理する事業所において行われるものを除く。)の概要及び当該民間教育保育等事業が第二条第五項各号に掲げる事業のいずれの事業に該当するかの別
三 前号の民間教育保育等事業を行う事業所の名称及び所在地
四 第二号の民間教育保育等事業に従事する者のうち、その行う業務が教育保育等従事者の業務に該当すると思料するものの業務の概要
五 その他内閣府令で定める事項
4 前項の申請書には、次に掲げる書類を添付しなければならない。
一 前項第二号の民間教育保育等事業及び同項第四号の業務の詳細を説明する資料二 次条第一項各号に掲げる基準に適合していることを証する資料
三 次条第一項第四号に規定する児童対象性暴力等対処規程
四 認定を受けようとする民間教育保育等事業者が犯罪事実確認を適切に実施する旨を誓約する書面五 その他内閣府令で定める書類
(認定の基準等)
第二十条 内閣総理大臣は、認定の申請に係る前条第三項第二号の民間教育保育等事業及び同項第四号の業務の内容がそれぞれ民間教育保育等事業及び教育保育等従事者の業務に該当し、かつ、当該申請が次に掲げる基準に適合すると認めるときでなければ、認定をしてはならない。
一 認定を受けようとする民間教育保育等事業者が前条第三項第四号の業務に従事させようとする者の犯罪事実確認を適切に実施するための体制として内閣府令で定めるものを備えていること。
二 認定を受けようとする民間教育保育等事業者が前条第三項第四号の業務に従事する者による児童対象性暴力等が行われるおそれがないかどうかを早期に把握するための措置として内閣府令で定めるものを実施していること。
三 認定を受けようとする民間教育保育等事業者が前条第三項第四号の業務に従事する者による児童対象性暴力等に関して児童等が容易に相談を行うことができるようにするために必要な措置として内閣府令で定めるものを実施していること。
四 認定を受けようとする民間教育保育等事業者が次のイからハまでに掲げる措置を定めた規程(以下この章において「児童対象性暴力等対処規程」という。)を作成しており、かつ、その内容が内閣府令で定める基準に適合するものであること。
イ 犯罪事実確認の結果、第二号の措置により把握した状況、前号の児童等からの相談の内容その他の事情を踏まえて前条第三項第四号の業務に従事する者による児童対象性暴力等が行われるおそれがあると認める場合において、児童対象性暴力等を防止するためにとるべき措置(第二十六条第七項において「防止措置」という。)
ロ 前条第三項第四号の業務に従事する者による児童対象性暴力等が行われた疑いがあると認める場合において、その事実の有無及び内容を確認するための調査の実施
ハ 前条第三項第四号の業務に従事する者による児童対象性暴力等を受けた児童等があると認める場合において、当該児童等を保護し、及び支援するためにとるべき措置
五 認定を受けようとする民間教育保育等事業者が、児童対象性暴力等の防止に対する関心を高めるとともに、そのために取り組むべき事項に関する理解を深めるための研修として内閣府令で定めるものを前条第三項第四号の業務に従事する者に受講させていること。
六 認定を受けようとする民間教育保育等事業者が犯罪事実確認記録等を適正に管理するために必要な措置として内閣府令で定めるものを講じていること。
2 次の各号のいずれかに該当する民間教育保育等事業者は、認定を受けることができない。
一 第三十二条第一項又は第二項の規定により認定等(第二十二条に規定する認定等をいう。以下この号において同じ。)を取り消された者であって、その取消しの日から二年を経過しない者(認定等を取り消された者が法人である場合にあっては、当該取消しの処分に係る行政手続法(平成五年法律第八十八
号)第十五条第一項の規定による通知があった日前六十日以内に当該法人の役員であった者でその取消しの日から二年を経過しないものを含む。)
二 この法律の規定により刑に処せられ、その執行を終わり、又はその執行を受けることがなくなった日から起算して五年を経過しない者
三 法人であって、その役員のうちに前二号のいずれかに該当する者があるもの
(共同認定の申請)
第二十一条 民間教育保育等事業者及び事業運営者は、その行う民間教育保育等事業(事業運営者が管理する事業所において行われるものに限る。)について、前章の規定により学校設置者等が講ずべき措置と同等のものを実施する体制が確保されている旨の内閣総理大臣の認定(以下「共同認定」という。)を受けることができる。
2 共同認定は、共同認定を受けようとする民間教育保育等事業者及び事業運営者の共同の申請により行う。
3 第十九条第三項及び第四項並びに前条の規定は、共同認定について準用する。この場合において、第十
九条第三項(第二号から第五号までの規定を除く。)及び第四項第四号並びに前条第一項各号及び第二項中「民間教育保育等事業者」とあるのは「民間教育保育等事業者及び事業運営者」と、第十九条第三項第二号中「を除く」とあるのは「に限る」と、同条第四項第二号中「資料」とあるのは「資料(民間教育保育等事業者及び事業運営者のそれぞれの役割を説明した資料を含む。)」と読み替えるものとする。
(認定等の公表)
第二十二条 内閣総理大臣は、認定又は共同認定(以下「認定等」という。)をしたときは、遅滞なく、その旨及び次に掲げる事項を、認定等の申請をした者に通知するとともに、インターネットの利用その他の方法により公表するものとする。
一 認定を受けた民間教育保育等事業者又は共同認定を受けた民間教育保育等事業者及び事業運営者(以下「認定事業者等」という。)の氏名又は名称及び住所又は所在地並びに法人にあってはその代表者の氏名
二 認定等に係る民間教育保育等事業(以下「認定等事業」という。)の概要及び第二条第五項各号に掲げる事業のいずれの事業に該当するかの別
三 認定等事業を行う事業所の名称及び所在地 四 認定等に係る教育保育等従事者の業務の概要五 その他内閣府令で定める事項
(認定等の表示)
第二十三条 認定事業者等は、認定等事業に関する広告その他の内閣府令で定めるもの(次項において「広告等」という。)に、内閣総理大臣が定める表示を付することができる。
2 何人も、前項の規定による場合を除くほか、広告等に同項の表示又はこれと紛らわしい表示を付してはならない。
(変更の届出等)
第二十四条 認定事業者等は、第二十二条各号に掲げる事項を変更するときは、内閣府令で定めるところにより、あらかじめ、その旨を内閣総理大臣に届け出なければならない。
内閣総理大臣は、前項の規定による届出があったときは、遅滞なく、その旨をインターネットの利用その他の方法により公表するものとする。
3 認定事業者等は、児童対象性暴力等対処規程又は第二十条第一項第六号(第二十一条第三項において準用する場合を含む。)の措置を変更するときは、内閣府令で定めるところにより、あらかじめ、その旨を内閣総理大臣に届け出なければならない。ただし、軽微な変更として内閣府令で定めるものについては、この限りではない。
(児童対象性暴力等対処規程の遵守義務)
第二十五条 認定事業者等は、児童対象性暴力等対処規程を遵守しなければならない。
(犯罪事実確認義務等)
第二十六条 認定事業者等は、認定等に係る教育保育等従事者としてその業務に従事させようとする者(認定時現職者(認定等の際現に当該業務に従事させている者及び認定等を受けた日(以下この項及び第三項において「認定等の日」という。)の前日までに当該業務に従事させることを決定していた者であって認定等の日の後に当該業務に従事させるものをいう。同項において同じ。)を除く。次項において同じ。)について、当該業務を行わせるまでに、犯罪事実確認を行わなければならない。
2 認定事業者等は、認定等に係る教育保育等従事者に急な欠員を生じた場合その他のやむを得ない事情と
して内閣府令で定めるものにより、認定等に係る教育保育等従事者としてその業務に従事させようとする者について当該業務を行わせるまでに犯罪事実確認を行ういとまがない場合であって、直ちにその者に当該業務を行わせなければ認定等事業の運営に著しい支障が生ずるときは、前項の規定にかかわらず、その者の犯罪事実確認は、その者を当該業務に従事させた日から六月以内で政令で定める期間内に行うことができる。ただし、認定事業者等は、犯罪事実確認を行うまでの間は、その者を特定性犯罪事実該当者とみなして必要な措置を講じなければならない。
3 認定事業者等は、認定時現職者については、認定等の日から起算して一年以内で政令で定める期間を経過する日までに、その全ての者(認定等の日から当該政令で定める期間を経過する日までの間に当該業務に従事しなくなった者を除く。)について、犯罪事実確認を行わなければならない。
4 認定事業者等は、前項の犯罪事実確認が完了したときは、内閣府令で定めるところにより、その旨を内閣総理大臣に届け出るものとする。
内閣総理大臣は、前項の規定による届出を受けたときは、当該認定事業者等が法定の期間内に認定等事業に従事する全ての教育保育等従事者について犯罪事実確認を行った旨をインターネットの利用その他の
方法により公表するものとする。
6 認定事業者等は、第一項から第三項まで及びこの項の規定による犯罪事実確認を行った者をその者の直近の犯罪事実確認書に記載された確認日(第三十四条第二項に規定する確認日をいう。)の翌日から起算して五年を経過する日の属する年度の末日を超えて引き続き認定等に係る教育保育等従事者としてその業務に従事させるときは、当該年度の初日から末日までの間に、改めて、その者について、犯罪事実確認を行わなければならない。
7 第三十五条第二項の規定により民間教育保育等事業者又は事業運営者が犯罪事実確認書の交付を受けたときは、その交付を受けた者は、他方の者に対し、犯罪事実確認及び児童対象性暴力等対処規程に定める防止措置の実施に必要な限度において、当該犯罪事実確認に係る教育保育等従事者の犯罪事実確認記録を提供することができる。
(犯罪事実確認記録等の適正な管理)
第二十七条 認定事業者等は、犯罪事実確認記録等を適正に管理しなければならない。
2 第十二条及び第十三条の規定は、認定事業者等について準用する。この場合において、第十二条中「第
六条(第九条第一項又は第十条第一項の規定により読み替えて適用する場合を含む。)の措置」とあるのは「第二十六条第七項に規定する防止措置」と、同条第一号中「第九条第二項又は第十条第二項」とあるのは「第二十六条第七項」と、同条第四号中「第十六条第一項、児童福祉法第二十一条の五の二十二第一項、第二十四条の十五第一項、第三十四条の十七第一項若しくは第四十六条第一項又は認定こども園法第十九条第一項若しくは第三十条第三項」とあるのは「第二十九条第一項」と、「提出若しくは提示」とあるのは「提出」と読み替えるものとする。
