12月の読書メーター

12月の読書メーター
読んだ本の数:15
読んだページ数:4281
ナイス数:109

ゆえに、警官は見護るゆえに、警官は見護る感想
マンションの駐車場で、遺体がタイヤに立てられて焼かれるという事件が立て続けに3件発生。マスコミも注目する中、猫の手も借りたい帳場は潮崎警視を捜査班に加える。一方武本は、留置場の職員として日々黙々と職務を果たす日々。ある日、武本の勤務する新宿に泥酔の上暴行を働いた罪で収監された柏木という男の挙動が気になった。そのことを潮崎に非公式に報告。すると柏木と連続放火事件の繋がりが発見される。…潮崎の武本愛は今回も本物。宇佐美と正木を加え、パワーアップした潮崎ファミリーを上層部もなんやかや認めているようです。
読了日:12月31日 著者:日明 恩
薬師寺涼子の怪奇事件簿 白魔のクリスマス (ノン・ノベル)薬師寺涼子の怪奇事件簿 白魔のクリスマス (ノン・ノベル)感想
時はクリスマス。新潟でスキーと温泉を楽しむお涼たちの近くでは大規模カジノ施設のプレオープンイベントが行われていた。開始早々、地震と雪崩で建物は崩壊。さっさと逃げ出す首相と外国の賓客。残されたお涼たちは吹雪と謎の敵に立ち向かう。…100歩譲って新潟にカジノを建てるのはいいけど真冬にオープンするか?恒例の生物兵器の考察もほぼないし、成田とやらもキャラ設定ブレブレだし黒幕は登場しないままだしその割に政府批判だけは筆が乗ってるしでツイートでもしとけや、という内容。惰性で読んでるけど次はもういいかな。
読了日:12月28日 著者:田中芳樹
このゴミは収集できません ゴミ清掃員が見たあり得ない光景このゴミは収集できません ゴミ清掃員が見たあり得ない光景感想
『かごめかごめ』の作者によるごみ清掃員体験記。芸人だけあって小説よりこういう文章の方が読みやすい。声を出して笑ってしまうところあり深く考えさせられるところあり役に立つところありでした。特にごみから見える貧困の様相はすごく考えさせられた(だからタバコ増税は貧者狙い撃ちなんだなと実感)。ところで「えのきバター」は本当に謎すぎるのでミステリ作家競作で「えのきバターの謎」アンソロジーでも作りませんかどうですか?…どんな事件なのか、詳しくは本書をお読みください!
読了日:12月28日 著者:滝沢 秀一
水槽の中水槽の中感想
高校生、井口遥はそれなりに努力して入学した高校生活を楽しんでいる。気になる異性はいるけれど、思うように進展しない、そんな日々。…漫画で言えば「あずまんが」などの日常ほのぼの系。遥の恋愛がメインの物語になるだろうけれど、それでも特に大きな出来事は起きない。物足りなさを感じてしまうかもしれないが、読み終えた後、もっと読みたかったという気持ちになるのはどうしてだろう。高校生の何気ない日常を淡々と描いているように見えて、作者の言葉の選び方(「ふいんき」とか)や物語上特に意味のない会話にはっとさせられた。
読了日:12月28日 著者:畑野 智美
金田一少年の事件簿外伝 犯人たちの事件簿(4) (講談社コミックス)金田一少年の事件簿外伝 犯人たちの事件簿(4) (講談社コミックス)
読了日:12月23日 著者:船津 紳平
乙嫁語り 11巻 (ハルタコミックス)乙嫁語り 11巻 (ハルタコミックス)
読了日:12月23日 著者:森 薫
3月のライオン 14 (ヤングアニマルコミックス)3月のライオン 14 (ヤングアニマルコミックス)
読了日:12月22日 著者:羽海野チカ
海街diary 9 行ってくる (フラワーコミックス)海街diary 9 行ってくる (フラワーコミックス)
読了日:12月22日 著者:吉田 秋生
ダンデライオンダンデライオン感想
SFの古典的名著『たんぽぽ娘』をモチーフに、時間移動する下野蓮司が幼い西園小春を救う物語。蓮司の意識だけが時間を飛び越える。つまり、大人の蓮司の体に子供の蓮司の意識が(同時に逆も)。その能力を活かして、蓮司は強盗殺人犯から幼い小春を守る。そして意外な真犯人とは。…大小のエピソード、小道具等々全てが伏線。映画が重要なモチーフとなっているがこの小説自体、SF映画を見ているような気がした。そこまで未来が分かっているなら、色々な悲劇を回避できたんじゃないかともどかしくなるけれど、そもそも未来は切り開くものだ。
読了日:12月19日 著者:中田 永一
凜の弦音凜の弦音感想
篠崎凜は弓道部に所属する高校生。連作短編集で、一話目は恩師宅で起こった殺人事件を凜が解決する物語。このままこの路線で行くかと思いきや、事件→解決の路線は残しつつ凜が弓道を通して成長する物語が続く。どちらの路線も悪くないけれど、だからこそ第三話は違和感が残った。凜のよき理解者であり凜に負けず劣らず弓道を愛する本多部長が大事な弓をそんなことに使うだろうか?自称専属カメラマンの中田が撮った映像が話題となりTV出演に至る経緯は今時の物語だなぁという感じがするし、その中で自分を見失わない凜の姿には素直に好感が持てた
読了日:12月19日 著者:我孫子武丸
戒名探偵 卒塔婆くん戒名探偵 卒塔婆くん感想
僕は金満寺の次男坊。私立校に通う平凡な高校生…だけど跡継ぎの兄貴(元ヤン)から理不尽な命令をされる。扶養家族は辛いね。そんな僕には、卒塔婆もとい外場というそこらの坊主も裸足で逃げ出すほどの知識豊富な探偵の友人がいる。名付けて、戒名探偵卒塔婆くんだ。お供えの高級和菓子を賄賂に今日もお知恵を拝借する。…寺の世界を露悪的に暴露していて、大変面白かった。最後の長編は取って付けた感がなくもないけど、引っ張ったところで続編は出ないのだろうから一巻で完結させたのは潔い。次があるなら大学生編とかがいいな。
読了日:12月16日 著者:高殿 円
監禁面接監禁面接感想
アラン、57歳。妻と二人の娘がいて幸せな人生…のはずだった。四年前に失業するまでは。そんな彼の元にある日、有名企業の人事部長募集の求人が届く。選考方法は、その企業の幹部を集め、偽のテロ事件を起こし、会社への忠誠心を見極めると同時に人事部長も決定するというものだった。アランはこの面接のためにありとあらゆる手段を使い、ライバルに差をつけようとする。しかし試験直前、この面接が出来レースであることを知ってしまった。進退窮まったアランが一発逆転を狙って仕掛けたものとは?
読了日:12月16日 著者:ピエール ルメートル
神さまを待っている神さまを待っている感想
水越愛、26歳。静岡出身。大卒で就活がうまくいかず、派遣社員として東京で一人暮らしをしている。派遣先から雇い止めにあった愛は就活がはかどらず、失業保険も切れ、手元の貯金が一か月分の家賃の金額を切ったところでスーツケース一つ持って外に出、ホームレスとなった。そして、転落していく。…作者は、主人公愛のごく普通の女子の感覚、例えば冒頭で鰺フライにソースをかけたいけど届かない、というものから出会い喫茶でもウリはしたくないという悩みまで、淡々とした描写で描くことで妙にリアルに感じさせる。
読了日:12月11日 著者:畑野 智美
雛口依子(ひなぐちよりこ)の最低な落下とやけくそキャノンボール雛口依子(ひなぐちよりこ)の最低な落下とやけくそキャノンボール感想
雛口依子の兄新太は転落事故(自殺?)で意識不明の後、記憶喪失から性格が180度変わり、好青年として蘇った。その兄を含めた雛口一家は色川という「叔父さん」の元に身を寄せる。…頭のネジが抜けている依子の一人称な上に時制があちこち移動するため筋を追いにくい。が、妙な勢いと文体でどんどん先に進んでしまう。この作家、こういうのも書けたのかととても意外。登場人物の誰一人マトモな人がいない小説だけれど、その分変な説得力があるのか物語上不自然な点が全く気にならないのがいい。こういう作品も書けたのか…と驚きでいっぱいでした
読了日:12月09日 著者:呉勝浩
つれづれ、北野坂探偵舎 物語に祝福された怪物 (角川文庫)つれづれ、北野坂探偵舎 物語に祝福された怪物 (角川文庫)感想
河野裕の作品の感想を書こうとするといつも自分語りになってしまうのは何故だろう。私はこの物語から、人は何故、小説を読むのか。物語を求めるのかということを読んだ気がする。どれだけ傑作でも読まれない小説に意味はない。それを実現するのが編集者であり出版社だ。私は物語が好きだ。小説を読むことが好き。作家のプロフィールに興味はないが、その作家が、この物語を書かずにいられなかったという動機がいつも気になる。
読了日:12月05日 著者:河野 裕

