ギリシアが一神教ではないにも拘らず科学と哲学を発展させられた理由

要旨: 一神教が自然科学と哲学を発達させる基盤になった。
一神教が自然科学を発達させた理由は、一神教の教義では、神が創造した世界では唯一絶対の真理があると考えたからだ。
キリスト教では、神はこの世界の主権を持っているがすでに世界からいなくなり、人間は神から委任を受けて神の代理を果たす。神のいない世界で、自然を理解することで神を理解することができると考える。
この認識が、自我を離れて、事象を客観的に捉えることができ、科学を生む基盤を作った。


科学は、ギリシアで発達したと言われる。
哲学が生まれたのはギリシアだ。タレスアリストテレスギリシアで生まれた。
ギリシアの思考法は、今まであった呪術的要素が影を潜めて、合理的になった。


一般的に、ギリシア一神教はなかったと考えられている。
しかし、それは二重に間違っている。
『Encyclopedia of Religion』Mircea Eliade のよるMonotheismの項目によれば、一神教は3つに類型化できる。
それは、1.君主的一神教、2.流出論的神秘的一神教、3.歴史的・倫理的一神教だ。
ギリシア神話は、2.流出論的神秘的一神教に分類される。なぜなら、ゼウスを頂点として、その下に複数の神々がいたからだ。だから、厳密には、ギリシア一神教がなかったとは言えない。


ギリシア哲学を発達させたのは、イオニアの思想家たちだった。
それは数多くの哲人を輩出していたことからもわかる。
なぜ、イオニアだったか?
一つ目の理由として、イオニアが世界初の船舶貿易都市だったことがあげられる。
そこでは、氏族主義にとらわれず、貨幣制度をベースにした社会があった。
彼らは実学を数字を基盤とした合理的な考え方をした。
外国人たちはそれぞれの国の神話を共有できなかったため、神話を自然科学のようなものに作り変えた。
つまり、政治的関係にとらわれずに自由に原論活動をすることで自然科学を発達させられた。


第2に、海外移民や海外文化を積極的に受け入れた。そこには、エジプトからの移民も多数いた。
実際、ピタゴラス幾何学を取り入れたのは、エジプトからだった。
エジプトは、世界初の一神教を作った国だった。エジプトの心身二元論は有名である。
また、かつてナイル川が氾濫した際にそこを測量するために、数学が発達していた。
ギリシアは、そのような一神教の文化から大きく影響されていた。


第3に、何より当時の帝国ペルシャゾロアスター教から強い影響を受けた。
ゾロアスター教は、正確にはツァラトゥストラ一神教に変えるまでは一神教ではなかった。
しかし、一神教に変わる前でも、最高神が二つか三つだったので、一神教に似たようなものだった
上述した『Encyclopedia of Religion』Mircea Eliade のよるMonotheismの分類によれば、キリスト教イスラム教、ゾロアスター教は「3.歴史的・倫理的一神教」に分類される。
その世界観は、神が、この世界の創始者であり、歴史終末における全権を持っている
ギリシア哲学の成果はこのゾロアスター教から大きく影響を受けている。


整理すると、イオニア言論の自由と貨幣制度を基盤としたで実学的な文化が、
積極的な外国人と外国の文化の受け入れたことで(とりわけ一神教的文化を持つエジプトやペルシアなど)、
その高度な知識を総合し発展させることができた。これが、ギリシア哲学を創造したと言える。


では、ヨーロッパで長年帝国を築いたローマはどうか?
キリスト教が国教になる391年以前の初期ローマは一神教が支配的ではなかった。だから、一神教がローマの政治や哲学を発展させたのではないことのではない、と思うかもしれない。
確かに、初期のローマにおいては、キリスト教が国教ではなかったが、キリスト教と勢力を争っていたのは、ミトラス教とマニ教である。
どちらもゾロアスター教から派生した宗教で、ベースにあるのは一神教的世界観だ。


中世のヨーロッパは、周知の通り、キリスト教が支配的だった。
それだけではなく、イスラム世界でもイスラム教が支配的であり、そこでも科学と哲学が発展した。
ルネサンスまでには、ギリシア哲学の後継者は、ヨーロッパではなくイスラム世界だった。
そこで、ギリシア哲学は発展し、イスラム哲学が誕生した。


ルネサンス期に、ヨーロッパが、イスラム哲学を輸入し、
忘れられていたギリシア哲学を再輸入してからは、
経済学、美術、自然科学、法学、哲学、が高度に発達していった。
これが、一神教からみた自然科学史だ。


・参考文献
『ふしぎなキリスト教橋爪大三郎大澤真幸
モーセという男と一神教フロイト
『書物との対話』河合隼雄
『古代インド文明の謎 (歴史文化ライブラリー) 』堀晄
ゾロアスター教 三五〇〇年の歴史 』メアリー・ボイス
『古代社会経済史―古代農業事情』マックス ウェーバー
Heartland of Cities: Surveys of Ancient Settlement and Land Use on the Central Floodplain of the Euphrates』Robert McC. Adams
多神教一神教―古代地中海世界の宗教ドラマ』本村 凌二
『哲学の起源』柄谷行人
『経済の文明史』K.ポランニー
『Persians & Greeks: Zoroastrian Influence on Greek Philosophy』The Circle of Ancient Iranian Studies(ロンドン大学のイラン神話研究)
『ミトラス教』マルタンフェルマースレンMarten J.Vermaseren
イスラーム思想史』井筒俊彦
『古代派とスコラ学派』: http://cruel.org/econthought/schools/ancients.html
『日本人のためのキリスト教神学入門』佐藤優http://webheibon.jp/blog/satomasaru/2012/11/post-32.html
『戦略の階層:修正版/地政学を英国で学んだ』奥山真司: http://geopoli.exblog.jp/11855493/
同志社大学神学部中田考ゼミ論文』: http://www1.doshisha.ac.jp/~knakata/yamanemt.html


一神教が自然科学を発展させた。

ゾロアスター教イスラム教、キリスト教ユダヤ教、これらは全て一神教だ。
佐藤優によれば、「人間が作りだした文化や社会制度に肯定的価値を付与することは、根源においてできないのです。キリスト教の本質は、アンチ・ヒューマニズム(反人間中心主義)なのです。人間が作りだした文化や社会制度に肯定的価値を付与することは、根源においてできないのです。」
カトリック神学、正教神学では、イエス・キリストを経由する以外で、神について知る回路が残されています。それは自然です。神が創った自然には、神の意思があるので、人間が自然を通じて神を知ることができるという発想があります。プロテスタント神学者でも、エミール・ブルンナーは、自然神学に肯定的評価を与えています。」そうだ。

フロイトによれば「一神教は唯一の絶対的な真理を追究しようとするため、自然科学を発達させる基盤になった。」そうだ。


一神教では、神は世界を創造したが、地上から消えたと考える。
さらにキリスト教イスラム教には世界へ特殊な認識を持っている。
世界は神に主権があるが、人(ムハンマド、イエス)は地上で神の代理を委任されているため、空家になった地球を管理・監督する権限がある。地球にはもうただのモノしかないが、人間には理性がある。
世界(宇宙、地球、火、水、諸々)、これらは神の意志によって作られた絶対的な真理だと考え、その原因を追求する。
近代科学は観察から生まれる。人間の自我から切り離して、神の視点から、事象を観察することができる。
人間は、神の代理として、神が何を考え、なぜ、神はこの世界を作ったのかを考えるからだ。
マイケル・ポランニーが「科学は観察の拡張である」というように、こうして人間は自我を切り離し、事象を客観的に観察し、因果関係を把握し法則化することができるようになった。


・参考文献
『ふしぎなキリスト教橋爪大三郎大澤真幸
モーセという男と一神教フロイト
『書物との対話』河合隼雄
『日本人のためのキリスト教神学入門』佐藤優: http://webheibon.jp/blog/satomasaru/2012/11/post-32.html


アーリア人がペルシアへ移住した。(ただし、移住元は「北シリア説」か「南部ロシア〜カフカス地方説」で別れている。)
インド・イラン系アーリア人は、遊牧民であり、祭司・戦士・牧畜民で構成されていた。
彼らは、インドに向かう途中、イラン高原に定住し、継続的に移住し、都市国家ササン朝ペルシアを作った。
古代アーリア人の神話は、太陽や天空を神々と捉えた多神教であり、火の崇拝などの儀式があった。
これを、ペルシアは自然現象を擬人化した自然神のいるイラン神話として受け継いだ。

彼らが、ペルシアへ移動する前にどこにいたかは大きくわけて2説ある。


1: 通説
彼らは、南部ロシア〜カフカス地方から、インドに向かう途中、イラン高原に定住し、継続的に移住し、都市国家ササン朝ペルシアを作った。


2: 堀晄説
インド・ヨーロッパ語族の起源は、8千年前の原初西アジア型農業の担い手(麦、山羊を中心とする農業)だった。
北シリアの古代インダス文明はもともとアーリア人のものであった(アーリア人インダス文明を征服したのではない)。
しかし、セム族(アフロ=アジア族)がアフリカからアジアへ侵入したことによって「玉突き的」に、アーリア人の大移動が、引き起こされたのだろう。
新石器時代に北シリアの農耕民が、インドのガンジス川流域に向かう途中、イラン高原に定住し、継続的に移住し、都市国家ササン朝ペルシアを作った。(そのため、古代インダス文明は衰退した。)

堀晄説の根拠は、インダス文明とその後のインドの文明には、建築・都市計画・量衡・聖牛崇拝・牧農文化などなどからみても連続性があったためだとする。


・参考文献
『古代インド文明の謎 (歴史文化ライブラリー) 』堀晄


●ペルシアはアーリア神話から、善悪二元論ゾロアスター教を作った。
アーリア人の神話(インド=イラン語族の神話)では、誓いがあり、それを破れば復讐するシステムがあった。
イラン人はこれをさらに発展させ、善悪二元論ゾロアスター教を作った。
アーリマン(闇の神)に対してアフラ(光の神様)とミスラ(契約と戦いの神様)が協力して戦うという構図である。
ツァラトゥストラは、同格だったアフラとミスラに対して、アフラを最上位に定め、ゾロアスター教一神教になった。
※ちなみに、これらの一神教が発達するために、文字の普及が欠かせなかった。

ペルシアの都市は、征服前からあった治水・灌漑農業を継承した。灌漑農業は、太陽が最重要であったため、一神教を生み出した。また、灌漑農業はペルシアの天文学や数学を発展させた。