(帳簿の備付け及び定期報告)
第二十八条 認定事業者等は、内閣府令で定めるところにより、帳簿を備え、これに犯罪事実確認の実施状況を記載し、これを保存しなければならない。
2 認定事業者等は、犯罪事実確認等(犯罪事実確認、第二十条第一項第二号、第三号、第五号及び第六号
(これらの規定を第二十一条第三項において準用する場合を含む。)に規定する措置並びに児童対象性暴力等対処規程に定める第二十条第一項第四号イからハまで(これらの規定を第二十一条第三項において準用する場合を含む。)に掲げる措置をいう。次条第一項において同じ。)の実施状況及び犯罪事実確認記
録等の管理の状況について、内閣府令で定めるところにより、定期的に、内閣総理大臣に報告しなければならない。
(報告徴収及び立入検査)
第二十九条 内閣総理大臣は、犯罪事実確認等の適切な実施及び犯罪事実確認記録等の適正な管理を確保するために必要な限度において、認定事業者等に対し、犯罪事実確認等の実施状況及び犯罪事実確認記録等の管理の状況に関し必要な報告若しくは資料の提出を求め、又はその職員に、認定事業者等の事務所、認定等事業を行う事業所その他必要な場所に立ち入り、犯罪事実確認等の実施状況及び犯罪事実確認記録等の管理の状況に関し質問させ、若しくは帳簿、書類その他の物件を検査させることができる。
2 第十六条第二項及び第三項の規定は、前項の規定による立入検査について準用する。
(適合命令及び是正命令)
第三十条 内閣総理大臣は、認定事業者等が第二十条第一項各号(第二十一条第三項において準用する場合を含む。)に掲げる基準のいずれかに適合しなくなったと認めるときは、当該認定事業者等に対し、期限を定めて、当該基準に適合するために必要な措置をとるべきことを命ずることができる。
内閣総理大臣は、認定事業者等が第二十七条第一項の規定に違反していると認めるとき(同条第二項において準用する第十三条内閣府令で定める事態が生じた場合に限る。)は、当該認定事業者等に対し、当該違反を是正するために必要な措置をとるべきことを命ずることができる。
(廃止の届出)
第三十一条 認定事業者等は、認定等事業を廃止するときは、内閣府令で定めるところにより、あらかじめ、その旨及び廃止しようとする日(以下この条において「廃止の日」という。)を内閣総理大臣に届け出なければならない。
内閣総理大臣は、前項の規定による届出があったときは、遅滞なく、その旨及び廃止の日をインターネットの利用その他の方法により、公表しなければならない。
3 認定等は、廃止の日として第一項の規定により届け出られた日以後は、その効力を失う。
(認定等の取消し等)
第三十二条 内閣総理大臣は、認定事業者等が次の各号のいずれかに該当するときは、認定等を取り消すものとする。
一 偽りその他不正の手段により認定等を受けたとき。
二 第二十条第二項第二号又は第三号(これらの規定を第二十一条第三項において準用する場合を含む。)に掲げる者に該当することとなったとき。
三 第二十六条第一項から第三項まで又は第六項の規定に違反して犯罪事実確認を行っていないとき。四 第三十条の規定による命令に違反したとき。
内閣総理大臣は、認定事業者等が次の各号のいずれかに該当するときは、認定等を取り消すことができる。
一 民間教育保育等事業者又は事業運営者に該当しなくなったとき。二 認定等事業を行っていないと認めるとき。
三 第二十条第一項各号(第二十一条第三項において準用する場合を含む。)に掲げる基準のいずれかに適合しなくなったと認めるとき。
四 第二十四条第一項若しくは第三項、第二十五条、第二十八条又は前条第一項の規定に違反したとき。五 第二十七条第一項又は同条第二項において準用する第十二条若しくは第十三条の規定に違反したとき
(第二十七条第一項の規定の違反にあっては、同条第二項において準用する第十三条内閣府令で定める事態が生じた場合に限る。)。
六 第二十九条第一項の規定による報告若しくは資料の提出をせず、若しくは虚偽の報告をし、若しくは虚偽の資料を提出し、又は同項の規定による質問に対して答弁をせず、若しくは虚偽の答弁をし、若しくは同項の規定による検査を拒み、妨げ、若しくは忌避したとき。
内閣総理大臣は、前二項の規定による認定等の取消しをしたときは、その旨をインターネットの利用その他の方法により公表しなければならない。
第四章 犯罪事実確認書の交付等
(犯罪事実確認書の交付申請)
第三十三条 対象事業者(第四条(第九条第一項又は第十条第一項の規定により読み替えて適用する場合を含む。)並びに第二十六条第一項から第三項まで及び第六項の規定により犯罪事実確認を行わなければならない者をいう。以下同じ。)は、これらの規定により犯罪事実確認を行わなければならないこととされている者(次項において「従事者」という。)について、内閣総理大臣に対し、特定性犯罪事実該当者に
該当するか否かに関する情報を記載した書面(以下「犯罪事実確認書」という。)の交付を申請することができる。
2 前項の規定による申請(以下この章において「交付申請」という。)の対象とする従事者(以下この章において「申請従事者」という。)の行う業務が施設等運営者又は事業運営者が管理する施設又は事業所において行われるものである場合にあっては、交付申請は、学校設置者等及び施設等運営者又は共同認定を受けた民間教育保育等事業者及び事業運営者が共同して行うものとする。
3 犯罪事実確認書の交付を受けようとする対象事業者は、内閣府令で定めるところにより、次に掲げる事項を記載した申請書を内閣総理大臣に提出しなければならない。
一 交付を受けようとする対象事業者の氏名又は名称及び住所又は所在地並びに法人にあってはその代表者の氏名
二 申請従事者の氏名、住所又は居所、生年月日及び性別
三 申請従事者が勤務する学校等の名称及び所在地又は申請従事者が従事する児童福祉事業若しくは認定等事業の概要
四 申請従事者が行う業務の内容
五 申請従事者が教員等又は認定等に係る教育保育等従事者の業務に従事させようとする者である場合にあっては、当該申請従事者を当該業務に従事させる予定の日(第三十八条第二項第二号において「従事予定日」という。)
六 交付申請が前項の規定により共同で行われる場合にあっては、交付申請をした者のうち犯罪事実確認書の送付を受ける者
七 その他内閣府令で定める事項
4 前項の申請書(以下この章において「申請書」という。)には、次に掲げる書類を添付しなければならない。
一 申請従事者と対象事業者との間の雇用契約の契約書の写しその他の当該申請従事者を交付申請に係る業務に従事させることを証する書類
二 その他内閣府令で定める書類
5 対象事業者は、申請書を提出するときは、申請従事者に、内閣府令で定めるところにより、申請対象者
情報(当該申請従事者の氏名、住所又は居所、生年月日及び性別並びに当該対象事業者の氏名又は名称及び住所又は所在地をいう。第三十五条第四項及び第三十七条第三項第一号において同じ。)を記載した書面及び次の各号に掲げる場合の区分に応じ当該各号に定める書類を内閣総理大臣に提出させるものとする。
一 申請従事者が日本の国籍を有する場合 次に掲げる書類(ロに掲げる書類にあっては、当該申請従事者に係る除かれた戸籍がある場合に限る。)
イ 当該申請従事者の本籍、戸籍法(昭和二十二年法律第二百二十四号)第十三条第一項第一号から第四号までに掲げる事項その他の次条第一項に規定する本人特定情報(以下この条において「本人特定情報」という。)に関する事項として内閣府令で定めるもの(ロにおいて「本籍等」という。)が記載され又は記録された全ての戸籍の抄本、戸籍に記載した事項に関する証明書、同法第百二十条第一項に規定する戸籍証明書又は戸籍の謄本
ロ 当該申請従事者の本籍等が記載され又は記録された全ての除かれた戸籍の抄本、除かれた戸籍に記載した事項に関する証明書、戸籍法第百二十条第一項に規定する除籍証明書又は除かれた戸籍の謄本
二 申請従事者が日本の国籍を有しない場合 当該申請従事者の住民基本台帳法(昭和四十二年法律第八十一号)第十二条第一項に規定する住民票の写しその他の本人特定情報を把握するために必要な書類として内閣府令で定めるもの
6 前項の規定により当該申請従事者が同項各号に定める書類を提出する場合において、当該書類のうちに当該申請従事者が同項の規定により既に提出したものがあるときは、内閣府令で定めるところにより、当該書類(本人特定情報の変更の有無及び内容を把握するために必要なものとして内閣府令で定めるものを除く。)の提出を省略することができる。
7 申請従事者が第五項の規定による書類の提出を当該対象事業者を経由して行うことを希望するときは、当該対象事業者は、これを拒んではならない。
内閣総理大臣は、本人特定情報の確認のため必要があるときは、市町村、指定都市の区若しくは総合区又は出入国在留管理庁に照会し、又は協力を求めることができる。
内閣総理大臣による犯罪事実の確認)
第三十四条 内閣総理大臣は、犯罪事実確認書を交付するため、法務大臣に対し、申請従事者に係る次に掲
げる事項(以下この章において「本人特定情報」という。)を提供し、次項に規定する事項を通知するよう求めることができる。
一 氏名(変更があった者については、変更前の全ての氏名及び変更の年月日を含む。)二 出生の年月日
三 次のイ又はロに掲げる場合の区分に応じ、当該イ又はロに定める事項
イ 当該申請従事者が日本の国籍を有する場合 本籍(変更があった者については、変更前の全ての本籍及び変更の年月日を含む。)
ロ 当該申請従事者が日本の国籍を有しない場合 住民基本台帳法第三十条の四十五に規定する国籍等
(以下このロ及び次項において「国籍等」という。)(変更があった者については、変更前の全ての国籍等及び変更の年月日を含む。)
法務大臣は、前項の規定による求めがあったときは、次の各号に掲げる場合の区分に応じ、当該各号に定める事項及び当該各号のいずれの場合に該当するかの確認を行った日(次条第四項及び第三十八条第一項において「確認日」という。)を内閣総理大臣に通知するものとする。
一 特定性犯罪についての事件(拘禁刑又は罰金を言い渡す裁判が確定したものに限る。次号において同じ。)の保管記録(刑事確定訴訟記録法(昭和六十二年法律第六十四号)第二条第二項に規定する保管記録をいう。次号において同じ。)に記録された被告人の氏名、出生の年月日及び本籍又は国籍等のうちに、前項の規定により提供された本人特定情報に合致するものがない場合 その旨
二 特定性犯罪についての事件の保管記録に記録された被告人の氏名、出生の年月日及び本籍又は国籍等のうちに、前項の規定により提供された本人特定情報に合致するものがある場合 本人特定情報に合致する被告人の特定性犯罪についての次に掲げる事項
