最初のクオータが、終わった。

とうとう、スタンフォードに来て初めてのクオータが終わりました。9月にアメリカに渡ってから、最初の3ヶ月は嵐のように過ぎ去っていきました。最初は英語への慣れやかなり日本と違う大学の環境への慣れ、生活の立ち上げなどで苦労しながらも、最後の方はかなりこつがつかめてきた感があります。
終わっての感想は、スタンフォードは本当に激しく勉強させるなぁということ、そして、学生も激しく競争するということ。大量の課題、頭を使わせる試験、そして高得点に集中する成績分布。ひさしぶりに脳に汗をかいてがんばった実感を味わいました。クオータが終わって、なんだかマラソンを走り終えたときのような爽快感があります。なかなか大変でしたが、成せば成る。日本人だってがんばれば世界の優秀な留学生達と戦っていけます。
休みのうちに英気を養いつつ、次学期は学業に加えて、いろいろなところに顔を出していければと思います。
休暇を利用して、この3ヶ月を振り返ったまとめを書いておきたいと思います。また、今ちょっと面白いプロジェクトに関わっているので、休暇の時間を利用してそちらも進めていきたいと思っています。そのうち、これについても報告していければと思います。

スタンフォードCSのチームプロジェクトクラスの質

ここのところMachine Learningの授業のチームプロジェクトやアーキテクチャの授業の試験が重なり、更新がすっかり止まっていました。

今週末にかけてはチームプロジェクトの作業で毎日夜の3時過ぎまでゲイツビルの一室にこもってコーディング・議論・資料作りに明け暮れていましたが、今朝ようやくポスタープレゼンテーションが終わり、ひと段落。努力のかいあって、プレゼンテーションはなかなかの好評で、教授からも論文出したらどう、とのコメントをもらえました。後はレポートを書き上げて提出して、プロジェクトは終了です。チームメイトとプロジェクトを進める中で色々と面白い経験や気づきがあったので、クオータが終わって時間ができたらまたゆっくり振り返りながらレビューを書いていこうと思います。

今回のポスタープレゼンテーションで、自分達の発表以外にもいろいろ見て回ったのですが、チームにもよりますがかなりのレベルの高さに驚きました。授業の半分(授業も十分な分量があるので、ある意味授業の追加ともいえます)の5週間程度でやるプロジェクトなのに、多くのチームは本格的なテーマに真剣に取り組んでいて、すごい時間を割いているのが見て取れました。テーマも自然言語処理、ロボティクス、画像解析、バイオインフォマティクスなどの分野で実際に重要な課題を扱っているものがあり(中にはダメ映画を検出するアルゴリズムなんていう珍しいものもありましたが)、見回って議論しながら楽しめました。カメラの画像から人間の姿勢を検出するプロジェクトでは、実際のシステムを試すことができたり。色々なプロジェクトの結果を見ていると、学生が数人集まって数週間作業したらこれだけのことができるんだな、とアルゴリズムの威力やコンピュータ上で構造物を作ることの素早さを感じました。ベンチャー企業などがものすごいスピードで新しい製品やサービスを生み出していくダイナミクスも、このコンピュータ上の世界での効率の良さ、素早さがあってこそなんでしょうね。

