教授の戯言

手品のお話とかね。

雑文:"教えていただいたトリック"の雑感等

先日、我が敬愛するJohn Guastaferroさんの新刊、『Nth Degree』の翻訳・出版権を購入しました。取得しただけでまだ何も受領していないので、諸々は来月以降に始まりますが。新作が読めるのが楽しみです。ていうかGニキ、まずは著者サイン入りの原書を買いたいので早く一般販売してください。

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皆さんのお好きなトリックを教えてくださいということで広く募り、ご回答いただいたのが前回2023年末のポストなのですが、いくつか買ったり読んだり触ったりしたものがあるので、備忘録がてらメモ。

 

1 Dave Campbell, "Thought Anticipated"(『The Dave Campbell Legacy』, Peter Duffie, 2004, p. 155)

→たいへん不思議な手品です。ただ、原書記載の方法・手順より、『monthly Magic Lesson Vol. 96』にてゆうきさんが紹介しているやり方のほうが面倒がなく(とはいえ、最初の準備の手間はあまり変わりませんが)、理屈としても正しいと思いました。繰り返しても演じられますし、手順も複雑ではないので、一度作ってさえしまえば長く使えるとてもいい手品です。

ただ、サークルでも演じた結果、演者としてはラクであるものの、プレゼンテーションがちょっとしっくりこないというか、伝えにくい気がしました。イチ観客として見ると、たしかに不思議なのだけどちょっと反応はしづらいかなあというか。

https://youtu.be/CrrCb0BG6rw?t=1556 萩の月に関する大発見に心惹かれてしまいました笑

 

 

2  加藤英夫, "13枚の中の4A" (『第24回 石田天海賞受賞記念 MAGIC 100 マジック・ワンハンドレッド』, 加藤英夫, 1992, p. 26)

あなたは13枚のカードを手に広げて持ち、相手に13枚のうちの好きな枚数目を2つ選ばせます。たとえば相手が3枚目と11枚目といったとします。「私も2つ選びましょう」といって、たとえば2枚目と5枚目を選びます。相手にカードを渡し、1枚ずつ表向きにまかせ、お互いに選んだ2、3、5、11枚目のカードだけ裏向きにまかせます。そして裏向きのカードを表向きにすると、なんと4枚のAなのです。

とこのように現象を書くと、なかなかすごいでしょう。その通りのことを私はできるのですが、問題はそのやり方を説明するのがじつに困難なのです。たとえやり方が理解できたとしても、マスターするのがそれ以上に難しいのです。(中略)いちおう説明いたしますが、これをマスターしようという気は起こされない方がよいかと思います。<本文より>

→著者の記述の通り、ちゃっちゃと練習してすぐにマスターというたぐいの手品ではありませんでした。理屈としては私の好みではあるものの、マスターしようという気は起こさないようにします。しかしこれを勧めてくれた方、「誰も演じてないし、受けも良いので」とのことですが、加藤さん同樣演じられるっぽいので、もうそれだけで凄い。

 

 

3  万博, "ゴリラムーブ"(A Bubble Circus(万博), 『すごいぞ!!ゴリラ』, 2019)

→こういうのを読むたび、この人本当に数理の鬼みたいな万博さんと同一人物なのだろうかという疑念がよぎります。万博さんといえば年末ついに新聞沙汰になっていましたね(いい話で)。持っていますし読んでもいますが、実演経験はありません。

 

 

4 Matt Sconce, "power word: fall"(Matt Sconce, 『power word: fall』)

→【自分 立てたペン1 立てたペン2 観客】 みたいな位置関係の状態で、ペン2だけが倒れるとかめっちゃ不思議。手も動かさないし、息で倒してもいないしでとても良い。解説がめっちゃ勢いがあって笑ってしまう。いつでもどこでもというとちょっと難しいかもですが、現象は結構薄気味悪いですよねこれ。佳き。

 

 

5 Rafael Benatar, "The favorite cards of my friend"(『Simply Impromp2 Vol.3』, Aldo Colombini著, 小林洋介訳, p. 33)

現象:デックをよく混ぜてもらった後に 2 人の観客に好きなカードをたずねます。そしてデックを広げて 演者の好きなカードを見つけだし、観客に渡します。そのカードをデックの中ほどに自由に戻してもらいます。デックを広げて演者の選んだカードを探すと、観客の言った 2 枚のカードの間にあります。

→大正義日本語訳あり。持っていました。サンキュー、ヨースケコバヤシ。今月か来月のサークルで演じてみたいと思います。

 

 

6 ドキムーン, "between" (DVD『Brave』, Kimoon Do, 2018, disc1)

→DVD持っていましたし、好きなDVDでもあります。みんな大好きド・キムーン。これはいいですよねえ。最初裏向きで出現したサンドイッチ・カードが一瞬で表向きになるのがかっこいい。キムーンの手品は、あまりごちゃごちゃしていない、そこまで難しくない、結構ビジュアル、という、普通の手品ファンに優しい構成で好き。世の一般的なトランプ手品講師には見習ってほしい。

 

 

8 ヒロサカイ, "ノーコントロールインビジブルデック"(フォーサイト, 『ケセラセラ 3』, 2014)

→私、『ケセラセラ』は4しか持っていないの…ですが、なぜかこれは知っているのです。これは枚数目へのコントロール自体はマジシャンが見れば「ああ、なるほど」という感じではあるかもしれないのですが、観客の指定したカードを知る手法が図々しくて好きです。準備不要なのもいいです。

 

 