ただし、ペルシア王は、軍事的総司令官であり、彼の軍隊は弓、槍、騎馬の戦術を基本にした。そのため、軍事事業に向いていたためが、本来治水や灌漑には不向きであった。


・参考文献
ゾロアスター教 三五〇〇年の歴史 』メアリー・ボイス
『古代社会経済史―古代農業事情』マックス ウェーバー
Heartland of Cities: Surveys of Ancient Settlement and Land Use on the Central Floodplain of the Euphrates』Robert McC. Adams
多神教一神教―古代地中海世界の宗教ドラマ』本村 凌二


●外国からの文化の輸入、移民の受け入れと植民活動、貨幣制度を基盤とした自由で実学的な文化、これらが哲学を発展させた。
イオニアは数多くの哲人を輩出し、西洋哲学を発達させた。
イリアス』や『オデュッセイア』のホメロス、『歴史』のヘロドトス、病気を神の仕業ではなく自然が原因とみたヒポクラテス、人間の希望を彼岸にではなく労働に見いだしたヘシオドス、物質がみずから運動することを発見したタレス、原子論のデモクリトス、数学によって世界の根源を知ろうとしたピタゴラス、「万物は流転する」のヘラクレイトス、そのほかパルメニデス、エンペドクレス……。
プラトンアリストテレスよりも前に、むしろイオニアにこそ哲学の起源がある。

では、なぜ、イオニアで哲学が発展したのか。


1: 外国人が技術を革新・蓄積していった。
イオニアは海洋国家であり自由貿易があった。アテナイへの食糧の多くもイオニア経由だった。
植生活動が盛んであり、外国人はすぐに市民になれた。イオニア人は彼らから多くを学んだ。実際、アテナイの家庭教師はイオニアにきた外国人か、植民地の南イタリアから移住した外国人ばかりだった。
外国人が多い土地だから、氏族関係に縛られることがなかった。
だから、慣習に縛られる関係がなく、自由な言論ができた。

また、彼らは彼らはフェニキア・エジプトからの移民も受け入れた。
ギリシャのボイオテイア地方にエジプトのテーベとテーバイからの植民があった。
その根拠として、ギリシャ神話のアテナは当時は黒かったことや、ギリシア神話とエジプト神話の類似性などがあげられる。
プラトンも、古代エジプトにおける死生観に、感化された。

・参考文献『黒いアテナ―古典文明のアフロ・アジア的ルーツ 』マーティン・バナール


2: 理性による共通認識
自由な政治制度があり、外国人が多い土地だから、氏族関係に縛られることがなかった。
だから、慣習や士族関係に縛られる関係がなく、自由な言論ができた。

異なる宗教と神話の外国人は、共有される土台がないため、ギリシア神話が共通基盤となっていった。ギリシア神話はペルシア神話にかなり似ている。
バビロニアでは神話は神官が独占していたが、イオニアは自由だった。
外国人たちの神話が異なったため、神話を批判的・理性的に考えた。これが、自然科学的思考を発展させた。


3: 数字を実用的に利用した
イオニアは市場制度を発達させたパイオニアだった。
政治制度の規制が緩かったため、貨幣制度が信頼されていた。
商業都市で、貨幣制度が発達していたため、数字を使うことが実用的だった。
数字がベースだったから、合理的な哲学が構築できたのだろう。


整理すると、1.積極的な外国人と外国の文化の受け入れと、2.自由で実学的な文化、2.貨幣制度、これらがイオニアギリシア哲学を発展させられた本質と言える。


・参考文献
『哲学の起源』柄谷行人
『経済の文明史』K.ポランニー


ギリシア一神教ではなかったのに、なぜ、自然科学や政治学が発展したのか。
イオニアの神話は、厳密には一神教ではない。しかし、ギリシア哲学は一神教から影響された。
以下、ロンドン大学のイラン神話研究の論文の直訳を抜粋して紹介する。
1 : ギリシア哲学はゾロアスター教から大きく影響を受けた。
・紀元前500年頃はペルシャギリシャもほとんど変わらなかった。
・初期ギリシア哲学のイオニアの思想は、ゾロアスター教宇宙論に由来してるように見える。ゾロアスター教の自然神はタレスの唱えた概念にそっくりだ。実際、ゾロアスター自身も、ギリシャアナトリアへ旅をしていた。
この影響が十分に研究されてきてないのは、単純に偏見があるからだ。


ロゴスの進化は、ゾロアスター教から影響されたイオニアから始まった。以下がその要約だ。
1: 一神教の、静的な、非宗教的な力。
2: ヘラクレイトスは、ゾロアスター宇宙論のアスタ(火)を、大胆にも「ロゴス」として、ストア哲学に取り込んだ。
3: ペルシア戦争後に、(ゾロアスター教は)アッティカへ渡った
4: プラトンアリストテレスによって、大きく発展した。
5: エジプトに影響されたことで、ストア学派哲学者によって非人格的に取り入れられた。
6: プルタルコスの手によってこれらの潮流は統合してまとめられた。
7: フィロは何とかしてプルタルコスの著作の中に、モーセの教義を見つけようとした。


その他にも下記のような影響が一例としてあげられる。
・アナクサゴロスは、ゾロアスター教ではZruvani Akaraniと呼ばれる「終わらない時間」の思想を紹介した。
・エンペドクレスと二元論は、ヘラクレイトスによって、あるいは直接ゾロアスター教によって影響された。
行動の原因は「愛」と「憎しみ」だ。愛は結合させる原理であり、憎しみは分けるものだ。
プラトンヘラクレイトスの弟子として、早くから影響を受けた。
プラトンはNous(理性=精神=知性)を気に入り、人智の及ばないもののため神とした。それは宇宙霊魂における性質だった。
Nous(理性=精神=知性)とは、理性であり、衝突する物であり、もう一つ別の形の二元論でさえあった。
精神、ロゴス(理性)、論理は全て同じものだった。それは普遍的な理性の一種だった。
タレスは金持ちで、暇を持て余していた。
彼は明らかにエジプトに行ったことがあって、測量に使う単純で実用的な幾何学を見てきた。
タレスは、エジプトでナイル川の測量のために利用されていた幾何学を、ギリシャに持ち込んだ。
彼は、自然現象に関心があり、新しい数学の原理と一緒にして幾何学を作った。
オルフェウスの集団は、哲学はイオニアでは「生活習慣」だと決めた。
哲学は好奇心のようなものを意味していたし、ギリシア人の感覚だと「文化」だった。
しかし、その言葉はピタゴラスが影響を持っている場所であればどこでも、深い意味を含んでいた。
哲学はそれ自体で、清めるものであり、輪廻転生の円環から抜け出すものだった。
ソクラテスのPhaedoに書いてある思想は、明らかにピタゴラス教団の教義に影響されたものだった。
ピタゴラスはアジアを旅して、永劫回帰の思想を取り入れた。永劫回帰から逃れることがピタゴラスの目的だった。)
・それから、科学は宗教になった。それだけ哲学は宗教に影響されていた。この宗教的な復活は、魂に関する新しい見解をもたらした。それでも、それはまだ、そのテーマについては哲学者たちの説教に影響をあたえていなかった。ピタゴラス学派やエンペドクレスでさえも、熱心に宗教活動に参加していたにもかかわらず、彼等は宗教的習慣をほのめかすものにはきっぱりと否定するという、見解を示していた。この時代における哲学には、ギリシャローマ神話が入り込む余地がなかった。


2: ギリシア神話は、ペルシャ神話に似ている。


3: ギリシア神話多神教だが、ゼウスを頂点とする構造がある。
‘Monotheism’の執筆者のTheodore M.Ludwigによれば、一神教は3つに類型化できる。
それは、1.君主的一神教、2.流出論的神秘的一神教、3.歴史的・倫理的一神教だ。
3.流出論的神秘的一神教とは、多くの神々を通しての1つの神の信仰と、世界魂としての1つの神の信仰だ。ギリシア神話はこれに当てはまる。古代ギリシア人では特定の最高位神との関係においてその神々の複数性を合理化していた。つまり、ゼウスを頂点として、その下に複数の神々がいた。


・参考文献
『Persians & Greeks: Zoroastrian Influence on Greek Philosophy』The Circle of Ancient Iranian Studies(ロンドン大学のイラン神話研究): http://www.cais-soas.com/CAIS/Religions/non-iranian/Judaism/Persian_Judaism/book7/pt1.htm
同志社大学神学部中田考ゼミ論文: http://www1.doshisha.ac.jp/~knakata/yamanemt.html


●ローマの一神教
ローマは確かに、当初、複数の宗教を認めていた。
しかし、そのほとんどは二元論、あるいは一神教をベースにしていた。
初期ローマ時代では、キリスト教とミトラス教とマニ教と並び人気だったが、ミトラス教とマニ教ゾロアスター教から分化した。
ちなみに、キリスト教ゾロアスター教にかなり影響を受けています。ヨハネ黙示録の善悪二元論ゾロアスター教そっくりです。

そして、391年にキリスト教が国教に定められた。

一神教を国教化したあと、皇帝と教皇がローマを統治し、裁判制度、官僚制度、などが発達した。つまり、中央集権化(統治と秩序)が進んだ。

また、ローマは、ギリシア哲学を発展こそはさせなかったが、その理論を実践した。実際、古代ローマ哲学者たちは、政治家でもあった。彼らは、理論よりも実践にベースをおいていた。彼らは共和制を支持した。


・参考文献
『ミトラス教』マルタンフェルマースレンMarten J.Vermaseren


イスラム一神教
イスラムでは、キリスト教から、分派し、イスラム教が生まれた。これも一神教である。

イスラム世界では、イスラム法の構築のために、ギリシャ哲学を利用した。ヨーロッパでは、忘れられたギリシャ哲学が、イスラム世界でイスラム哲学として発展した。


・参考文献
イスラーム思想史』井筒俊彦


ルネサンス期にスコラ哲学は自然科学、経済学を発展させた。また、人類初の大学(神学、法学)を創設した
13世紀に入って、イスラムから、忘れられていたギリシャ哲学とローマの文化を再輸入し、またイスラム哲学を輸入した。これは、ルネサンスと呼ばれる。
信仰と哲学が融合された、中世哲学が生まれた。中世哲学は、自然科学(プラトンアリストテレス)を再発見しました。経済学(財産、経済取引における正義、お金、利息)もスコラ学派が始めたものだと言われる。
そして、スコラ学派は、人類初の大学(神学と法学)を作った。


・参考文献
『古代派とスコラ学派』
http://cruel.org/econthought/schools/ancients.html


●エジプトで最初の一神教が生まれた
最後にエジプトについて説明したい(本来、説明の時系列としては一番最初に説明するべきだが)
一神教自体の起源は、ゾロアスター教ではなく、エジプトの太陽神信仰が最初だ。
温暖な気候から寒冷化したため、灌漑農業ができるよう、太陽を崇拝した。
古代エジプトには、心と体を切り離す心身二元論の思想があった。
※正確には1:身体、2:バー(魂)、3:カー(精霊)だ。バー(魂)は人や物に備わった「個性」のようなもので死後も現世を彷徨い続ける。カー(精霊)は死後の世界にいく「精神」のようなものだ。
一神教自体の起源は、ゾロアスター教でばなく、エジプトの太陽神信仰が最初だ。