イ 罪名
ロ 裁判(拘禁刑又は罰金に処する確定裁判に限る。)の主文の内容ハ ロの裁判において示された法令の適用
ニ ロの裁判が確定した日
ホ 当該被告人が当該特定性犯罪について拘禁刑の全部の執行猶予の言渡しを受け、その言渡しが取り消された者であるときは、その旨
ヘ 当該被告人が当該特定性犯罪について刑の執行を終わり、又は執行を受けることがなくなった者であるときは、当該刑の執行を終わり、又はその執行を受けることがなくなった日
(犯罪事実確認書の交付)
第三十五条 内閣総理大臣は、前条第二項の規定による通知を受けたときは、遅滞なく、交付申請をした対象事業者に対し、当該交付申請に係る申請従事者の犯罪事実確認書を交付するものとする。
2 交付申請が第三十三条第二項の規定により共同で行われた場合における前項の規定による犯罪事実確認書の交付は、申請書に記載された同条第三項第六号の者に対して犯罪事実確認書を送付することにより行うものとする。
3 第一項の規定にかかわらず、内閣総理大臣は、第十八条の規定による命令、第三十条第一項の規定による命令(第二十条第一項第六号(第二十一条第三項において準用する場合を含む。)に掲げる基準に係るものに限る。)又は第三十条第二項の規定による命令を受けた対象事業者からの交付申請については、これらの命令に係る措置が講じられたものと認めるまでの間は、犯罪事実確認書の交付を行わないものとする。
4 犯罪事実確認書には、申請対象者情報及び確認日並びに次の各号に掲げる場合の区分に応じ当該各号に定める事項を記載する。
一 申請従事者が特定性犯罪事実該当者であると認められない場合 その旨
二 申請従事者が特定性犯罪事実該当者であると認められる場合 次に掲げる事項
イ 当該申請従事者についての第二条第八項各号に掲げる特定性犯罪事実該当者の区分ロ その特定性犯罪の裁判が確定した日
内閣総理大臣は、第一項の規定により前項第二号に定める事項を記載した犯罪事実確認書を交付するときは、あらかじめ、当該犯罪事実確認書に係る申請従事者に当該犯罪事実確認書に記載する内容を通知しなければならない。この場合においては、当該犯罪事実確認書の第一項の規定による交付は、第三十七条第二項に規定する期間を経過するまで(当該期間内に同項に規定する訂正請求があった場合にあっては、当該訂正請求に係る同条第六項又は第七項の規定による通知をするまで)は、行わないものとする。
6 前各項に定めるもののほか、犯罪事実確認書の様式その他の犯罪事実確認書の交付の手続に関し必要な事項は、内閣府令で定める。
(犯罪事実確認書管理簿)
第三十六条 内閣総理大臣は、申請従事者ごとに、次に掲げる事項を記載した帳簿(次項において「犯罪事実確認書管理簿」という。)を作成しなければならない。
一 本人特定情報
二 申請書に記載された第三十三条第三項各号に掲げる事項
三 第三十四条第二項又は次条第五項の規定により法務大臣から通知された事項
四 次条第二項に規定する訂正請求があった場合にあっては、同条第六項又は第七項の決定の内容五 犯罪事実確認書に記載した事項及び当該犯罪事実確認書の交付の日
2 前項に定めるもののほか、犯罪事実確認書管理簿の様式その他犯罪事実確認書管理簿に関し必要な事項は、内閣府令で定める。
(訂正請求)
第三十七条 第三十五条第五項の規定による通知を受けた申請従事者は、同項の規定により通知された内容
(以下この条において「通知内容」という。)が事実でないと思料するときは、内閣総理大臣に対し、当
該通知内容の訂正を請求することができる。
2 前項の規定による訂正の請求(以下この条において「訂正請求」という。)は、第三十五条第五項の規定による通知を受けた日から二週間以内にしなければならない。
3 訂正請求は、次に掲げる事項を記載した書面を内閣総理大臣に提出してしなければならない。一 訂正請求をする者の申請対象者情報
二 訂正請求の趣旨及び理由
内閣総理大臣は、訂正請求に理由があるかどうかの判断をするため必要があるときは、法務大臣に対し、第三十四条第二項の規定により通知された内容に誤りがないかどうかについて確認を求めることができる。
法務大臣は、第三十四条第二項の規定により通知した内容に誤りがあることを発見したときは、直ちに、内閣総理大臣に対して、その内容を訂正して通知しなければならない。
内閣総理大臣は、訂正請求に理由があると認めるときは、通知内容を訂正する旨の決定をし、訂正請求をした申請従事者に対しその旨を書面により通知するとともに、交付申請をした対象事業者に対し訂正し
た内容を記載した犯罪事実確認書を交付しなければならない。
内閣総理大臣は、訂正請求に理由がないと認めるときは、通知内容を訂正しない旨の決定をし、訂正請求をした申請従事者に対し、その旨及び理由を書面により通知しなければならない。
(犯罪事実確認記録等の廃棄及び消去)
第三十八条 犯罪事実確認書受領者等(犯罪事実確認書の交付を受けた対象事業者及び第九条第二項、第十条第二項又は第二十六条第七項の規定による提供を受けた者をいう。以下同じ。)は、犯罪事実確認書に記載された確認日から起算して五年を経過した日の属する年度の末日から起算して三十日を経過する日までに、当該犯罪事実確認書の犯罪事実確認記録等(犯罪事実確認書及び犯罪事実確認書に記載された情報に係る記録(第四十六条第三号において「犯罪事実確認記録」という。)をいう。以下この条において同じ。)を廃棄し及び消去しなければならない。
2 前項の規定にかかわらず、犯罪事実確認書受領者等は、犯罪事実確認に係る申請従事者が離職した場合又は犯罪事実確認書受領者等が当該申請従事者を任命せず若しくは雇用しなかった場合には、次の各号に掲げる場合の区分に応じ、当該各号に定める日から起算して三十日が経過する日までに、当該申請従事者
の犯罪事実確認記録等を廃棄し及び消去しなければならない。一 当該申請従事者が離職した場合 離職の日
二 犯罪事実確認書受領者等が当該申請従事者を任命せず又は雇用しなかった場合 従事予定日として当該申請従事者の犯罪事実確認書の申請書に記載した日(当該犯罪事実確認書の交付の日が当該従事予定日より遅いときは、当該交付の日)
3 前二項の規定にかかわらず、犯罪事実確認書受領者等は、学校設置者等、施設等運営者又は認定事業者等のいずれにも該当しなくなったときは、その日から起算して三十日が経過する日までに、当該犯罪事実確認書受領者等が取得した全ての犯罪事実確認記録等を廃棄し及び消去しなければならない。
(職員等の秘密保持義務)
第三十九条 犯罪事実確認書受領者等(その者が法人である場合にあっては、その役員)若しくはその職員若しくは従業者又はこれらであった者は、その業務に関して知り得た犯罪事実確認書(第三十五条第四項第二号に定める事項が記載されたものに限る。第四十五条第二項において同じ。)に記載された情報の内容をみだりに他人に知らせ、又は不当な目的に利用してはならない。
第五章 雑則
(手数料)
第四十条 認定等を受けようとする者(国及び地方公共団体並びにこれらが行う民間教育保育等事業の事業所の管理を行う事業運営者を除く。)は、実費を勘案して政令で定める額の手数料を納付しなければならない。
(関係大臣への協議)
第四十一条 内閣総理大臣は、次の各号に掲げる内閣府令を制定し、又は改廃するときは、あらかじめ、当該各号に定める大臣に協議するものとする。
一 第二条第四項第一号ハ、第二号及び第三号ハ並びに第五項第二号及び第九号、第四条第二項(第九条第一項又は第十条第一項の規定により読み替えて適用する場合を含む。)並びに第五条及び第七条(こ れらの規定を第十条第一項の規定により読み替えて適用する場合を含む。)の内閣府文部科学大臣二 第二十条第一項第一号から第五号まで(これらの規定を第二十一条第三項において準用する場合を含
む。)及び第二十六条第二項の内閣府文部科学大臣及び経済産業大臣
(こども家庭庁長官への内閣総理大臣に係る権限の委任)
第四十二条 内閣総理大臣は、この法律に規定する内閣総理大臣の権限(政令で定めるものを除く。)をこども家庭庁長官に委任する。
第六章 罰則
(情報不正目的提供罪)
第四十三条 犯罪事実確認書受領者等(その者が法人である場合にあっては、その役員)若しくはその職員若しくは従業者又はこれらであった者が、その業務に関して知り得た犯罪事実確認書に記載された情報を自己又は第三者の不正な利益を図る目的で提供したときは、二年以下の拘禁刑若しくは百万円以下の罰金に処し、又はこれを併科する。
(犯罪事実確認書不正取得罪)
第四十四条 偽りその他不正の手段により犯罪事実確認書の交付を受けたときは、当該違反行為をした者は、一年以下の拘禁刑又は百万円以下の罰金に処する。
(虚偽表示罪及び情報漏示等罪)
第四十五条 第二十三条第二項の規定に違反して、同条第一項の表示又はこれと紛らわしい表示を付したときは、当該違反行為をした者は、一年以下の拘禁刑若しくは五十万円以下の罰金に処し、又はこれを併科する。
2 第三十九条の規定に違反して、その業務に関して知り得た犯罪事実確認書に記載された情報の内容をみだりに他人に知らせ、又は不当な目的に利用した者は、一年以下の拘禁刑若しくは五十万円以下の罰金に処し、又はこれを併科する。
(帳簿の不備等の罪)
第四十六条 次の各号のいずれかに該当する場合には、当該違反行為をした者は、五十万円以下の罰金に処する。
一 第十五条第一項又は第二十八条第一項の規定に違反して帳簿を備えず、帳簿に記載せず、若しくは虚偽の記載をし、又は帳簿を保存しなかったとき。
二 第十六条第一項又は第二十九条第一項の規定による報告若しくは資料の提出をせず、若しくは虚偽の報告をし、若しくは虚偽の資料を提出し、又はこれらの規定による質問に対して答弁をせず、若しくは
虚偽の答弁をし、若しくはこれらの規定による検査を拒み、妨げ、若しくは忌避したとき。
三 第三十八条の規定に違反して犯罪事実確認書の廃棄又は犯罪事実確認記録の消去をしなかったとき。
(国外犯)
第四十七条 第四十三条及び第四十五条第二項の規定は、日本国外においてこれらの規定の罪を犯した者にも適用する。
(両罰規定)
第四十八条 法人の代表者又は法人若しくは人の代理人、使用人その他の従業者が、その法人又は人の業務に関し、第四十三条、第四十四条、第四十五条第一項又は第四十六条の違反行為をしたときは、行為者を罰するほか、その法人又は人に対して各本条の罰金刑を科する。
附 則
(施行期日)
第一条 この法律は、公布の日から起算して二年六月を超えない範囲内において政令で定める日から施行する。ただし、附則第四条及び第五条の規定は、公布の日から施行する。
