マイレージ力

去年の修行(http://anasuperflyers.choco-moco.net/など参照)で得られたアップグレードポイントを使って、妻と義母が1週間のパリ旅行に行ってきた。どうやらとても楽しかったらしい。こっちまですごく満足。

で、毎日見てる上のページを見て吹いた。
http://anasuperflyers.choco-moco.net/News/ANA/200812020206.shtml
なんですか、マイレージ力ってww
https://www.ana.co.jp/amc/news/cpn_amckentei/
こっちはANAのホームページ。これは参加せざるを得ない…

実家へ帰った

脳梗塞で入院している祖母の容体が悪いと父から電話を受けたのが土曜。
あわてて飛行機を取ろうと思ったが、運悪く行きの予約は満杯。しかもとれたとしても最終便では実家に土曜日中につかない。幸運にも帰りの飛行機は最終便がとれた。
選択肢は2つ
1)空港に行き最終便以外をキャンセル待ち
2)JRを乗り継いで10時間かけて実家まで
1)でもキャンセル待ちを取れる可能性は高いと思っていたが、万日のことを考え確実に22時には実家に着く2)を選択。それがまずかった。
行きは疲労はしたものの、無事到着。祖母の容体も思ったよりは良く、とはいえ今度会うのは亡くなった時だろうなと思うと微妙な気持ちになった。しかし、帰りが悪かった。9/28、信号トラブルで新幹線のダイヤが大混乱。高崎には1時間遅れで到着したものの、そこから上野まで2時間かかってしまった。もちろん席なんてないのでずっと立ちっぱなし。3時間の余裕をもって家を出たはずなのに、間に合うか気が気じゃなかった。間に合ったけど。
そんなわけで昨日も疲労が全然抜けず、ふらふらで仕事。もう長距離のJRは絶対に乗るまいと思った。飛行機で行ける限り、飛行機で行こう、と。去年飛行機を趣味のように乗りまくって上級会員の資格を取り、電車の旅もいいかなぁとちらっと思っていたが、そんな思いは吹き飛んだ。ANAさますみません。もう2度と浮気は致しません。

大野事件、とりあえずの区切り

無罪になってよかったです。本当に。
医療崩壊はしてもいいかなという立場の自分ではありますが、でも加藤先生がそのために犠牲になる必要などないわけで。

http://www.yomiuri.co.jp/national/news/20080820-OYT1T00370.htm
http://s02.megalodon.jp/2008-0820-1348-19/headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20080820-00000018-yom-soci(魚拓)

http://d.hatena.ne.jp/shy1221/で、S.Yさんも書いてますけど、真実を見極めるには、そりゃ専門的な論議は必要でしょう。
裁判で「素人でもわかる癒着胎盤とその予後」なんてするわけがないので(もっともそれに近いようなことはやっていたみたいですが、臍帯の読み方講座とか)。それを遺族が置き去りにされたというのは違う気がします。たとえば殺人事件の裁判でも専門的な話はするでしょうし*1、それが遺族を置き去りにしているという論調は見たことがありません。

それにしても、最近医療分野で読売新聞はひどいですね。

「何が起きたのかを知りたい」という思いで、2007年1月から08年5月まで14回の公判を欠かさず傍聴した。証人として法廷にも立ち、「とにかく真実を知りたい」と訴えた。「大野病院でなければ、亡くさずにすんだ命」と思える。公判は医療を巡る専門的な議論が中心で、遺族が置き去りにされたような思いがある。

「大野病院でなければ、亡くさずにすんだ命」とは遺族の思いでしょうか、素直に読めばそう思えますが、だとするとこの遺族は裁判の結果を待たずして自分で求める真実を決めてしまっていることになります*2。まさか、「真実を知りたい」といっている遺族がそんなことを思うはずがありません。とすると、この思いは(わかりにくいですが)これを書いた記者の思いなわけで、この記事は遺族を侮辱している記事にほかならないと考えます。

*1:間違っても大野事件が殺人だという意図では書いておりません

*2:今回の判決では病死とはっきり断定されてしまったわけです

いい傾向です

ヒヤリハット」3倍 睡眠5時間未満のトラック運転手(朝日新聞

ふだんの睡眠が5時間未満のトラック運転手は、運転中に居眠りや事故寸前の「ヒヤリハット体験」をする確率が約3倍に上がることが厚生労働省の調査で明らかになった。同省は27日、運輸事業者向けの事故防止ガイドラインを来月にも改正し、運転手が睡眠不足の場合は走行を禁じるなどの措置を取るよう求めることを決めた。