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11月の読書メーター

11月の読書メーター
読んだ本の数:14
読んだページ数:3787
ナイス数:104

大奥 16 (ヤングアニマルコミックス)大奥 16 (ヤングアニマルコミックス)
読了日:11月25日 著者:よしながふみ
七つ屋志のぶの宝石匣(8) (KC KISS)七つ屋志のぶの宝石匣(8) (KC KISS)
読了日:11月25日 著者:二ノ宮 知子
ちはやふる(40) (BE LOVE KC)ちはやふる(40) (BE LOVE KC)
読了日:11月25日 著者:末次 由紀
モディリアーニにお願い (3) (ビッグコミックス)モディリアーニにお願い (3) (ビッグコミックス)
読了日:11月25日 著者:相澤 いくえ
神は細部に宿るのよ(5) (ワイドKC)神は細部に宿るのよ(5) (ワイドKC)
読了日:11月25日 著者:久世 番子
金田一37歳の事件簿(2) (イブニングKC)金田一37歳の事件簿(2) (イブニングKC)
読了日:11月25日 著者:さとう ふみや
鬼灯の冷徹(27) (モーニング KC)鬼灯の冷徹(27) (モーニング KC)
読了日:11月25日 著者:江口 夏実
誰かが嘘をついている (創元推理文庫)誰かが嘘をついている (創元推理文庫)感想
放課後の理科室で、罰として居残り作文を書かされる5人。前科者のネイト、野球部のエース、クーパー、頭の中は彼氏のことで一杯なアディ、優等生のブロンウィン。そして、5人目。校内のゴシップサイト「アバウト・ザット」を運営するサイモンがコップから水を飲み、死亡した。サイモンの死後、サイトに4人の「秘密」がアップされ、決定的な証拠がないまま容疑者扱いされる4人。4人は警察やマスコミに追い回され、それまでの生活が一変してしまう。親友や親に見放された4人は真相を究明すべく結束する。真相は何なのか?
読了日:11月25日 著者:カレン・M・マクマナス
探偵は教室にいない探偵は教室にいない感想
五賞用、A。鮎哲賞受賞作。ウミこと真史には変わり者の幼馴染み、歩がいる。ある日、机に入れられていた不可解なラブレター事件をきっかけに歩に連絡をする。彼はどうやら学校にはあまり行っていないようだがウミの悩みを聞いて、解決してくれた。…日常の謎系。歩が解くのはウミと、彼女と仲がいい3人の友人のことだから、ページが進んでも歩が不登校な理由などの歩自身のことは語られない。歩と彼らは学校も違うしウミのこと以外で接点はないのだけど、歩が卑屈になるでもなく、彼らが不登校ということで歩を遠ざけるでなく普通に(続く)
読了日:11月15日 著者:川澄 浩平
少女を殺す100の方法少女を殺す100の方法感想
14歳の少女20人が教室で銃殺される「少女教室」生きている少女が5人揃うと作動する殺人ミキサー「少女ミキサー」アイドル候補生20人が部室で殺される『「少女」殺人事件』クソオヤジの遺言ビデオ「少女ビデオ 公開版」盂蘭盆村には年1度、14歳の少女が降ってくる「少女が町に降ってくる」…5つの物語に特に繋がりはないが14歳の少女、21人という数字は作者のこだわりか(7の倍数?)。「教室」では21人の少女が惨殺されるが「空」では救出され生きるために歩き出す。
読了日:11月15日 著者:白井智之
カササギ殺人事件〈下〉 (創元推理文庫)カササギ殺人事件〈下〉 (創元推理文庫)感想
作中作の結末(内容と行方。火事のシーンにはぞっとした)を引っ張りすぎ。アランや彼を殺した犯人よりスーザンを中心に描くならスーザンをもう少し魅力的に描いて欲しかった(アランの元妻に対する描写が酷い)。素朴な疑問。題名の仕掛けはあからさますぎて、世界中で他にも気づいていた人はいたのでは?と。傑作と名高い本作品に失礼なことを述べるが二つの物語を単体で見たら、良質ではあるが大絶賛というほどのミステリではない。これらを組み合わせることによって(長いけど)素晴らしいミステリになったのだと思う。
読了日:11月14日 著者:アンソニー・ホロヴィッツ
カササギ殺人事件〈上〉 (創元推理文庫)カササギ殺人事件〈上〉 (創元推理文庫)感想
外は雨。手元には好物のジャンクフードとワイン。そして大好きなミステリ。そんな幸せな夜を過ごすわたしこと編集者のスーザン。『カササギ殺人事件』は絶大な人気を誇る探偵アティカス・ピュントシリーズの最新作。時は1955年。家政婦の葬儀の場面で幕を開ける。しかし、物語は探偵が犯人を指摘する前に終わっていた。「こんなに腹立たしいことってある?」そんな彼女に、作者アラン・コンウェイの訃報が知らされる。自殺とされているが、納得できないスーザンは物語の結末とアランの死の真相を探る。
読了日:11月14日 著者:アンソニー・ホロヴィッツ
ドッペルゲンガーの銃ドッペルゲンガーの銃感想
灯里は現役JKミステリ作家デビューを目指しているが、受賞後第一作が書けず悩み中。ある日、警察官の兄に「何か面白い事件の話はない?」と問うと、しぶしぶ教えてくれた。兄を言いくるめて現場へ赴き関係者から話を聞く灯里。犯人は誰?と悩んでいると急に兄が変な動きをし始めて、全く別人の口調で喋り出した!一体、誰?…魅力的なミステリ!提示される謎がいい。施錠された蔵の中に突然現れた死体、離れた場所でほぼ同時に発射された弾丸、雪密室!!ミステリファンなら涎が出そうでしょ?
読了日:11月10日 著者:倉知 淳
インド倶楽部の謎 (講談社ノベルス)インド倶楽部の謎 (講談社ノベルス)感想
火村アリス長編。前世で繋がりのあった7人が集まる「インド倶楽部」で前世から死ぬ日までが記されているという「アガスティアの葉」によるリーディングが行われた直後、メンバーが相次いで殺された。前世を語るメンバーに戸惑いつつ、アリスは火村と共に捜査を進める。…「インド倶楽部」はインド版「ぼく地球」と読み替えれば、納得…か?偶然の要素が多いがそもそも犯人は完全犯罪を目指してない。終盤、妙に抒情的で火村アリス最終回?というような演出が気になったがあとがきに特に記載はないからまだ彼らには会えると思っていいのか。一安心。
読了日:11月04日 著者:有栖川 有栖