9 Craig Petty, 『Keymaster Chrome』(同名商品)

→買っちゃった。最初にイントロダクションを見たとき、「ペティ随分小綺麗になったなあ」と思ったら、実演や解説をしてくれるのは基本デイヴィッド・ペンでした。途中に、このバージョンの発売時の10年前くらいと思しき頃のペティ本人が映像で出てきますが、まあ今よりマシとはいえ、やはりなんか怖そうな感じで、「そうそう、クレイグ・ペティっていったらこんな感じのむさい人だよな」と思いました。ひとつだけ自分で紙工作が必要ですが、工作ってレベルですらないので良いです。これ用にキーホルダーというかナスカンを買ってきてしまいました。しかしあれです、推薦者の方も言われていますが、カギという普通に穴(キーホルダー用途)が開いていておかしくないものを使い、その穴が塞がったり移動したりする、というのは、日用品マジックとしてきわめて秀逸だと思いました。

 

14  David Roth, "Eraser coin"(David Roth, 『Expert Coin Magic』, 1985, p. 152) 

https://www.youtube.com/watch?v=5BztUahcJG0

→“The Eraser Coin”は初めて動画を見ましたが、まず現象で笑い、「削れる箇所」がコインを持ったときに自然な箇所で、トンデモ手品(※私調べ)なのに手法は真面目、みたいなギャップにやられてしまいました。

 

 

15 Paul Curry, "Never in a lifetime" (Paul Curry, 『World Beyond』, 2001, p.298)

→"OotW"が相手の意識的な選択の結果であるのに対し、本作は観客と演者でデックを半分ずつ持ち、観客が混ぜて出来た結果の赤黒の順に応じて演者も同じようにしていくと、観客のパケットと全く同じ赤黒の順になる、というので、まあやはり少し意味合いが違う気がします。ていうかこれ、評判良くないのですか?面白いし、"OotW"の仕組みを知っている相手にも通用しそうな気がします。

フェザータッチマジックの本書に付属する日本語訳は基本抄訳ですが、本作については平賀さんの全訳が付いておりさっと理解できました。やはり日本語はいいですね笑

 

 

28 Dan Paulus, "Blind Luck"(同名動画商品)

→悔しいが(推薦者がお友達だったので)大変不思議なトリックだった。Dave Campbellの"Thought Anticipated"と、観客が現象自体から受ける印象は類似していると思いますが、こちらの方が最初に演じるまでのハードルは低い。あっちのほうが公明正大さは高いけれども。とにかくこちらはこちらで傑作というか、本当によくできた作品だなと思いました。

 

 

30 桂川新平, "estimation etude"(Secret Vol. 3 桂川新平, |Shimpei Katsuragawa著, Ben Daggers訳・編, LA CAMPANELLA, The Impossible Co., 2022, p. 14)

→久々に見ましたけど本当にピンキーカウントが上手いな桂川さん。桂川さんがやってるのを見るとめちゃめちゃ簡単そうに見えるが、実際にやってみると指が生まれたての子鹿みたいになってしまう。できればたいへんかっこよく、現象もスッキリわかりやすい。問題は私にはこんな華麗にできないところです。

 

 

32 岡野将太, "Blind"(岡野将太, 『Puzzle』, 2014)

→5人以上くらいでやると、(1人を除いて)めちゃめちゃ盛り上がりますなあ。確かに、一度きりしか演じられないのが惜しい。でもこういう手品は本当に盛り上がる。

あなたの好きなトリック教えてください

先日ふと、他の人の好きな手品ってどんなだろう、というのが知りたくなり、3分ほどでフォームを作ってみました。

結果、多くの方が色々なものを寄せてくれて嬉しい反面、私の物欲の刺激のされ方がやばいなと思いました。9000円くらいするやつ買っちゃったし。ペリーさんめ(オススメ者が誰だったかをバラしていくスタイル)。まあ先方も私の発言等で散財した経験は一度や二度ではないということなので、お互い長ドスをドテッパラに突き立てあって相打ち感があります。

 

ちょっとだけ手を入れましたが、2023.1231.1500の締切時点での回答を以下にお見せします。「書いてあげたけど、なんかこんな風に質問者以外にも見られるのはちょっと嫌だ」という方はこちらのコメントでも、SNSの方でも、言っていただければいつでも削除はいたしますのでお気軽に。推薦者名も書いたほうがいいのだろうか…?一応2023年末迄でいったん締切としたいと思います。 →募集終了。ご回答いただいた皆様、ありがとうございました。

 