また、ヴィーデマンによれば、エジプトの宗教は一神教だけが大事なわけではなくて、古代エジプトの宗教は3つの要素の複合体だという。
1 太陽崇拝の一神教
2 自然の再生力の崇拝
3 半人半神的な存在への信仰


一神教は抽象度の高い論理的思考を可能にした。
戦略学には戦略の階層論の理論があります。抽象的な戦略ほど強力になります。
ここで、宗教は抽象度が最も高い階層です。
ゾロアスター教では善悪2元論で構成されています。これが、キリスト教イスラム教になると、さらに一神教的になります。これは、世界で最も抽象度の高い世界を論理的に構築しようとする意思です。
そして、何百年も続いた神学論争は、ヨーロッパが抽象的世界観を論理的に構築できるスキルを養ったと思います。
こうして、学問を進化させたのだと思います。


・参考
『戦略の階層:修正版/地政学を英国で学んだ』奥山真司
http://geopoli.exblog.jp/11855493/


●追記
イオニアアメリカの良い部分をたくさんもってるなぁということが私の印象です。
海洋貿易、自由な議論、移民受け入れ、リバタリアンな風土、資本主義など。
アメリカは合理主義と資本主義の基づき、世界中から優秀な移民を大学に招いて、戦略立案や科学研究を実施していますが、この精神はイオニアから受け継いでいるところもあるのかもしれません。

小幡氏のリフレ政策への批判

●本エントリの構成
小幡氏による、日銀による国債直接引き受けの解説が優れていたため下記にまとめました。
まず、ブログ管理者による批判を載せ、次に小幡氏の記事のまとめを載せます。


●まえがき
この記事を呼んで、私はリフレ政策支持から、増税支持のほうに少し、傾いています。
もちろん、理想を言えば、政府の効率化、無駄な費用削減、債務削減が一番ですが、現実的には難しいようです。
インフレ税により、実体経済が悪くなるのであれば、増税のほうがまだまし、と考えることも理解はできます。

⚫︎政府の借金返済方法
政府借金の返済には下記3通りあります。
1 政府のデフォルト
2 増税
3 インフレ税

小幡氏もかつては1政府のデフォルトを支持していたようですが、今は2増税を支持しているようです。

・ソース
小幡氏による政府のデフォルト支持 http://lite.blogos.com/article/11211/
小幡氏による増税支持 http://blog.livedoor.jp/sobata2005/lite/archives/51838896.html


●日銀によるマネーファイナンス実施による各主体別のメリットとデメリットをまとめました。(ブログ管理者作成)

日銀によるマネーファイナンスによりメリットのある主体
・外需主導の上場企業、経団連(円安による)
・上場企業の株主(量的緩和による株の買い支えによる)
・政府(赤字国債発行、インフレにとる量的緩和、債券買われるんで好都合)
・不動産オーナー。例えば、三菱地所三井不動産、地主など (資産インフレによる)


日銀によるマネーファイナンスによりデメリットのある主体例
内需主導企業
・中小企業のオーナー
・住宅ローンの購入者(変動金利)
・一般消費者(輸入インフレ)
・金融機関(とくに地方)


●管理者による小幡氏への批判
・1「長期金利上昇をした場合、実体経済を悪化させる」についての反論
平常時であればそうだろう。しかし、不況下とくに恐慌下で、民間に貸出先が少なくなった場合は、ケインズ政策による乗数効果のほうが経済的な効果が高い場合もあるだろう。極端な例でいえば、戦争経済体制がそうだろう。
ただし、不況時や恐慌時に、民間から貸出需要があるという事例もあるので、一概には言えないが。

・2「多くの投資家が売りに回ったときに行えば、それは投機家の圧力に屈することになる。これは、まさにソロスがイングランド銀行をポンド投機で打ち負かしたのと同じ状況である。」についての反論

小幡氏は日本はハイパーインフレにならないと主張しているが、欧米のインフレについては言及していない。欧米は急激なインフレが起きることは免れえないが、個人的には日本でも急激なインフレが起きる可能性が高いと想定している。現実的には、下記の2種類のケースのどちらか
が起こる。

可能性1 日米欧の急激なインフレ
可能性2 日本は急激なインフレにならず、欧米だけが、急激なインフレを起こし、円高になる。企業の海外流出は加速する。一部では、海外進出のために日本の工場に雇用が生まれるが。

日米欧の政府が空売り規制のようなものをかける可能性も十分あるはずだ。既に欧州は債務危機が明るみになっているが、今後日米の債務へのリスクが投資家の間で懸念されれば、国債暴落の可能性がある。とくに、欧米はデリバティブ商品による損失も大きいため、日本の政府よりも急激なインフレを起こしたい誘惑は強いはずだ。そのため、日米欧の政府は歩調を併せて、ヘッジファンドに対しての空売り規制のようなものをかけてくることも可能性としてある。
すでに、自金取引については欧米で規制がかかってる。歴史的に恐慌時においては国家統制経済になりがちため、法律と軍隊を操作できる官僚が重要な意思決定者だ。
戦中は、日本は国債増刷による急激なインフレと円の切り下げにより、国家債務を解消させた。
今回も、日本政府にとってはある意味でチャンスといえある。また、円安メリットがある輸出メーカーや、民間株主、資産オーナーは量的緩和を強く望み、政府にロビイング活動のようなものを続けるはずだ。

※ブログ管理者の想定する2つのケース
ケース1
リフレ政策 → 国債下落 → 日銀による国債直接引き受け →投資家の売り → 日銀による金融引き締め

ケース2
日米欧による国債空売り規制 → リフレ政策 → 国債下落 → 国債買い支え → ハイパーインフレ



●小幡氏の主張のまとめ

●前提
量的緩和をして儲けるのは投資家だけで、実体経済に影響はない。
・日銀が直接コントロールできるのは、超短期金利のみ。


⚫︎日銀による国債無制限買取から起こることことは次の3点。
1 急激な円安
2 資産インフレ
3 長期金利の上昇

1 急激な円安により起こること
 1-1 輸入インフレ
 資源価格の輸入額が高騰。中程度の輸入インフレから実質所得の低下、不況
 1-2 債券安、為替安、株安のトリプル安
 1-3 資金は海外へ逃避、企業活動も移転する。


2 資産インフレになる(一般財のインフレにはならない)
貴金属、不動産などの高騰。


3長期金利上昇により起こること
 3-1 国債の下落。
  3-1-1 ヘッジファンド空売りをしかけてくるリスクが高くなる。そうなると、日銀は無制限に国債を買い支えられないため、金融引き締めに変更する。
  3-1-2 金融機関の破綻。
  ほとんどの金融機関、とりわけ地方銀行が日本国債の値下がりによる含み損を時価会計の下で損失計上。
  銀行セクター全体では大まかに見積もって10兆円前後。地銀に偏っているので、地方経済はいきなり行き詰まる。
 3-2 実体経済が悪くなる。銀行による民間への貸出金利上昇、住宅ローンの利率上昇。

●ソース元
アゴラ - ハイパーインフレは起きないが、リフレは経済を破綻させる-(小幡 績) http://agora-web.jp/archives/1501889.html
ハイパーインフレは起きない 質問への回答(小幡 績) http://agora-web.jp/archives/1502167.html
ハイパーインフレは本当にやってくるのか リフレ政策への大誤解(小幡 績)東洋経済オンライン
http://toyokeizai.net/articles/-/11850

核兵器と抑止論

奥山さんのゼミで自分の発表用のレジュメに、議論の結果をまとめて加筆修正したものを、下記に記載します。
今回のゼミの議論は、アメリカの核戦略のアドバイザーをしていたコリン・グレイに師事した奥山さんだけに、過激な話が満載でした。アメリカの核戦略がこういうものだということを理解しておくと、国際政治の最新状況も理解しやすいのではないでしょうか。


核戦略における前提
核戦略はエア・パワーを基礎にしている】
大陸間弾道ミサイル=核ミサイル
爆撃機 ※ステルス機も含む。
3潜水艦発射弾道ミサイル搭載の原子力潜水艦
上記3つの核攻撃のうち抑止力として強力な1と2はエア・パワーである。
※エア・パワーは空軍力と理解してもらえればだいたいOKです。


核戦略は意志の競争】
破滅の危険をどこまであえて冒すかについての意志の競争となる。現状維持を図る側が現状変更を企てる側に対して行なった核威嚇は、危機を有利に収束させる公算が大きいことになる。
これは心理戦であるために、科学的に結論が出せない。まさしく、コリングレイの指摘するように、戦略研究の対象は「テクノロジー」(科学)ではなく「アート」(業)であり、それを認めることで、初めて有効な議論ができるだろう。


バーナード=ブロディ(エール大学教授:元国防総省核戦略担当官)
「今までの我々の軍事機構の主要な目的fは、戦争に勝つことであった。今後の主要な目的は、戦争を避けることでなくてはならない。それ以外に有用な目的はほとんどない。」


●【冷戦時代の核抑止論の四大学派】
1【完全拒否派】
核抑止を信じておらず、これによって安全保障が達成できると考えるのは愚の骨頂と考える立場。
平和運動家の中心的な考え。NPT体制はこの学派。日本はほとんどがこの学派。柄谷行人氏もこの学派だ。


2【大規模破壊派】 countervailing
原則的に核による威嚇を否認する議論。抑止が効くのは相手(とその同盟国)を完全に破壊できるだけの能力を持った時だけに限るという立場。「敵がそれを使うことを抑止する以外に全く役に立たない」通常戦力で対抗するほかない。
※「冷戦時代の主要国のリーダーたちや、専門家たちで支持するものがけっこう多かった。

3【「最小抑止」論】 minimum defense
一方で相互確証破壊状況は一応是認しつつも、拡大抑止は実質的にこれを廃棄するよう主張する「最小抑止」論。 
核兵器の存在する世界では、最強国家の半分以下の経済力の国家でも、必要最低限の少ない数の核弾頭(最低10発ほど)だけで大国の地位を保持することができる。
※冷戦時代にはアメリカ国民に一番受け入れられていた議論。