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10月の読書メーター

10月の読書メーター
読んだ本の数:12
読んだページ数:5107
ナイス数:83

幽霊たち幽霊たち感想
継実は妻を亡くしたことで酒に溺れ、入院。そこに刑事が訪ねてきて曰く、ある殺人犯が犯行は認めているが動機については黙秘の後、継実に聞けと言う。しかし、継実は加害者も被害者も知らない。すると、継実に取り憑いている幽霊の里沙が、四十年前のことを思い出せと言う。自分と従姉妹一家の奇妙な関係、叔父の拳銃乱射事件、不審火のこと。殺人事件の動機はどうやらそこにあるらしい。……過去編がメインの物語な訳だが、登場人物といい、起きた出来事といい、濃すぎてお腹一杯。西澤ワールド全開の物語でした…ちょっと胸焼け。
読了日:10月31日 著者:西澤 保彦
マトリョーシカ・ブラッド (文芸書)マトリョーシカ・ブラッド (文芸書)感想
彦坂刑事は五年前、警護の訴えを握り潰した。相手が、薬害事件の加害者側の人間で、自らも難病の子を抱え、他人事とは思えなかった。匿名の通報で山中から警護の対象であった香坂が発見される。五年前の訴えを無視したことを後悔する彦坂であったが、その後、次々と薬害事件の関係者が殺される。しかし、上層部から捜査に圧力がかかる。…色々な要素が詰め込まれ過ぎて却って焦点がぼやけている。横山秀夫を目指したのかもしらんが正直、力量不足。警護の訴えを退けたこととその後の刑事たちの苦悩のバランスが悪い。刑事達が多すぎてそれぞれの立場
読了日:10月29日 著者:呉勝浩
忘れられた花園 下忘れられた花園 下感想
(続き)は判明する。が、それぞれの登場人物の行動に疑問点があったり、三代に亘る物語のため登場人物が誰が誰やら分からなくなるところがあったりと読後もやもやが残る。まず、カサンドラが独立した時点でネル自らイギリスに行かなかったのは何故か。イライザがブローチを忘れること自体不可解だしその後も取りに行くチャンスはなかったのか?アデリーンはローズ亡き後イライザとアイヴォリーを亡き者にしようとするが、マウントラチェット家が断絶してもいいのか?等々。地図はいらないから人物一覧が欲しい。
読了日:10月28日 著者:ケイト・モートン
忘れられた花園 上忘れられた花園 上感想
カサンドラはオーストラリアの祖母ネルの元で暮らしていたがネル亡き後、叔母たちからネルが両親の実の娘ではなかったことを知らされる。また、祖母はカサンドラにイギリスのコテージを遺贈。「いずれその意図を理解してくれることを」との遺言に従い、コテージのある村へ向かう。カサンドラは4歳だったネルが何故、たった一人でオーストラリアに行きの船に乗ることになったのか、その秘密を解き明かすべく奔走する。…物語はカサンドラ、ネル、ネルの叔母のイライザパートが次々に交代する。最終的にネルが一人で航海することになった経緯(下へ)
読了日:10月28日 著者:ケイト・モートン
ベルリンは晴れているか (単行本)ベルリンは晴れているか (単行本)感想
1945年のベルリン。17歳のアウグステは語学を活かして米軍の食堂で働いていた。そこへソヴィエトの軍人が訪れ、かつての恩人、クリストフの死亡を告げ、参考人として彼女を連行する。アウグステは犯行を否認し、クリストフの甥エーリヒに訃報を伝えたいと訴える。甥をも疑うソ軍は土地勘のあるコソ泥の元俳優カフカを同行させ、戦後の混乱が残るドイツの街へ人探しの旅に出る。…これが現代パートで「幕間」に過去編、アウグステの幼少期が描かれる。……うーん、惜しい!クリストフ殺人事件の真相を追う旅の物語かと思いきや、ドイツが(続く
読了日:10月23日 著者:深緑 野分
誹謗 (ハヤカワ・ミステリ文庫)誹謗 (ハヤカワ・ミステリ文庫)感想
法医人類学者のリネアは白骨死体を鑑定し、イラク人であると結論づける。大勢いる難民の一人だろうと捜査に乗り気でない警察に業を煮やし、白骨の復顔をしてその顔をマスコミに公表。するとその顔を見て震え上がるイラク帰還兵ヨーナス。同様にイラク人の死を知った闇ビジネスマンのラヴは事態に対処すべくプロの殺し屋を雇う。それぞれの思惑が絡み合った時、事件は起こる。…骨を愛するリネアがこの事件を独自で追う程の情熱が見えてこない。アレキサンドラとリネアが親友というのは流石にご都合主義ではないか。プロの殺し屋がしょぼい。
読了日:10月18日 著者:カーアン・ヴァズ・ブルーン,ベニ・ブトカ
ふたえ (祥伝社文庫)ふたえ (祥伝社文庫)感想
転校生の手代木麗華は教師を敵に回し、生徒にも言いたいことを言う性格で周りからは触らぬ神に…、と恐れられていた。手代木は修学旅行で、クラスの余り者たちと同じ班(通称、ぼっち班)になる。彼女は四日間京都漫画ミュージアムで過ごすことを強引に決める。手代木は二日目、教師の目を盗んでミュージアムを抜け出した。彼女が向かった先で事件は起こる。…長々とあらすじを書いてしまったが、これでもこの小説の要素の20%程度を説明しただけ。連作短編でぼっち班の面々の内面が描かれる
読了日:10月13日 著者:白河三兎
オスロ警察殺人捜査課特別班 アイム・トラベリング・アローンオスロ警察殺人捜査課特別班 アイム・トラベリング・アローン感想
森で6歳の少女が殺され、木に吊るされた状態で発見された。ある事件で左遷されていたホールゲルはこの事件の捜査の指揮をとるためオスロの本部に戻るよう命じられる。彼は同じ事件で休職中の同僚ミアを捜査班に加えるべく迎えに行く。彼女はこの事件が連続殺人になることをすぐに見抜いた。ミアの言葉を裏付けるように第二の犠牲者が発見、更に二人の少女が行方不明となる。ミアやホールゲン、新聞記者などに暗号めいた連絡をして、警察を翻弄する犯人。そしてついにホールゲンが目に入れても痛くない孫娘のマーリオンがターゲットに。(続く)
読了日:10月08日 著者:サムエル・ビョルク
兄弟の血―熊と踊れII 下 (ハヤカワ・ミステリ文庫)兄弟の血―熊と踊れII 下 (ハヤカワ・ミステリ文庫)感想
再び前代未聞の強奪事件を企てる。兄弟に「協力」を申し出るが、拒絶。父親は酒を絶ち「人は変われる」と宣言。しかしレオは巧みに父親に近づき「家族の絆の再生」をエサに、自らの計画に引きこんでいた。
そして、満を持してレオは事件を起こす。レオはヨンに偽の手掛かりを仕込んでおり、まんまと引っ掛かるヨン。しかし、ヨンは「おまえがおれの兄貴を巻きこむなら、おれはお前の弟を巻きこんでやる」と強引に三男のヴィンセントを拘引する。事件は成功し、後は逃亡するだけとなったヨンとサム。(続く)
読了日:10月07日 著者:アンデシュ ルースルンド,ステファン トゥンベリ
兄弟の血―熊と踊れII 上 (ハヤカワ・ミステリ文庫)兄弟の血―熊と踊れII 上 (ハヤカワ・ミステリ文庫)感想
物語はレオの出所の場面から始まる。レオの出所後すぐ、現金強奪事件が起きる。ヨンとエリサは苦悩するドヴィニヤック家の人々を巻き込みながら捜査を開始する。事件にレオの関与を感じるヨンだが、レオにはアリバイがあった上、ヨンの実兄サムが関与していることが分かった。実兄とのことを同僚には隠し通し、単独捜査に突っ走るヨンへの不信と疑念を募らせるエリサ。一方レオは、ヨンの実兄サムと刑務所で知り合い、共にヨンへの復讐を誓い合っていた。レオは「存在しないものを奪う」と宣言。(下へ続く)
読了日:10月07日 著者:アンデシュ ルースルンド,ステファン トゥンベリ
片桐大三郎とXYZの悲劇 (文春文庫)片桐大三郎とXYZの悲劇 (文春文庫)感想
往年の大スター片桐大三郎は耳が聞こえなくなり引退。その後は社長業の傍ら、謎解きにも精を出す。…耳の聞こえない往年のスター、凶器は毒針にマンドリンと分かりやすくクイーンの3部+1作への愛に溢れた短編集。謎解きも毎回趣向が凝っていてミステリーとしてとても読み応えあり。更に、毎回片桐大三郎の伝記が挿入され、探偵(片桐)が皆を集めてさてと言う前には自らの芸能人生で特に印象的だったエピソードを披露するという片桐ファンにはたまらない一冊(片桐大三郎は架空の人物…のはず)。最後のは特にヤラレタ!
読了日:10月06日 著者:倉知 淳
弁護士アイゼンベルク (創元推理文庫)弁護士アイゼンベルク (創元推理文庫)感想
女子大生が殺され、容疑者の弁護を担当することになった女弁護士ラヘル・アイゼンベルク。容疑者は今はホームレスだが、元は物理学者であり元彼のハイコ・ゲルラッハだった。ラヘルはゲルラッハの無実を信じて真犯人を探すが彼は何かを隠している様子で弁護を妨げる行動に出る。一方、コソボからドイツに向かう女性とその娘の逃亡劇が過去の出来事として挿入される。二つの物語はどこで交わるのか。真犯人は誰なのか?…主人公の女弁護士に魅力を感じない。気に入らない受付嬢を気分で解雇しようとしたり、潔癖症でこだわりが強かったり。(続く)
読了日:10月02日 著者:アンドレアス・フェーア

