南あわじ市F湾の礫干潟で

ヒジキやカヤモノリでも採ろうかと、島の南の方のFの磯/礫干潟へ出かけた。干潮時刻を調べてからでかけたけど、いろいろあって1時間ほど遅れたら、けっこう満ちてきていた。

先に60代くらいの女性と70代くらいの女性がしゃがんで何かを獲っている。

「こんにちは」

「あら、あんたら。こんな時間から来たんか。遅いわ。もっと早よ来んと」

「そうですね。もう満ちてきてますね」

「そう。また明日おいで」

「そうしよかな。何をとってるんですか?」

「わたしらは、アサリ。アサリとイソモン」

ざるを見せてもらった。アサリ、スガイ、そのほかにも二枚貝や巻き貝が数種。スガイにはカイゴロモがびっしりとついている。

 

「あんたらは何をとりにきたんや?」

「この海藻(カヤモノリ)とか」

「これ食べれるんか?」

「はい。あと、ヒジキとか」

「ヒジキはここはないやろ。ヒジキやったらこの向こうのCとかNに行ったらなんぼでもあるで」

「そうなんですね。あと、これも採っていこかな(アオノリsp.)」

「ああ。あおのりか。うちの親がよく採って、揉んで干して食べとった。餅に入れて搗いたりな」

「餅に入れてたんですか」

「そう。知らん?へぎもちいうて。かきもちやな」

おいしそうだ。

 

「さっきのアサリの写真とらせてもらっていいですか」

「写真撮るんやったら、ちょっと洗ってくる」

「たくさん獲れてますね」

「昔はな、もっともっとたくさん獲れた」

「昔って、どれくらい昔ですか?」

「10年前はほんとにたくさん獲れた。5年くらい前から採れなくなった」

「意外と最近ですね。なんで獲れなくなったんでしょう」

「なんでかなあ。フグの養殖で消毒の薬を撒くのがアサリに悪さしよんとちがうかという人もおるな」

それを聞いていたもう一人の女性「あんたもそう聞いたか。わたしもおんなじようなことを聞いたことあるわ」

この地域ではそういう認識をもつ人がけっこういるみたいだ(お二人とも、ここから車で5分ほどのところにお住まいだそうだ。)。また、このお二人はたまたま現場でいっしょになっただけで、いっしょに来ていたわけではなさそうだった(車もべつべつだった)。

 

この礫干潟から数十メートル北へいったところの別の磯干潟(ただし、干潮時にはつながる)には、観光できている60代くらいの女性が2人。やはり何かをとっている。

「なにをとってるんですか?」

「がんがらをとってるの」

「がんがらって何?」

「これ」(見せてくれたのはスガイだった)

「ああ。これ。コケがびっしり覆ってますね」

「覆ってるのもあるし、覆ってないのもあるよ」

「どちらから来られてるんですか?」

「わたしらは大阪から」

「よく来るんですか?」

「ときどきな」

「がんがら、どうやって食べますか?」

「炊いてな。つまようじでくるっと取り出して。これがお酒に合うのよ」

 

春の磯、礫干潟。干潮ドンピシャの時間に出直さねば。

 

マムシを獲っていた話

淡路市生穂。60代の男性から聞いた話。

昔は、畦の草刈りをするときにマムシを見つけたらそれを捕まえた。左手に鎌を持ち、鎌の先端でマムシの頭を押さえつけ、右手でマムシの頭から尾まで、ぴーっと皮を剥いだ。皮を剥いだマムシを洗濯物を干す物干しに干しておく。マムシはその状態でもしばらくは動く。そうやって干しておいたマムシは、廃品回収の人が来たときに、ぼろ布とかといっしょに買ってくれた。廃品回収のことを昔は「ぼろ買い」と言うていて、定期的に回って来てくれていた。マムシを売る先があったんだろう。マムシは、頭を切り落としたら他の蛇かわからんようになるから切り落としたらあかん。頭をつけたまま干していた。明治生まれの人はマムシをよく獲っていた。マムシはお金になるから。

