大阪湾海岸生物研究会のブログ

大阪湾海岸生物研究会の活動(定点調査や勉強会)の案内や記録のほか、大阪湾を中心とする海の生き物について書きます。

城ヶ崎定点調査(4月27日・雨天時翌日順延)のご案内

 今年度も4回の定点調査を予定しています。第1回目の定点調査は城ヶ崎へ行きます。奮ってご参加ください。なお、この回は27日が雨天の場合翌日に順延します。

 実施日:4月27日(土)
 ※雨天の場合は翌4月28日(日)に順延
 調査地:和歌山市加太 城ヶ崎
 集合(指定電車):12時00分、南海加太線加太駅。難波10:15発特急サザンに乗り和歌山市駅加太線に乗り換えると加太駅11:49着。城ヶ崎まで徒歩約2km。※順延の場合も集合時間は同じです。
 干潮:14:05,11cm(和歌山港)(28日の干潮は14:45,17cm)
 解散:現地で16時30分頃。
 持ち物:観察・採集用具(ルーペ、野帳など)、弁当、飲み物、軍手、タオル。
 申込み:事前の申込みは不要です。
 参加対象:本会会員と同伴者
 その他:27日が雨天の場合、翌日に順延します。当日の朝、実施かどうかはっきりしないときは、午前7時以降に本会のブログで確認してください。

 定点調査についてはこちらをご覧ください。
 https://www.omnh.jp/iso/okk/page03.html

2024年度の予定

来年度の定点調査などの日程を決めましたのでお知らせします。たくさんのご参加をお待ちしております。(石田)

 

■定点調査 <>は淡輪の干潮時刻と潮位
・定点1(城ヶ崎)
            4月27日(土)<14:44, 6cm>
            4月28日(日)<15:27, 11cm>※4/27雨天時の予備日
・定点2(豊国崎)
            5月11日(土)<15:01, –2cm>
・定点3(長崎海岸)
            5月25日(土)<13:53, 0cm>
            ※翌26日(日)は「海べのしぜん」<14:35, 2cm>
            ※海べのしぜんの補助スタッフ宿泊研修を再開する予定です。
・定点4(田倉崎)
            6月22日(土)<13:04, 4cm>
            6月23日(日)<13:46, –1cm>※6/23雨天時の予備日

 

■大阪湾生き物一斉調査
            6月8日(土)<14:05, –3cm>
            予備日9日(日)<14:48, 4cm>

 

■合宿行事
 鳥取県浦富海岸で計画しています。

 

■総会
           2025年2月16日(日)
           ※注:今年の総会は2月25日(日)です。

大阪湾海岸生物研究会 2024年研究発表会・総会プログラム

 2月25日(日)の大阪湾海岸生物研究会の研究発表会・総会のプログラムをご案内します。今回はハイブリッド形式になります。また、終了後に懇親会も予定しています。奮ってご参加ください。Zoomへの接続方法や懇親会の申込みは研究会のメーリングリストでご案内しています。

■大阪湾海岸生物研究会研究発表会・総会
 日時:2月25日(日)13:00〜17:00
 会場:大阪市立自然史博物館 集会室 及び Zoom
 入場方法:
 博物館南側の通用口からお入りください。通用口で守衛室に「大阪湾海岸生物研究会の総会出席」と告げて集会室へお進みください。

【研究発表会】13:00〜15:50(途中休憩を挟みます)
甲殻類の写真について」
 渡部哲也

「稀産種ヤチヨノハナガイの棲息環境と生態 ~大阪湾での生貝再発見を期待して~」
 和田太一

「2021〜2023年に採集した大阪湾のレア物」
 山下隆司

「大阪湾産フナムシの正体について(甲殻亜門・軟甲綱・フクロエビ上目・等脚目)」
 有山啓之・日置恭史郎(国立環境研究所)・山西良平

「個体標識によるホンビノスガイとミドリイガイの成長について」
 鍋島靖信

「2023年2024年冬に来遊したマッコウクジラ
 鍋島靖信

「クロピンノ覚書」
 萩野 哲

「大阪湾で初記録のタツノオトシゴ属」
 松井彰子

【報告】16:00〜16:20
 魚類標本ボランティアの活動報告
 大山文庫整理ボランティアの活動報告

【総会議事】16:20〜17:00



打ち上げエンドウモク

ホンダワラ類は気泡を持っているため、岩などの気質からはずれても流れ藻となって海面を漂い、長距離移動することがあります。以前このブログで、打ち上げられた5種のホンダワラ類を紹介しましたが、打ち上げホンダワラ - 大阪湾海岸生物研究会のブログ (hatenablog.com)、本日珍しいホンダワラを採集したので、報告します。

 そのホンダワラの名前はエンドウモクSargassum yendoi Okamura & Yamada in Yamada, 1938といいます。採集場所はせんなん里海公園(ぴちぴちビーチ)です。打ち上げホンダワラ類は9割以上がヨレモクモドキSargassum yamamotoi Yoshida, 1983だったのですが、エンドウモクも1%ほど混ざっていました。今回採集し写真撮影した個体の全長は約75cmで、藻体の特徴としては以下が挙げられます。(1)付着器は盤状、(2)茎はとても短く3本の主枝に分かれる、(3)主枝は扁平で屈曲しない、(4)枝分かれは平面的(特に先端部分)、(5)葉は長く(最長10cm以上)中肋と鋸歯を持つ、(6)気泡は大型で(最大直径10mm)円頭。