 調査は06年度にトラック運転手ら3010人に実施し、813人が回答した。睡眠5時間未満の運転手のうち、居眠り運転とヒヤリハットを体験した人の割合をそれぞれ1とした場合、5時間以上の運転手は0.3、0.43にとどまった。規制緩和で競争激化が進むトラックやタクシー業界では、長時間労働が原因で事故にあう例が後を絶たない現状を裏付けた。

 改正するガイドラインは、トラックやタクシーなどの事業者に事故防止の具体策を示すもので罰則はない。改正後は点呼時に、勤務前24時間の就業時間(休憩含む)が計13時間を超える場合は睡眠時間を確認し、寝不足が激しい場合は運転させないなどの対応を求める。
http://www.asahi.com/life/update/0227/TKY200802270382.html

まあ、まだガイドラインの段階ですし、罰則もないのでどんだけ効果があるか疑問と言えば疑問ですが、少なくともこのようなことがどの業種でもキチンと明言されるのはいいことだと思います。
トラックの運転手と同じくらいには医療従事者がヒヤリハットを起こす可能性はあると思いますよ。

心がけでどうにかなること、ならないこと

イチローだって常にヒットを打てるわけではありません。
松坂だって毎回三振取れるわけではありません。

常に最善を目指すこと*1と、結果的に100%最善を尽くせることは全く違う話で、そんなもんは医者の努力とか根性で何とかなる話でも、生命を扱う仕事ということだけにできるようになる話でもないと思うんですが、それって間違いでしょうか?
最善を常に尽くせる人間しか命にかかわってはいけないというのなら、私は間違いなく不適格ですね。

*1:個人的には、こうしようとすると気づかれして、かえって結果的に最善を満たせない気もしますが

私の場合

3年前、某急性期病院にいたころ。当直中に電話。外泊中の患者の家族からで「外泊中のものだが、呼吸が苦しいと言っているので今から救急車で帰りたい」とのこと。救急車?とは思ったけど「どうぞどうぞ」と返事。続いて救急隊から電話。「心肺停止です、今から向かいます!」
…ちょっと待ってくれ。呼吸が苦しいってそのレベルかい! 大慌てで当直師長に連絡しフル装備で待機。10分後救急隊が心マとマスク換気しながらやってきた。モニター付けると心停止。(対処が簡単な)VFではない。挿管して聴診。右の音が弱い…。ボスミン入れて心拍が戻ってきた。でも、酸素飽和度の上りが悪い。チューブを少し抜いたが右の音が悪いのは相変わらず。
「深く入ったなら左だし、アンビュにも違和感を感じる…」挿管後の確認のレントゲンに答えはあった。
確認後取りあえずすぐさま右の胸壁にサーフロー3本刺しました。右の気胸でした。縦隔偏位はなく緊張性ではなかったのでもともとCOPDで呼吸機能が悪く、気胸が起こっては耐えられなかったということ。ドレーン入れて、改善。無事に人工呼吸からも離脱できました。
これは本当に僕が幸運だったという話。考えるだけでも

  • 家族が救急車を呼んでくれたこと
  • 救急隊がしっかりBLSしてくれたこと
  • 患者の自宅が病院に近かったこと
  • 挿管・強心剤でとりあえず心拍が再開してくれたこと
  • サーフローをさすまで患者の生命力がもってくれたこと

このどれが欠けていても、この患者が生き返ることはなかった。それは僕の技量云々の問題ではない。だが、もしこの患者が死んだとき、問題になるのは上のどれかが欠けていたというのではなく、むしろ下のこと。

  • 心肺蘇生は何の問題もなく行われていたか
  • VFよりも先に気胸を疑うべきではなかったか
  • レントゲンを撮る前にサーフローを刺していれば助かったのではないか

この患者の挿管は1回で入ったが、たとえば1回食道挿管して、聴診後入れ直していたとしたら、それはもう、十分なウィークポイント。そうでなくとも「緊張性気胸ならレントゲン取る前にドレナージ」とはそれこそどの教科書にも書いてある(正確にはこの症例は緊張性気胸ではなく、気胸によって呼吸不全が生じ心肺停止になったのだが、そんなこと、きっと警察やマスコミは区別して書いてくれない)なぜレントゲンを待ったと言われたら、どうやって反論すれば良かっただろう。その時の自分は実際には待ったのではなくやれることを一つ一つやっていただけ。後から見直せば完璧じゃない処置なんていくつでも指摘できる。
だけど、大事なのは下の3つではなく、上の5つ。繰り返すが上の5つが満たされずにこの患者が助かることはなかった。そういう意味では僕も患者も運が良かったのだろう。
でも、一歩間違えれば助けられず、その時訴えられていたのは自分と考えると無邪気に喜んでもいられないわけで…。