ID 作者名 トリックのタイトル どういったところが好きなのかご紹介
1 Dave Campbell Thought Anticipated 不思議なやつを何か一個と言われたらコレです。非常にバランスが良いトリック。基本ノーセットで出来るものしか食指が動きませんがこれだけは常に出来るようにしておきたい一品。
2 加藤英夫 13枚の中の4A (確か天海賞の本) 誰も演じてないし、受けが良いので。
3 万博 ゴリラムーブ ゴリラがすごい。
4 matt sconce power word: fall 言語化できないのですが、あの空気感(手法に漂うもの含む)がたまりません。アホ。
5 Rafael Benatar The favorite cards of my friend 技法をほぼ使わないので借りたトランプでもでき、トランプの状態が悪くても大丈夫で、完全にシャッフルされた状態からカジュアルに始められるのにしっかりウケるので好きです。
6 ドキムーン between 低負担で、ビジュアルで、テンポも良くて、現象もわかりやすく、テーブル無しで出来る。手品が趣味でして…という流れから何かを見せなくてはいけない感じになった時、1番お世話になってます。
7 Art vanderlay ATM DIVINATION PLUS 色々なパスコード当てを見てきたが、1番気持ちの悪いものだった。
クリーンで日本のATMにも使える、即興で何の準備もなく出来る素晴らしいメンタルマジック。
8 ヒロサカイ ノーコントロールインビジブルデック 見えないデックの定番ギャグで遊んだあと、その見えないデックを「見て」カードを当てるという他に類を見ないシュールで不可思議なプロット、しかもFASIDUかつ全くテクニックが要らない!
9 Craig Petty Keymaster Chrome ムービングホール現象の中でも、繊細なメカニズムを使わず簡単なスライトのみで実現&トランプや名刺にわざわざ穴を空けたりせず当たり前に空いてる穴を使うことで、普段からやりやすいし、衝撃的な二段オチになってるのも素晴らしい。
何度も再販してるけど、Chrome版の時に追加された(らしい)キーホルダーを使ったやり方が、ロードと処理が確実なうえ、前後のディスプレイが極めて印象的になっていて、マジで秀逸!
10 上口龍生 ソルト&ペッパールーティン 出来ないんで、観るだけなんですが。
絶対に有り得ないけど、まさかと期待した通りの現象が起こってしまう快感と、想像の埒外の現象で打ちのめされる快感とが、繰り返しずっと襲ってくる、これぞ理想のマジック体験。
観るだけなんですが!
11 Asi Wind The Trick that Never Ends サクッとできる、なんかやって、と言われたときにセット不要のデックですぐできる。不思議。Repertoire という本で解説されています。
12 未記入 レインボーデック(クロックフォース=時計の予言) 最後のリボンスプレッドシーンが美しいです。レインボーデックそのものの品質に依存しますが、ジョニー広瀬さんのハンドリングが好きです。手順は以前デックとともにマジックランドで売られていたかと。
13 こざわまさゆき バースデートリック 手品じゃなくなってるあたりがいいと思うんですよ。こういうのもイフェクトイズエブリシングって言うんですか?
14 David Roth Eraser coin コインの形状が変わる手品が好きになったキッカケ。消しゴムでコインが削れるという絶妙なフィクションがたまらない。
15 Paul Curry Never in a lifetime 評判とは裏腹に、大変魅力的だなと感じています。
現象はOut of this Worldとは別物と感じました。OOTWがまさに世界を超えるような現象で無機質な不思議であるのに対し、観客と演者のカードのシャッフルの一致という有機質な気味の悪さのある不思議(良い意味で)があります。
性格も見た目も違うが根は同じ兄弟のような感じと思っています。
些か腑に落ちない点はありますが、そこを上手くこなしてこの現象を鮮やかに演じられたらなと思いもっと脚光が当たらないかなと思っています。
16 石田隆信 カード魔方陣の謎 数理の暴力であり、追えるとか追えないの問題ではないところ。すべてのカードに意味が生じる構成になっているのが美しい。
17 Kainoa Harbottle Three Why 正直途中のスリーフライ部分に特筆すべきとこはないのですが、
後半で使われてるスティールがマージで神技法です(たぶんインスピレーション元はムトベさんのアナザー)
全コインマンは見るべし
18 みかめくらふと ミッシングボール 左手で持った小さなテーブル的な板をステージとして、その上に3つの紙コップを伏せて、小さなボールを1つ中に入れ、それがどこに行ったか当ててもらう手品です。左手はただ台を持っているようにみせて、その実、板の下では色々なワークを行うのですが、その操作を含め、やっていて大変楽しい演目です。商品説明にもあったように大人数、特に子供がたくさんいるような環境で大変盛り上がります。
19 齋藤修三郎 月に吠える Pit HartlingのColour Senseのようなトリックです。赤の字札数枚と黒の絵札数枚を混ぜてひとつのパケットを作ります(観客が混ぜます)。演者はそのパケットを1枚ずつテーブルの下から裏向きのまま出してくるのですが、表を見ずに各カードの表が赤か黒かを全て言い当てていきます。
まず現象がカッコイイのですが、これを実現している手法が実に衝撃的で、解説をされて己の注意力の低さに愕然としました。こういう眼の前でとんでもなく図々しいことやられていたことに気づかない手品、大好きです。
20 Marc Desouza Die of Destiny 選んだカードをお客さんがダイスを振って1枚に絞って当てる。何とダイスはブランク。つまり目は1-6のうちで何でもいい。なんなら想像したダイスでもいい。不思議なのに演者の負担がとても軽いのでお客さんと楽しくやりとりしながらできる。長年ここぞというときに演じるペットトリックです。
21 Bob Read Bottle Production みんな大好きボトルプロダクション。何度でも引っ掛かるw ただこれはご本人の名人芸であって真似できない。
22 David Williamson The Famous 3 Card Trick カード当てじゃない、面白くて、オチのインパクトがすごい。良い意味で乱暴な手順なので雑に演じても良く、繊細さの欠片もない自分に向いてる。
23 Jon Racherbaumer Dueling Card Tricks カードの当て方を数学者はこうする、超能力者はこうする、そしてマジシャンは…という演出が好き。93年のレクチャーノート(マジックランド)に載ってる古い作品なのでこのプロットで誰かがアレンジしてそうな気がしてならない(ご存知でしたら教えてください)。
24 Garrett Thomas Stand Up Monte めちゃんこ不思議で使い勝手が良いモンテで、スピード感がありダレる前に全て終わる。マスターしてからずっと相棒。ただ自分も引っ掛かるせいで何度か習得を諦め、マスターしたのが買ってから1年以上経ってたのは秘密w
25 不明。演者は若い白人男性。何十年か前の話ですけど。 チャイナリング 他のチャイナリングの演者と違って、ゆっくりゆっくり演じていました。いくら目を凝らしても全く種がわかりません。これほど見事な遅業は後にも先にも見たことが有りません。
26 緒川集人 River 幼い頃から手品をやっていた、という人間味を感じるストーリーがよく、またクライマックスもインパクトがあるものでとても印象に残っています
27 沢浩 アノトリック もうね、雰囲気がね、
ええんよ
28 Dan Paulus Blind Luck Bannon Triumphと並んで、手品は難しさじゃないなと思えた名作。テーブルあるところでよくやります。
29 Helder Guimaraes Sculpture サンドイッチカードという現象を、本当に綺麗に、そして物語も添えて超絶おしゃれになっているところ
技法もそこまで難しくない上に、トリがすごい。ダ◯◯フェイスの活用方と挟むジョーカーの動きがいい。
30 桂川新平 estimation etude スキルデモンストレーションかと思いきや、観客のコールした数字によって不思議なことが起こっているというオチが好きです。
31 スライディーニ SWEET SALT 視覚だけでなく味覚でも 観客を楽しませる 素晴らしい作品。
メソッドも無駄がなく美しい。
32 岡野将太 Blind 自分で選んだカードを自分で当てて、当てた本人が一番驚くってそれだけで面白い。収録タイトルの通りパズルとかミステリっぽい面白さもある。一度きりしか演じられないのが欠点といえば欠点。
33 Pit hartling /Denis Behr QUARTET NHKのFISM特番でGreen先生が自在に任意のカードを飛ばしてる姿に度肝を抜かれて以来、そのテーマに取り憑かれ、mnemonicaから4カインドをエスティメーションできるこの技法にたどり着き、すっかり虜になりました。これ以上ないと思ってTry out フォールスシャッフルと組み合わせて気持ち良く色んなところで使ってたらFISM2022でMARKOBIを見て気絶しました。どうなってんのこれ...ポテトチップスになにかあるとしか思えなくなってきた。
34 ロベルト・ジョビー ホーミングカードプラス ウィリアムソンの51card to pocketより先に覚えたのもあってずっとトリネタにしてます。手法も演出も変えずに演じている珍しいネタ。第一、第二段階とも空の手を見せられるのがいい。
カードカレッジはマージで素晴らしい本なので再販したことだしみんな買おうな!!!
35 Peter Duffie Aces Take the Plunge Plunger Principleの使い方が特に面白いです!
36 Johnny Thompson Quadruple Coincidence いくつかの偶然現象があるDo as I Do
37 John Bannon Do the ‘Twixt 恐ろしいスイッチ
38 Caleb Wiles iDeck 面白い物語があるアンビシャスカード
39 Dani DaOrtiz L’HOMME MASQUÉ ありえない現象、よく演じてます
40 SANTA Life of Butterfly 美しさ一位のサンドイッチ現象
41 White Chen Naughty Collector 最高に面白いコレクターです!conjuring archiveに載ってます!中国のマジシャンの作品です
42 みかめくらふと サッカーブロックボックス これに限らず、明らかに容器を傾けることで中身が移動しているのを見せ、最終的に消えたりするマジックは大変受けますし、やっている側も楽しいです。
43 トロイフーザー CCC ノーギミックで、ここまでビジュアルな貫通現象を達成できることに感動しました。
そのわりに、やっている人をそれほど見ないのは不思議。
44 紀良京佑 キメラデック 簡単、リセット不要、客受け抜群なところです。もう手放せません
45 ヘンリー・クライスト ヘンリークライストのフォアエース 混ぜてるやん。確実に混ぜてるやん。絶対混ぜてるやん。