長いようで短かった最初のクオータも、あと1週間で終わりです。クオータが終わって時間ができたら、回想録など書ければと思います。

Web上でユーザを説得する技術

以前機械工学科のSmart Design Projectを紹介しましたが、スタンフォードにはこのプロジェクトのように個性的なプロジェクトをやる授業が数多くあります。
中でも最近特に面白いと感じたのは、Captology project(captology.tv)で、この授業はPersuasive Technology on the web、つまりweb上でユーザをいかに説得してサービスやプロダクトを使ってもらうか、または望んでいる使い方をしてもらうかという方法論を研究するもの。そしてさらに面白いのが、プロジェクトの最終発表はCaptology Film Festivalと銘打たれていて、チームごとに制作したPersuasive Technologyに関する映画を上映することになっています。(観客にはポップコーン・ドリンクのサービスまでつくという徹底ぶり。)僕も登録してチケットを手に入れたので、来週7日木曜日、行って堪能してきたいと思います。
なお、この授業のウェブサイトもとても面白くて、このテーマに関するとてもいい情報源になります。サイトのメインコンテンツは、(おそらく生徒や教授によって)Youtubeにアップされたビデオで、Web上でのPersuasive Technologyに関するベストプラクティス、ケーススタディ、テーマ別ビデオなど見切れないほどのビデオがポストされています。取り上げられているサービスもGoogle, Youtube, LinkedIn, iTunes Music Storeなどメジャーどころから、聞いたことの無いようなサイトまで、幅広くあって参考になります。参考に、いくつかピックアップしてここにも載せておきます。


Involving Others in Google Docs
This case study explores how Google Docs makes it easy to Create Value and Involve Others -- Two key steps in the Web Behavior Chain.


Registration best practices
An analysis of the best practices found on web 2.0 web sites in terms of persuading users to register.


Video Sharing Interactions
Analysis on google video, youtube, and revver user interaction



しかし、Youtubeを使った授業のウェブサイトとは、昔だったら想像もできなかったな。面白い時代になったものです。

Stanford vs UC Berkeley Big Game

この1週間、期末試験も近くなってきたというのにキャンパスにはお祭りムードが漂っていて、今日などはキャンパスの真ん中にある広場に屋台まで出る盛り上がり。昼間から野外ライブを繰り広げるバンド達、そして何の目的かわからないものの突然現れたビニール製のボクシングリングは、普段とは違う何かが起きていることを物語っていました。




それもそのはず、今週土曜日、伝統のアメリカンフットボールの試合、Stanford vs UC Berkeley Big Gameが開かれることになっていたんです。場所はバークレーキャンパスですが、スタンフォードでも大いに盛り上がっているわけです。
Big Gameは、アメリカの大学フットボールの中でも最も歴史のある試合の一つで、今年でなんと106回目。ここ十数年の戦績はというと、1995-2001の間スタンフォードが7連勝した後、スタンフォードが4連敗中。今年はどうなるのでしょう。今年のスタンフォードチームはなかなか振るわないのですが、勝ってほしいものです!

ところで、この盛り上がりからもわかるように、フットボール(アメフト)はアメリカの大学にとって(そしてアメリカ国民一般にとっても、のようです)フットボールはかなり重要なイベントのようです。ここ3ヶ月キャンパスで過ごしてきて、スポーツの話題で耳にはさむのはもっぱらフットボール。授業の中で例として出てくるのも、フットボール。(もっとも、機械学習の授業の中で、ここのところ一度も勝っていないスタンフォードチームが勝つ確率を計算するとき、確率0にしたらモデルとしてはまずいよね、という悲しい例えでしたが・・)
なぜフットボールはここまで人気なんでしょうか?歴史とか大規模な大学リーグの存在とかスポーツビジネスとしてうまくまわっているとか、色々な理由があるんでしょうが、調べてみると面白いかもしれません。
しかしやっぱりこれだけ皆が夢中になるのだから純粋に面白いんだろうな。フットボールを見て育ったアメリカ人の友人に聞いたところ、フットボールは見た目は筋肉勝負のように見えて、その実チェスのように戦略的なスポーツなのだとか。せっかくアメリカに来ているので、そのうち僕もスタンフォードスタジアムにアメフト観戦に行って楽しんでみようかと思っています。
最後に、大学を挙げて盛り上げているのがよくわかる写真を2枚ほど。


これは、図書館にかかった垂れ幕。中の人は暗くないのだろうか・・



そして、Hoover Towerのライトアップ。タワーも噴水も、スタンフォードのテーマカラーのCardinal(深紅色)に染め上げられています。これは初めて見たときはぎょっとしました・・

