週に一度クラスメイトを買う話 ~ふたりの時間、言い訳の五千円~ 1-4 雑感

 週に一度5000円で言うことをきかせるという奇妙な主従の2人の少女、宮城と仙台。徐々にエスカレートする命令と、変わっていく関係性。彼女たちは互いをどう想うようになるのか――。

 という百合ライトノベルシリーズ。

 自分の中で少し評価が難しい本となっています。

 シチュエーションラブコメとしてはかなり優秀です。スクールカースト下位の少女がふとしたことから上位の美少女に対して言うことをきかせるようになったことから始まる恋愛――それはかなりときめくテーマでありました。
 加えて部類としてはソフトSMで、その上で被命令者が命令者を時には――あるいははなはだ――圧倒する逆転ありのSMなのです。

 私は組んだばかりの足を崩し、静かに言った。
「脱がせて」
 右足を仙台さんの太ももの上に乗せて、ソックスを指さす。
「はいはい」
「はい、は一回」
 そう言うと、また「はいはい」と返ってくる。返事の仕方なんて従わせたいほどのものでもないからなにも言わずにいると、ソックスが命令通りに脱がされた。そして、「左も?」と聞かれる。
「そっちはいい。脱がしたほう、舐めて」
 素足で仙台さんのお腹を軽くつつくと、彼女は怪訝な顔をした。
「足を?」
「そう」
  (羽田宇佐.週に一度クラスメイトを買う話 ~ふたりの時間、言い訳の五千円~(富士見ファンタジア文庫)(pp.15-16))

 命令はちょっとした頼み事から足を舐めると肉体的なものになり、体の接触が選択肢となってしまった2人の女子高生はエスカレートしていきます。『セックスはなし』というお題目を唱えた上で、縛ったり、脱がしたり、噛んだり、あれ? どうして私/私たちはこんなことをしているのだろうと彼女たちそれぞれが一人称のモノローグでさえよくわからない流れで行為を重ねていきます。エロエロしくて良いことです。
 命令をもう聞かないと仙台さんが言っても、命令をもうしないと宮城が言っても、あっという間に切れそうな縁を互いにおっかなびっくり続けて、おおよそいらいらしたり傷つけ合いながら関係を深めます。
 読者としては、それってもう互いに好きってことじゃん――と肩をつかんで揺すりたいところなのですが、言語化も自覚もあえてされません。
 その素直にならないじれったさが一つの区切りとなる4巻まで続くのですが、よくぞここまでこの拙い関係性を大事に育ててくれたと感謝さえ覚えます。

 ただですね。
 シチュエーションに持ち込む導入が強引過ぎというか無理筋で乗り切れないところがそれなりに残念でした。シチュエーション物がそのシチュエーションに持っていく方法なんてそこまで詳細に書く必要はないですし、5000円で言うことをきかすシチュエーションを成立させるのに他にどうすれば良いのか案がありませんが個人的にはちょっと目をつぶれない瑕疵レベルでした。
 そして4巻最後のぶっ飛ばしは爽快でよくやったと叫びたいのですが、いやムリがあるだろうというオチなのです。繰り返しますが好きな展開――大学同棲物ですよ、わっほい――なのですが、ちょっと受け入れがたい雑さでした。
 そんなこんなで始めと終わりが乗り切れないので諸手を上げてお薦めという感じにはなりませんでした。細かいことを気にしなければいいのかもしれませんがねー。
 

 以上。いずれにせよ好きな作品ですので、大学生編も楽しみにしています。エロさもきっと増すことでしょう――
 

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