『ホール・ソート・デックの作り方』

皆さんはホール・ソート・デックというのをご存知でしょうか。私は知りませんでした。というか私の造語です(たぶん)。

コンピューターが無かった頃、役所や学究機関(のごく一部)にはたくさんの書類カードを物理的にソート、整理する仕掛けがありました。書類の縁に穴がたくさん開いていて、いわゆる穴になっているものもあれば、外周まで繋がっているものもあります。そこに順番通りに棒を差し入れて引き上げ、上がったもの(外周には繋がっていない、独立した穴のところですね)を手前に寄せる、今度はさっきの隣の穴に棒を入れる…と繰り返していくと、直前がどんな並びになっていようが最終的には最初に設定しておいた並び順になる、というものです。Hand sorted punched card ですとか、Edge notched card と呼ばれていたそうですが、1920 年代にケルン大学で考案された、CAIRN Punched Cards が有名になるきっかけだったそうで。

それを見たときに思ったのです。「これ、前からほしいと思っていた『メモライズド・デックの並びを機械的に戻せる仕組み』そのものじゃないか」、と。「こんな素晴らしい仕組み、スタックト・デック使いたい人の練習がめっちゃ捗るやつじゃないか。なぜ研究した奴、ノート出した奴がいないんだ。しょうがない、私が書くか」ということで出来たのが本書です。

背景や仕組み、材料、作成用の道具、作業用の並び表(NDO、タマリッツ、アロンソン、あと自分で書きこめる空白表+自分でいじれるExcelファイルへのリンク付き)を一冊にまとめました。

11/18(土)のマジックマーケットでは、なぜかTANISHImagicさんのところで扱っていただけそうです。こっちで操作するとNDOに、こっちで操作するとネモニカになるという、私が試作したアホみたいなやつも実演用にお持ちしようかと思います。

メモライズド・デックやスタックト・デックの練習を効率よく高頻度でやりたいという方、謎の仕組みで並びが整っていくおもちゃを作ってみたい方、ちょっと薄手の鍋敷きがほしいんだよなあ、といった方、あとここ読んでいる方などはぜひお買い求めください。

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ガスタフェロー本2冊の再刷

私の大好きなアメリカのマジシャン、ジョン・ガスタフェロー(John Guastaferro)。彼が、『One Degree』以来のハードカバー形式での続刊、『Nth Degree』を数ヶ月以内に出すよ、というアナウンスをしたのが9月頃でした。Facebookで「とても嬉しいです。出た暁にはまた日本語版の相談させてくださいね」と言ったところ「もちろんさ!」という心強いお言葉。出版を楽しみにするものであります。

