書物蔵

古本オモシロガリズム

古本乙女の東京破顔一笑――OLと小学生が織り成す地方古本文化

昨日の土曜(3/16)、『古本乙女、母になる。』の刊行記念イベントに行ってきた(´・ω・)ノ
あさ、家人の用事につきあっていたら、なんと遅刻ぢゃ〜ということになるので、やむを得ず、カミカゼタクシーに乗る。まだ赤なのに走り出したり、これは昭和風だったなぁ……。しかしそれでなんとか14:00ジャストの時間に間に合う。受付で股旅堂さんに「森さんは?」と聞かれたので「遅刻では」と言って古書会館7Fへ上がる。
会場は満杯(^-^;)
端っこのほうにMRくんが座っていたのでそこへ潜り込む。第一部1時間、第二部1時間があっという間に楽しくすぎた。

講演内容

第一部は対談相手の古ツアさんをふりきって、古本乙女が会館地下で開催中だった趣味展で拾った雑誌類を開陳するという流れに(^-^*)


彼女がいうにはやはり東京産の古本は特に雑誌の安さにおいて顕著だという。確かにそうかも(゜~゜ )
以前はわちきも一般風俗やキッチュ美術に多少の興味があったので、例えば戦前の『モダン日本』などを買ったものだけど、最近は図書館情報学に忙しくその余裕を失っているので彼女の古本魂に触れて反省す。
第二部は「母になる」メイキング話。とうとうエッセイストですねと言われ「体がかゆい〜」と彼女(^-^*) 「かっこつけたいが、本を作るのもマジ大変。子どもが寝てる時間しか自由時間がない」のだそうな。対談相手の古ツアさんの本(古本屋探訪記)を子どもに読み聞かせているといい出して万座の爆笑を誘っていた。また、古本屋が主人公の絵本を書いているとも。
下関の一箱古本市で古本を売った際には、おしゃれOLが闇市の本を、小学生が戦前詩集を買ったりしてくれて、地方にも尖った?文化好きがいるのが実感できたそう。
質疑で、古本を買わない時っていつ来るの?と聞かれ旦那がしんだ時というのでまた笑い。さらに質疑でファッションとの兼ね合いは如何?と聞かれ、おしゃれをして古本屋に行く自分が好きという回答。これは女性古本収集家ならではか?
その後サイン会が開かれたが、ひとりひとりに楽しく会話をしながらイラストサインを展開してた。これはなかなかできないよ(o・ω・o)

飲み会

慰労会が開かれるとてわちきも呼ばれた。というのも、わちき実は6年前の古本乙女対談相手だったのぢゃ。


森さんはMRくん、大尾ちゃんと喫茶店へ消えていったので、古書組合広報部のみなさんと待機してから会場へ。
飲み放題とてビールをたくさん飲む。カラサキ先生(古本乙女)には、我らの雑誌『近代出版研究』を勧める。聞いたら、ほしかったが地元でゲットする手段がなかったとのこと。やはり東京堂でベストセラー1位になっても日本全国津々浦々への普及にはおよばんかぁと、献呈することに(゜~゜ ) 研究2023年号の巻頭、横山茂雄座談を進めておく。フジケイ堂で英国悪魔術本を掘り出す話なんかもあるからね。古本乙女は奈良の古本屋も攻略しておられたので。
二次会についていこうかと一瞬思ったが、帰って深夜2時まで家人の病気対応でヘロヘロになったので一次会のみは正解だったのが後でわかった。

クレツェンドルフ大尉は自分だった…

ふとアマプラで2020年日本公開映画「ジョジョ・ラビット」を見た。当時ちと見たいと思ったのと、この前、兵務局さんがスペースで良かったと言っていたのを思い出したから。
熱心なヒトラーユーゲントの成長物語。悲劇下で喜劇調なところが「見せる」んだけど、実は影の主人公、ユーゲントのやる気のない教官が裏主人公だと後半で気づいた。
考えてみれば自分――書物蔵のことだYO!――も、前職でクレツェンドルフ大尉みたいなもんだったなぁと、最後の市街戦の場面で彼がコスプレ軍服で出てきた際に思ったことだった。

