新刊コンボとか新刊出てたとか


久方ぶりに更新だけど、5月後半は天冥の標4、夢の上3、図書館危機(文庫版)、ハルヒ驚愕とを同日に手に入れて個人的に今年最高の新刊コンボだったり。
あと、今更過ぎるけど「抗いし者たちの系譜」の著者、三浦良さんから新刊というか新作「銀の河のガーディアン」というのが出てる!
ほんと今更だけど!
好きな作者は追ってるつもりでしたが、さすがに3年近く空いていたので失念…。

夢の上3

夢の上3 - 光輝晶・闇輝晶 (C・NOVELSファンタジア)

夢の上3 - 光輝晶・闇輝晶 (C・NOVELSファンタジア)

サマーアの空を覆う神の呪いは砕け散る。天空に広がるは深く抜けるような蒼穹
その中心で輝く黄金の太陽。人々は驚喜した。
しかし。
夢売りと夜の王の元には、まだ二つの彩輝晶「光輝晶」と「闇輝晶」が残されていた――

この物語は「皆の想いを、叶わなかった夢を背負った物語」であった。
それぞれの「夢」を見せるという形で各短編を描き、様々な視点で物語が進んでいく。
ある物語では主役であった人物が、他の短編では名前が出てくる程度であったり、そうかと思えば他の物語では話の軸にしっかりと絡んでくる。このようにして、バラバラであったそれぞれの物語を綺麗にまとめてくるのは見事の一言。
最終巻では幕間に登場する夢売りや夜の王の正体、そして複雑に絡みあった物語の結末が描かれている。
力強く、しかし静かに物語を終えるのも著者の特徴かもしれないですね。
世界観、ストーリー、登場人物、そして緻密に練られた作品構造、どれを取っても文句なし、煌夜祭に匹敵する傑作でした。
読み終えた後に振り返るタイトル「夢の上」は、やはり、感慨深い。

ベン・トー 5


HP同好会での合宿を終えた佐藤らは地元に帰って日常の争奪戦に精進していた。夏休みも終わり新学期が始まったある日、かつての憧れのクラスメイト、現在芸能アイドルとして活躍する広部さんが転校生として現れる。傍若無人の振る舞いをする彼女に案の定巻き込まれる佐藤は、徐々に弁当争奪戦から遠ざかってしまう。さらに、最強の組織力を持つ<<ダンドーと猟犬群>>の登場に戦闘は激しさを増していき…!!佐藤は「狼」としての誇りを失ってしまうのか!?それとも秋鮭のごとくスーパーに戻ることはできるのか――!?

相変わらず半額弁当のために死闘を繰り広げるバカ設定なのだが、面白い面白い。ここまでヨダレが止まらなくなる本も珍しい。熱い戦いに、恋愛と、弁当に置き換えただけでまんまバトル物の王道だったり。
今回は広部さんという佐藤がかつて好きだった人が登場。昔好きだった人にご飯のお誘いやら受けたら舞い上がっちゃうよね。そんな彼を再び弁当争奪戦へと駆り立てたのが山原の覚悟、負けても立ち向かうと決めた先輩の決意、そして己のままに生きろと言ってくれた先輩の言葉、それらを受けて彼が出した答えは決して間違ってなかったと思う。まあ半額弁当なんだけど。
あとがきにもある通りかなり削った印象を受けたけど、次回も楽しみ。著莪が可愛い過ぎるので、増量を祈ろう。

戦う司書と世界の力


戦う司書と世界の力 BOOK10 (スーパーダッシュ文庫)

戦う司書と世界の力 BOOK10 (スーパーダッシュ文庫)

ネタバレあり。これは今年読んだ小説の中で一番面白い。

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天地明察

天地明察

天地明察


冲方丁の新作はSFでもファンタジーでもバトルでもなく、ある男の半生を描いた時代小説。

江戸時代、前代未聞のベンチャー企業に生涯を賭けた男がいた。
ミッションは「日本独自の暦」を作ること――。
碁打ちにして数学者・渋川春海の二十年にわたる奮闘挫折喜びそして恋!!

久々に「続きを読むのが惜しい!」という感覚を味わうことができた傑作。
渋川春海という人物の半生を描いているのだが、この春海という人物が良い。彼は新たな暦法を作るという、我々が想像もできない事業を行うのだが、老中に思わず碁打ちとしての人生が退屈だと言い、優れた算術には素直に感銘を受け、また挫折の度に、失意のどん底に落ちるような、「おいおいこんな人物がほんとに改暦なんてできるのかい」と言いたくなるが、それでいて憎むことができない愛敬のある人物。
そんな晴海の人生を変えていくのは、多くの出会いと挫折であった。算学の天才、関考和との出会いから始まり、酒井、保科、水戸光圀といった天下に名立たる人々の期待と支援を受け、幾つになっても夢を忘れない武部や伊藤に自身も奮起し、そして常に支えてくれた安藤や闇斎、えんの信頼を糧に、春海はどんどん成長していく。算術勝負に負けて切腹しようとしていた頃から比べると「必至!」と力強く答える春海はとてもかっこいい。
また同時に多くの挫折や敗北を味わい、その度に立ち上がってきたからこそ、最後の逆境においても(負けることには慣れている)という台詞が出てきたのは、春海の二十年を見てきた私には感慨深いものがあった。すべてはこのときのための布石なのだと。

主人公とともに喜び、悲しみ、感動できる素晴らしい小説。冲方丁の進化を感じる一冊。おすすめ。