7/1 大飯原発「再稼働反対!」

正直、当日の朝までは「行けたら良いな」くらいにしか思っていなかった。
前日まで台湾にいたぼくはツイッターで官邸前に20万人(?)も集まったというのを知って驚いた。大飯にはどれくらい来るだろうか。思ってはいたものの、7/1の朝は仕事の疲れでのんびり寝ていた。そこに友達から「ユースト見てたら仕事なんて手に付かんくなって、行こうと思うんやけど体調的にしんどいと思うので帰りの運転してくれる人いてませんか?」みたいなメールがお送られてきて、寝ぼけながらも二つ返事で行く事にしたのだ。
若狭湾と小浜湾にはさまれた大飯半島の一番上、出発して3時間半くらい、検問もなくすんなり入り口まで到着できた。


数百メートルにわたり同じ方向を向いて停車してある車。

どんな様子なのかドキドキしながら現場へ行った。


ドラムを奏でて踊りながら「再稼働反対!」コールしている。だいたい200から300人くらい。ドラミングの音がデカすぎてコールがかき消される。これがデカイと思わないくらいの人が欲しい。
どうもこの場所でデモしながら踊る気にはなれないけど、とにかく「再稼働反対!」と声をあげるだけだ。もう何日もこの場所に居続けるて人もたくさんいる。ぼくも何日もいれば踊りまくってるかもしれない。とにかく現場を見ても、まだドンチャン騒ぎをしている不法占拠者たちといった感じだった。

途中、長期戦を予想し、食料や水など買いに近所のスーパーへ行った。半島の付け根のこの方田舎では抗議活動に集まった若者達だとすぐにバレていたが、スーパーのおばちゃんは必要以上に丁寧に接客してくれたような気がした。現場に戻って知り合いに聞いた話では、地元の漁師さんが食料をたくさん持って抗議活動の参加者を激励しに来てくれたそうだ。

若い警官隊の人達も「お疲れさまやな」と思った。ある意味彼らがいることで、この場所が確保され抗議行動ができている、とも言える。

現場が動いたのは午後4時半頃だったか。ヘルメットをかぶった警官隊たちが突然なだれ込んで来る。一気に緊張感が高まった。そして『衝突』へ。

「どけー!」「下がりなさい!」「触るな!」「再稼働反対!」「触るんじゃない!」「再稼働反対!」ぐちゃぐちゃもみくちゃ。「お前ら押すんじゃない!」「そっちが押してるんだろ!」「なんだとっ!?」「お前とお前今押したの見たぞ!盾に触るんじゃない!」「押してないよ!」

「下がれって言ってるんだ!お前顔覚えたからな!」「こっちも覚えたぞ!」「なんだとーっ!」「下がらんと検挙するぞ!」「検挙できない!」「なにーっ!?」
この時はじめて『ヤバイ!』と思った。なんてことや....。こりゃみんな捕まるかもしれんな...。そんなこと思いながら言い合うのはヤバいと感じ、ただひたすら「再稼働反対!」と声を上げ続けた。そうだ、この人達ともめたいんじゃない。この場所で抗議デモが今行なわれている事をより多くの人に見てもらいたい。とにかく誰かにこの状況を伝えなければ。「再稼働反対!」とコールしながら震える手で携帯で写真を撮り、ツイートした。『衝突中!』この4文字を打つのに緊張で指が震えて警官の見ている前で何度も文字を打ち間違えた。

「再稼働反対!」叫び続けてるけど、正義感も希望も絶望もなくて、ただただ『虚しい』。ホントにこんなモノ最初から無ければ良かったのに。若い警官に命令口調で「おまえ下がれー!」とか言われながらそう思う。再稼働を本当に阻止なんてできる訳はないのはみんなも分かっている。分かっててもどうしようもないからここに来ている。昼過ぎまで降っていた雨は止んで空はキレイに晴れてきていた。




ただただ同じ場所に2時間くらい突っ立ってる。「再稼働反対!」とにかくこの場所で声をあげるしかない。たまに押した押してないの小競り合いがあったりして少しづつ押されている。日が暮れてきたな。声も枯れてきた。