で。以前出して早々に売り切れてしまった、彼の著作の日本語版がございまして。『Three of a Kind』『Hands off My Notes』なのですが、上記新刊が出るまでに『en route』しかないのも寂しいなと思いまして、ごく少部数ですが2刷を作りました。

「お、なんか楽しげなやつあったんだ」ですとか、「前回は買いそびれちゃったよ」のような方はぜひこの機会にお求めいただければと思います。

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新刊については、出たら可能な限り早く日本語版の出版交渉をしたいと思っております。楽しみで仕方ありません。

Denis Behr『Handcrafted Card Magic Volume 3』日本語版


富山です。ついに出ましたね、あの名著の続刊が。日本語版のVol. 1と2が出たのが2014年、原書の3が出たのが2018年でした。3については邦訳版は出ないのかなと思って半ば諦めていたのですが、出ましたねえ。……まあ、「出た」のではなくて、「出した」のですけどね、自分で……。


1と2についての内容言及がゼロというわけではありませんが、本書は独立して楽しめる内容であり、シリーズ中でも手品力強めの作品が揃っておるボリュームですのでそこはご安心ください。いや、なんでこんなことを言ったかというとですね、いざ訳し終えてから気づいてしまったのです、「シリーズ番号があるものを、3だけ買う人っている?」というごく当たり前のことに。もちろん、邦訳版は1と2も合わせて持ってるよ、という人もある程度いらっしゃるとは思いますが、シリーズが揃ってないとなんとなく気持ちが悪いのですよね、私は。出す前から過去イチで損益分岐超えを諦めつつ震えている次第。まあベアニキとの繋ぎは作ったぞ、ということで。皆さまにおかれましては、哀れな訳者に心を煩わせることなく、安心してお買い上げの上、世界最高峰のすごい手品に触れてください。

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収録内容
謝辞
序文 デイヴィッド・ウィリアムソン
はじめに
Routined Arith-Mate-ic 
Extended Gambling Demonstration
Mating Season
The Dark Force 
On the Bottom Deal 
Mr. Luckiest 
Photographic Memory 
The More the Merrier
Haunted Herbert 
Epilogue
Bibliography
訳者あとがき

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ざっくりと現象説明抜粋と雑な紹介を以下に:

Routined Arith-Mate-ic 
観客がデックから少枚数のカードを取り上げ、その枚数を数えてランダムな数を決めます。マジシャンは残りのデックをカットして2つの山に分け、両方から1枚ずつ、表向きにしながら配っていきます。先ほど観客がカットで決めた枚数目に達すると、この位置の2枚だけはメイトになります。他の位置はすべてばらばらな組み合わせでした。この驚くべき偶然の一致をさらに2回、より厳しい条件の下で繰り返します。

→理屈がとっても巧妙なメイトのマッチング現象。紀良京佑の"シバザクラ・コインシデンス"的な感じで、難度は本作のほうが低い気がします。凄い現象をお手軽に起こせるコスパ良さげな作品。イチオシ。

 

Extended Gambling Demonstration
マジシャンは、言われたフォー・オブ・ア・カインドをリフル・カルする(集めてくる)テクニックを実演してみせると言います。そして、その4枚が4人用のポーカーで特定の人に来るようにスタックしてみせます。
次に、選ばれた人の手札に選ばれたスートのロイヤルフラッシュが来るようスタックするテクニックを披露します。
さらに、そのロイヤルフラッシュに繋げて、同一スートの残りがすべて順番に配られます。他の3人の手札もひっくり返すとスートごとに順番通りになっていて、新品のデックの並びが完成します。

→ベアニキが、「ギャンブルに興味がありそうな観客の人たちだな」と思ったときに演じるという彼のペットトリック。ラストに全部オーダー順になるのでド派手です。その割にテクニックは一部のフォールス・シャッフル程度で済みます。

 

Mating Season
ポーカーの手札が配られます。観客は1つの手札を選び、さらにその中の1枚のカードを選んで、脇に置きます。マジシャンはもう一度ポーカーの手札を配りますが、先ほど観客が選んだカードのメイト・カードを、同じ手札の同じ場所に配ってのけます。この現象を手札全部でも演じます。つまり、同じ手札に5枚のメイト・カードを配ってみせるのです。
今度は、自由にカットしてもらった箇所のカードのメイトを、マジシャンが電光石火の速さで探し当てます。
最後に、先ほどまでシャッフルされていたデックから、すべてがメイトのペアとして配られます。
https://youtu.be/PeKbvC6e9aI?t=734

→これも仕掛けが実に巧妙です。とある技法を結構なカード量で行う箇所が個人的には難しいなと思う箇所なのですが、そこさえ乗り切れば場が大変盛り上がる演技にできます。

 

The Dark Force 
観客は、デックをテーブルの下か自分の背後に持っていき、誰にも、本人すらもカードのフェイス面が見えないようにします。そして、カットまたはシャッフルしたら、真ん中から任意のカードを1 枚抜き出し、ひっくり返して好きな場所に戻します。最後にデックをケースにしまい、選ばれたカードが必要になるときまで保管しておきます。マジシャンはデックをケースから取り出し、完全に公明正大にデックを広げます。1枚のカードがひっくり返っています。これがフォースされたものなのです。

→とあるギャフを使った、おそろしくフェアなフォース。余談ですが、訳すタイミングでそれを買ったところ、清瀬のとあるマジックショップでも取り扱われはじめてびっくりしました。たぶん偶然なのでしょうけれど、行動を読まれている感じがしてちょっと怖かったです。

 

On the Bottom Deal 
ボトム・ディールについて。

→マーローやアードネス、カリーの技法を組み合わせ、確実性を高めた方法が解説されています。なおこの次の作品ではボトム・ディールが使われているのですが(ネタバレ)、演技を見たときに全く気づきませんでした。さすがベアニキ、手品が上手い。

 

Mr. Luckiest 
観客がデックをシャッフルします。そして、マジシャンが観客の希望する人数分のポーカーの手札を配ります。すると、勝者に指定されたプレイヤーに4枚のAが配られます。
再び観客がシャッフルし、今度は自分自身でカードを配ります。それにもかかわらず、マジシャンがロイヤルフラッシュを手にするのです!