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9月の読書メーター

9月の読書メーター
読んだ本の数:23
読んだページ数:7339
ナイス数:188

ビブリア古書堂の事件手帖 ~扉子と不思議な客人たち~ (メディアワークス文庫)ビブリア古書堂の事件手帖 ~扉子と不思議な客人たち~ (メディアワークス文庫)感想
時は2018年秋、栞子と大輔は結婚7年目。娘の扉子は「本が友達」で本を読むことや本に関わる話が大好き。大輔不在の折、栞子さんが娘にせがまれるまま語った本にまつわる4つのお話。…このシリーズ、面白くて大好きだけど構成がいまいち私には合わなくて長編になると辛かった。ので、今回は語り手が各章毎に違うため、叙述的なトリックの仕掛けもなくシンプルで読みやすかった。あとがきによると、またこういう形で「ビブリア」シリーズを続けるみたいなので、今回のシンプルな感じで是非お願いします。
読了日:09月29日 著者:三上 延
影の子 (ハヤカワ・ミステリ1931)影の子 (ハヤカワ・ミステリ1931)感想
舞台は1975年東ベルリン。いわゆる「ベルリンの壁」近くで身元が分からないよう損傷された少女の遺体が発見される。現場にはシュタージのイェーガーがいて、異例ながら人民警察のミュラーに捜査を命じる。調べるうち、現場に施された偽装工作の数々に気付くが遺体の身元につながる手掛かりはつかめない上に捜査に妨害が入る。捜査の章と交互に、9か月前の青少年労働施設で働くイルマたちの様子が描かれる。教師であるミュラーの夫が一時、派遣されていた施設だった。この二つが繋がった時、現れる驚愕の真実とは。(続く)
読了日:09月29日 著者:デイヴィッド・ヤング
ホワイトコテージの殺人 (創元推理文庫)ホワイトコテージの殺人 (創元推理文庫)感想
舞台は1920年代のイギリス。小さな村の「白亜荘」で客人のクラウザーが何者かに銃殺される。居合わせた息子の要請で臨場したチャロナー警部が捜査を進める。被害者は関係者全てから憎まれており、誰が犯人でもおかしくなかった。さて、犯人は誰?…牧歌的でほのぼのしたミステリと感じた。婦人の秘密が暴露されたり、舞台がフランスに飛んだり、国際的な犯罪組織が絡んできたり、警部の息子ジェリーとノーラのロマンスがあったりと、盛りだくさんで読者を飽きさせない。解説にある通りフーダニットに関してはアンフェアだけれども充分楽しめた。
読了日:09月28日 著者:マージェリー・アリンガム
死刑囚 (ハヤカワ・ミステリ文庫)死刑囚 (ハヤカワ・ミステリ文庫)感想
スウェーデンで暴行事件を起こし逮捕されたジョン。彼の身元を調べると、6年前、死刑執行前に病死したはずの元死刑囚だった。それが何故、北欧の国で暮らし、妻子まで設けていたのか。米国は身柄の引き渡しを求め、死刑を容認しないスウェーデンの外務省は対応に憂い、エーヴェルトらに捜査の圧力をかける。捜査員は取り調べに妻子を同席させる異例の措置を取るなどしてジョンと信頼関係を築き、ジョンの証言を得る。しかし肝心の、米国からの脱出方法は本人も知らない。一方、米国では被害者の父親がジョンの送致を急がせていた。(続く)
読了日:09月27日 著者:アンデシュ ルースルンド,ベリエ ヘルストレム
はじめてのひと 3 (マーガレットコミックス)はじめてのひと 3 (マーガレットコミックス)
読了日:09月26日 著者:谷川 史子
図書館の殺人 (創元推理文庫)図書館の殺人 (創元推理文庫)感想
閉館後の図書館で大学生が殺された。凶器は本。死体の周りには棚から落下した本が散乱。そして本を用いたダイイングメッセージ!高校生探偵、裏染は被害者の従姉妹であり図書館常連仲間であった有紗と共に捜査を開始。一方、袴田妹こと柚乃は期末テストに苦しんでいた…。…本好き、図書館好き、ミステリー好き全ての好事家の心を擽る仕掛けが今回も満載。今回も小ネタやコントと本文のバランスが本当に絶妙。なんだそんなことと思われるかもしれませんが、これができる作家は殆どいません。さて本文は、全てが謎の解決に向けて動いている。
読了日:09月25日 著者:青崎 有吾
ハーフウェイ・ハウスの殺人 (祥伝社文庫)ハーフウェイ・ハウスの殺人 (祥伝社文庫)感想
健一はある大企業の社長の妾腹の子。ある日父から後継者になることを打診される。正妻の娘彩子が負傷、回復が見込めない状況だからだ。健一は彩子に会おうとするが父が所在を隠している。独自に探し始めると、箱根の山中に父が出資している企業の研究所を発見する。→別パートは「アヤコ」一人称で山中の『ハーフウェイハウス』で暮らす奇妙な少年少女たちの生活が描かれる。彼らは一体何者なのか…。…題名に『殺人』とあるが殺人事件は物語上重要ではない。
読了日:09月24日 著者:浦賀和宏
R.E.D. 警察庁特殊防犯対策官室 ACTIII (新潮文庫nex)R.E.D. 警察庁特殊防犯対策官室 ACTIII (新潮文庫nex)感想
REDフランス編。人身売買編完結…かな。この作品のために作者はフランス出張行ったんでしょうか。新潮社…作中ではヤクザにされてるけど…太っ腹だなぁ。フランスが取引相手とはいえ日本人がパリ周辺を破壊しまくっていいのか。あと、武器を持ち込みすぎ。外交官特権にもほどがある。フランスから見たら戦争じゃん。女ボスもあっさり尻尾を出しすぎ。とまあ突っ込みどころはいっぱいあるけど、勢いで読むものだと思うので、突っ込むだけ野暮なんでしょうね。
読了日:09月23日 著者:古野 まほろ
健康で文化的な最低限度の生活 (7) (ビッグコミックス)健康で文化的な最低限度の生活 (7) (ビッグコミックス)
読了日:09月22日 著者:柏木 ハルコ
うどんの国の金色毛鞠 (BUNCH COMICS)うどんの国の金色毛鞠 (BUNCH COMICS)
読了日:09月22日 著者:篠丸のどか
罪のあとさき罪のあとさき感想
