Great Spangled Weblog

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多摩動物公園再訪

2017年に多摩動物公園に行った。

glemaker.hatenablog.com

その後また行きたいと考えているうちにコロナの流行などいろいろあり、先日5年ぶりに行くことができた。

今回は大宮からむさしの号で立川まで一本で行き、モノレールで南下して行った。久しぶりのゲート。

前回とは逆方向に回り、モウコノウマを真っ先に見に行った。

動物の慰霊碑に手を合わせた。

レッサーパンダが寝ていた。

オランウータン(♀)。ロープの上を渡っていい時間だったが空中にはいなかった。

新しく来たタスマニアデビル

コアラ。

チンパンジー舎。多摩動物公園はどこも望遠レンズを持って熱心に撮っている人がいた。動物の居場所を教えてもらったり、場所を譲り合って撮影したりした。

間近に見ることもできた。

キリン。食事の時間で集まっていた。

ライオンバスのチケットを買って、指定の時間まで昆虫館を見学。

ここに合わせてマクロレンズを持参。撮影条件はかなりよかった。

そうはいっても短時間ではよくてこれぐらいの写真となる。

撮影はほどほどにして、花と頭上をヒラヒラ舞うチョウをしばらく眺めた。

ハキリアリの展示はまたやっていた。女王が死んだと聞いたので次の代。ヒカリムシは週末は公開しないとのこと。他にヘイケボタルの常設展示がある。

ニホンザル

アジアゾウ。大型哺乳類の飼育場はいずれも拡大されていた。

インドサイ。前回見るのを忘れいてたのでようやく見られた。

ライオンバス。待ち時間にこれから見るエリアを撮影。

前回来たときは工事中だったが、今回ついにライオンバスに乗れた。本当に間近にライオンが見られる。

「ホントにホントにホントにホントにライオンだー♪」と頭の中で歌いつつ、近すぎちゃってどうしよう。

富士サファリパークじゃなく多摩動物公園なんですが。

バスは左右どちらの窓からもライオンを間近に見られるように走ってもらえた。

何頭もいて目立つのはやはりメスで、オスはダラダラしながら見守っている。

帰り際にちらりとアフリカゾウを撮影。

サファリ橋を渡り(へしがないよ!)。

チーター。

そしてサーバル。やはり直接見ると美しいネコだ。

あとは帰るだけ、と歩いていると唐突にマムシグサの花。

動物ばかりに目が行ってしまうが、こういった公園は多摩丘陵の森が多く残されていて、植物もいろいろと見られる。

もう予約なしで入場できるので、こんどはもっと頻繁に来たいと思う。

元荒川の源流

前にムサシトミヨの自生地に行ってから早くも2年が過ぎた。

glemaker.hatenablog.com

天気のいい日だったので今度はゆっくり歩いてみようと思い熊谷市に行ってみた。

水源から600mほど下流。畑の奥、木の根元のところを元荒川が流れている。

上流を目指す。この辺りは通りに沿って元荒川が流れている。川は一面にヨシが生えていて、岸には菜の花。桜もまだ咲いている。

源流から400m、ムサシトミヨの保護が特に重点的に行われている領域に到着。透き通る小川に水草がゆらいでいる。

www.youtube.com

こういう場所に来ると映画『惑星ソラリス』冒頭を真似て右にカメラをパンして動画を録りたくなる。

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オリジナルと比べるとだいぶ違ったw

川の左岸の防草シートの道を上流へと歩く。

川の保護を求める看板の下にクサノオウの花。

コイやアメリカザリガニを駆除して水草を増やし、ムサシトミヨを保護している。といっても水面からムサシトミヨがいるかどうかは分からない。

水草は他の川より多いが、びっしりと生えるというわけにはいかない。写真はコカナダモのようだ。外来種だがこの場合はムサシトミヨの保護が優先なのでやむなし。

上流に歩いていくと養殖場に流れが分岐している。この清浄な水は養殖魚の品質にもかかわるから、川の保護は経済的な理由もある。むしろそれが好ましい。SDGsは持続可能な開発を産業化して経済的に無理なく進めることを求めている。