→たぶん本書でもっとも技法が活躍する作品です。それをカバーするサトルティも多いとはいえ、これをすんなり演じることができる人は、たぶんあらゆる手品で苦労しない感じがします。そのせいもあって現象も凄いです。途中途中の自由っぷりを見たら、ある程度マジックを演る人でも「え、これどうやって実現するの…?」ってなっちゃう(なりました)。

 

Photographic Memory 
観客の助けを借りつつ、マジシャンはデックをシャッフルします。すると、彼は一瞬でデックの順番を憶えたと言うのです。これを証明するため、観客はマジシャンが目を背けているあいだに、スプレッドの中の1枚のカードの場所を移します。ですがマジシャンは、カードの並びを確認し、移動させたカードを特定できるのです。
さらにシャッフルしたあと、観客がデックから任意のカードを1枚抜き取ります。マジシャンは表向きのデックを素早くドリブルして、無くなったカードを言い当てます。
デックを再びシャッフルし、約半分を取り上げます。観客がそのパケットを弾いて見せ、マジシャンはそれを見て記憶します。そうしたらマジシャンが見ていないあいだに、観客が携帯電話のカメラを使って表向きにスプレッドされたカードを撮影します。カードは再び徹底的にシャッフルされ、表向きで広げられます。マジシャンはテンポよく1枚ずつカードを取り出していきます。その後、観客が写真に撮った状態を順番に読み上げていき、マジシャンはその都度カードをめくって出していきます。すると、すべてのカードが言われた順番と一致し、彼が本当に記憶できていたことが証明されるのです。

→あとがきにも書きましたが、彼のDVD『Magic on Tap』でPerformance Onlyだった、めちゃくちゃ不思議な「どうやってるのかさっぱり分からない」手品で、私が本書を訳すきっかけになった作品です。原理というか仕組みに、2022年に邦訳版を出した、ヴィンセント・エドンの『Multitude』で扱った内容も使われていて奇妙な縁を感じました。「あ、これヴィンセントの本でやったところだ!」みたいな。
演技を見ている最中ずーーーーっとスタックを疑っていたのですが、途中本当に混ぜてしまうので、「これがフォールスだったらどうやっているか知らないと死んでも死にきれないし、見た通り本当に混ぜているならスタックでもマークトでも説明がつかないんですがそれは……」と私を思考の迷路に誘い込んだ凄いトリックです。訳したにもかかわらず、最初はなぜそうなるのかの理屈に頭が追いつかず、自分で色々素材を作って手順を1ステップごとに分解して都度都度状態を撮影してデックの状況がどうなっているのかを見直して、最終的にようやく、なぜ成立するのかが理解できました。凄まじい……。

【気まぐれ追記】その時の写真メモを。パスワードは日本語版p. 64の最初の単語を全部英小文字で。

Dropbox - HCM3

 

The More the Merrier
数人の観客(最大9~10人)がそれぞれカードを1枚ずつ選びます。そして、観客たちは選んだカードを公正にデックに戻してシャッフルします。しかし、マジシャンはそれぞれのカードを探し出します。

→タイトル通り、参加者が多ければ多いほど楽しい手品です。マルティプル・セレクションは、私の中では3人が限界なのですが(そんな大人数相手に手品を、しかもカード手品をしないので)、ガスタフェローの本にもあるように、めっちゃ盛り上がる演目なんですよねえ。それに特化した、ポール・カミンスとドク・イースンの『Fusillade』などもあるくらいで、こっちも著者2人のエンターテイナーぶりを考えるとテッパンなんだろうことが確信できます(邦訳版も栗田研氏の訳で出ています)。

 

Haunted Herbert 

訓練された輪ゴムのハーバートが新たな技を披露します。彼はデックをカットして、選ばれたカードだけでなく、バリューが一致するもう3枚のカードも取り出してくることができるのです。デックが異なった3方向にスライドし、それぞれの側面からカードが突き出してきます。それらを抜き取ると、選ばれたカードのフォー・オブ・ア・カインドの完成です。

https://www.youtube.com/watch?v=vIjxeu31jzA

→これは自分でギミックを作ってみましたが、本当に動きが面白い。とある場で実演もしたのですが、マニアたちも大盛りあがりでした。本書をお買い上げいただいた方にはぜひ作って遊んでみてほしいです。ベアによる証拠隠滅の工夫も素晴らしいのですが、この奇妙な動きのギミック自体はいまから70年以上前には原型があったというのが驚きです。ミステリなどもそうなのですが、自分はおろか、親すら生まれていない時代の仕組みがいまなお有効だったり面白かったりという作品やギミックに出会うとワクワクしますね。

 