デモに参加するといつもナニかしら思う事がある。それは、普段原発の話なんてした事無い友達や知り合いにその場所で出会った時のびっくり安心感だったり、やり終えた達成感はあっても現実は何も変わっていない事の虚しさだったり、でも少しずつでも誰かに伝わればと 思いながらツイートしたり、しかしたまに見かける、大声で「おまえら人殺だー!」なんて誹謗中傷を叫ぶ人には幻滅する。憎しみをぶつけても何も意味が無い。そういう人はこの日はボクは見かけなかった。


車による何重ものバリケード封鎖、この頃にはもう牧野経産副大臣は海路を使い構内に入っていたらしい。


「再稼働反対!」ってコールしてる中で、たまに機動隊と接触した時のコールが「暴力反対!」ってなるのにはものすごく違和感があった。押した押されたの状況で、暴力なんて無いのにそんなコールは逆に暴力を誘発しかねない。実際に感極まって暴れだした(?)人が何人も閉め出されて行っていた。
警官隊と衝突して検挙される(今日は一人も検挙はさせてないらしい)なんて、ほんと意味が無い。逮捕覚悟の人もいたと思うし、スクラムを組んで突進した人達もいたらしいけど、それでは目的と手段が結びつかない。それで再稼働が止まる訳も無い。抗議なんだから、もっとどうどうと胸を張って、ただただ声をあげればいい。

最前線で両手を挙げて撮った写真を見てゾッとする。まだ向こうにまだまだ数えきれない警官が配備されている。奥には原発構内へ繋がるトンネル。
もういつの間にか9時を回っていた。再稼働されたらしいというニュースも聞こえてこなかった。とにかくこの場所にず〜っといながらコールし続けた。


「再稼働反対!」を結局誰に向かって行っているのかと言えば、ユーストリームを含む報道をみているこの場所にいない人たちに対して言っているのだ。各局のテレビ中継車、新聞社のカメラマンや記者もおそらく全社から来ている。ユーストリームの中継中も、批判的なコメントも数多くあるのは安易に想像できる。左翼だとかただ騒ぎたいだけだとか根拠無く決めつけて揚げ足をとり、ネット上で思考を停止させてしまっている人達の事は置いておこう。それ以外の、無関心な人達はおそらくまだまだたくさんいるはずだ。その人達にこの場所から声を上げて叫んでいるのだ。
「再稼働反対!」約8時間の間、そればかりを何千回も叫び続けた。


なり続けるドラムがみんなのコールの後押しとなって響き渡っていた。
(5時間もぶっ通しで叩くぴかちゅうのドラムが気持ちよすぎた。ピカブログ→http://pikaloggg.blogspot.jp/2012/07/dommunfukushimataiyo33osaka-54.html一緒にいった高木くんの写真がナイス)

ボクは誘ってくれた友達の車の関係で10時半くらいには失礼した。外に出る時、一番外まで誘導さしてくれた警官が別れ際に「おつかれさま」と言ったので一瞬驚いたが、ぼくも「おつかれさまです」と答えた。
抗議活動は12時過ぎぐらいまで続いたらしい。だいたい黙視でのべ500〜600人くらい来ていただろうか。逮捕、検挙者が出なかったのは本当に良かった。しかし警察側もその方が、まるで何事も無かったかのように社会が動いていく為に余計なニュースを増やさないようにした、とも取れるのかもしれない。まだ声を上げている人達に後ろ髪を引かれる思いで、へとへとになった身体で運転し、帰路についた。


翌日から普段通りの仕事の毎日。あの日の事はまるで夢だったかのように、あの場所で作られる電気を使ってぼく達はこれまでと同じように生活を営む。
いや、同じではない。多くの友達や知り合いが大飯での事を聞いてくる。
ツイッターで『今日テレビで反原発のことやってた。そこにおもいっきりアウトドアホームレスの慎亮さん映ってた。その時初めて原発の事考えたわ。』という呟きを発見した。本当にそれだけでも、あの場所に行けて良かったと思う。

少しずつでも広がって行けば、いつか原発は無くなると信じている。




この後...


マユちゃん「おじいちゃん、わたし初めて木に登ったで〜!」
おじいちゃん「女の子が木登りなんかしたらあかん!」
マユちゃん「わたしは木登りができる女になりたいねん」
おじいちゃん「あかん!登ったらあかん!!」
マユちゃん「うえ〜ん(泣)」


おれは木登りができる女の味方やで!
また登ろうね。