4【「核戦争遂行」論】war fighting
戦略防衛推進論である。抑止論をあまり信じておらず、とにかくどのレベルでも核戦争に勝てるだけの準備はしておかなきゃいけない、という立場。最悪のシナリオでも勝てるようにするために、先制攻撃力などの構築を積極的に進めることを提案。
相互確証破壊状況を脱却し、核戦争遂行・勝利能力の達成もしくは防御体型中心の戦力態勢への転換を提唱する。少なくとも威嚇を行う側は存亡の境界に立たずにすむ状況があり得る。核優位の確立を通して核戦争を限定し、これに勝利する態勢を整えた側が危機において核威嚇に訴えた場合、状況によっては威嚇を実行に移す方が政治的な譲歩を重ねる損失が少ないと想定されるため、その威嚇には高い信憑性が付与される。
実際に、キューバ危機、ベルリン危機の双方が米国に有利な形で決着した。しかし、核戦争が起これば米国に数百万単位の犠牲者が出ることが予想されていた。

※実際に具体的な段階まで落とし込んでいるのは核戦争遂行論だけ。
冷戦中に大規模な戦争が起こらなかったのはアメリカが具体論まで落とし込んでいたからだという説もある。
これはターゲティングの理論が胆になる。
コリングレイの実務の話。衛星写真で撮影されたロシアの地図を広げ「ここに落としたら3000万人か4000万人死にますね。」と会話していたという。


●戦略的安定を支える状況
冷戦期の米ソの対外行動様式が戦略的安定を作った。
【「敵対の手段」と「統制の対象」の二重の性質】
「敵対の手段」としての核兵器の重視を与件としつつ、その「統制の対象」としての性質にも配慮した核兵器の諸基準を発達させる二重の性質がある。


【1960年代の中葉以降、冷戦の「制度化」が進んだ】
相互関係を律する「行動準則」の発達等(直接的な武力衝突の回避、事実上の「勢力範囲」の尊重、指導者の正統性承認、偵察衛星の許容、核兵器と通常兵器との峻別した上で、核兵器はできるかぎりこれを避けるべきであるという共通理解が進んだ。


【国際体系の構造】
軍事力の非対称性がある場合にとくに強い抑止力になる。 米ソ双方にとって脅威の所在や程度が明確、それへの対応もそれぞれの内部勢力が中心であったため、誤算による戦争生起の余地が小さかった。ただし一度キューバ危機があった。


イデオロギーの穏健化】
核兵器の重視が、ナショナリズムの対立が相対的に緩和された。
ナショナリズムは対外強硬論の呼び水になりやすく、それが戦争につながることも再々であった。


【NPT体制】
常識的な議論のため省略



核兵器の有用性とは何?
答え:軍事費削減、戦略的安定、発言力が高まることである。

A【軍事費削減】
核戦力の集積によって、米国に対する侵攻の抑止や侵攻への対処はそれまでよりはるかに容易かつ安価となった。そのため仮に西欧や日本がソ連の軍門に下り、旧世界の主要国が連合して米国に立ち向かってきたとしても、米国を正面から攻撃することはもちろん、海上封鎖によって米国を屈服させることも困難になったのである。
※しかし、本当に核武装が安価なのかは戦略研究者の間でも議論されている。例えば今回のゼミでは下記の議論がなされた。
核兵器のコストは10年間で50億ドルから300億ドルだと言われる。恐怖を無くすためには安上がりではないか。
しかし、NPT体制を前提にすれば核武装は高い。



B【戦略的安定】
米ソが、相互確証破壊状況(Mutual Assured Destruction: MAD)を積極的に受容し、その定着に努力することが戦略的な安定を増進する道程である。
問題点としては、核拡散の進行によって阻害されること。


1【危機における安定】
米ソ間の関係が極度に緊張した際にも、他方の領土や戦略戦力に対する先制攻撃の誘因が極限された状態。両国間の基本抑止。
危機における言動の慎重さ(ベルリン封鎖朝鮮戦争スエズ危機、キューバ危機)。


2【軍備競争に係わる安定】
(ある程度以上の長期間にわたって)戦略戦力の量的拡大および質的向上への誘因が抑制された状態。


3★【抑止に係わる安定】
戦略戦争に発展しかねないような冒険的、侵略的な行動の誘因が制御された状態。

【★3−1 懲罰的抑止】
報復による壊滅的な打撃の可能性を想起させることを通じて、自らまたは自らの同盟国に対する攻撃を思い止まらせる。

【★3−2 拒否的抑止」】
自国の防御能力を高め、相手の攻撃の有効性を減じること(拒否能力)によって相手の行動を思いとどまらせる。
※テロに対して戦えるのは実は拒否的抑止しかない。これは通常戦略による抑止と協力する必要がある。



C【プレステージ:発言力が高まる】コリン・グレイ提唱
核兵器は大国になるためのステップ。
大国に意義があるのではなくて、発展途上の国が大国になるために意義がある。




●国ごとで違う核戦略文化
旧ソ連マルクス・レーニン主義に基づき、核戦争では社会主義が勝利し、資本主義国は滅びる。(フルシチョフの登場で論争)

・ロシア:RMAで遅れ、核兵器を重視する戦略。

・中国:「最小限核抑止」戦略。冷戦期にアメリカから核使用の恫喝を受けた教訓をもとに通常兵器開発を無視し、核兵器開発を重視(人民戦争論)。
訒小平毛沢東の理論を発展させ「中国は最小限度の核報復能力を持つべきだ」と提唱した。単に核兵器を持てばいいのではなく、核報復(第二撃)能力を持つことが重要。

・フランス:ドゴール将軍の強力な指導のもと、アメリカによる核の抑止に疑念を抱き独自で核武装
ドゴールは「フランスの安全保障がアメリカの核の傘に依存せずに済む」との信念で、通常兵力削減の代わりにフランス独自の核兵器の開発を推進し、1960年2月にはサハラ砂漠のレガーヌ実験場で原爆実験に成功しアメリカ、ソ連、イギリスに次ぐ核保有国となった。ガロアによる「比例的抑止」理論がベース。

・イギリス:アメリカの核とのリンケージ。イギリスの核戦力は、アメリカとの同盟を補完する戦力と位置づけられている。
イギリスは1950年代から核武装している。自国の核をアメリカの圧倒的な核戦力とリンクさせる方法。

北朝鮮:「最小限核抑止」戦略。アメリカと対等な交渉をするため?
※実際は核を持っていないが、政治的に優位に立つため核を持っていると主張しているのかもしれない。

イスラエル:核保有しているが、持っているか持っていないかを曖昧にさせる戦略

・日本:核政策(非核三原則、核軍縮への取り組む)はあるが、核戦略はない(核抑止は米国に依存)。


※核抑止は西洋文化に限定されいるかもしれないという議論もある
インド、中国は核抑止できるのか。
かつて日本は経済力ではなくて軍事力が先行してしまい、勝目のない戦争に向った。アメリカは日本の抑止に失敗したとも言える。


●【NPTへの批判】
 新規核保有国が「懲罰的抑止」のみを期待し、また核優位を追求しないとすれば、地域紛争の起こる確率がこれによって低下し、国際間の安定をもたらしえる。(バランスオブパワー)NPTは非核国の核武装を禁じると共に核兵器国の核軍縮を義務付けた。 
 NPTは機能していなかった。ブレジンスキーは「米国はNPTを核独占のために利用してきた」バーナード・ブロディは「NPTは国際政治において日本を劣等国においておくためのシステムだ」

※NPT体制はつまるところ、核の同盟=クラブ化だ。


●【バランスオブパワーによる安定】
 保有国同士は限定戦争しかできない。核保有国を増やして、紛争を減らすことはできるかもしれない。
ケネス・ウォルツやブロディやエマニュエル・トッドやジョゼフ・ナイやCFRの多数のメンバーはバランスオブパワーを提唱している。
ケネス・ウォルツ「核兵器は安定性をもたらす」
ブロディ「冷戦期は逆に安定していた」「恐怖の均衡があった」
エマニュエル・トッド「中東が不安定なのはイスラエルだけに核があるからで、東アジアも中国だけでは安定しない。日本も持てばいい。」「核を持てば軍事同盟から解放され、戦争に巻き込まれる恐れはなくなる」

しかし、実際はNPT体制による核のクラブ化により大国だけに保有されている。
※またバランスオブパワーが成立するかも議論が別れるとことろだ。


●【抑止力への批判】
【1】 核攻撃をする「確実性」がない。低レベルの攻撃、たとえば通常兵器による攻撃を抑止する場合、核兵器による脅しは、確からしさを失い、脅しが効かない惧れがある。核第一撃、報復核第二撃構想に基づき核兵器を配備すると、低レベルの攻撃を仕かける誘惑を生み出しかねない。
【2】 安全保障のジレンマを生む危険性。
【3】 相手の合理性を過信することの危険性 
【4】 「抑止への不安」から先制攻撃を生み出す危険性 


●【核が抑止に失敗した歴史】核保有国が非核保有国に侵攻された歴史
ジョゼフ・ナイ「抑止は「能力」だけではなく「確実性」にも関係があるのである。」
実際、第4次中東戦争イスラエル核武装していたにもかかわらず、エジプトに奇襲された。実際には、二度失敗した。 エジプトの指導者アンワル・サダトもシリアの指導者ハフェス・アルアサドも抑止されなかった。
これらの経過は、核不使用規制の威力を証明したように見える。攻撃側は、相手側が核兵器に頼る確率は、皆無でないとしても極めて低いことを、知っていた(能力はあったが「確実性」がなかった)。
セイモア・ハーシュによれば、核兵器を巡るエジプト・シリア軍の反応は以下のようなもの
【1】 エジプト・シリア軍は最初から攻撃目標を限定していた模様。イスラエル軍の抵抗らしい抵抗がない段階で、すでに進撃をやめていた。
【2】 しかしそれは、イスラエルの核攻撃を懸念したからではなく、イスラエル軍そのものの「不敗神話」が抑止力となっている。

また、イギリスもフォークランド戦争の抑止を見事に失敗した。


●【今後の核戦略について】
 米核態勢見直し報告(NPR)では、中露との「戦略的安定性」が大きな柱の一つになっており、米中の対話が想定されている。米露交渉の進展後、米中間の核軍備管理交渉に入ることを念頭に置いていると見られるが、「最小限抑止」戦略を自称している中国側が受け入れるかどうかがカギを握るだろう。

以上、学術書を中心にまとめてみました。



●参考文献
「戦略原論」第10章、第12章 石津他編書
「戦略の形成〈下〉―支配者、国家、戦争」 弟18章 核時代の戦略 コリン・S・グレイ
「勝利は可能だ」コリン・グレイ、キース・ペイン
「冷戦と核兵器」『国際政治』100号(1992年)梅本 哲也



