ほうかごがかり 3 雑感

  『ほうかごがかり』に指名された小学生は毎週金曜日の夜、闇に包まれた小学校で「無名不思議」の世話をしなければならない。これまで集められた『ほうかごがかり』の小学生たちは一人、また一人と死んでいった。残る子たちは無事生きて「卒業」できるだろうか――

 メルヘン作家を自称する甲田学人氏によるホラー小説の新シリーズ3作目。
 主人公・二森啓が特技の絵描きによって「無名不思議」を正しく捉えて記録したという珍しいケースの後、ある子は怪異から逃げきれずに死に、ある子は怪異と仲良くなろうとして飲み込まれて死に、『ほうかごがかり』のこれまであったような失敗が重なっていきました。
 そして「無名不思議」が喰らうものの本質が明らかになったときに、このシリーズの性の悪さがピークに達します。

「無駄死にだ。『かかり』の大半は、無駄に死ぬんだ。九割九分九厘すぐに消えちまう化け物の餌になって、命も存在も、無駄に消えるんだ」
 容赦などしなかった。机で背中を向けたまま、『太郎さん』は淡々と言い放った。
「みんなそうだ。特別なことじゃない。あいつもそうなったってことだ」
「惺は!」
 啓は声を荒らげた。
「惺は……! 緒方惺は、特別な人間だった!」
 叫ぶように言った。もう何年も、人には聞かせたことがない、いや、自分でも聞いたことのない声でだ。
「何かを残せる人間だった! あいつも残そうとしてた! 何も残さずに死んでいい人間じゃなかった!」
  (甲田学人.ほうかごがかり3(電撃文庫)(p.96).株式会社KADOKAWA)

 あと残るは2人。
 ただ震えて逃げても生きられる保証はないし、それに亡くした友のために「無名不思議」を許せる筈がない――。
 だからより強烈に怪異への反抗を企て、ただそれは観察して記録すること――より怪異に/死に近づく行為なのでした。
 もう本当に本作ではままならないことばかりで。逃げても向かっても、生きても死んでも、願いはかなわないし、生き残って成長して大人になっても輝ける未来が――無くなってしまう。
 怪談/ホラーの登場人物にはろくなことが起こらないし、物語が終わってからもろくな人生が待っていないことが多いのですが、小学生を主人公としてどうしようもないことに立ち向かうお話としてはあまりにも悲しくて恐ろしい方向へと向かっていくことになります。
 日常と非日常がいずれもぐちゃぐちゃになりながら迎えるクライマックスのとんでもなさは一読の価値ありかと。


 あと最後の最後で後書きに驚きました。
 ああなって、まだ続くんだ――


 以上。なので次回作に期待しています。きっとまた怖いお話を繰り広げてくれるのでしょう――

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 <既刊感想>
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