 私は大阪湾で初めて見ましたが、以前、紀伊半島日本海沿岸中部の、波当たりの強い岩礁の潮下帯上部で何度か見たことがあります。博物館の収蔵資料目録第20集によれば、和歌山県では有田市以南から採集されており、ネット情報ですが淡路島阿万や徳島県海部郡からも確認されていることから、先日の時化時に本来の生息地から剥がれて流されてきたものと考えられます。

 それでは皆様、よいお年を。(有山)

エンドウモク全体

エンドウモク先端

エンドウモク中部

エンドウモク基部

(12月29日追記)

エンドウモクは当研究会の定点調査での記録がありました(記憶に残っていませんでした)。2003年6月1日の豊国崎です。03-06-001.pdf (omnh.jp) おそらく打ち上げだと思います。(有山)

 

田倉崎のタコノマクラ

okkの皆様 暑いですね。

今日、個人的に田倉崎に行って来ました。

最干時の水深20 cm位の所で、タコノマクラ Clypeaster japonicus を採集しました。

サイズは殻長89 mm、殻幅73 mmでした。

南紀では普通なのですが、本会の定点では初めてだと思います。

(有山)

 

タコノマクラ

7月30日追記

「本会の定点では初めて」などと書きましたが、サイエンスミュージアムネット (kahaku.go.jp) で調べたところ、既に田倉崎で採集されていることがわかりました。1996年3月20日(OMNH-Iv1453)、2017年11月19日(KSNHM-Iv00429)、採集日不明(おそらく2017年以降、KSNHM-Iv00435)の3件です。大発見だと思ったのですが、時々出現するのですね。(有山)

豊国崎のヨロイコツブムシ

定点調査とは別に豊国崎に行って来ました。

ハバヒロコツブムシ Chitonosphaera lata が目的だったのですが、同属のヨロイコツブムシ Ch. salebrosa が採集されました。体長は最大2.8mmと小型で、ハバヒロコツブムシやヒラタウミセミ Leptosphaeroma gottschei (下記参照)と同じように極度に扁平な等脚類です。

ヒラタウミセミとハバヒロコツブムシ - 大阪湾海岸生物研究会のブログ (hatenablog.com)

ヨロイコツブムシは胸節の縁辺が丸みを帯び、縁辺に細毛が生えないこと、第1触角が頭部の前方に広がらないこと、体の前部に褐色斑があることで他の二者と区別できます。定点調査で平べったいのが出現したら、本種の可能性もありますので、丁寧に調べる必要があると思います。

なお、本種は大阪湾から既に報告されています(Nunomura & Nishimura, 1976)。

30-004.pdf (omnh.jp)

(有山)

7月21日追記 昨年の田倉崎と豊国崎の標本および先日採集した長崎の標本を見たところすべて本種で、ハバヒロコツブムシは含まれていませんでした。なお、4月9日に友ヶ島孝助松で採集したものはハバヒロコツブムシでした。両種の分布域が変化しているのかもしれません。(有山)

ヨロイコツブムシ

 

城ヶ崎のイボイワオウギガニ

6月18日の定点調査の際、ジュニア自然史クラブの参加者(だったと思います)が見つけてくれたイボイワオウギガニ Eriphia ferox Koh & Ng, 2008 です。当日のまとめでは「大阪湾では珍しいが過去に記録があったと思う」と申し上げましたが、定点調査では過去に記録されたことはありませんでした。おそらく大阪湾初記録ではないかと思います。

本種は、例えば和歌山県の白浜の磯では普通に見られます。石垣の護岸のすき間などに潜んでいて、夜になると磯に出てきます。近づくと逃げ腰ではあるのですが、鉗脚を大きく広げて威嚇してきます。かなり旺盛な肉食者です。私が白浜で見つけた時は引き剥がしたマツバガイを裏返しに持って歩いていて、まるで学会の懇親会でごちそうのお皿を抱えてウロウロしている人、のような感じでした。

ちなみに、イボイワオウギガニには南アフリカ喜望峰をタイプ産地とする Eriphia smithii MacLeay, 1838 の学名がかつては充てられていましたが、西太平洋に分布するイボイワオウギガニは南アフリカE. smithiiとは形態的な違いが認められることから、新たにKoh & Ng (2008)によりE. feroxとして記載されました。

(参考)Koh, S. K.; Ng, P. K. L. (2008). A revision of the shore crabs of the genus Eriphia (Crustacea: Brachyura: Eriphiidae). Raffles Bulletin of Zoology. 56(2): 327-355.(PDFリンク

 

【2023/6/22追記】2021年3月14日に同じく城ヶ崎で行った博物館友の会の海藻の観察会でイボイワオウギガニを記録している、という指摘がありました。少なくとも2年間は定着している、ということになります。(石田)

(石田)