※  ※  ※  ※  ※  ※  ※  ※  ※  ※

■今後の日本の核武装について
以下は、ゼミでは議論しませんでしたが、日本の核戦略について、私の意見です。

核武装するためには、まずは通常戦力の強化が必要
確かに、日本が核武装することで、抑止力、発言力を高めることができることは魅力的だ。米国債や米ドルなど利益が見込めない商品を買うよう圧力をかけられるなど、日本がアメリカに対して対等に交渉できない原因は、日本が軍事力をアメリカに依存しているた要員が少なからずあるだろう。
できるものなら核武装はしたいところだ。だが、現実的にはNPT体制からの脱退をする必要があり、もし脱退すれば日米安保は護持できないだろう。そのため、日米安保が解消されたとしても、中国と戦えるだけの通常戦略を持つ必要があるはずだ。


●無駄な戦争を起こすリスクを減らすために、憲法9条は改正しない
しかし、核武装するとしても、憲法9条は改正せず、護持したままでいい。個人的には吉田ドクトリンを継承し、日米同盟と憲法9条を盾に米軍に軍事費とリスクを負担させ続けるのが懸命だと考えている。日本は、日米安保条約を基礎に、EUにおけるスイスのような役割を演じて、当分の間はソフトパワーで国力を維持する。
なぜなら日本に、軍産複合体の利権を発生させず、大きな軍事費も払う必要がないからだ。エアパワーなど持つことになれば、軍事費が莫大になるし、戦争に出兵するリスクがある。


アメリカは冷戦期にロシアという国家を消滅させることまで視野に入れていた。
考えてほしい。米国が東アジアを戦略的に植民地化しようとしたのは、ロシアと中国が海へと出る力(ランドパワー)をシーパワーによって防ぐためだ。冷戦中における米国の戦略はロシアを消滅させることまでをも視野に入れていたのだ。次のコリン・グレイの論文にそう書いてある。アメリカの核アドバイザーをしていた戦略家がそう言っているのだ。


「勝利は可能だ」コリン・グレイより
ソ連の指導者たちはアメリカの限定核オプションを使うという「意志」よりも、アメリカの具体的な「勝利戦略」のほうを恐れるはずだ、ということだ。このような戦略には、ソ連という国家の消滅までも視野に入れたものでなければならない。アメリカはソ連を打ち負かすことを計画しなければならないのだが、それはその後のアメリカの復興を妨げるような、コストのかかるものであってはいけないのだ。ワシントンの戦争の狙いは、最終手段としてソ連の政治システムを破壊することや、その後の世界秩序が西洋の価値観と合うようなものにすることでなければいけない。
 ソ連が最も恐れる脅威は、その政治システムの破壊やその機能に対する重大な損害であろう。したがって、アメリカはソ連のリーダーシップの中枢や、彼らの情報伝達手段、そして国内政治を統治するための手段を破壊できなければならない。モスクワにある大規模な官僚機能に代表される、きわめて中央集権的な政治構造を持つソ連は、そのような攻撃にはかなり弱いはずである。国家の安全保障機関であるKGBが深刻な危機に陥ると、ソ連政府の機能は麻痺するはずだ。もしモスクワの官僚たちを消滅させたり、被害を与えたり、もしくは孤立化させることができれば、ソ連は混乱に陥って崩壊し、ソ連の指導者たちを残すために国内において徹底した予防措置をとることになるはずだ。アメリカが目標選別と兵器購入において賢明な政策をとることができれば、ソ連のリーダーシップの生き残りを防ぐこともできるのだ。」(引用終わり)

米中の間に挟まれた東アジアは、中東の次に、東欧と同程度に危険な地域だ。ロシアは東欧に侵攻した歴史があるが、アメリカは第2次世界大戦以降直接的には今まで東アジアに一度も侵攻はしていない。


アメリカが中国に覇権を奪われつつあるため、日本を中国にぶつけさせること(バック・パッシング理論)を想定しているだろう。
しかし、今後アメリカは本当に中国に覇権を奪われようとしている状況である。冷戦期の旧ソ連以上に中国はアメリカにとって脅威だということを理解してほしい。近いうち、経済的には、アメリカは中国に勝てなくなる。しかし、アメリカは軍事力ならば勝てるのだ。あなたがアメリ国防省ならどうやって中国の戦略を練るのか?コリングレイによれば戦略家は、中国という国家の消滅までも視野に入れたものでなければならない。どうやってアメリカは中国を消滅させようとするだろうか?
陰謀論的に想像すると、アメリカの戦略家はこう考えるのではないか。
※戦略研究は「テクノロジー」ではなくて「アート」に属するので、個人的にこういう心理の読み合いも「アート」の一つとして有効だと思っている。
アメリカが中国を抑止するために、協力してくれる友好国は、韓国、日本、オーストラリア、フィリピン、ベトナムがいる。インドや北朝鮮や台湾もやり方によっては協力してくれるし、中国国内においてもチベット新疆ウイグル自治区や中国国内の上海閥太子党アメリカの協力者だ。
このうち、東アジアで中国に次ぐ一番の大国は日本だ。本当は、中国と日本で戦争を起これば、アメリカの覇権が維持できるが、日米安保憲法9条があり、国際法的に正面からぶつけられない。憲法9条アメリカが押し付けたものだから、変えさせづらくもある。
そこで、石原慎太郎安倍晋三や日本の過激な右翼やリアリストは、核武装改憲を望んでいるため、御用学者やメディアやCIAや親米派の素直な政治家や官僚や、急進反米派の団体を支援して、日本の9条を改憲させるのがいい。9条廃止が成功すれば、中国と日本の間で戦争やらせやすくなるし、日本が武装すれば日米安保で米国が負担している軍事費も削減できるし、軍産複合体も新しい取引先ができて私腹も増やせる。
ただし、核武装は許せない。リアリストのいうパワーバランス理論に従えば、日本に核武装してもらっては戦争を起こさせづらくなるからな。」

だからこそ、無駄な戦争を起こすリスクを少なくさせるために、憲法9条を護持することが重要だ。日本人は無駄なプライドを捨てて実利をとるべきだ。米軍を番犬として使わせ日本を守ってもらおう。


憲法9条を改正しないための5つの前提
ただし、これの前提として下記の5つ認識がある。ここに書いてあることのうちの少なくとも1つ以上が、実現しなくなるのであれば、憲法9条を改正して再軍備するのもありだと思う。今後の国際情勢次第では戦略変更も当然検討していいけばいいし、今からでもあらゆるリスクを想定して十分議論していくことは重要だ。

【1】アメリカが中国を攻撃する可能性
アメリカは中国を攻撃する可能性がある。バックパッシング理論によれば、アメリカが中国を攻撃する場合には、直接対決を避け友好国を中国にぶつけさせることが戦略のため、日本・韓国・オーストラリア・フィリピン・あたりがぶつけられる可能性があるからだ。
【2】日米同盟を維持し、中国と日本間で有事が起きた場合は、アメリカが日本の代わりに中国と戦わせることが可能。
中国などの敵国と紛争が起こったとき、米国を日本の代わりに戦かわせる。尖閣初頭は油田があるため、日本はここの領有権は防衛する必要がある。そこで米国を日本の番犬として守らせることが可能。
※どこまで米軍を番犬として飼い慣らせられるかは日本の外交の力量次第だ。日米安保が破棄されると、本当に日本は二本の通常戦略で中国と戦う必要がでる。
【3】東アジアでは大規模な戦争が起こらない。
東アジアでは、小規模な紛争は起こるが、大規模な戦争は起こらない。
【4】将来的に東アジアで国家間の紛争が起こる。
中国による台湾侵攻、韓国や中国による北朝鮮侵攻が将来起こる。この有事の際に、日本が出兵すれば、大量の死者と軍事費が必要になる。
【5】9条を改憲すると軍産複合体が日本でビジネスを始める。
9条を改憲して武装すると軍産複合体イスラエルやロシアやアメリカが日本に軍事技術を押し売りしだす。これは日本国内に今の日本のゼネコンのような、戦争ゼネコンを生み出ししてしまい経済的に損失を被る。

宇宙コントロールとは何?それはどのように獲得・喪失されるものか?

奥山先生による地政学ゼミに参加して参りました。
今回のスペース・パワーについては、議論の結果をまとめております。

●スペース・パワーの定義
アメリ国防省の定義 「宇宙において、その目的を達成するための能力」

●スペース・パワーにおける4つ学派
1 聖域学派サンクチュアリスクール
軍事的な力を宇宙で利用するなというリベラル派。


2 生存性脆弱性学派
宇宙システムは攻撃に対して脆弱であり、対衛星はいいが宇宙で軍事力は使えないのではないか。


3 高地学派(ハイグランドスクール)
クラウゼヴィッツの理論:瞰制(高地)を獲得することにほかならない。
A 障害を作る。接近を困難にさせる
B 上から下は命中率がいい
C 展望において有利


4 コントロール学派
安定した軌道に載っている宇宙船は燃料がいらないため、宇宙の交易路の確保が重要。
もっとも効率よく移動するのに使われるのが「ホーマン遷移」であり、宇宙空間における未来の交易路と軍事・交通・通信路は、宇宙にある港の間にあるホーマン遷移軌道になる可能性が高い。


●スペースコントロールが成立する一般要件。
1テクノロジー的な要素。運搬手段、飛行機、ロケットなど。
2地理的な要素。発射するのに最適な場所が必要。宇宙の重要なポイントに飛ばせる、地球の最適な場所を獲得。
※必ずしも自国でなくてもよく、最適な地理を持つ国と友好関係を築くことも有効。
3継続的な要素。1と2を生かすための経済的要素が必要。


●スペースコントロール創出させるための2つの方法。威嚇と強制。
威嚇とは:外交、経済、情報を利用する。
1外交
国際際法(条約、規制)などで圧力をかける。
EX、1967年10月10日に宇宙条約が発効された。
「月その他の天体を含む宇宙空間の探査及び利用における国家活動を律する原則に関する条約」
領有の禁止が第2条で規定。天体を含む宇宙空間に対しては、いずれの国家も領有権を主張することはできない。
100キロ前後までが領空であり、それ以上は宇宙空間で領有権を主張できない。

1983年3月23日 SDI=スターウォーズ計画宣言し、宇宙の武装化が始まる。レーガンは、夜の演説で、ソ連の脅威を強調すると共に、「アメリカや同盟国に届く前にミサイルを迎撃」し、「核兵器を時代遅れにする」手段の開発を呼びかけた。


2経済
衛星の打ち上げを寡占する。弱い組織には圧力をかける。
日本はJAXAはやぶさ打ち上げでうまくやった。再突入のデータも蓄積している。
日本が力を発揮できるのは経済の分野。太陽光発電などで頑張れないか。