(改正前の刑法に規定する罪についてのこの法律の適用関係)
第二条 第二条第七項(第一号に係る部分に限る。)の規定の適用については、次に掲げる罪は、同号に掲げる罪とみなす。
一 刑法の一部を改正する法律(平成二十九年法律第七十二号。次項において「刑法一部改正法」という。)による改正前の刑法第百七十八条の二、第百八十一条第三項若しくは第二百四十一条の罪又はこれらの罪の未遂罪
二 刑法及び刑事訴訟法の一部を改正する法律(令和五年法律第六十六号)第一条の規定による改正前の刑法第百七十六条から第百七十八条までの罪又はこれらの罪の未遂罪
2 第二条第七項(第二号に係る部分に限る。)の規定の適用については、刑法一部改正法附則第三条の規定による改正前の盗犯等の防止及び処分に関する法律第四条の罪(刑法一部改正法による改正前の刑法第二百四十一条前段の罪又はその未遂罪を犯す行為に係るものに限る。)は、同号に掲げる罪とみなす。
(懲役を言い渡す裁判についてのこの法律の適用関係)
第三条 第二条第八項(第一号及び第二号に係る部分に限る。)及び第三十四条第二項(第一号並びに第二号ロ及びホに係る部分に限る。)の規定の適用については、刑法等の一部を改正する法律(令和四年法律第六十七号)第二条の規定による改正前の刑法第十二条に規定する懲役又はその全部の執行猶予を言い渡す裁判は、拘禁刑又はその全部の執行猶予を言い渡す裁判とみなす。
(準備行為)
第四条 内閣総理大臣は、第四十一条各号に掲げる内閣府令を定めるため、この法律の施行の日前においても、当該各号に定める大臣に協議することができる。
政令への委任)
第五条 附則第二条から前条までに定めるもののほか、この法律の施行に関し必要な経過措置は、政令で定める。
(検討)
第六条 政府は、この法律の施行後三年を目途として、この法律の施行の状況等を勘案しつつ、学校設置者等、教員等、民間教育保育等事業者、教育保育等従事者及び特定性犯罪事実該当者の範囲を含め、児童対象性暴力等の防止に関する制度の在り方について検討を加え、必要があると認めるときは、その結果に基
づいて必要な措置を講ずるものとする。
(学校教育法の一部改正)
第七条 学校教育法の一部を次のように改正する。第十二条の次に次の一条を加える。
第十二条の二 学校(大学を除く。)の設置者は、学校設置者等及び民間教育保育等事業者による児童対象性暴力等の防止等のための措置に関する法律(令和六年法律第 号)で定めるところにより、児童対象性暴力等(同法第二条第二項に規定する児童対象性暴力等をいう。以下この条において同じ。)を防止し、並びに児童対象性暴力等が行われた場合に幼児、児童、生徒及び学生を適切に保護するために必要な措置を講じなければならない。
第百三十三条第一項中「専修学校に、」の下に「第十二条の二の規定は専修学校(高等課程を置くものに限る。)に、」を加える。
児童福祉法の一部改正)
第八条 児童福祉法の一部を次のように改正する。
第十二条第六項の次に次の一項を加える。
都道府県知事は、学校設置者等及び民間教育保育等事業者による児童対象性暴力等の防止等のための措置に関する法律(令和六年法律第 号)で定めるところにより、当該都道府県が設置する児童相談所について、児童対象性暴力等(同法第二条第二項に規定する児童対象性暴力等をいう。以下この項及び第二十一条の五の十八第四項において同じ。)を防止し、及び児童対象性暴力等が行われた場合に児童を適切に保護するために必要な措置を講じなければならない。
第二十一条の五の十八に次の一項を加える。
指定障害児通所支援事業者は、学校設置者等及び民間教育保育等事業者による児童対象性暴力等の防止等のための措置に関する法律で定めるところにより、児童対象性暴力等を防止し、及び児童対象性暴力等が行われた場合に児童を適切に保護するために必要な措置を講じなければならない。
第二十一条の五の二十三第一項に次の一号を加える。
五 学校設置者等及び民間教育保育等事業者による児童対象性暴力等の防止等のための措置に関する法律若しくは同法に基づいて発する命令又はこれらに基づいてする処分に違反した場合 当該違反を是正するために必要な措置をとること。
第二十一条の五の二十四第一項第十号中「この法律」の下に「、学校設置者等及び民間教育保育等事業者による児童対象性暴力等の防止等のための措置に関する法律」を加える。
第二十四条の十一に次の一項を加える。
第二十一条の五の十八第四項の規定は、指定障害児入所施設等の設置者について準用する。第二十四条の十六第一項に次の一号を加える。
四 学校設置者等及び民間教育保育等事業者による児童対象性暴力等の防止等のための措置に関する法律若しくは同法に基づいて発する命令又はこれらに基づいてする処分に違反した場合 当該違反を是正するために必要な措置をとること。
第二十四条の十七第九号中「この法律」の下に「、学校設置者等及び民間教育保育等事業者による児童対象性暴力等の防止等のための措置に関する法律」を加える。
第三十四条の十六に次の一項を加える。
第二十一条の五の十八第四項の規定は、家庭的保育事業等又は乳児等通園支援事業を行う者について
準用する。
第三十四条の十七第一項中「維持する」を「維持し、又は学校設置者等及び民間教育保育等事業者による児童対象性暴力等の防止等のための措置に関する法律の適切な実施を確保する」に改め、同条第三項中「至つたときは」を「至つた場合又は家庭的保育事業等若しくは乳児等通園支援事業を行う者が学校設置者等及び民間教育保育等事業者による児童対象性暴力等の防止等のための措置に関する法律若しくは同法に基づいて発する命令若しくはこれらに基づいてする処分に違反した場合には」に改め、「適合するため」の下に「又は当該違反を是正するため」を加える。
第四十五条に次の一項を加える。
第二十一条の五の十八第四項の規定は、乳児院、母子生活支援施設、保育所、児童館、児童養護施設、障害児入所施設、児童心理治療施設又は児童自立支援施設(第四十六条第三項において「乳児院等」という。)の設置者について準用する。
第四十六条第一項中「維持する」を「維持し、又は学校設置者等及び民間教育保育等事業者による児童対象性暴力等の防止等のための措置に関する法律の適切な実施を確保する」に、「求め、」を「求め、又
は」に改め、同条第三項中「達しないときは」を「達しない場合又は乳児院等の設置者が学校設置者等及び民間教育保育等事業者による児童対象性暴力等の防止等のための措置に関する法律若しくは同法に基づいて発する命令若しくはこれらに基づいてする処分に違反した場合には」に、「勧告し、又は」を「勧告し、」に改め、「かつ、」の下に「その施設の運営を継続させることが」を加え、同条第四項中「児童福祉施設の設備又は運営が第四十五条第一項の基準に達せず、かつ、」を「前項に規定する場合においてその施設の運営を継続させることが」に改める。
第五十八条中「若しくはこの」を「若しくは学校設置者等及び民間教育保育等事業者による児童対象性暴力等の防止等のための措置に関する法律若しくはこれらの」に改める。
(就学前の子どもに関する教育、保育等の総合的な提供の推進に関する法律の一部改正)
第九条 就学前の子どもに関する教育、保育等の総合的な提供の推進に関する法律の一部を次のように改正する。
第五条を削り、第六条を第五条とし、同条の次に次の一条を加える。
(児童対象性暴力等の防止等のための措置)
第六条 第三条第一項又は第三項の認定を受けた施設及び同条第十項の規定による公示がされた施設の設置者は、学校設置者等及び民間教育保育等事業者による児童対象性暴力等の防止等のための措置に関する法律(令和六年法律第 号)で定めるところにより、児童対象性暴力等(同法第二条第二項に規定する児童対象性暴力等をいう。以下この条において同じ。)を防止し、及び児童対象性暴力等が行われた場合に子どもを適切に保護するために必要な措置を講じなければならない。
第七条第一項第六号中「社会福祉法」の下に「、学校設置者等及び民間教育保育等事業者による児童対象性暴力等の防止等のための措置に関する法律」を加える。
十三条に次の一項を加える。
6 第六条の規定は、幼保連携型認定こども園の設置者について準用する。
第二十条中「、この法律又はこの」を「この法律若しくは学校設置者等及び民間教育保育等事業者による児童対象性暴力等の防止等のための措置に関する法律又はこれらの」に、「勧告し、又は」を「勧告し、」に改め、「かつ、」の下に「当該幼保連携型認定こども園の運営を継続させることが」を、「認められるときは」の下に「、当該設置者に対し」を加える。
第二十一条第一項第一号中「又はこの」を「若しくは学校設置者等及び民間教育保育等事業者による児童対象性暴力等の防止等のための措置に関する法律又はこれらの」に改め、「かつ、」の下に「当該幼保連携型認定こども園の運営を継続させることが」を加える。
第二十二条第一項中「この法律に」を「学校設置者等及び民間教育保育等事業者による児童対象性暴力等の防止等のための措置に関する法律若しくはこれらの法律に」に改める。
厚生労働省設置法の一部改正)
第十条 厚生労働省設置法(平成十一年法律第九十七号)の一部を次のように改正する。
第十八条第二項中「第十二号、第十三号及び第十六号」を「第十三号、第十四号及び第十七号」に改める。
(こども家庭庁設置法の一部改正)
第十一条 こども家庭庁設置法(令和四年法律第七十五号)の一部を次のように改正する。
第四条第一項中第二十七号を第二十九号とし、第十九号から第二十六号までを二号ずつ繰り下げ、第十八号の二を第二十号とし、第十八号を第十九号とし、第十二号から第十七号までを一号ずつ繰り下げ、第十一号の次に次の一号を加える。
十二 学校設置者等及び民間教育保育等事業者による児童対象性暴力等の防止等のための措置に関する法律(令和六年法律第 号)の施行に関すること。
理 由
児童対象性暴力等が児童等の権利を著しく侵害し、児童等の心身に生涯にわたって回復し難い重大な影響を与えるものであることに鑑み、児童等に対して教育、保育等の役務を提供する事業を行う立場にある学校設置者等及び民間教育保育等事業者が教員等及び教育保育等従事者による児童対象性暴力等の防止等をする責務を有することを明らかにし、学校設置者等が講ずべき措置並びにこれと同等の措置を実施する体制が確保されている民間教育保育等事業者を認定する仕組み及び当該認定を受けた民間教育保育等事業者が講ずべき措置について定めるとともに、教員等及び教育保育等従事者が特定性犯罪事実該当者に該当するか否かに関する情報を国が学校設置者等及び当該認定を受けた民間教育保育等事業者に対して提供する仕組みを設ける必要がある。これが、この法律案を提出する理由である。