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マリー先生のデック・レビュー

ライアン・マリーの『Natural Card Magic』、訳者の富山が、訳している中で掲載技法の練習用に使ったもののひとつがPossible Deckだったのですが、これがあまりにうまくいかず、「このデックは作者でも無理なんじゃないのか」と思い、著者献本のついでにデックを同梱して送りつけた結果、律儀に3種4個全部で試してくれた上に5000ワードの長文でレビューしてくださった、というお話。和訳してシェアしてもいいかと聞いたところ「いいよいいよー」とのことであったので以下に掲載するものです。サンキュー、ライアン!こんな観点のデック・レビュー、初めて見ました笑

 

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以下、ライアンのコメント:
送ってもらったデックは、Possible Deckの赤青1つずつ、CIRCUS Deck赤1つ、Straight Playing Cards赤1つの計4つ。私は通常USPCCのデックを使用しているので、これらにストリッパー特性が見られるかどうかは知りませんでしたが、すべてのデックに興味深い特性が見受けられました。

 

■Possible Deck
最初にこれを開けたとき、不完全さが見当たらず、また、ダイアゴナル・グリップで試しても、回転させたカードをストリップアウトできないように思いました。技法に必要なズレがないデックなのかもしれないと思ったのですが、回転させたカードの場所にきわめて微妙な色の違いがあることに気づきました。試してみると、このデックはカット具合がきわめて小さいストリッパー・デック(本に書いてあるような三日月型の凹凸ではなく、普通のテーパード・デックの型)であることが分かりました。これを見て驚いたのは、回転させたカードがほとんどそのようには視認できず、全く感じられもしないのに、なぜかストリップアウトできるほど上質なストリッパー・デックであるということです。このズレ・不完全さは、形状的には普通のストリッパー・デックのようでいながら、USPCCデックでのものよりもずっとささやかなのです。本で説明したのとは違いますが、少し練習したらうまくできるようになりました。

不完全さがごくわずかであることが、技法をやりにくくしているわけですが、逆に考えれば、このデックをナチュラル・ストリッパーの原理を知っているマジシャンに手渡してなお、デックの異状には気付かれないという利点があるでしょう。もし、マジシャンから新品の密封されたPossible Deckを借りて、それでエースカッティングを行って、デックを返したとしても、デックをじっくり調べられても何も気づけないと思われます。実際、私は2つ目のPossible Deckを開封して確認したとき、何も見つけられず、2つ目のデックも1つ目のと同じように、技法に必要な不完全さはないかと思ったのですが、日をおいてもう一度試してみると、全く同じ性質を持っていることに気がつきました。

1つ目のPossibel Deckを試したときの映像です(ダイアゴナル・グリップを使っていないことにご注目)。

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そして、これが2つ目のPossibel Deckでの映像です。

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■CIRCUS Deck
このデックはPossibel Deckと同じくストリッパーの特性があるのですが、若干その具合が小さかったです(通常のストリッパー・デックほどは細くなっていない。ただそれでもPossibel Deckと比べるとごく僅かに太い、程度の非常に微細な差ですが)。このデックの場合、そうだと分かっている上でよく見れば分かるとはいえ、マジシャンでも怪しいところを見つけるのは難しいでしょう。このデックも台湾製ですが、もしかすると台湾の工場製だと全てのカードにテーパーが付くのかもしれないと思いました(USPCCの工場製だと全てのカードにカーブが付くのと同様です)。

 


■Straight Playing Cards
これは不思議ですね。確かにクオリティは低いのですが、他のデックとは違う性質を持っていて、ある意味さらに興味を惹かれます。これで試してみたところ、新品デックの順番でいう7枚目ごとのカードがすべてネガティブ・ストリッパー(真ん中が狭く、エッジが太い)であることに気づきました。これはつまり、どのようにカードを回転させても、その8枚のカードをストリップアウトできるのです。それらのカード同士はバリューもスートも関係ないので、これをどうトリックに使うかは謎ですが、きっと何かできることがあるはずです。この方法の利点は、あなたがカードに触れる前に、観客がカードをぐちゃぐちゃに混ぜたり、シャッフルしたりしても、その8枚のカードを見つけられることです。これは、裁断前シートでのカードの並び方に関係があると思います。おそらく7枚ずつ並んでいて、各列の最初のカードの裁断方法が異なるのでしょう。

これは、私がStraight Playing Cardsを試している映像です。目標のカードは横に置いてある紙に書いてあります(映像からも、これが簡単ではないことが分かると思いますが、『ヒット』した瞬間、間違いなくカードが出てくる感触があります)。

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デックを送ってくれてありがとうございました!自分が使っているカードと比較して、どのような特性があるのか、試してみるのは面白かったです。

 

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Reverse Triumph

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で、先日のメールで言っていたのはこれのことですね*1。これは私の手順の第1フェイズであり、マジシャンにも非手品人にも楽しんでもらえるようにしたものです。いま作っているノートでは、ここで使っている方法を取り上げつつ、このトリックと同じ方法を使った他のトリックも掲載する予定です。いつ出るかはまだ分かりませんが、2023年末までには完成させたいと思っています。

*1:注:"先日のメール"では私から、「あなたがやっている、意味分かんなすぎて不思議なやつを見たけどURLを思い出せない手品があったんですけど」みたいなことを書いていました。

Ryan Murray『Curious Weaving』『Natural Card Magic』日本語版・2冊同時刊行

 