※昔っていうのは、昭和40年代ごろを指しているようだった。

神戸のおかんに若ごぼうのことを聞いてみた

1942年生まれ女性。神戸市兵庫区で生まれ育ち、1960年代後半に結婚。1970年以降は長田区と兵庫区をいったりきたり。僕の母。

 

「若ごぼうっていう大阪の野菜知っとお?」
「葉っぱのついてる小さいごぼうかな?」
「それそれ」
「料理した覚えは無いけど、たぶん、葉っぱをゴマ油で炒めた醤油味で食べたことがあるような気がする」
「いつごろ食べたん?めっちゃむかし?」
「たぶん、おばあちゃん(母の母、僕の祖母、大正生まれ、鳴門出身)が作っていたような」
「結婚するより昔ってこと?」
「その後も食べたかもしれない」
「ふーん。売ってるの見たことある?」
「ある。」
「いつ、どこで?」
「市場の八百屋かな」
「御旅市場?昔の話?」
「たぶんそう。いつやったかはようわからんわ。50年以上前の話かな」
「最近は?見たことある?」
「気にしたことがない」
「そやろな。ありがとう」

というわけで、神戸のまんなかへんで暮らしてるおかんに聞いた若ごぼう情報。
昔、市場で売ってたのをみたことがあり、母の母が調理していたらしいが、自分では買ったことはないし、気にしてないからあるのかどうかもわからん、ということでした。大阪産かどうかはわかりません。

最近見たかどうかを聞いたのに対して「気にしたことがない」というすばらしい答え(単に「見たことない」と回答するよりも正直で正確)。

鮮魚行商人のおばちゃんとの会話

島の北端の町で、鮮魚行商人のおばちゃんとの会話 
「こんにちは。魚ありますか?」
「もうガシラ(カサゴ)しか残ってない。ガシラはこんだけで500円。あとマナガツオのみそ漬け」
「今日はガシラのほかは何があったんですか?」
「アジと、タイのちっこいのと、小さいイカと」
「小さいイカ?」
「ヒイカな。あと、あの、ハリイカみたいな、名前出てけえへん、ここらで”けつくさ”っていうんやけどな」
「ああ。胴のはしっこのよごれたような」
「そうそう。それや。あ、真イカやな。岩屋は”けつくさ”いうねん。あはは」
「おもろい名前ですね。ほな、マナガツオのみそ漬けください」
「700円な」
「これいつから味噌につけてるんですか?」
「だいたい5日以上漬けとう。よう味がしみこんでる」
「味噌だけに漬けてるんですか?」
「味噌にいろいろ味つけとんねん。おいしいで。たべるときはみそをぬぐってから焼いてな。みそあったらすぐ焦げるからな」
「網でやいたらええんやね」
「網でな。いまの若い人はフライなべでやいたりするけどな。どっちでもええ。味噌をとってから焼くんやで」
というわけで、マナガツオのみそ漬けを買った。岩屋は東浦とは魚の方言名が異なる。シリヤケイカは、岩屋では「けつくさ」ということを学んだ。東浦では「まいか」だ。以前に洲本市由良の方からきいたのは「しりくされ」。あとフライパンのことをフライ鍋ってよんでるのがいい。コーヒーカップをコーヒー茶碗っていうような感じ。

ひとはくの「兵庫県産維管束植物」の私家版科名さくいん(ちょっと改善)

 兵庫県人と自然の博物館(ひとはく)の紀要に1999年から2009年まで11回にわたって掲載された「兵庫県産維管束植物」。とても有用な資料だけど、以前は総索引がなくて不便だった。それでずいぶん昔に自分用に科名50音さくいんを作って、さらに2016年にこのウェブ日記にも置いておいた。そこでは各科の掲載されているPDFファイルへのリンクを張っていた(ひとはくの「兵庫県産維管束植物」の科名さくいん(私家版))。

 その後、2017年の紀要に兵庫県産維管束植物の和名・学名の索引と正誤表(福岡ほか 2017・PDF)が掲載された。

 公式の索引が出版されたあとにも、「私家版科名さくいんを使ってる」「べんり」という声を聞いたので、ちょっと改善した。索引から科のページに直接とべるようにした。

 僕がしらないだけで公式がもっといいのを公開してるかもしれないけど、ここに置いておこう。

 