送信型わいせつ行為の裁判例と、わいせつ行為とされた範囲

 「送信させ」までをわいせつ行為とするものが増えてきました。

 高裁レベルでは、「撮影させ」までなら強制わいせつ罪になって、「送信させ」はわいせつ行為には含まれないとされていて、地裁でこの高裁判例を紹介すると、「送信させ」が引っ込んだりします。

東京高裁平成28年2月19日
 そして,③については,画像データを送信させる行為をもって,わいせつな行為とすることはできない。
 以上のとおり,原判決が認定した事実は,強制わいせつ罪の成立要件を欠くものである上,わいせつな行為に当たらず強要行為に該当するとみるほかない行為をも含む事実で構成されており,強制わいせつ罪に包摂されて別途強要罪が成立しないというような関係にはないから,法条競合により強要罪は成立しないとの弁護人の主張は失当である。
(2)公訴棄却にすべきとの主張について
 以上のとおり,本件は,強要罪に該当するとみるほかない事実につき公訴提起され,そのとおり認定されたもので,強制わいせつ罪に包摂される事実が強要罪として公訴提起され,認定されたものではない。
 また,原判決の認定に係る事実は,前記(1)のとおり,強制わいせつ罪の構成要件を充足しないものである上,被害者撮影に係る画像データを被告人使用の携帯電話機で受信・記録するというわいせつな行為に当たらない行為を含んだものとして構成され,これにより3項製造罪の犯罪構成要件を充足しているもので,強制わいせつ罪に包摂されるとはいえないし,実質的に同罪に当たるともいえない。