楓は東京で働いていたが、元交際相手からストーカーに遭い、退職。今は横浜の喫茶店で働いている。ある日、家具店で中学の同級生卯月と再会する。彼は中学生当時、教室で同級生を殺した過去がある。卯月と楓は急速に親しくなるが、そのことで親友の芽衣子とは疎遠になってしまう。…楓は頼りなく見えるけど芯は強くて言うことはきちんと言えるし、決めるべきことも決められる女性。そんな楓が愛した卯月だから、大丈夫!という気がした。被害者がどうあれ、卯月のしたことが許されるわけではない。
読了日:09月17日 著者:畑野 智美
人間じゃない 綾辻行人未収録作品集人間じゃない 綾辻行人未収録作品集感想
単行本未収録の短編を集めたものだけどシリーズの番外編は文庫化の際に収録すればいいのに。それはともかく、喫茶店に異様に顔色の悪い女がいる『蒼白い女』が短いけれど怪談らしい怪談でとてもよかった。『洗礼』はいかにも大学生が犯人当て用に書いた趣のシンプルな短編なので入れ子構造にしなくても…(巨匠、綾辻が今更これを書いたというのがそんなに恥ずかしいか?)。『B04号室の患者』は、終盤の6行の挿入部がとてもいい(逆に冒頭はくどい。主人公が精神病院に入院していることがわかればいい)。
読了日:09月17日 著者:綾辻 行人
わたしの本の空白はわたしの本の空白は感想
病室で目覚めた南は記憶を失っていた。夫と名乗る慎也のことも思い出せずその態度の端々から不信感が募る。そんな南が夢に見るのは美しい男性。自分は確かにこの人を愛していた。けれど実在するのかも思い出せない。南が真実を知った時、選んだ人は、誰か…?…騙された記憶を失ったら愛した記憶だけが残ったということ?2千万も騙し取られてもまだ愛しているっていう気持ちがどうしても理解できず。慎也もろくでもない男だけど、弟の尻拭いで結婚させられて彼も被害者なのに、南の事を愛したところは晴哉よりマシなんじゃ?
読了日:09月13日 著者:近藤史恵
錆びた滑車 (文春文庫)錆びた滑車 (文春文庫)感想
女探偵の葉村晶は老婆同士の諍いに巻き込まれ負傷する。同じく怪我を負ったミツエは交通事故の後遺症(事故前後の記憶喪失と身体障害)が残る孫ヒロトの世話をしていた。ミツエは葉村を所有するアパートに住まわせる代わり、孫の世話を依頼する。想像以上のボロアパートで寒さに耐えつつ入眠しかけた矢先、アパートが火事になりヒロトは死亡、ミツエは重体となる。葉村は生前のヒロトから、交通事故当日、何故、父(事故で死亡)と遊園地の近くにいたのかを調べて欲しいという依頼を受けていた。火事の原因にも不審な点があり、葉村は独自に調査する
読了日:09月11日 著者:若竹 七海
友達以上探偵未満友達以上探偵未満感想
名探偵志望のJKももとあおはこれまでにも二人で様々な事件を解決。桃青コンビとして多少名が知られていた。二人が遭遇した二つの事件と桃青コンビ発足のきっかけとなったJC時代の事件の3つの物語。…残念ながら(?)百合ものではない。二人のJKと刑事という構成は貴族探偵よりはドラマ向き(広瀬すずと橋本環奈と竹内涼真あたりか)そういや版元角川だ。JC編の人物の譬えのマニアックさはちょっと面白かったけど、全体的にギャグ貧乏(ⓒ伊集院光)というか最早オヤジギャグの域なのか表現がくどくそこまで面白くない蛇足の部分が気になる
読了日:09月10日 著者:麻耶 雄嵩
十二人の死にたい子どもたち十二人の死にたい子どもたち感想
或る廃病院で集団心中しようと「死にたい子供たち」が集まった。しかし12人集まるはずの会場には13人いて一人は意識不明。この彼は何者でどうやってここに来たのか?不可解な状況の謎を解こうと子供たち議論を重ね、やがて導き出された結論とは。…閉鎖状況ものと言えば初期の古処誠二石持浅海で、状況設定はとても似ているが、これはミステリとして読まない方がよいのだろう。12人もいると一人ひとりのエピソードや動機の掘り下げがあっさりで、真実かどうかも怪しく思ったがそこまで穿って読まなくてもよかったようだ。
読了日:09月08日 著者:冲方 丁
竜と流木竜と流木感想
日米ハーフのジョージは南国の島で出会った生物「ウアブ」に魅せられ、個人的に飼育と研究をライフワークとしていた。ある日、生育地が開発され、住むことができなくなるウアブのために、ジョージたちは保護クラブを結成、話し合いの結果、隣島のリゾート施設「ココスタウン」内の池にウアブを移住させた。しかしウアブは大量死してしまう。落胆するジョージたちを尻目に、ココスタウンでは謎の黒いトカゲのようなものが現れ、噛まれた人が死亡する事件が相次いだ。黒いトカゲを捕獲すると、驚愕の事実が判明した…!
読了日:09月07日 著者:篠田 節子
極夜の警官 (小学館文庫)極夜の警官 (小学館文庫)感想
『雪盲』に続くアイスランドを舞台にしたミステリ第二弾。アイスランド(=欧州の北区)の更に北、シグルフィヨルズス。住民は皆顔見知りで玄関には鍵もかけない。そんな小さい地域で二人しかいない警官のうち一人が銃殺された。もう一人の警官アリ=ソウルは事件後もこの地で暮らしていかなければならないため、関係性を考慮すると被疑者の取り調べも慎重に行わなければならない。…物語と並行して挿入される精神病院の入院患者による日記が物語に不気味なBGMを与えている。この手記が誰のものなのか、気づいた時に事件の全容が浮かび上がる。
読了日:09月07日 著者:ラグナル ヨナソン
東京會舘とわたし(下)新館東京會舘とわたし(下)新館感想
(上から続き)そこに佇み続けるのではないかと思う。
あとがきはあっさりしていたが、別著のエッセー集で本作品にかける思いを語っているのでそちらも併読するとよいと思う。
上下巻だけど、一話完結の連作短編で読みやすい。東京會舘と一緒に時代を追いながらタイムスリップしたような気持ちになった。思わず涙腺が緩んだのも一度や二度ではない。
恥ずかしながら私は本書を読むまで東京會舘という建物を知らなかった。でも今は行ってみたくて仕方がない。…まずはテーブルマナーから、習っておこうかしら。