ライアン・マリーというカナダの若いマジシャンがおりまして。この2年ほど、日本の一番濃い部類のマニア……もとい、熱心な奇術ファンのあいだではちょっとした有名っぷりでした……やる技法の変態さで。2017年に初版が出て、2020年にその改訂版が出た『Curious Weaving』、2021年に出た『Natural Card Magic』、いずれもすでに上記のようなテジナ・スゴイ・メンによるレビューがちらほらありまして、興味だけはありました。でもほら……英語じゃん?英語読むのめんど……難しいじゃないですか。そんなに厚くないし、誰か訳してよ、と思っていたのです。あとまあダメ元で作者にメールとか出したんですけど、放置されていたので、残念2割、「やった!訳さなくて済むぞ!」8割でいたのですが、来てしまいましたね、返事が。下りてしまいましたね、許可が。そんなわけで両方とも日本語版を作ってしまったのがこれってわけ。正直言うとな、原書のうしろのほうのページ数(ノンブル)を見て、「分量大したことないのう」って思ってたんじゃ。じゃがな、こやつの本、かなりプロローグ的な箇所も長いんですけど、そこのページ表記はローマ数字(i, ii...xi, xiiみたいな)で、そういうのがいっぱいあってからようやくp. 1が始まるトリックが隠されているんですよ。『Curious Weaving』原著は、本文の最後のページ表示はp. 52なんですけど(まあ頑張れなくもないよね?ってページ数でしょう?)、p. 1の前にxxiiiページがあるんですよ。ずるい。実質1.5倍じゃねえか!甘い作業見積もりでつらい思いをするのは私なんですよ!勘弁してください!

 


『Curious Weaving』

ファロ・シャッフルに関する本です。プロローグは普通のファロ・シャッフルの、きわめてまともな内容が解説され、「ああ。OKOK、私も知ってる、できる」みたいな感じなんですけど、第一章ウィーヴ・イン・サーズ、これは何かというとですね、普通ファロって1枚ずつ交互にするじゃないですか。あれを、1・2・1・2・1…って並びにする技法なんですよ。……は?
いやまず、なんでそういうことをしようと思ったのか、と言うのはさておき、なぜこれを実演レベルにまで高めてしまったのかという謎が。ウィーヴ・イン・フォースになるとこれが1・3・1・3・1…って並びになります。ビザー・ウィーヴに至っては、1・1・1・2・1・1・1・2・1・1・1・2……いやちょっと意味がよく分からんですけど、それ雑にファロしたときになるやつじゃないの?とか思うでしょう、毎回ぴたりとこうなるんですわ。
第二章は通常1枚おきにしかならないものを2・2・2…にしたり、色々組み合わせて活用することで、特定のカード(パケット)を2枚おき、3枚おき、4枚おき、6枚おき、8枚おき、9枚おきとかで配置しきるという謎の変態テクが解説されています。第三章は活用と、それらを用いたトリックが解説されています。どうかしてる度がかなり高い一品です。
内緒ですが、いま私、ウィーヴ・イン・サーズが割とできます……(練習していたらなぜかできるようになってきました)。日本で十指には入ると思います。この技法限定ですがw

 

御本人のサイトの御本人による実演:

ryanmurraymagic.weebly.com

 

『Natural Card Magic』

これは、あのなんて言えばいいのか、レギュラー・デックで、ギャフ・カードやギャフ・デックと同じことを起こす方法が解説されています。いや、「え?それっていわゆる技法のこと??とか思うじゃないですか。いや技法には違いないんですが、そんな生ぬるいもんじゃないんですよ。借りたデックなのにストリッパー・デックみたいな使い方したり、借りたデックで、完全に技術だけでエース・カッティング(たとえばシャッフルしてもらって、それ机に置かせて、演者は別になにも見ないである程度の枚数持ち上げると、そこにAがある、的なアレ)ができるんですよ。いや、分かります、「お前なに言ってんだ」ですよね。「どうせアレだろ、みんな大好きク○○プとかだろ?」私もそう思いましたよ。クソリプですわ。でも違うんよ、完全にテクニックだけでやるんですよ。作者本人が、「借りたデックを使って、それでそんなギャフ・カードでもないとできないようなことをして、マジシャンどものココロにダメージを与えたくなる誘惑に必ず駆られる」という、暗い悦びの横溢する技法の変態本なんだ。
内緒ですが、いま私、フェニックスデックなら完全に混ぜられたあとのデックから、Aだけ抜けるようにはなりました。いやべつにAじゃなくて言われたフォー・オブ・ア・カインドでもなんでもいけますけど。なおエースカッティングは全然できない模様。

 

御本人のサイトの御本人による実演:

ryanmurraymagic.weebly.com

magic.theshop.jp

 

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■『Curious Weaving』(A5, 80ページ)

目次
まえがき
プロローグ ファロ・シャッフル

第一章 ロプサイデッド・ウィーヴ
 ウィーヴ・イン・サーズ
 ウィーヴ・イン・フォース
 ビザー・ウィーヴ


第二章 ダブル・ウィーヴ
 ダブル・ファロ
 ウィーヴ・カウント
 トリプル・ファロ、そしてその先
 ファシリテーテッド・ウィーヴ・イン・サーズ
 ダブル・ウィーヴ・イン・サーズ

第三章 関連技法及びその応用集
 セパレーション・イン・サーズ
 K シャッフル
 パーフェクト・リフル・シャッフル
 INVERTED RISING CARD
 ACE PRODUCTION
 STACKING
 ULTRA MEMORIA

エピローグ
付録 参考文献
人名対照表
訳者あとがき

 

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■『Natural Card Magic』(A5, 108ページ)



 発見
 ナチュラル・ロケーター
 カードのところでカットする
 ダイアゴナル・グリップ
 ストリップアウト
 用語

Y
 デックの準備にあたり
 カードを分離する
 密かに回転させる
 デック全体でのローテーション

Z
 原理の適用
 シンプルなロケーションとして
 ブラインド・ロケーション
 Impossible Location
 Double Impossible Location
 Lucky Poker Deal
 Mirrored
 Multiple Selection
 Ace Cutting 
 Epiphany

エピローグ
付録 参考文献
人名対照表
訳者あとがき

 

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