「ベスト&ブライテスト」感想

 

 タイトル通り「最良にして最も聡明な人々」から構成されるケネディ政権が、アメリカを泥沼に引きずり込み、続くジョンソン政権がベトナム戦争をやめられなかった理由を、国務省国防総省ホワイトハウス高官の経歴、価値観、人柄に容赦ない批判を加えつつ描いたジャーナリズムの金字塔。
 本書はこうした、いささか手垢のついたフレーズを置いても、読む価値があり、現代に通じる内容です。特に聡明な人々がその聡明さ「にも関わらず」ベトナム戦争に突入したというより、聡明「であるからこそ」の愚行だった、ということがよく描かれている。鋭い知性を持つがゆえに、現場で起きていること――南ベトナム政権の腐敗と脆弱さ、北ベトナムの士気と強さ――を見なかったことについて、多様な角度から描かれている。政府に限らず、およそ崩壊しつつある組織は、営利企業でも似たようなこと、すなわち思い込みに基づく情勢判断と重大なリスクを見ない意思決定が行われている。
 
  現代の感覚で本書を読み、最も印象に残るのは、ケネディ・ジョンソン両政権の要人のほぼ全員が、わずかな例外を除き、ベトナム人を同じ人間だと見なしていなかった事実だろう。恐ろしい人種差別意識のあらわれは、様々な記述から伺える。
 例えば「小さな黄色人たちを相手にするには、フランスはあまりに気位が高かったのである」(上巻185ページ)「ぼろのパジャマを着た遠い国の、あの不思議な小さい人たち」(中巻48ページ)「南に下れば下るほど、ヨーロッパ人の肌は白さを失い、気質において地中海的となる。それだけ価値が低く、信頼が低く、信用のおけない人種となるのだ」(中巻、228ページ)。
 空爆はもちろん、枯葉剤を使用するような意思決定は、相手を同じ人間だと考えていれば、到底、できることではない。
 訳者あとがきには著者が後年、ベトナム従軍記者時代を振り返り、次のように記した記事の引用がある。
 
「あの頃、もし本当にだれかがベトコン兵士の死体の写真を見せてくれたとしたら、その場で嗚咽できる人間でありたかった、といまにして私は思っている」(下巻412ページ)。
 最後に、本書は今後も読まれるべき、と考える立場から翻訳編集にひとつ注文をつけたい。分冊にする場合、参考文献と著者ノートは上巻に載せた方がいい。上巻の途中まで、あまりに断定的な文章で証拠を示さず政府関係者の批判を超えた人格攻撃が続くため、ソースは一体何なのか、といぶかしく思った。本編終わりに添えられた著者ノートは下巻に収録されており、本書が膨大な取材をもとに書いていること、ベトナム戦争批判をした人が専門職としての尊厳を奪われる時代にあって、取材源を秘匿する必要があった旨が書かれている。これ自体、重要な記述であるだけに、上巻でやめてしまう読者がいる可能性を排除した編集が望まれる。

内閣府男女共同参画会議 計画実行・監視専門調査会(第33回)

 内閣府男女共同参画会議 計画実行・監視専門調査会(第33回)に出席しました。

 主な議題は、地方における男女共同参画と、こども政策とジェンダー視点です。

30%ClubJapanオペレーティングチームミーティング

 アドバイザリーボードメンバーを務めている30%ClubJapanのオペレーティングチームミーティングに出席し、様々なプロジェクトの進捗などをお聞きしました。

日本ユネスコ国内委員会第10回科学小委員会

 日本ユネスコ国内委員会第10回科学小委員会に出席しました。議題は以下の通りです。

 

1. 最近の科学分野における動きについて(報告)
2. 国際情勢を踏まえたユネスコ活動等の推進について(審議)
3. その他

 

www.mext.go.jp