読了日:09月05日 著者:辻村深月
東京會舘とわたし(上)旧館東京會舘とわたし(上)旧館感想
エッセーのような題名だけど、東京會舘を舞台にした小説。上巻は旧館、大正から最初の建て替えまで。下巻は新館で建て替え以降。この小説を描くにあたり作者は相当取材しただろう。多くのエピソードを取捨選択したことが伝わってくる。それは、東京會舘が、多くの努力を重ねながら、それをお客様に悟られずいつもいつでも最高のサービスを提供することと似ている気がする。人生で節目となる時は誰にとってもそう多くあるものではない。例えば、結婚。その時代に流行った曲で記憶が蘇るように、東京會舘は場所の記憶装置としていつまでも(下へ続く)
読了日:09月05日 著者:辻村深月
深泥丘奇談・続々 (幽BOOKS)深泥丘奇談・続々 (幽BOOKS)感想
架空の京都の街を舞台にしたシリーズ第三弾。怪談というより幻想小説か。…前から思ってたけど、好みはあると思うけど、文章が幻想小説向きじゃないと思う。物語も、頭のいい人が、気が狂った振りをしている感じ。徹底的に無意味になれなくてどこか整合性を求めてる(年表とか作っちゃうあたり…)。…装丁がとてもいい。小説に食い込んだ挿画は勿論あとがきが終わった後でまるで表紙のようなカラーのページが現れることで、ふりだしに戻るというか、今、読み終えたこの本の記憶が消えてしまいそうになる。そう、まるでこの小説の主人公みたいに…。
読了日:09月02日 著者:綾辻 行人
猿の見る夢猿の見る夢感想
薄井はアパレルメーカーに勤めるサラリーマン。元は銀行員でいわゆる出向組。妻史代は専業主婦。長男は結婚して飛行機の距離に在住。社内では会長派と見られているが世代交代を見据えて動く必要はある。悩みは次男がニートなことと、愛人の美千代の欲求に応えるにのがきつくなってきたこと。そんなある日、帰宅すると家に見知らぬ老婆が寛いでいた。妻が呼んだ占い師らしい。…家庭板を小説化したような印象で登場人物の誰にも共感できず最後まで読み通せなかった。人間たちのエゴが衝突して揉める姿を猿が笑っていた、という物語と理解しました。
読了日:09月02日 著者:桐野 夏生
許されざる者 (創元推理文庫)許されざる者 (創元推理文庫)感想
引退した犯罪捜査局の長官ヨハンソンはある日脳梗塞に倒れる。幸い発見は早く順調に回復していた。そんなある日、主治医の亡父が、25年前の少女強姦殺人事件の犯人を知っていたようだと相談を受ける。ヨハンソンは長官時代の人脈をフルに使って捜査を始めるが事件は既に時効になっている。…最後の1文字まで堪能した。優れたミステリであることは前提で、介護小説としても読んだ。ヨハンソンは脳梗塞後、感情が抑えられなくなったり、好物を我慢したりしなかったり、リハビリに励みつつ進展のなさに苛立ったり。(続く)
読了日:09月01日 著者:レイフ・GW・ペーション