白ポストならぬ緑のポストに申告書を投函す

前日夜、家人に指導を受けながら入力したのでなんとか作成できた。
しかしシステム、動作といいインタフェースといい、酷いなぁ。あれでは普通の人は入力できんだろう。

雨の八角塔で喫茶する

土砂降り? 某社で打ち合わせをして、帰る段になり雨脚が強くなる。なればとて三田まで一緒に筋斗雲。
図書館で一時間ほど調べものをして――わちきは「調査」なる漢語が近代日本漢語らしいとわかった――いっしょにお茶でもすべぇとて八角塔に新しくできた喫茶店へ。
雨なれば客がほかに1組だけでじっくり話ができた。
業界のこと、某人のこと、某図書館のことなど。それにつけても自分の研究が停滞気味なのが恥ずかしい。本が当たったのが誤算であった。

検閲官のお仕事は

訳者が発表をするというので、専修大学へ聞きに行った。
ロバート・ダーントン [著]ほか. 検閲官のお仕事, みすず書房, 2023.12.

この前、出たばかりの時に買ったもの。忙しくて最初のところしか読んでなかったが、古今東西の検閲事例が載っていて面白い本。
この本では権威主義体制の下での検閲事務が列挙されているということで、しきりに大日本帝国憲法下での検閲事務が対比できるのではないか、と発表者たちは言っていた。「それはまさにここ十年以上、千代田図書館附属(?)委託本研究会がやってきたことだなぁ。比較は考えられていないけど」と思って聞いていた。考えてみれば、日本出版学会の歴史部会、その別動部隊が「日本出版史料」をやっていて、その流れの片鱗が委託本研究会へ流れ、そして別の片鱗が「近代出版研究」へ打ち寄せられているのかぁとも思った。日本の近代出版研究の流れについては、今度の4月に出る『近代出版研究』の巻頭座談会「「書物雑誌」と雑誌の「書物特集」を読むとあらあらわかるはず。
www.libro-koseisha.co.jp
発表者の先生たちがさかんに比較は面白いがダーントンだからできることで、ふつうは難しいよねと指摘していたが、二人目の質問者が、言語学における比較言語学と対照言語学の立場の違いを考えてダーントンの立場(観点)を考えるとよいのでは、と言っていて目からウロコだった。つまり「似ている」と素朴に感じられているものがあるとして、それが系統関係にあるのか、まったく関係ないのに思わず似ちゃったのか、という違いがあるだろうということ。ホモロジーとアナロジーの違い。
日本で検閲研究はずっと法制史や憲法学で行われてきた。
奥平康弘などの概説がある種、教科書として読めるものとしてあるのだけれど、
dl.ndl.go.jp
検閲の定義については、実はドイツ新聞学などもやった和田洋一がいちばんスッキリとした整理をしている。
cir.nii.ac.jp
それがいま言った委託本研究会によって、より歴史学っぽくなっていて、そこではまさにヒラ検閲官(まぁノンキャリ)が一生懸命まじめに出世のために検閲のお仕事に打ち込んだり、
第16号:ある検閲官の肖像 ―内山鋳之吉の場合― 2017年3月発行
趣味で出版調査をしたりしていたことが明らかとなっている。
第15号:〈文学のわかる〉検閲官 ―佐伯慎一(郁郎)について― 2017年3月発行
www.library.chiyoda.tokyo.jp
ダーントンと似たようなアプローチを日本でもとってたのが委託本研だったのだなぁと、これも聞きながら心に浮かんだことだった。
また、ダーントンは欧米ではいまだにそれなりに人気なのになぜか日本では翻訳されなくなっちゃってることもわかった。
などなど余剰の部分でいろいろお得な発表だった(前回はちがう方向の質問をてんこ盛りにした人がいてツラかったし)。
会場がとっても寒く、早々に飲み会へ逃げだしたが、そこでは出版史や古本趣味の話で盛り上がって楽しかった。

久しぶりに火星の庭へ


ホテルで朝食を食べながら、これならまだ快速に間に合うぞ、とて早々に仙台へ移動。

伝統ある金港堂本店は閉店すると帰ってから知ったが、仙台は意外にも古本屋に復活のきざしが感じられた。

歩いてまわって、途中、火星の庭で1冊買って、ランチにす。

森さんといっしょに来て以来だから何年ぶりだろう。はるかコロナ禍前ではなかったか。もしかして東日本大震災の前? あとでブログを検索してみやう。
めずらしく東京停車場に早めに着いたので新丸ビルを散歩。以前、よく飲みに来たことを思い出す。しかし、最近来てないから、だんだん記憶の彼方だなぁ……。