思い出の曲を聴くとタイムスリップしてしまう女性を描いたSF恋愛映画『グレイテスト・ヒッツ』は、さすがに感傷的すぎる気がしないでもない。ニック・ホーンビィが『ソングブック』で書いていたように、特定の思い出と音楽が強固に結びついてしまうのは、人生の様々な場面で繰り返し聴いてきた思い入れのある曲には起こりえないと自分も思っているので。そういう結びつきを美しいとかロマンチックと思ってしまうのは大して音楽が好きでもない人間の感性だ。とはいえ、そんなに予算があったとも思えないのにロキシー・ミュージックをバンドごと映画に召喚してしまったのはマジで凄い。監督のネッド・ベンソンは一体どんなコネを持ってやがるんだ…。
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ワクサハッチーの新作『Tigers Blood』はもうほとんどルシンダ・ウィリアムスの領域に達しているかのようなアルバムで素晴らしかったが、マギー・ロジャースの新作『Don't Forget Me』はそれをさらに超える素晴らしさ。ケイシー・マスグレイヴスを手掛けたイアン・フィッチュクがプロデューサーとして全面的に参加したことで、かなりアメリカーナ寄りのサウンドになっていて、それがマギー・ロジャースの資質と上手くマッチしたと思う (大学生時代に授業でファレル・ウィリアムスに認められた動画/経歴が注目されがちだが、本人としてはあくまでも「イースタン・ショア・オブ・メリーランド出身のバンジョー奏者」という自己認識だったとのこと)。「So Sick Of Dreaming」は名曲!
そういえばイアン・フィッチュクはシグリッドの『The Hype EP』(2023年屈指の名作!)でも非常にいい仕事をしていたのだった。
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今年リリース予定のトーキング・ヘッズのトリビュート・アルバム『Everyone’s Getting Involved: A Tribute to Talking Heads』でリンダ・リンダズが何をカヴァーしているのか問題ですが、私の見解としては「Found A Job」ではないかと。なぜなら、「Found A Job」におけるコード・チェンジの少ない平坦なヴァースからメロディアスなコーラスに突入していくという楽曲構成がリンダ・リンダズの「Oh!」に近いものを感じるからです。先日の来日時に私がおこなったインタビューで彼女達が「それこそトーキング・ヘッズがカバーした『Oh!』なんてあったら聴いてみたい」と発言していたのも、実は伏線だったのではないかと。正解していたら誰か酒の1杯でも奢ってください。
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サム・フリークス Vol.27で上映した『石炭の値打ち』にはクリケット(野球の原型)の話が多く出てきたけれど、次回のサム・フリークス Sで上映する『シュガー』はアメリカのプロ野球界における移民達の活躍と挫折を描いた映画、その次のサム・フリークス Vol.28で上映する『ザ・ビンゴ・ロング・トラヴェリング・オールスターズ&モーター・キングス』はローリングストーン誌選出による「史上最高のスポーツ映画30選」にもランクインしている野球映画の傑作、そして今年ラストになるサム・フリークス Vol.29で上映する『やぶれかぶれ一発勝負!!』も『マーシャン・チャイルド』も実は野球絡みの内容と、ここまで全部繋がっています。そこまで考えて上映作品を選んでいるので。サム・フリークス Vol.11で上映した『ゴー・フォー・シスターズ』の監督であるジョン・セイルズの代表作の一つ『エイトメン・アウト』(MLBのワールドシリーズで発生した八百長事件を題材にした映画)にジョン・キューザックが出演していたことも思い出されるってなもんだ。