読書メーター

>8月の読書メーター

8月の読書メーター
読んだ本の数:13
読んだページ数:3054
ナイス数:67

消えない月消えない月感想
マッサージ師のさくらはある日、常連客の松原から告白され、交際することになった。しかし付き合ううち、松原に対する違和感が増大していきある日LINEで別れを告げる。松原はそれを認めずストーカー行為が始まった。…胸糞!同僚の木崎の言うことも一理ある。さくらの対応もよくないところはあった。でもそうするとこの小説成り立たない。さくらが逃げても逃げても追ってくる松原を月に例える描写が秀逸過ぎて吐き気がするほど。こういう、頭は悪くないのに言葉や理屈が一切通じない人って本当に怖い…。
読了日:08月29日 著者:畑野 智美
天国通り殺人事件 (創元推理文庫)天国通り殺人事件 (創元推理文庫)感想
元刑事の「レミング」が一人呑んでいると絡んでくる男がいた。失恋の痛手も重なり思わず挑発に乗ってしまう。するとそこに小男が現れ、狙撃。結果、元刑事は被害者と加害者の中間地点に佇んでいた。追われるレミングは真犯人を見つけられるのか。オーストリア発ミステリ。…独特の持って回った言い方の文章に慣れず。レミングは無実だけど、捜査手続き上、手記だけで冤罪晴れるのか。物語上のキーパーソンが名前だけしか登場しないのもいい余韻だった。ただ、この作品に限らないけど、警官が悪役とか、犯人がサイコパス野郎とかはもうお腹一杯…。
読了日:08月28日 著者:シュテファン・スルペツキ
ブルーローズは眠らないブルーローズは眠らない感想
マリアと漣の刑事コンビが青バラの作出に成功した博士を秘密裏に捜査していた矢先、当の博士が密室状態の温室から生首の状態で発見される。一方、山中の一軒家の主はある日、虐待を受けていた家出少年を保護する。しかしそれは悲劇の始まりだった。…見取り図よりも人物一覧が欲しい。化学式まで持ち出した青バラの蘊蓄、必要?動機に対して手段が迂遠過ぎるし、そもそも過去の事件も目的と手段が釣り合ってない。密室は遺伝子操作で一晩で急成長する蔦だった、ってオチかと思った。青バラは事件と全く無関係のマニアが盗むという想定はないのか。
読了日:08月28日 著者:市川 憂人
豆腐の角に頭ぶつけて死んでしまえ事件豆腐の角に頭ぶつけて死んでしまえ事件感想
何だこのタイトル…?表題作は舞台設定に面食らうものの全てはこの題名の通りの殺人事件を成立させるつもりだったのだと納得。『変奏曲.ABC』はホラーのような意外な展開に驚愕。クリスティー女史も喜びそう。最後は安心の猫丸先輩。トリックに意外性はないけど、人間離れした佇まいと一瞬で周りの人をメロメロにしちゃう手管は猫そのもの。また会いたいです。
読了日:08月26日 著者:倉知 淳
恋敵と虹彩~イエスかノーか半分か番外篇2~ (ディアプラス文庫)恋敵と虹彩~イエスかノーか半分か番外篇2~ (ディアプラス文庫)感想
竜起にライバル現る編。中途採用の恵の世話を任された深。恵は竜起の幼なじみな上に色々拗らせてて、実は竜起を追いかけて旭テレビに入社したことがわかった。優秀な恵に深は次第に信頼を寄せていく一方、恵は必要以上に深になついてしまう。竜起とのことを言えない深は悩みつつ、恵の気持ちも分かって完全に無下にはできない。そのことが竜起にばれてしまう…!なっちゃん、小悪魔!そして竜起の「持ってる」感は恵でなくてもムカつくわ!何そのメロス。いやそこがいいアンビバレント。計と潮は今回割と美味しい役で登場します。
読了日:08月25日 著者:一穂 ミチ
ワカコ酒 11 (ゼノンコミックス)ワカコ酒 11 (ゼノンコミックス)
読了日:08月25日 著者:新久千映
ドラゴンファイア Arknoah 2 (集英社文庫)ドラゴンファイア Arknoah 2 (集英社文庫)感想
アークノアの世界に新たな異邦人マリナがやってきた。と同時に生み出された怪物は火を吐き攻撃をする。リゼたちは討伐に向かい、氷の城で対決する。
陰キャの主人公が世界に絶望しながらも最後には「それでも世界と繋がろうとする」系の安っぽい物語に「もうそういうのうんざりなんだよ」と思ってた。そこは流石、乙一。いい意味で読者を裏切ってくれる。世界の秩序を守るために異物を排除するリゼは何者なのか。アールの行方も含めて続編が楽しみで仕方ない。
読了日:08月22日 著者:乙一
彼女は一人で歩くのか? Does She Walk Alone? Wシリーズ (講談社タイガ)彼女は一人で歩くのか? Does She Walk Alone? Wシリーズ (講談社タイガ)
読了日:08月19日 著者:森博嗣
とりかえばや物語 (文春文庫 た 3-51)とりかえばや物語 (文春文庫 た 3-51)感想
さいとうちほの漫画版を読んだので脳内補完されて困った。さて、夏雲は自らの欲望に忠実で春風からの評価は散々だが、複数の妻を持つのはこの時代普通のことだし、子供の養育もちゃんとするから実は悪い奴でもない。どちらかというと、男に戻った秋月の方が酷いのでは。あちこちで子供を作っては放置したりと今の価値観では図れないところも多い物語だけど、栄華を極めていた春風が、出世を断念せざるを得なかったのは「出産」というところは千年前も今も変わらないというのは、多分、名もない作者も予想しなかった皮肉じゃないだろうか。
読了日:08月18日 著者:田辺 聖子
銀魂―ぎんたま― 74 (ジャンプコミックス)銀魂―ぎんたま― 74 (ジャンプコミックス)
読了日:08月10日 著者:空知 英秋
ちはやふる(39) (BE LOVE KC)ちはやふる(39) (BE LOVE KC)
読了日:08月10日 著者:末次 由紀
ブラックボックス化する現代 変容する潜在認知ブラックボックス化する現代 変容する潜在認知感想
印象に残った箇所→p79「相当高い確率で、原発過酷事故の危機はまたくるだろう。その時に、やはり相当高い確率で最善の対処はできないだろう。そして相当高い確率で、当事者がまた国民に事態を隠蔽するだろう。この一連の予測に筆者は、認知神経学者としてのアイデンティティを賭けてもいい」p165からの・AIに「意識」はあるのか。そもそも「意識」とは何か。チューリングテストのレベルが上がっていった先には?p187からのパラリンピックとオリンピックの境界の話などリアルSFという趣で興味深かった。

読了日:08月09日 著者:下條 信輔
開けられたパンドラの箱開けられたパンドラの箱感想
相模原に住み、福祉に携わる者として看過できない気持ちで本書を手に取った。障害者(被告の主張は「心失者」)は死ぬべきだと思っている人はいるだろうし、思っているだけなら自由だ。だが、何故、彼がその一線を越えてしまったのか、彼の主張を読んでも理解できたとは思えない。本書では事件後に見直されることとなった措置入院について複数の精神科医が言及している。措置入院が犯行に至る背中を押したのではないかと。実際、精神科に通院している者が法を犯しても刑事罰に処されない例は私も現場で何度も見てきている。
読了日:08月04日 著者:月刊『創』編集部編