科名 vol. page リンク(PDF)
アオイ科 5 129
アカザ科 3 124
アカネ科 6 115
アカバナ科 5 145
アケビ 3 141
アブラナ科 3 154
アマモ科 9 89
アマ科 4 175
アヤメ科 9 107
アリノトウグサ科 5 148
アワゴケ科 6 129
アワブキ科 5 116
イイギリ科 5 133
イグサ科 9 109
イソマツ科 6 105
イチヤクソウ科 6 94
イネ科 10 161
イバラモ科 9 90
イラクサ 2 98
イワウメ科 6 93
イワタバコ科 7 113
ウキクサ科 10 220
ウコギ科 5 151
ウマノスズクサ 3 145
ウリノキ科 5 149
ウリ科 5 141
ウルシ科 5 111
エゴノキ 6 105
オオバコ科 7 116
オシロイバナ 3 116
オトギリソウ科 3 149
オミナエシ 7 124
オモダカ 9 85
カエデ科 5 113
ガガイモ科 6 113
カキノキ科 6 105
カタバミ科 4 172
カツラ科 3 133
カバノキ科 2 89
ガマ科 10 222
カヤツリグサ科 11 139
キキョウ科 7 126
キク科 8 143
キツネノマゴ科 7 112
キブシ科 5 140
キョウチクトウ科 6 112
キンバイザサ科 9 104
キンポウゲ科 3 133
クスノキ科 3 129
クマツヅラ科 6 127
グミ科 5 131
クルミ 2 87
クロウメモドキ 5 124
クロタキカズラ科 5 124
クワ科 2 96
ケシ科 3 151
コショウ科 3 144
ゴマノハグサ科 7 103
ゴマ科 7 113
サクラソウ 6 103
ザクロソウ科 3 116
サトイモ 10 217
シキミ科 3 129
シソ科 6 130
シナノキ 5 128
シバナ科 9 88
ショウガ科 11 180
ジンチョウゲ 5 130
スイカズラ 7 117
スイレン 3 143
スベリヒユ科 3 117
スミレ科 5 134
セリ科 5 154
センダン科 4 183
センリョウ科 3 144
タケ科 10 214
タデ科 3 105
タヌキモ科 7 114
ツゲ科 5 124
ツツジ 6 95
ツヅラフジ科 3 142
ツバキ科 3 147
ツユクサ 9 114
ツリフネソウ科 5 117
ツルナ科 3 116
トウダイグサ科 4 175
ドクダミ 3 144
トチカガミ 9 86
トチノキ 5 116
トベラ 4 141
ナス科 7 99
ナデシコ 3 117
ニガキ科 4 183
ニシキギ 5 120
ニレ科 2 95
ノウゼンカズラ 7 112
ハイノキ科 6 106
エドクソウ科 7 116
ハマウツボ 7 114
ハマビシ科 4 175
バラ科 4 141
ヒガンバナ科 9 103
ヒシ科 5 145
ヒナノシャクジョウ 9 109
ヒメハギ科 4 183
ビャクダン科 2 103
ビャクブ科 9 103
ヒユ科 3 125
ヒルガオ 6 122
ヒルムシロ科 9 88
フウロソウ科 4 174
フサザクラ科 3 133
フジウツギ科 7 103
ブドウ科 5 126
ブナ科 2 91
ベンケイソウ科 4 132
ホシクサ科 9 115
ボタン科 3 146
ホルトノキ 5 128
ホンゴウソウ科 9 90
マタタビ 3 146
マチン科 6 109
マツブサ 3 128
マツムシソウ 7 125
マツモ科 3 143
マメ科 4 157
マンサク科 4 131
ミカン科 4 180
ミクリ科 10 221
ミズアオイ 9 106
ミズキ科 5 150
ミソハギ 5 143
ミゾハコベ 5 141
ミツガシワ科 6 112
ミツバウツギ科 5 124
ムクロジ 5 116
ムラサキ科 6 124
メギ科 3 140
モウセンゴケ 3 150
モクセイ科 6 107
モクレン 3 128
モチノキ科 5 117
ヤシ科 10 217
ヤドリギ 2 104
ヤナギ科 2 88
ヤブコウジ 6 101
ヤマグルマ科 3 133
ヤマゴボウ 3 115
ヤマトグサ科 5 149
ヤマノイモ 9 104
ヤマモモ科 2 87
ユキノシタ 4 133
ユズリハ 4 179
ユリ科 9 90
ラン科 11 180
リョウブ科 6 93
リンドウ科 6 109
レンプクソウ科 7 124