3情報
大国は情報を確保し威嚇できる。

強制とは:軍事力、兵器を利用する
1 ハードへの攻撃。その国から高地を消滅させる。
宇宙対宇宙、空対宇宙、地上対宇宙(弾道ミサイル防衛)の3つの状況が想定できる。
2 ネットワークへの攻撃。衛星と地上のネットワークを絶つ=運用統合の連結を絶つ。
サイバースペースの抱合せでコントロール可能。


●参考文献
「アストロポリティーク:宇宙時代の古典地政学」ヴェレット・ドールマン

エア・パワーは今日のアメリカの戦略における最先端を担っているか。

6月17日に奥山先生による地政学ゼミに参加して参りました。今回はエア・パワー/スペース・パワーと核戦略について議論してきました。私が発表に使った文章を、議論の結果を踏まえて修正して記載致しました。まずはエアパワーについてです。はてなダイアリーのシステム上1日に複数回分に分割でいないため、日時が異なりますが15日、16日、17日に分けて記載致します。

●結論
アメリカは世界で唯一のエア・パワー大国である。先制攻撃による抑止力こそ、アメリアの戦略であり、アメリカの戦略文化の基本である。アメリカのエア・パワーは1【突破力】 2【テクノロジー】3 【攻撃力】によって構成されていると考える。

●エアパワーの4学派(奥山先生提唱)
1 戦略爆撃
武器だけで勝てる(マハン)。
都市爆撃も含む。
※本当に戦争を終わらせられるのかは議論の余地あり。

2 軍事ターゲット学派

3 リーダーシップ ねらいうち/首切り派
EX:サダムフセインだけ殺せばOK。
・特殊部隊が狙いを定めたうえで、無人航空機(UAV)で狙いうちする。そのため、インテリジェンスも絡んでくる。
無人航空機が役に立つ。当初アメリカの軍部が無人航空機の導入を嫌ったため、CIAが無人航空機を利用することになった。
・通常の戦闘機の操縦者は6年で2億円程度の育成費用が必要だが、無人航空機の場合はそれよりは安いとのこと。
・ゲーマーを操縦者に採用しているみたいで、軍人の組織でもまだ議論があるみたいだ。
無人航空機と通常の航空機との違いは
A強国に利用できるかは微妙で、非対称戦争には使える。
B情報をとって気すぎるため、分析に時間がかかる。
C仲間の人命が犠牲になることがない

4 政治シグナル派
あまり使われてない。ベトナム戦争のときに少し議論がでた。

●「即効性」がアメリカの戦争の流儀
戦略航空戦略は、戦争をいかに抑止し、また遂行するかという点に関するアメリカの志向を象徴するものであり、体現するものであった。長距離航空各攻撃力は、アメリカの戦略文化にほぼ完全に一致していた。1991年にイラクに対して行われた空爆に見られるように、即座に決着をつけるために最大限の武力を行使するのがアメリカの流儀なのである。
 
●リーダーの狙いうち/首切りよる抑止論
エリオット・コーエン 湾岸戦争によって「アメリカの指導者は、今や圧倒的なエア・パワーというこれまでの戦争の歴史にはみられない軍事能力を手にしている」 少なくとも西側諸国は敵に味方の意思を強要する手段が、「暴力」から「強制」(政策決定者に働きかける行為)へと移行している。エアパワーへの期待は、湾岸戦争での多国籍軍の実績、さらには、近年コソヴォアフガニスタンイラク戦争に裏付けられているのである。

●エアパワーは「占有力」も獲得しつつある
「ポストヒロイックウォー」と呼ばれる今日の状況からすれば、いかなる政府にとっても可能な限り陸軍力(海兵隊)や海軍力を投入しないほうが政治的に無難。だが、より重要なことは、技術の発展に後押しされたエア・パワーによって、「占有力」の概念自体が変化していることであると思われる。すなわち、従来の陸軍力に頼らなくても、事実上ある地域を占有することが可能になりつつある。例えば、湾岸戦争でのイラクの「飛行禁止区域」の設定とその監視活動は、今日のエア・パワーがある程度の「占有力」を備えていることを見事に実証している。逆に、今日の陸軍に求められていることは、必ずしもある地域の占有ではなくて、むしろ、戦争の後片付けになりつつあるようにも思える。
※これには反論があった。
航空機単独での勝利はやはり困難で、ユーゴスラビア戦争で勝利したくらいでうまくいっていないのではないか。

●【統合力が重要】エアパワーはランドパワーと協力することで相乗効果がある
戦争に勝利をもたらすものが、各軍種・兵科の「相乗効果」であることは、歴史の教えるところである。
コソヴォ紛争では限定的な効果しか発揮できなかった。実際、湾岸戦争の結果から確実に言えることは、エア・パワーを中核とする各軍種の備えた力の「相乗効果」こそが、多国籍軍の決定的な勝利をもたらしたということである。戦争におけるエア・パワーのウェイトは相対的なものにすぎない。問題の本質は軍事力の統合にあるのではないかという疑問に応える必要がある。実際、今次のイラク戦争では、事前にイラク国内に潜入した地上の「特殊部隊」による誘導があって初めて、エア・パワーは極めて効果的に機能したのである。

アメリカの戦略文化には先制攻撃とテクノロジーの信頼性が根強い。
1【先制攻撃】 アメリカの戦略文化に先制攻撃がある。
ステルス機を使えば死傷者をださずに攻撃もできる。そのため、議会の承認を経ずに軍部の判断で攻撃可能。偵察にも使える。パキスタンでは2004年から300回以上にわたって無人機から空爆しているのだが、この作戦はアメリカの議会でほとんど議論された形跡はない。

・ドゥーエの理論
「敵がチャンスを得る前に攻撃する以外に、敵の航空部隊が攻撃してくるのを防ぐ手段がない。敵の航空部隊を飛び立たせないようにするか、もしくはどのような航空活動を持ちわせないように妨害するのは、・・・論理的で合理的な考え方である。」

2【テクノロジー】エアパワー重視志向は、アメリカ国民の科学至上主義の反映している。 

ラッセル・ウェイグリー「アメリカ流の戦争方法」
アメリカ人の実用主義的な性質と核時代の複雑な技術によって育まれた戦略と政策の厳しい問題から目を逸らしてそれを技術的に解決しようとする」国家的な傾向があると指摘している。アメリカの流儀は、「政治上の見識」と「運営上の敏捷さ」よりも「技術」と「兵站」を重視してきたのである。

・コリングレイ:アメリカの調査計画は研究対象がアートであることを認めない。
過去数十年間にわたった「戦略」研究は、危機や戦争を引き起こす政治的動機に対するわずかな認識しかもたないままに、安定的抑止の必要条件を列挙してきた。戦力計画に関するアメリカの調査研究は、その研究対象がアートであり、科学ではないということを断固として認めようとしない。核兵器は、勝利を確実にするためよりむしろ抑止のために必要とされているが故に、「どれだけあれば十分か」という問いに対する答えは永遠に分からないままになるのである。

・エリオット・コーエン
「技術自体が今日の主要なエア・パワーの理論家であり、当面は発明が適応の母である」

・エアパワーはテクノロジーによって進化している。
無線技術(GPS等)と連動する最先端。ステルス機とサイバーテクノロジーの発展により先制攻撃が有効化。
面白いところでは、DARPAが小鳥の姿に擬せた偵察機を開発。空飛ぶロボット。

※反論
いまやテクノロジーの最先端はサイバーなので、エアパワーではないのではいかという反論もあった。

●3 【突破破壊力】
【3−1純粋に破壊を目的とする】「空軍力は純粋に破壊を目的とする点において、海軍力とも大きく異なる軍事力である」(シュミット)
核戦略の3つのうち2つは空軍。 
・1大陸間弾道ミサイル=核ミサイル(大気圏外を弾道飛行する弾道ミサイルと大気圏内を飛行する有翼の巡航ミサイル
・2長距離爆撃機 ・ドゥーエの理論「制空を得ることは勝利を意味する。航空部隊に対してそれ相応の重要性を与えなければならない。」飛行機乗りは戦術面では兵士と同じように他の軍事組織に支援を求め、戦略面では単独実行が念頭に置かれている。

【3−2 戦域(戦闘空間)が設定】空軍力によって戦域(戦闘空間)が設定され、その枠のなかで陸軍力が活動し、敵に最後の止めを刺すことになる。戦略爆撃の高い有効性を主張(ドゥーエ)。部分的に狙いを定めて攻撃する方法。エリア一体を攻撃する方法がある。

・ダグレスマクレガーの理論
1戦闘の開戦段階
・精密誘導爆撃によって、敵の神経網が切断。
・防空施設や大量破壊兵器など郡司的な拠点があらかじめ破壊。空軍、海軍だけでなく、陸軍(ロケット砲部隊、ヘリコプター攻撃部隊)も投入。

2浸透段階 
規模の小さな陸上戦闘グループが敵領土に複数の地点から浸透を開始する。EX、エアボーン部隊。
・偵察能力やスタンド・オフ攻撃能力を超えない範囲内に浸透を行い、空中偵察によって発見された敵の隙や脆弱点を攻撃する。
・その間においても空軍航空機、陸軍ロケット砲部隊やヘリコプター攻撃部隊は引き続き、攻撃を行い、陸上戦闘グループの攻撃前進に弾みを与える役割を担う。
・この段階で重要なのは「航空阻止」能力の維持。このような戦闘形態は、例えばGPS、精密誘導爆撃、戦場把握能力などによって可能となった。

●新たなパラドックス
その精密性が、戦争の犠牲者数を矮小化すべきという人類の期待を過度に高めた結果、爆撃自体に躊躇するという奇妙な現象。
今日の真の意味で「革命的」な現象とは、敵・味方を問わずより小さな犠牲でより大きな成果を早急に求めるという、この人類の期待値の上昇している。

●日本のエアパワーはどうか
戦略爆撃ができない。現場でリアリティが全くなく、想像力が働かない。
・対地攻撃はある。どちらも支持は空軍によるものだが、地上何mかまでが陸軍の管轄で、地上何m以上が空軍の管轄。
北朝鮮のミサイル担当も空軍。
・情報は横田基地に集約させる。
ドッグファイトはやらない。やったら負ける。ミサイルで勝負する。

戦争を前提とした体制ではないようです。もし敵国に攻撃されて、米国が守ってくれなければ為す術なしといったところみたいです。

統合運用のベースになるサイバーはどうかというと
・日本のサイバー運用
100億円の予算がついて、統合部隊がサイバー運用。運用するために、大学院に派遣して勉強することもあり。
社内インフラ:自分たちのインフラを守る。