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7月の読書メーター

7月の読書メーター
読んだ本の数:13
読んだページ数:3325
ナイス数:89

トッカン 徴収ロワイヤルトッカン 徴収ロワイヤル感想
税務徴集官のぐー子こと涼宮とトッカンこと上司の鏡のコンビのシリーズ最新刊は短編集。長編も面白いがこれくらいの分量の方がテンポがいい。「対馬ロワイヤル」はすごく面白かったけど微妙に対馬を馬鹿にしていないか大丈夫か。日常系のもいい。毎回、もうお前ら結婚しちゃえよと思うが、異動も仄めかされてるし次の長編辺りで完結だろうか。シリーズものではあるが、既刊については読んだ時の面白かった‼という気持ちしか覚えてないが問題なく楽しめたのでいきなり本作を読んでも大丈夫だと思う。
読了日:07月29日 著者:高殿 円
エヴァンズ家の娘 (ハヤカワ・ミステリ)エヴァンズ家の娘 (ハヤカワ・ミステリ)感想
現代編のジャスティーンはシングルマザー。ある日、亡くなった大叔母ルーシーから湖畔の別荘を遺贈されたことを知り、娘たちと現地へ向かう。過去編はルーシー視点で湖畔で過ごすエヴァンズ家に起きた悲劇の真相を語る。…題名から赤朽葉家を想像したが内容は他の方も書いている通り湖畔荘に似ている。読了して、作者が作中で起きた出来事をはっきりと描かないことに物足りなさがあった。が、これが作者の意図なのだろう。パトリックはDVをしているが単純な暴力ではないので自覚はないしジャスティーンも考えの視点を変えると見失いがちになる。
読了日:07月28日 著者:ヘザー ヤング
インフルエンスインフルエンス感想
友梨は同じ団地に住む幼馴染の里子と親友だったが、里子の秘密を知ってしまい、疎遠になる。その後、転校生の真帆と友人になったがある日の夜、真帆が変質者に襲われる。そこから、3人の運命は狂い始める。団地は世界そのものであるかのように広かった。しかし世界は否応なく広がっていく。…大山顕の表紙が素敵。題名は「影響力」か(ちなみ広辞苑第5版に見出しはない)。入れ子構造にした理由とそれぞれの動機が微妙。サイコパスというだけでは説明がつかないような。作家が妙に作者を彷彿させられる造形にするならもう一捻り欲しかった。
読了日:07月23日 著者:近藤 史恵
怪盗不思議紳士怪盗不思議紳士感想
時は戦後。名探偵九条響太郎はある日、怪盗不思議紳士の襲撃に逢い落命する。そんなある日、響太郎と瓜二つの大作が探偵事務所を訪ねてきた。響太郎の唯一の弟子瑞樹と、押しかけ女房の蝶子は大作を使い、不思議紳士に復讐をすべく計画を立てる。読み進めるうち、大作が実は響太郎なのではないかと混乱する。…名をもった「だれか」として呼びかけられることで、わたしは<わたし>になる…と鷲田清一は書いているが、ここまできたらどちらでもいいという気持ちになる。ある種の人物誤認トリックと言えるかもしれないし、その結びも他に類を見ない。
読了日:07月23日 著者:我孫子 武丸
「聴く」ことの力―臨床哲学試論「聴く」ことの力―臨床哲学試論感想
レポート用資料。日経の春秋欄にも引用されていた「まことのことばを知るためにこそ、私たちは語ること以上に聴くことを学ばねばならないということはないだろうか」植田正治の写真も素敵。以下印象に残った箇所の一部。第六章「ことば」を「身体的表現のひとつ」「ひとつの身ぶりであり、思考の、感情の身体としてある」。「存在のケアをされるという経験(中略)がじゅうぶんにあれば、ひとの人生はそうそうかんたんに揺らぐものではない」「じぶんで生まれたわけではないし(中略)ひとりで棺桶に入ることさえできない」
読了日:07月19日 著者:鷲田 清一
わかりやすいはわかりにくい? 臨床哲学講座 (ちくま新書)わかりやすいはわかりにくい? 臨床哲学講座 (ちくま新書)
読了日:07月19日 著者:鷲田 清一
「待つ」ということ (角川選書)「待つ」ということ (角川選書)
読了日:07月19日 著者:鷲田 清一
色悪作家と校正者の貞節 (ディアプラス文庫)色悪作家と校正者の貞節 (ディアプラス文庫)感想
作家と校正者の物語第二弾は大吾が理不尽な目に遭うの巻。物語とは別のところで校正というお仕事について興味深く読んだ。私は小説は好きだがWeb小説はあまり読もうと思わない。それは、小説というものが作者だけでなく編集、校正、など大勢の人の手を経て完成するということを一読者でしかない私が何となく気づいているからかもしれない。正直、小説なら何でもアリでいいんじゃね?と思わなくもないが。とはいえ、宙人のそれのように極端にデフォルメしたり荒唐無稽な設定で多くの読者を掘り起こすタイプの物語もある。だから読書は面白い。
読了日:07月15日 著者:菅野 彰
警察官白書 (新潮新書)警察官白書 (新潮新書)感想
「白書」と大上段に構えた割には定年後の元職場を題材にした職業エッセイに過ぎないがまぁそこは皆が関心ある警察という組織であることだしそれなりに楽しめました。作者の構想では第二弾があるようですがはてさて。市井のミステリに描かれている警察組織は嘘ばかりだというが一読者が読んでいて特に支障ないならそれでもいいんじゃないかと思うんだけどどうか。元警察官僚であり現役作家であるところを活かした話(エッセイでも小説でも)を読みたいです。
読了日:07月15日 著者:古野 まほろ
【2018年・第16回「このミステリーがすごい! 大賞」大賞受賞作】 オーパーツ 死を招く至宝 (『このミス』大賞シリーズ)【2018年・第16回「このミステリーがすごい! 大賞」大賞受賞作】 オーパーツ 死を招く至宝 (『このミス』大賞シリーズ)感想
五賞用。C。どうしてこれが受賞?との疑問には解説で大森望が答えてくれている。出来が悪いと選考委員が声を揃える話は全面書き変えをしたようだが…正直これで?しかし妙な勢いは感じる。もともとオカルトとミステリは親和性が高いし、オカルトより密室を題材にしたがっている感じがあるので逆にバランスはいいのか。ムーやらノストラダムスオウム真理教を知らない世代も多くなってきた昨今。年寄りには一周回って懐かしく、若い世代には新鮮で面白いのだろう。それなりに歩留まりのいいこのミス大賞だし、化けるのに期待しましょうか…?
読了日:07月15日 著者:蒼井 碧
BLUE GIANT SUPREME 5 (5) (ビッグコミックススペシャル)BLUE GIANT SUPREME 5 (5) (ビッグコミックススペシャル)
読了日:07月15日 著者:石塚 真一
私の頭が正常であったなら (幽BOOKS)私の頭が正常であったなら (幽BOOKS)感想
if構文を作る時「●●であったなら××」の●●にはあり得ないことを入れるのが常道だろう。もし世界が滅びるなら財産を使い尽くす…みたいな。しかしこの題名は「正常」であることの方が確率が低いとみなしている。それって巷にありふれているキチ●イの物語かよ、と、がっかりしないでほしい。表題作の主人公がいかに自分を客観視し、且つ、物語として面白さを保っているかに驚愕してしまった。ひねりが効きすぎないのもバランスがいい。私が一番印象的な話は一話目。冷静な妻のキャラが大好きなので是非シリーズ化して欲しい。
読了日:07月15日 著者:山白 朝子
担当編集者は嘘をつく: 毎日晴天!15 (キャラ文庫)担当編集者は嘘をつく: 毎日晴天!15 (キャラ文庫)感想
シリーズも20年目を迎え、レギュラーの帯刀家とその仲間たちに新しいキャラが加わりいい感じに化学反応を起こし始めた。当座さん呼びからちゃんと名字で呼んでもらえるように格上げされた久保は秀の扱いを短時間で把握し作家としての仕事もしっかりと軌道に乗せている(それに伴うストレスは半端ないようだが有能な人っぽいしそこんとこも自分でどうにかしてるだろう)。というか作家になる以前からの知り合いであり恋人である大河の後任になるって半端ないプレッシャーだと思うので私はむしろ久保に同情的になってしまうのだが。
読了日:07月02日 著者:菅野 彰

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