Smart Product Design Project

機械工学科の友人が、Smart Product Designというプロジェクトで面白いガジェットを製作してビデオをYoutubeにアップしてくれたので、紹介を。

Project WALDO


プロジェクト全体のテーマは、「10分間世界一周」で、世界を見て回る感覚を面白おかしく体験させるガジェットを作るのが課題だそうです。
このチームの作品は、Waldo(最初はウォーリーのまがいものかと思ったけど、実はこれが本家の名前なんですね)を世界を駆け回って探し出すゲームのようです。
ゲームセンターのような筐体の製作から電子回路の作成、C言語での組み込みプログラミングまで全部自前でやったそうです。
この短時間で、すごい!
しかし大変そうだけど楽しそうなプロジェクトです。

物理的に大学に通う意味

今日は、授業のGrading Sessionの日で夕方から6時間ほど宿題の採点作業をしてきました。
Grading Sessionがどんなものかというと、TA(授業のアシスタント)や選抜された学生計10名弱でクラス100人分くらいの答案を採点するというもの。量・難しさともにけっこう重いので、これもなかなかの重労働です。

そんな重労働なのになぜわざわざやるか、というとわりと、いい時給がもらえるのと、なによりスタンフォードの授業がどんな風に回っているのか、内部から見れるので、これはいい機会と応募したわけです。
2週に1度のペースで、今日で3回目。ずいぶん作業にも慣れてきました。


この作業を通じて発見した一つの面白い傾向は、物理的に大学に通っている学生はリモートで授業に参加している学生(社会人学生が主)よりも点数が良い、ということ。
スタンフォードにはSCPD(Stanford Center for Professional Development)という、リモートで授業に参加してある種の学位をもらえるプログラムがあるのですが、このSCPDの学生の答案を採点すると、けっこう間違いが多い。
宿題にかけられる時間の違いなどいろいろな要素はあるだろうけれど、僕が思うに、物理的に大学にいて周りの学生やTAと議論しながら学ぶことの効果というのが大きい。
自分を振り返ってみても、完全に一人で授業の資料を全て完全に理解して宿題も完璧に解くというのは、かなり厳しいです。
人とのインタラクションの中で理解が早まり、深まる効果というのは無視できないのではないでしょうか。


なお、「大学にいる学生達は答えを写しあってるだけなんじゃない?」という疑問もあるかもしれませんが、それはさにあらず。スタンフォードにはHonor Codeというのがあって、人の答えを写した答案を提出するとHonor Code違反で1学期の停学と清掃活動が課せられるという恐ろしい罰があるので、皆それはしないようです。特に留学生はフルタイムの学生の資格を失った時点で即国外追放なので、絶対にやっちゃいけません。
実際に、去年の機械学習のクラスでは2,3人違反でつかまったそうです。恐ろしい・・


そういえばMITやUCBで授業をオンライン公開するプログラムがありますが、それらを中心として勉強のためのオンラインコミュニティができあがったら、さらに素晴らしいだろうな、とふと思いました。それがあるのとないのとで、公開プログラムの価値はかなり変わるだろうな。
たしか、MITは当初そんなコミュニティ作りも計画していたと思いましたが、今どうなっているんでしょう。

休暇の終わり。スタンフォードのスピード感

たっぷりあると思われた1週間の休暇もあっという間に終わり、明日からまためまぐるしい日々が始まる。

スタンフォードでの生活は、本当にすごいスピードで過ぎてゆく。このスピード感を生み出している主な原因は、たぶんスタンフォードの授業の制度にある。クオータ制で10週間くらいの中に大量の内容を詰め込むから、日々こなしていかなければいけない作業量がかなり多い。英語で全てをこなすオーバーヘッドがあるので輪をかけて多い。
これはこなしているだけでハードワーキングのいい訓練になる。人生でこんなに勉強することも今のうちしかないんじゃないだろうか。

スタンフォードCSを卒業した先輩の話によると、1,2クオータが過ぎればコツがつかめてきてずいぶん楽になるとのこと。
・・・そう願いたい。
2ヶ月が過ぎて、どんな力の配分をすればうまく回るかが少しずつは見えてきたが、まだまだ工夫の余地はありそうだ。
さらにコツがわかってきたら、後から来る人の参考の意味も込めてブログに書いておこうと思う。