広島高裁岡山支部H22.12.15
 そして,強制わいせつ罪が個人の性的自由を保護法益とするのに対し,児童ポルノ法7条3項,1項,2条3項3号に該当する罪(以下「3項製造罪」という。)は,当該児童の人格権を第一次的な保護法益としつつ,抽象的な児童の人格権をも保護法益としており,両者が一致するものではない。しかも,原判示各事実は,前記のとおり,原判示第1及び第2の各事実については,各被害者に児童ポルノ法2条3項3号所定の姿態をとらせるに際し,脅迫又は暴行によった旨認定していないし,上記各事実と同旨の各公訴事実も同様に脅迫又は暴行によった旨訴因として掲げていない上,原判示各事実及びこれらと同旨の各公訴事実についても,それぞれ,各被害者をして撮影させた画像データを被告人の使用するパーソナルコンピューターに送信させてこれらを受信し,さらに,上記コンピューターに内蔵されたハードディスクに記録して蔵置した各行為を含んでいるところ,上記各行為はいずれも3項製造罪の実行行為(原の事実については強要罪の実行行為の一部でもある。)であって,強制わいせつ罪の構成要件該当事実には含まれない事実である。

 

 

東京 地裁   H18.3.24 撮影送信させ受信して
大分 地裁   H23.5.11 撮影送信させ
東京 地裁   H27.12.15 撮影送信させ
高松 地裁   H28.6.2 撮影送信させ
横浜 地裁   H28.11.10 撮影送信させ
松山 地裁 西条 H29.1.16 撮影送信させ
高松 地裁 丸亀 H29.5.2 撮影させ
岡山 地裁   H29.7.25 撮影送信させ
札幌 地裁   H29.8.15 撮影させ
札幌 地裁   H30.3.8 撮影させ
東京 地裁   H31.1.31 撮影させ
長崎 地裁   R1.9.17 ビデオ通話機能を通じて、同人に胸や陰部を露出した姿態及び陰部を指で触るなどした姿態をとるよう指示し、同人にそれをさせた上、その姿態の映像を前記ビデオ通話機能を用いて被告人の携帯電話機に送信させ、もって強いてわいせつな行為をした。
高松 地裁 丸亀 R2.9.18 撮影させ
熊本 地裁   R3.1.13 撮影させ
京都 地裁   R3.1.21 撮影させ
京都 地裁   R3.2.3 撮影させ
大阪 高裁   R3.7.14 撮影させ
京都 地裁   R3.7.28 撮影させ
大阪 高裁   R4.1.20 撮影させ
千葉 地裁   R4.2.7 同人に胸部陰部を露出した姿態を取らせて
これをaのスマホで撮影させ
もって13未満の者にわいせつ行為した
札幌 地裁 小樽 R4.3.2 自慰行為等+撮影させ
東京 地裁   R4.3.10 撮影させ
京都 地裁   R4.6.10 同人に陰部露出させる姿態とらせてスマホで撮影させもって、13歳未満の物に対して、わいせつな行為をした
東京 地裁   R4.8.19 自慰行為をさせた上、その様子を同人が使用する撮影機能付き携帯電話機で撮影させ、さらに、その画像等のデータを被告人が使用する携帯電話機に送信させ、
京都 地裁   R4.9.13 同人に陰部露出させる姿態とらせてこれを同人が使用するタブレット端末で撮影させ、
もって、13未満の者に対してわいせつ行為をし
札幌 地裁   R4.9.14 撮影させ
千葉 地裁   R4.11.18 乳房陰部露出して放尿するなどの姿態を取らせてこれをcの使用する携帯電話機で撮影させ、もって13未満の者ににわいせつ行為をした
釧路 地裁   R5.1.6 送信させ
札幌 高裁   R5.1.19 撮影させ
大津 地裁   R5.3.1 手淫させ撮影送信させ
松山 地裁   R5.9.7 撮影送信させ
地裁   R5.8.18 撮影送信させ
大津 地裁   R5.10.26 撮影送信させ
旭川 地裁 稚内 R5.11.10 ビデオ通話機能により被告人が視聴できる状態で、Aに陰部及び乳房等を露出させる姿態をとらせ、もって人の抗拒不能に乗じてわいせつな行為をした
札幌 高裁   R5.3.5 ビデオ通話機能により被告人が視聴できる状態で、Aに陰部及び乳房等を露出させる姿態をとらせ、もって人の抗拒不能に乗じてわいせつな行為をした

 

 児童に対する性犯罪に並行して盗撮行為が行われた場合の児童ポルノ製造罪の罪名について、姿態をとらせて製造罪説に仙台高裁r6.1.23が加わり、高裁判例レベルでは3対3で拮抗しました。

 児童に対する性犯罪に並行して盗撮行為が行われた場合の児童ポルノ製造罪の罪名について、姿態をとらせて製造罪説に仙台高裁r6.1.23が加わり、3対3で拮抗しました。
 仙台高裁の事例は、当初、ひそかに製造罪で起訴され、大阪高裁r5.1.24の影響で姿態をとらせて製造罪に訴因変更され1審判決になったものですが、控訴審でひそかに製造罪が正解じゃないのかという法令適用の誤りが主張されたようです。


(1)姿態をとらせて製造罪説
①大阪高裁H28.10.26*1(姫路支部h28.5.20*2)
②大阪高裁r05.1.24*3(奈良地裁R04.7.14*4)
③仙台高裁r6.1.23(仙台地裁r5.7.20)

仙台高裁r6.1.23
2 訴訟手続の法令違反の論旨について
 所論は、原判示第1の2、第2の3、第3の3及び第7の3について、「ひそかに製造罪」から、「姿態をとらせて製造罪」に訴因及び罰条の変更を求めた検察官の訴因及び罰条の変更請求(以下、この請求を「本件訴因等変更請求」という。)を許可した原審の訴訟手続は、必要性のない誤った訴因変更請求に対し、釈明等を尽くさずにこれを認めた違法があり、この違法は判決に影響を及ぼすことが明らかである、というのである。
 しかし、本件訴因等変更請求は、いずれも同一日時における同一の被害児童らの法所定の姿態についての撮影、記録行為が、「ひそかに、就寝中の被害児童ら」についてこれを行ったのか、「被告人が被害児童らに法所定の姿態をとらせ」てこれを行ったのかを変更するとともに、いずれも罰条を児童ポルノ法7条5項から4項に変更するものであって、基本的事実関係が同一であることは明白である。所論は、上記各事実については、「ひそかに製造罪」のみが成立し、「姿態をとらせて製造罪」は成立しないのであるから、本来訴因変更が必要のない公訴事実及び罰条を変更するものであって誤っているなどと主張するが、刑事訴訟法312条1項によれば、裁判所は、検察官の請求があるときは、公訴事実の同一性を害しない限度において、訴因等の変更を許さなければならないのであって、所論が指摘する成立罪名に関する主張の当否にかかわらず、本件訴因等変更請求を許可した原審の訴訟手続に誤りはない。また、所論は、原審裁判所が本件訴因等変更請求について釈明等を尽くさなかったとも主張するが、仮に、証拠上成立しない訴因又は罰条への変更であっても、そのことのみから直ちに原審裁判所が何らかの釈明を求めるべき義務が生じるとはいえない上に、後記法令適用の誤りの論旨についてみるように、本件では、上記各事実については「姿態をとらせて製造罪」のみが成立し、「ひそかに製造罪」は成立しないとの原判決の判断に誤りはないのであるから、なおさらである。
 訴訟手続の法令違反についての論旨は理由がない。
3 法令適用の誤りの論旨について
 所論は、原判決は、〔1〕原判示第1の2、第2の3、第3の3及び第7の3の各事実については、「姿態をとらせて製造罪」ではなく、「ひそかに製造罪」が成立するのに、前者の成立を認めた誤り、及び、〔2〕原判示第1の1と第1の2、第2の1及び第2の2と第2の3、第3の1及び第3の2と第3の3、第7の1及び第7の2と第7の3の各事実は、それぞれ観念的競合として処断すべきであるのに、併合罪として処断した誤りがあり、これらは、判決に影響を及ぼすことが明らかである、というのである。
(1)所論〔1〕について
 原判示第1の2、第2の3、第3の3及び第7の3の訴因変更後の各事実は、いずれも、公訴事実の記載自体から被告人が各児童にそれぞれの姿態をとらせたことが明らかとなっているということができるところ、「ひそかに製造罪」と「姿態をとらせて製造罪」との関係については、児童ポルノ法7条5項が「前2項に規定するもののほか」と定めていることなどからすれば、撮影の事実を児童が認識していたかどうかにかかわらず、行為者が姿態をとらせた場合には、「姿態をとらせて製造罪」が成立し、「ひそかに製造罪」は適用されないと解するのが相当である(大阪高等裁判所令和4年(う)第758号令和5年1月24日判決参照。なお、所論指摘の裁判例は、具体的な事実関係をもとに一定の法令の適用をした原判決の解釈、判断が誤りであるとまで断ずるには足りないと説示したものに過ぎず、判例違反もない。)。所論は独自の見解であって採用することができない。したがって、上記各事実について「姿態をとらせて製造罪」が成立するとした原判決の判断に誤りはない(なお、記録によれば、原判示第6の別表5番号1(J)及び第8の別表7番号3(U)についても、被告人が被害児童らに声をかけて小便器に誘導した上で小便中の姿態を撮影しており(原審甲102)、「姿態をとらせて製造罪」が成立する可能性もうかがわれるものの、公訴事実の記載自体からそのことが明白な場合ではないのであるから「ひそかに製造罪」として起訴されたこれらの罪について訴因等変更の手続を経ることなく罪となるべき事実を認定した原判決の判断にも誤りはないし、このような場合において、犯情がより悪いとも評価する余地のある「姿態をとらせて製造罪」の成否について裁判所が検察官に対し釈明を求める義務があったともいえない。)。

