前日の夜、海鮮丼が食べたいという念が生じ悶々としていたため、早起きをして千葉へとバイクを走らせた。ソロツーリングはいつだって突然だ。そしてたいてい食い意地が先行する。
なんとなく『海ほたる』を通りたくなったのでこちらのルートから千葉へとアクセス。
海ほたるはこれといって特筆すべきものはなく「海に浮かぶSA」以上の感想はなかった。見渡す限りの海が見たくなったら来るといいのかもしれない。
行きは高速を使ったので二時間ほどで目的地に到着。
この店は一度いっしょにツーリングに行った方たちから教わったもので、海鮮丼がおいしいということだったのを覚えていたのだ。調べてみたら11:00~13:30までの短い間しか開店していない。健康上の都合、とのことだがそれでもやっていけるということはうまい店なのだろう。
余裕をもって10:30ごろには到着していたのでまったり待つ。普段から行列ができることがあるというので、念のため早めに到着するようにしていたのだ。
すると少し早くオープンとなり、席に通していただいた。行列のできる時短店というから厳しいマナーが求められるかと思いきや、店主も先代も給仕のおねーさんも超フレンドリーで逆に恐縮。
わたしはぜいたくに海鮮丼2200円とあら煮(小)300円をオーダーする。
海鮮丼は味噌汁と香の物と玉子焼きがついてくる。丼の上にはカンパチ、ハマチ、カツオ、イナダ、アジ、アオリイカ、ネギトロの七種類。ハマチとイナダの差は微妙なところだが、青物が好きなわたしにはたまらないボリューム感。丼の飯はふつうの白米と酢飯が選べる。わたしは酢飯を選んだが、ネタの量が多すぎて深刻なご飯不足に陥る。次に来ることがあったら、白米をプラスするとちょうどいいのではなかろうか。
カンパチの皮目を見てもわかるように角がキレキレの刺身は最高だった。十枚以上の分厚い刺身とアジ片身と濃厚アオリイカにネギトロで2200円を高いとはいわないだろう。回転寿司だったらこのクオリティと満足感は2200円では到底味わえない。おいしい。
また付け合せがにくい。香の物は新鮮でパリパリ。おそらくこの店の天丼にもよく合うだろうなあと容易に想像できる。玉子焼きはカスタードプリンのような舌触りでほんのり甘く、これもまた目先が変わっていてよい。
あら煮は数量限定でなくなり次第終了。甘くなくしょっぱくなく濃厚で、身がしっかりとした飯友にみアテにもいける。あるなら絶対に食べたほうがいい。煮魚っていうのはこういう味がいいんだよ、という感じの出来。
満腹になり、長尻もよくないと席を立とうとすると「今日は早くから来ていただいたのでコーヒーをごちそうさせて頂きたいのですが、いかがですか?」とのお声がけ。どれだけホスピタリティ高いの…!? しっかりホットコーヒーで整って店を出ました。じつによかった。
このお店を出てすぐのところに『安房神社』があるというので立ち寄ることにした。
おお…この白鳥居のなんと神々しいこと。
この神社。ただ事ではない神威があるな…!!(霊感等皆無)
と思わせる佇まいがあちこちにある。
なんたることか。ただの三角コーンですら神意を纏う。
そしてやたらと岸壁をくり抜いた。穴蔵のようなものがそこかしこに。神がいたりいなかったりのご様子に石好きのわたしも狼狽を隠せない。なにこれ。
なんだかわからないけどすごくいい。
理屈をすっ飛ばして畏敬を覚えさせる、宗教しては完成された美意識がすみずみにまで行き届いている。
賽銭を投げ入れるも俗な願いなど思いもつかず、ただただ浄財を収め給えと二礼二拍手一礼。
参道に敷き詰められた玉砂利を踏みしめ、シャリシャリと鳴る心地よい響きに今日という突発ソロツーの完成を感じて家路につくのだった。
[たぶんこれが初詣であったことに気がつくのは帰宅後であった]