●参考文献
「エア・パワー―その理論と実践 (シリーズ軍事力の本質) 」第1章 石津 朋之
「戦略の原点」第5章 ワイリー
「戦略原論」石津他編書

実は年金不正受給問題より貧困問題のほうが深刻

●結論
日本は相対的貧困率が高く、GDPに対する生活保護費率も少ない。
これは構造改革が、企業優遇のための規制緩和から実行したため、弱者への再配分がうまくいってからだろう。
1978年のトウ小平による経済開放路線、1979年のサッチャーによる政治改革を追いかけて日本も「新自由主義」を導入したが、企業優遇のための規制緩和から実行したため、弱者への再配分がうまくいっていないということだろう。具体的には、1999年の労働者派遣法改正に伴う派遣社員増加や、役人がリクルート電通に依頼したプロパガンダ(失礼、PR活動でした)で誘導されてフリーターが増加したため、相対的貧困率が増えたためだろう。
しかし、これからは、弱者に寛容な政治制度への構造改革を進める必要があるだろう。
橋本知事が導入しようとしているベーシックインカム構造改革の負の部分を解消しようとする点で正しい。橋本知事の国政進出は、維新八作のうち憲法改正などもあって批判的だが、大阪府大阪市の改革はまっとうなため、応援している。

※ただ、橋本知事の相続税100%はいくらなんでもやりすぎで、これを実行すると、地下経済市場が拡大する。例えば、イタリアでは税金が高いために、領収書を発行せずに、影で賃金を支払うというやりとりが一般化しているそうである(これが統計上の失業率を低く見せることになる)。法の支配を守るためにも、日本の財政債権は、減税とインフレ税によって、賄うべきだと思う。
あと、憲法改正の動きは問題。最悪なのは9条改正で、これをすると軍事費拡大になって、アメリカの世界戦略のために中国にぶつけられる可能性があるので、9条は護持しよう。これ、9条は戦後の日本の保守が支持してきたんだからね。本当は左翼の馬鹿の一つ覚えの理念も利用している高等戦略なわけで、吉田茂総理、村山総理も採用してきたいわば日本の密教だからね。

生活保護費不正受給額は総額の0.4%しかなく大した問題ではない
生活保護の不正受給額は2010年度に約2万5千件(前年度比29%増)、総額は約129億円。
一方、10年度の生活保護費は総額3兆3300億円である。
つまり、不正受給分は生活この約0.4%である。これを徹底的に調査しても、せいぜい1000億円程度だろう。脱税を本気で取り締まれば8兆円くらいの金が出てくるそうでこっちのほうが遥かに効果ある。

●日本は、相対的貧困率が世界四位。フランスの2倍もの貧困率
相対的貧困率とは、OECDによる定義では等価可処分所得(世帯の可処分所得を世帯員数の平方根で割った値)が、全国民の等価可処分所得の中央値の半分に満たない国民の割合の事。
日本の2006年の等価可処分所得の中央値(254万円)の半分(127万円)未満が、相対的貧困率の対象となる。

このような相対的貧困者は確かに増えている。ジニ係数(格差)は小さめなのに(イギリスと同程度)、相対的貧困が多いということは、大金持ちはおらず、今までは中流だけだったのが派遣やフリーターなどが増加して下流に差がついたということかもしれない。

✽参考1(ブログの最後を参照してください)

生活保護費のGDP比率はOECD加盟国の平均2.4%に対して日本は0.3% ※平成25年度にはGDP比率0・9%に上がったが
過去最多の更新が続く生活保護費が、2012年度の3兆7千億円から25年度には40%増の5兆2千億円に増大するとの厚生労働省試算が、判明した。10年前の02年度には2兆2千億円だったが、ほぼ右肩上がりに増え続けており、歯止めがかからない状況になっている。医療費が大きく伸びることが要因とみられる。国内総生産(GDP)に対する比率は12年度の0・8%から25年度には0・9%に増える。

上記記事を読んで、日本の医療費は手厚いので、医療費と生活保護の総計をOECD諸国と比較すると違った数字になるのでは?…と調べたら、
日本の年間約3千億円の生活保護費の半分近くを占める医療扶助。医療費も生活保護費に含まれているそうだ。

生活保護費の受給者の人口に占める比率はOECD加盟国の平均7.4%に対して1.6%。
※全人口に対する生活保護利用率
日本 1.6%
フランス 9.8%
イギリス 24%

OECD諸国で移民が受給する生活保護額が高いのでは?日本は移民が少ないから少ないだけじゃないのか?と思ったけれど、そうではないようだ。
記事によってばらつきがあるけれど、だいたい誤差の範囲内だ。スウェーデンは移民もネイティブも大差なく、とくに仕事をする関係で移住した移民は生活保護の受給率は少ない。。アメリカでは、移民は35%ネイティブより生活保護受給率が高いというデータがあったが、それでも、日本の受給率の低さと比較すると著しく低い。また、アメリカでは1970年から1990ねん後半にかけてのデータだが、移民の生活保護受給率は下がり続ける傾向にあったようだ。

✽参考2(ブログの最後を参照してください)
✽参考3(ブログの最後を参照してください)


●所得が生活保護支給基準以下となるケースの内、実際に受給している割合を示す「捕捉率」は、
イギリス 87%
ドイツ 85-90%
日本 約10-20% (厚生労働省調査。住宅ローンを含めた人数。厚生労働省の予算確保のため少なめに見積もるバイアスがかかっているかもしれない。)
日本 68.4% 総務省の統計に基づく推計では捕捉率は68.4%(総務省調査。住宅ローンを除いた人数のため、総務省の調査が本当の貧困世帯のように思われる。)

✽参考4(ブログの最後を参照してください)
✽参考5(ブログの最後を参照してください)

●『反貧困』湯浅誠著 岩波新書より
生活保護など受けたくない」という心理的な要因とともに、自治体の窓口において、担当職員が本人の働く意欲や親族による扶養を盾にして、申請そのものをさせずに追い返す「水際(みずぎわ)作戦」が横行している。
湯浅氏は、自治体窓口で保護の申し出を拒否されたうちの66%がその対応に生活保護法違反の可能性がある(日弁連の見解)と指摘している。」
 「生活保護と言うと、すぐに『必要のない人が受けている』『不正受給者がいる』と言われることがあるが、生活保護の不正受給件数は2006年で14,669件である。必要のない人に支給されることを『濫給(らんきゅう)』と言い、本当に必要な人に行き渡らないことを『漏給(ろうきゅう)』と言うが、14,669件の濫給問題と600万〜850万人の漏給問題と、どちらが問題の本質として深刻か、見極める必要があると思う。」

→背景には、生活保護費の4分の1を地方自治体が負担していることや、ケースワーカーが不足していることなどがあるらしいが、実際はどうなのだろうか。



✽参考6(ブログの最後を参照してください)


●参考
✽1
ちなみに絶対的貧困とは  2008年5月のエコノミスト誌記事 山形浩生訳から
「世銀は、貧困ラインを「一日一ドル」、あるいはもっと正確には、1993 年購買力平価(PPP)で 1.08 ドルに設定しているのは有名な話だ。言い換えると、一九九三年に一日1.08 ドル以下しか消費していないアメリカ人よりも消費が少なければ、その人は貧困だ。この尺度だと、2004 年には 9.69 億人が絶対貧困に苦しんでいた。これは 1990 年からは 2.7 億人減っている。この貧困減少はもっぱら中国のおかげで、中国の貧困は 1990 年から 2004 年にかけて2.5億人減ったのだった。」

✽2
アメリカ移民は35%ネイティブより生活保護受給率が高い。
http://www.expressindia.com/fe/daily/19971227/36155163.htm

✽3
スウェーデンの場合の移民の生活保護受給率はほとんど違わない。
(New York: Russell Sage Foundation, 2009)

✽4
http://blog.goo.ne.jp/rahvulpes/e/2d9fa0c0fc3faf4b4d0b38d0c1c885b3
ただしこれは厚生労働省調査による。これは住宅ローン支払い中の世帯も対象に含まれている。住宅ローン支払中対象者を除くと
JIS+2D22総務省が6年前に実施した全国消費実態調査からは日本の捕捉率68.4%でイギリスと2倍以上の生活支給保護率になる。
全国消費実態調査は、家計簿をきちんとつけるという協力を求めるもの。

✽5
2010年4月9日、生活保護の捕捉率が政府(厚生労働省)から発表。
捕捉率とは、生活保護基準以下の世帯のうち、実際に生活保護を受給している世帯数の割合をいいます。


今回の発表によると、JIS+2D21厚生労働省自身が実施している国民生活基礎調査(2007年実施のもの)か 収入が生活保護基準以下で、預貯金が少ないため生活保護の要件を満たしている世帯  337万世帯 うち、生活保護受給世帯 108万世帯   捕捉率32.1%   (参考までに、337万世帯のうち)母子世帯 22万世帯(母子世帯全部の30.2%に該当し、低所得率が非常に高いことが示された)
JIS+2D22総務省が6年前に実施した全国消費実態調査から同様に、142万世帯、97万世帯、捕捉率68.4%
このJIS+2D21とJIS+2D22の2つの調査。福祉事務所の仕事

✽6
増税されると地下経済市場が大きくなる
http://agora-web.jp/archives/1432820.html
イタリアだ。現在、イタリアの付加価値税は20%。その結果、みんなが踏み倒す方向に向かった。20%もの税金を払うくらいなら、10%引きにするから、おたがいネーロ(闇)にしないか、と持ちかける者が増え続けた。領収書を切らず、現金だけをやりとりして、取引は無かったことにし、納税の義務そのものを消滅させる。

日銀の量的緩和策に伴うインフレ予測

●結論
日本でも数年先に大きなインフレが起こるだろう。ただし、どの程度までインフレになるかはわからない。

以下、なぜ日本でインフレが起こるかを「金融」と「国際政治学」の理論から説明していきます。

●叩き台として、ニューホライズン キャピタルの安東泰志氏による6つの経済情勢に関する近未来予測の要約を引用し、下記に私のコメントをつけました。
1『ユーロは当面維持されるが、年内にギリシャの離脱と同国がデフォルトに陥り新たな政策対応を迫られる。』
 →時期はさておき同意です。

2『ドル円相場は当面は円高傾向だが、日銀の国債買い入れの大幅増額表明を契機に、いずれは90円をはるかに越える円安に向かう。』
 →懐疑的です。FRB米国債を買い取る額は、日銀が日本国債を買い取る額以上になる可能性が非常に高いからです。アメリカの債務は地方中央政府だけではなくて、民間のデリバティブ商品の損失があります。表立って論じられませんが、こちらの支払額が本当は遥かに大きいです。日本はバブル崩壊の余波があったからか、欧米に比べてデリバティブ商品の保有額が少ないのです。この違いを見誤ると、前提を誤ってしまうので注意してください。