(2) ひそかに製造罪説
①東京高裁r5.6.16*5(立川支部r05.1.20*6)

東京高裁r5.6.16
しかしながら、原審記録によれば、前記各事件は、いずれも、被告人が、各児童に所定の姿態をとらせた上、ひそかにその姿態を撮影するなどした行為に係るものと認められるところ、これらについて、訴追裁量を有する検察官が同条5項のひそかに所定の児童の姿態を撮影するなどした事実を摘示した上で同条5項の罪により公訴を提起し、被告人及び原審弁護人は事実及び犯罪の成立を争わず、原判決においてその事実が認定されて犯罪の成立が認められたものであり、同条5項の罪の成立を認めた原判決の法令の適用に誤りはない。所論は、同条5項の罪が成立するためには同条4項の罪が成立しない場合であることを要するというが、同条4項の罪が成立しないことが同条5項の罪の成立要件であるとの趣旨であれば、そのように解すべき合理的理由はなく、賛同できない。

②大阪高裁R5.7.27*7 (神戸地裁姫路支部R5.3.23*8)

阪高裁R5.7.27
   以上を踏まえると、本法7条5項において「前二項に規定するもののほか」と規定されているのは、実体的に3項製造罪又は4項製造罪に当たるものを除くという趣旨ではなく、3項製造罪又は4項製造罪として処罰されるものを除くという趣旨と解される。

③大阪高裁r5.9.28*9(奈良地裁葛城支部R5.3.13*10)

阪高裁r5.9.28
   以上を踏まえると、本法7条5項において「前二項に規定するもののほか」と規定されているのは、実体的に3項製造罪又は4項製造罪に当たるものを除くという趣旨ではなく、3項製造罪又は4項製造罪として処罰されるものを除くという趣旨と解される。

(3)姿態をとらせて製造罪説かひそかに製造罪説か判然としないもの
東京高裁r5.3.30*11(東京地裁R04.7.14*12)

東京高裁r5.3.30
その余の事実については、同項の製造に該当するとした原判決の解釈が誤りであるとまで断ずるには足りないし、仮に同条4項による製造と認定すべきであって法令の適用に誤りがあるとしても、同項の製造罪と同条5項の製造罪は、同一法条に定められ、その罪質も法定刑も同じであって、本件において、その要件の差により被告人の防御の機会を奪う事態となっていたとは考え難いし、量刑上も影響を及ぼすものではないことが明らかであるから、その誤りは判決に影響を及ぼさない。

小学校教師であった被告人が、勤務先の小学校の女子児童に対して行った、強制わいせつ1件、窃盗1件並びに盗撮による児童ポルノ製造5件及び建造物侵入、迷惑防止条例違反1件の各犯行につき、懲役4年を求刑された事案において、被告人の責任は重いといわざるを得ないが、被告人が反省の弁を述べ、既に児童に関わる仕事からは離れていること、前科のないこと、被告人の罹患するADHDの本件各犯行への影響について否定まではできず、被告人が治療を受け続けると述べていることなどを考慮し、懲役3年、保護観察付きの執行猶予5年間を言い渡した

小学校教師であった被告人が、勤務先の小学校の女子児童に対して行った、強制わいせつ1件、窃盗1件並びに盗撮による児童ポルノ製造5件及び建造物侵入、迷惑防止条例違反1件の各犯行につき、懲役4年を求刑された事案において、被告人の責任は重いといわざるを得ないが、被告人が反省の弁を述べ、既に児童に関わる仕事からは離れていること、前科のないこと、被告人の罹患するADHDの本件各犯行への影響について否定まではできず、被告人が治療を受け続けると述べていることなどを考慮し、懲役3年、保護観察付きの執行猶予5年間を言い渡した事例(横浜地裁r5.12.6)

提供 TKC
【文献番号】 25596585
【文献種別】 判決/横浜地方裁判所(第一審)
【裁判年月日】 令和 5年12月 6日
【事件名】 強制わいせつ、建造物侵入、栃木県公衆に著しく迷惑をかける行為等の防止に関する条例違反、児童買春、児童ポルノに係る行為等の規制及び処罰並びに児童の保護等に関する法律違反、窃盗被告事件
【事案の概要】 小学校教師であった被告人が、勤務先の小学校の女子児童に対して行った、強制わいせつ1件、窃盗1件並びに盗撮による児童ポルノ製造5件及び建造物侵入、迷惑防止条例違反1件の各犯行につき、懲役4年を求刑された事案において、被告人の責任は重いといわざるを得ないが、被告人が反省の弁を述べ、既に児童に関わる仕事からは離れていること、前科のないこと、被告人の罹患するADHDの本件各犯行への影響について否定まではできず、被告人が治療を受け続けると述べていることなどを考慮し、懲役3年、保護観察付きの執行猶予5年間を言い渡した事例。
【裁判結果】 有罪
【裁判官】 小泉満理子
上記の者に対する強制わいせつ、建造物侵入、栃木県公衆に著しく迷惑をかける行為等の防止に関する条例違反、児童買春、児童ポルノに係る行為等の規制及び処罰並びに児童の保護等に関する法律違反、窃盗被告事件について、当裁判所は、検察官地引彩乃並びに弁護人小松圭介(主任)、奥村徹及び彦坂幸伸出席の上審理し、次のとおり判決する。
       主   文
被告人を懲役3年に処する。
未決勾留日数中120日をその刑に算入する。
この裁判が確定した日から5年間その刑の執行を猶予する。
その猶予の期間中保護観察に付する。
訴訟費用は被告人の負担とする。

被害者を欺してテレビ会議ソフトを起動させて裸にさせた行為は準強制わいせつ罪(札幌高裁R06.3.5)

 送信させるはわいせつではないという東京高裁h28.2.19を超えました。

札幌高等裁判所令和6年3月5日
(2)当裁判所の判断
上の原判決の判断は、何ら不合理な点はなく、当裁判所も是認することができる。
これに対し、所論は、多岐にわ、たるが、結局、
①原判示第1における被告人の行為は、遠隔地から被害者に対し、その裸体を撮影させるものであるが、被害者に直接接触するものではなく、被告人が被害者と対面するものでもないから、性的侵襲性は低く、更に被害者をして自慰行為等をさせるなどしたものでもないから、「わいせつな行為」とはいえない、
②原判示第2における被告人の行為は、アプリケーションソフトのビデオ通話機能により被告人が視聴できる状態で、Aに陰部及び乳房等を露出させる姿態をとらせたというものであるが、被告人が被害者と対面するものではないから、性的侵襲性は低く、更に被害者をして自慰行為等をさせたものでもないから、「わいせつな行為」とはいえないし、被告人の行為は原判決が第1の事実において「わいせつな行為」に当たらないとした画像の送信行為を含むものであるから、その意味でも「わいせつな行為」に当たらない、というものと解される。
①についてみると、原判示第1に係る被告人の行為は、わいせつの意図をもって、身分及び目的を偽り、電話を通じて指示し、被害者の陰部や乳房等という性器や性的意味合いを有する部位を、衣類を脱がせて露出させ、自慰行為ではないとしても、被害者に性器に指を挿入するよう求め、その姿態を撮影させたというものであり、そうした姿態を被害者以外の第三者に知り得る状態に置いたものと評価できるものであるから、被害者の身体を性的に利用する行為として「わいせつな行為」に該当するものというべきである。
また、被告人自身が被害者の身体に接触しておらず、撮影をその場で視認してもいないものの、被害者と固定電話をつないだまま、撮影後に送信された写真を見るなどしつつ、更に撮影する部位や姿態を繰り返し指示して撮影を行わせたともいうのであり、要求行為と撮影との間の時間差はわずかであるし、また、被告人は、被害者に撮影した写真データを送信することをも要求して撮影させており、その撮影させる行為自体に被害者がこの要求に従って写真を送信して被告人がこれを閲覧することになる具体的な危険性が認められることも踏まえると、所論指摘の事情は「わいせつな行為」であることを否定するようなものではないというべきである。
なお、所論は、本件のような撮影させる行為は、これまで強要罪として処罰されるのが通例であり、(準)強制わいせつ罪として処罰するのは不当であるともいうが、所論が引用する裁判例はいずれも起訴裁量を有する検察官が強要罪として起訴したものを有罪としたもので、(準)強制わいせつ罪の成否が判断の対象となっていたものではないから、準強制わいせつ罪として起訴された本件とは事案を異にし、所論の根拠として引用するのは適切とはいえず、所論は採用できない。
②についてみると、原判示第2に係る被告人の行為は、同様に、わいせつの意図をもって、身分及び目的を偽り、アプリケーションソフトのビデオ通話機能により被告人が視聴できる状態で、被害者の陰部や乳房等という性器や性的意味合いを有する部位を、衣類を脱がせて露出させたものであり、被告人において、撮影の現場にいるのと同様に被害者の姿態を即時に認識することが可能であるから、原判示第1の行為よりも直接的に被害者の身体を性的に利用するものといえ、自慰行為等をさせていないとしても、「わいせつな行為」に該当することは明らかである。
なお、所論は、原判決が、撮影させる行為のみならず、原判示第1の事実では「わいせつな行為」に当たらないとした、撮影した動画を送信させる行為をも「わいせつな行為」とした点で不当であるという。
しかしながら、原判決が原判示第1の事実について判示したのは、撮影させる行為のみで「わいせつな行為」として十分であり、送信させる行為(画像共有アプリケーションソフトにアップロードさせる行為)は必ずしも必要不可欠ではないとしたものにすぎず、所論は原判決を正解しないものである。
実質的にみても、被告人は、ビデオ通話機能を通じ、被告人が視聴可能な状態で、被害者に陰部等を露出させる姿態をとらせたものであって、被害者にその姿態を撮影させる行為と送信させる行為とは社会的事実として不可分の1個の行為であるから、原判決が原判示第2で挙示する被告人の行為に送信行為としての側面があるからといって、全体として「わいせつな行為」該当性が否定される謂れはなく、所論は失当である。
その他所論がるる主張する点も含め、所論はいずれも採用できず、法令適用の誤りの論旨は理由がない。