 

 

2019年10月5日ANA1853.伊丹-青森(その1:大阪~滋賀)

 


 植生学会に参加するため弘前へ。往路、伊丹から青森まで、ANA1853便、Q400の窓から見た景色の覚書。

 この路線はJALANAが就航している。使用機材は、JALエンブラエル190(ジェット機)で、ANAボンバルディアQ400(プロペラ機)だ。Q400に乗るためにANAを選択した。というのは、プロペラ機はジェット機よりも飛行高度が低いため、窓からの景色を楽しむのに向いているから。

 飛行経路は、伊丹を離陸して淀川を遡上、琵琶湖東岸をかすめ、岐阜を縦断して北アルプスをかすめ、糸魚川あたりから日本海へ出て、秋田で再び本州上空に入って青森へ至るというもの。

大阪~滋賀

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淀川デルタ

 

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淀川大堰と西中島のヨシ原・干潟

 

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城北ワンド

 

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鳥飼車両基地

新幹線って長い。最奥の1編成は立体交差をくぐってくねってる。かっこよい。

 

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大津市田上山のはげ山のなごり

 

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JRA栗東トレーニングセンター

かつて軍馬の産地だったから、ここが馬の町として発展したのだったっけ。軍馬をつくっていた時代は、この町にはたくさんの牧野があって、草原生植物の宝庫だったのかもしれない。

 

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日野川

周囲の田んぼは圃場整備がされているが、河川の付け替えは行われず蛇行している。写真の上の方の蛇行部では、蛇行跡部分が樹林となっている。気になる平地林・河畔林。行って見てみたい。

 

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繖山(きぬがさやま)

学生時代にこの山で山火事があり、その際、砂防緑化として上空からシナダレスズメガヤなどの緑化植物の種子が播種された(航空実播工)。播種後の植生を調べて保全生態学研究に載せてもらったけど、あのサイト、あれから15年ほどたってどう変わっただろう。

 

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彦根市彦根城、犬上川、滋賀県立大、琵琶湖

 

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彦根城

内堀の内側はさすがによく保存されてるけど、外堀と内堀の間は意外とたくさんのグランドがある。うち2つは中学校と高校のもの。

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鈴鹿山脈の稜線を境に、滋賀県側に雲があり、三重県側にない。鈴鹿山脈が雲を堰き止めているように見える。画面左奥の雲のかかっていない山は養老山地。

漢語っぽい名前、おぼえるの苦手

 なぜか僕は漢語っぽい名前の植物名を覚えるのが苦手で、モノと名前が一致しなくて、そのせいでモノの特徴も覚えられない。覚えられないものだから、僕を混乱に陥れるややこしい漢語っぽい名前の植物がどれほどあるのかもよくわからず、なんとなく10くらいはありそうな気がしていた。「琉球の樹木」をぱらぱらとめくりながらどれだけあるか数えてみたら、モクレイシ、コクテンギ、ギョクシンカ、コンロンカの4つくらいではないか。たった4つの漢語っぽい種名に翻弄されていただけだった。まとめて覚えてしまえばこれからは悩まなくて済むではないか。
 モクレイシは小判のようなのっぺりした葉っぱのニシキギ科のあいつだ。コクテンギは海岸沿いでよくみるときどき三輪生がまじるマサキっぽいニシキギ科のあいつだ。ギョクシンカは日陰で育てたコーヒーノキにも似たアカネ科のあいつで、シマミサオノキとも似てるやつだ。コンロンカはつるのアカネ科で蕚が白くなって黄色い★の花が咲くあいつで、ハナガサノキとも似てるやつだ。
もうだいじょうぶだ。きっと。いや、まだまだだ。アカネ科のぬかるみは深いぞ。