3『消費税増税法案は、与野党の反対議員によって骨抜きとなり日本国債の格下げと金利の上昇(価格の下落)が起こる。』
 →消費税増税法案は、通ると思います。社会保障費の財源を確保するためには増税が、他のインフレ税に比べて、官僚が利権を確実に確保できるからです。日本国債の格下げと金利の上昇(価格の下落)は起こると思います。

4『その場合、日本国債の格付けは2段階以上の引き下げに直面し、銀行などによる狼狽売りから、一気に値を崩すことになって、円・債券・株式のトリプル安となる可能性が高い。』
 →海外のヘッジファンドと銀行を含めれば同意ですが、日本の銀行に限っていえば懐疑的です。銀行は狼狽売りしないと思います。
日本政府と銀行は談合しているからです。民間銀行は日銀から無限に資金を供給してもらえるので、売る必要がありません。
売り崩すとしたら、海外のヘッジファンドか海外の金融機関でしょう。

5『日銀は国債の買い入れ額を大幅に増額すると共に、いざという時には新発債の引受もやむを得ずとの立場を表明する。』
 →同意です。

6『公的年金を原資とする日本版SWF構想が具体化する。』
 →知識がないため判断不能です。

●大きなインフレが来ると想定する2つの根拠
1 欧米は国債価格を維持させるために、日本にインフレ圧力をかけさせるのではないか?
アメリカと欧州はデリバティブ証券の損失額約4京円(推定)をまだ支払っていない。おそらく4000兆円程度(推定)を支払う必要があるだろう。
そのため、アメリカも欧州も量的緩和政策を今後進めていくはずだ。ただし、無尽蔵に量的緩和政策を続けていけば、通貨の価値が下がり、それに伴い国債価格も下落する。
だから、欧米にとっては、他の国も量的緩和政策をとらせ、通貨安に誘導させられれば、相対的にドル・ユーロの下落率は緩やかになり、合理的である。
歴史を振り返れば、日本の近代史は、欧州の支援による近代制度導入から米国依存による経済成長まで、欧米の対外政策に依存してきた。今でも日本の対外政策はアメリカに依存しているため、独自での対外政策をもたない。そのため、「外務省・財務省・その他省庁」や「テレビ・新聞」は米国政府から圧力をかけられても抵抗できず、前向きに量的緩和策の話に乗ると想像できる。
従って、日本政府は円安に誘導すると、私は予測している。


2 インフレ税は「年金や医療の社会保障の財源確保」と「政府債務削減」のため日本政府にとって合理的
日本政府にとってみても、GDP2倍の規模の政府債務を減額させることは、欧米と利害関係が一致しているのもポイントだ。最悪の場合、日本政府は増税とインフレ税の二重の圧力を国民にかけてくるかもしれない(これで社会保障の財源を確保するため、低収入層にとっては吉かもしれないが)。
政府債務を削減するためにはインフレ税が好都合なのだ。歴史的に日本や欧州がとった政策を思い出すのもいいかもしれない。第二次世界大戦、既に欧州では政府債務が膨らんでいた。欧州は戦時国債を刷りまくった。
日本は戦時国債を増刷し、ハイパーインフレで5年で物価が100倍になった。政府債務をインフレ税でなし崩しにする政策は、歴史的にみれば常套手段だ。
現在、イスラエルがイランに攻撃しようと仕掛ける準備を進め、アメリカ国内のイスラエルロビイストアメリカ政府がそれを支援するように誘導している状況だ。中東で戦争が起これば、景気刺激策ともなり、なし崩し的に量的緩和をさらに進める都合のよい理由にもなるはずだ。


※ シーレーンが封鎖される危険性にも注意
話は逸れるが、ここで世界情勢が緊迫する中で、日本が注意する必要があるのが、資源の輸入の制限だ。
第二次世界大戦で日本が米国と戦争を始めた決定的な要因は資源の輸入停止(海上封鎖)だった。
現在もイラン情勢は緊迫化しているが、日本はホルムズ海峡経由に資源を依存しているため、ここのシーレーンが封鎖されてしまえば、日本の国家的危機に波及することは理解してほしい。とりわけ過激な反社会的勢力には要注意だ。さらに注意すべきなのは、諜報機関は敵国に不利になるように、敵国と敵対している反社会的勢力を支援して、間接的に攻撃をしかけることをする。日本も、インド独立支援を支持するために、チャンドラボースを支援した。最近でも、CIAがは中国を牽制するために、チベット民主化ダライラマを支援をしていた。
すなわち、日本に圧力をかける殿下の宝刀を、欧米は外交カードとして利用できるということだ。


※理論的には、量的緩和策が、インフレを引きこさない可能性もある。 野口教授の理論から。
原理的には買いオペしたからといってマネーサプライが必ず増加するではないため、必ずインフレが起こるわけではない
例えば、インフレ税で賄った財源を社会保障(年金)に回せば、インフレは起こらない。年金が預金に回り、国債の再購入に当てられる。
しかし、政府が景気刺激策を取らないことはありあえない。不況下、まして世界的な不況下では、政府主導によるケインズ政策も、民間への貸出優遇政策も有効な手段になりえるからだ。歴史上、日本政府が不況下に景気刺激策をとらなかったことはない。

●インフレのメリット
インフレが起こったらどうなるのか?

・老人から政府への資金移動
外貨預金を除いた現金・預金が1264兆円が、インフレにより相殺される。日銀による民間銀行からの国債買い入れをしているため、資金は政府へと移動される。

・政府債務の削減
国内債券が1148兆円分あるが、これがインフレにより相殺され、政府債務は削減される。

・円安誘導により輸出企業の業績アップ
トヨタソニーパナソニック、日立、コマツ東レ、など外需企業が円安の恩恵を受け業績アップ。

●インフレにおるリスク
1 ヘッジファンドが日本国債空売りをしかけてくるかもしれない
通貨を刷れば日本国債の価値は下落する。日本の国債の6割は国内投資家が保有しているから安心だとも言えない。イタリアも10年以上は8割以上の国債を国内で保有していたことを考えると明日は我が身だ。円安が続けば国債の価値が下落するためヘッジファンド空売りをしかけられるリスクが出てくる。そうなると、日本国債暴落もありえる。ただし、日本国債暴落を始めると、日本銀行が買いオペを強化し、ヘッジファンドに対抗するだろう。その結果、最悪の場合には、ハイパーインフレレベルも想定できる。
(そう考えると増税をすることは、「政府債務減少」「社会保証費確保」ができるため、国債価格下落=ハイパーインフレ防止効果もあり、一概に否定もできないかもしれない。あるいは通貨切り下げやっちゃえばいいという声もあるかもしれないw)


2 民間銀行も国債を売るかもしれない
日銀と日本の民間銀行は談合しているので、あまり可能性は高くないと考えますが、民間銀行による国債売りも考えられます。ゆうちょ銀行も民営化したため、日本国債を売却するることも可能です。
一番ありえるのは海外金融機関でしょう。日本国債の格付を下げられたら売り浴びらせられる可能性があります。


3 為替リスク
・円建て金融商品の価値下落。外国投資していた場合にリスク高い
・過度な円安誘導による、海外進出を減速させる(ただし国内雇用を伸ばすのでこれはメリットになりうるかも)
中央銀行が民間銀行に貸出し、民間銀行が貸出先を決めるため、恣意的で不公平なものになるリスクもある。
(かといって不況時にはケインズ政策が有効なので、同じ政府主導なら官僚主導の場合も、談合が行われ不公平・非効率になるリスクもあるのだけどww)
・輸入インフレ。日本は資源の自給率が低いため、資源価格高騰は痛い。飲食業、電力企業、資源輸入に頼る内需企業は業績がダウンする。


4 円の購買力低下
当たり前だが日本人全体で購買力が下がる。円高のため、海外輸入品が安く変えていたが、円安誘導されると、海外輸入品が高騰し民間の購買力は低下する。


●不動産投資について
不動産を買うか悩んでいます。
結論としては、政府が増税をするのであれば見送り、インフレ税だけで政府が財源を賄おうと判断しているのであれば、買いです。どちらも実行するのであれば、状況により判断を下します。
まあ、不動産投資をするには税制の理解、個別物件判定、銀行からのローンの組み方、売却方法、運用会社選定などにも勉強しないといけないので、未だ買える段階ではないのが実状です。

不動産投資をするにあたってリスクとして5つ考えています。
1 福島原発の影響が数年後に現れて東京の地価も下落要因になる。
2 大震災(1回当たりの補修費用は平均60万円程度の負担になる予測)。
3 日本では大きなインフレが起こらないかもしれない。
4 長期的に日本は人口減少に向かうため、インフレを考慮しない地価の上昇要因はあまり見込めない(ただし東京は微増傾向にある)。
5 増税増税されると売却時に利益が随分と減る。

問題は3と5です。
5は5%程度の増税であれば問題ないですが、20%以上も上げられると、買う気力がなくなります。
ただす、年率7%程度のインフレが10年以上続くような状況になると買いです。
この規模のインフレが来れば、他の考慮しても十分なリターンが見込めるからです。

※どなたか不動産投資に詳しい方がいればアドバイス下さい。


●参考 下記3大メガバンク+ゆうちょ銀行だけでも日本国債の約7割は日本が購入していることがわかる。
・2012年 国債保有
三菱UFJ: 約48兆円
みずほ: 約34兆円
三井住友: 約28兆円
ゆうちょ銀行:146兆円(2011年3月末時点)
3大メガバンク+ゆうちょ銀行の国債保有高合計:256兆円

海外債券保有高全体:約91兆6391億円
※中国・英国・米国で40%以上を占めている。

・日銀のサイトにある国際収支統計(2011年末のデータ)
以下は主な日本の債券保有国。

国、日本の債券保有額、うち中長期債、短期債
中国、17兆9538億円、5兆6603億円、12兆2935億円
英国、11兆4884億円、8兆8948億円、2兆5936億円
米国、10兆1153億円、6兆4807億円、3兆6346億円
ルクセンブルグ、7兆2234億円、1兆3994億円、5兆8241億円
フランス、5兆2799億円、3184億円、4兆9615億円
シンガポール、4兆7653億円、2兆6709億円、2兆944億円
ベルギー、4兆1388億円、2兆4101億円、1兆7287億円
ケイマン諸島、3兆4486億円、2兆4590億円、9896億円
スイス、2兆6624億円、2兆3974億円、2650億円
タイ、2兆434億円、3262億円、1兆7172億円
サウジアラビア、1兆9153億円、1兆8985億円、168億円
カナダ、1兆4355億円、1兆645億円、3710億円
香港、1兆3820億円、5343億円、8477億円
アラブ首長国連邦、1兆3612億円、3871億円、9741億円

国際機関、5兆9310億円、5648億円、5兆3661億円