強要,児童買春,児童ポルノに係る行為等の処罰及び児童の保護等に関する法律違反被告事件
【事件番号】東京高等裁判所判決/平成27年(う)第1766号
【判決日付】平成28年2月19日
 すなわち,原判決が認定した事実には,被害者に対し,その名誉等にいかなる危害を加えるかもしれない旨脅迫して同女を畏怖させ,同女をして,その乳房,性器等を撮影させるという,強制わいせつ罪の構成要件の一部となり得る事実を含むものの,その成立に必要な性的意図は含まれておらず,さらに,撮影に係る画像データを被告人使用の携帯電話機に送信させるという,それ自体はわいせつな行為に当たらない行為までを含んだものとして構成されており,強要罪に該当する事実とみるほかないものである。

 弁護人は,①被害者(女子児童)の裸の写真を撮る場合,わいせつな意図で行われるのが通常であるから,格別に性的意図が記されていなくても,その要件に欠けるところはない,②原判決は,量刑の理由の部分で性的意図を認定している,③被害者をして撮影させた乳房,性器等の画像データを被告人使用の携帯電話機に送信させる行為もわいせつな行為に当たる,などと主張する。
 しかしながら,~~,③については,画像データを送信させる行為をもって,わいせつな行為とすることはできない。

間接正犯構成による性的姿態撮影罪(青森地裁r5.11.17)

間接正犯構成による性的姿態撮影罪(青森地裁r5.11.17)
 じゃあ、児童ポルノ製造も間接正犯構成になるよね。

判例ID】
28313774
【裁判年月日等】
令和5年11月17日/青森地方裁判所刑事部/判決/令和5年(わ)120号
【事件名】
性的姿態等撮影被告事件
【裁判結果】
有罪
【裁判官】
小澤光
【出典】
D1-Law.com判例体系
【重要度】
1

■28313774
青森地方裁判所
令和5年(わ)第120号
令和05年11月17日
本籍 (省略)
住居 (住所略)
無職

平成14年(以下略)生
 上記の者に対する性的姿態等撮影被告事件について、当裁判所は、検察官藤原裕里子及び弁護人(国選)B各出席の上審理し、次のとおり判決する。

主文
被告人を懲役1年6月に処する。
この裁判が確定した日から4年間その刑の執行を猶予する。

理由
(罪となるべき事実)
 被告人は、令和5年7月18日午後3時56分頃から同日午後6時25分頃までの間、(住所略)被告人方において、別紙記載のAに対し、自己が使用する携帯電話機から、アプリケーションソフト「C」のメッセージ機能を利用して、被告人の知り合いである暴力団組員を装い、「おめ、誰とはいわねぇけど、以前付き合ってた彼氏居るよな。」「その男がな、俺らの組合さ入っててな」「んでその男はな、金飛んだ訳よな、その際に保証人をAって名前にした訳よ。」「しらねぇじゃすまねぇはんで、こっち迷惑被ってんよ。大体総額60万ちょいなんよな。とりまどうでもいいけ、払える?」「その人じゃねえはんで、俺ら組合が迷惑してんだ。払えねぇならオメェの家さいくはんでな、●●●」「あとさ、普通にパパちゃんママちゃん頼ると思うけどやめなよ。」「その男からオメェの裸写真もらってるからちくりでもしたらSNS、まぁ学校とか友達さばらまくはんで笑」「どうしても無理なら●●●に頼りな笑」「あと、親含め外部に話したらすぐにバレるからな笑そしたらハメ撮り含め写真ネット上にばら撒く」「まぁ、周りには監視してるやついるはんで笑笑」「●●●に金払わせるのは良いけど、ついでに●●●に裸画像送れ嘘つくなよ。」「●●●からもその画像とスクショ見せてもらうからな。それが無理なら●●●の金受け取りません。自分でどうにかしろ笑」「広い画とかばれるはんで 全身と下の方も送れよ後 オナニーしてるところも送れよ笑 じゃなきゃお金受け取りません」「60万●●●から払ってもらうならついでに潮吹きの動画も送れよ笑」「あー、ここにと、●●●のほうにもな」などと記載したメッセージを送信し、その頃、青森県内のA方にいたAにこれらを閲読させるなどして、Aの身体及び名誉に危害を加える旨告知して脅迫したことにより、同意しない意思を表明することが困難な状態にさせ、同日午後6時25分頃、同所において、Aに、Aの写真撮影機能付き携帯電話機でAの乳房及び陰部等を撮影させた。
(証拠の標目)(括弧内の番号は、証拠等関係カード記載の検察官請求証拠の番号を示す。)
・ 被告人の公判供述
・ 被告人の検察官調書(乙4、5)、警察官調書(乙2、3)
・ Aの検察官調書(甲2)、警察官調書(甲1)
・ 捜査報告書抄本(甲4)、捜査報告書(甲5、6)
(法令の適用)
罰条 性的な姿態を撮影する行為等の処罰及び押収物に記録された性的な姿態の影像に係る電磁的記録の消去等に関する法律附則2条により同法2条1項2号、1号イ(刑法176条1項1号)
刑種の選択 懲役刑を選択
刑の執行猶予 刑法25条1項
訴訟費用の不負担 刑事訴訟法181条1項ただし書
(法令の適用に関する補足説明)
1 弁護人は、本件の事実関係は争わないものの、検察官が主張する性的姿態等撮影罪の間接正犯は成立せず、被告人には強要罪が成立するにとどまると主張する。
2(1) 性的姿態等撮影罪は、間接正犯の形式では犯し得ない犯罪ではなく、その点に関する弁護人の主張は前提を欠く。
 (2) 関係証拠によれば、被告人は、Aに裸の写真を撮影させて送信させることを目的として本件犯行を行い、実際に送信された写真2枚を保存していること、Aが「C」の相手方を暴力団員であると認識して、裸の写真等を送信しなければ、Aの家まで押し掛けてきてAやその家族に暴力を振るうかもしれないなどと思っていたことから、裸の写真等を撮影したこと、Aが両親を含む外部の人に相談をしたらAの裸の画像をSNSでばらまかれると認識していたことが認められる。
  弁護人が指摘するとおり、被告人が日頃からAを畏怖させていたとは認められないものの、被告人は暴力団員を装っていたのであるから、Aは「C」のやり取りの段階ではその相手方が被告人であるとは認識しておらず、被告人とAとの従前の関係は、間接正犯の成否に影響しない。その上で、上記の各事情からすれば、Aが、周囲の人たちに相談することもできず、「C」の相手方からの報復等を恐れて自らの裸の写真を撮影せざるを得ない状況に追い込まれていたことが十分に認められるから、被告人が、Aをして自己の意思のとおりの行動をさせたことによりAの性的な部位を撮影し、その際、Aの意思は抑圧されていたと評価することができる。その他、弁護人が指摘する事情を踏まえても、上記の結論は変わらない。
3 そうすると、本件につき、間接正犯構成による性的姿態等撮影罪が成立することは明らかであり、弁護人の主張はいずれも採用することができない。