まだ花が咲いていないがオランダガラシだと思う。いわゆるクレソンで、食べられるがここにあるのは摘んではいけない。

栽培種のカラーが咲いている。地元の人に大事にされている川だと分かる。

この水草はあまり見ない。種もまだ分からない。多分こういうきれいな川でないと育たないやつ。

キショウブも咲いている。

ムサシトミヨ保護センターのすぐ下流セキショウモがびっしり生えていて美しい景色。

木の枠で親水エリアを設けてある。枠の向こうにあるのがムサシトミヨ保護センター。左の空き地は2年前はただの空き地だったが、今はコインパーキングになっている。次に来たときはここに車を置いてもっとゆっくり歩こうと思った。

また来たいと思うのは、この日はここまでで引き返してしまい、ムサシトミヨ保護センターにある井戸まで到達できなかったため。保護センターもいつか見学したいが、それだけでなくこの流れの本当の源流を見てみたい。

天気がよくてこのまま帰るのはもったいないので、この後さきたま古墳群に行った。写真は丸墓山古墳。桜がまだ見頃で人がたくさん来ていた。

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頼母子薬師堂の枝垂桜

日が前後するが4月7日に群馬県板倉町の頼母子薬師堂にある枝垂桜を見てきた。

場所は渡良瀬遊水地の西側にある南北に伸びた微高地で、海老瀬と呼ばれる地域。

まずはわたらせ自然館を見学。以前からある大谷石の倉庫を改造した資料館。組積造の建物は地震に弱いのでいつでも脱出できる心構えで中を見学。といっても東日本大震災には十分耐えているのでよほどのことがなければ大丈夫だと思う。

頼母子薬師堂に到着。枝垂桜が見事に咲いている。なお、「頼母子」は「たのもし」と読む。

幹のたもとには風情ある石碑。

奥の建物が頼母子薬師堂。

地面近くまで花が咲いた枝が垂れる。

町の天然記念物のカヤの木。

このあたりでは一番高い土地なので、上水道の貯水槽がある。

見事な枝垂桜に感嘆していたら、地元の人が以前ほど勢いがないと言っていて、どうも大きい枝を2本ほど切られてしまったようだ。

こんな名所があるのを今年まで気付かなかったとは不覚。

続いて離山公園に行った。ここは隠れた桜の名所……と思って行ってみると、古い桜の木がほぼ切られてしまっていた。おそらくソメイヨシノが老化して切らざるを得なくなったのだろう。

2018年の様子。満開の休日で晴天でもこれだけ人が少ない。

桜の下に戦没者慰霊碑。

レンズをより高性能の35mm単焦点に変えて撮影。

公園としての整備は進んでいて、離山貝塚も案内板などがある。

縄文時代はこの付近まで海が来ていたので、ここは群馬県唯一の貝塚ができている。

だいぶ切られたとはいえ古い桜も残っている。桜の名所として復活するには新しく植えた桜が育つまでしばらく待つ必要がある。

海老瀬はこの付近では珍しく地形の起伏が激しい。交通機関としては、東武板倉東洋大前駅から歩いて回れる。

オートモービルカウンシル2024

2021年に行ったオートモービル・カウンシル。毎年やっていることに気付いて、今年3年ぶりに行ってきた。

automobile-council.com

前回は新型コロナの流行でイベントがあれもこれも中止になる中の開催だったので人が少なかった。今年は続々イベントが再開される中での実施。土曜日の午前中だと人出はこんな感じだった。

自動車関係では以前は東京モーターショーが最大規模のイベントだったが、ああいった大量生産・大量消費を前提にした高度経済成長モデルのイベントは今の時代合わないのかな、と思った。こちらのイベントは基本的にはビンテージカーの展示・販売とクルマ好きが集まってアートの展示や飲食の販売を行うイベント。今まで培った自動車文化からよいものを残していこうという試みだと思う。

従前のクラシックカーイベントと違うのは、こういう80年代の日本車なんかもスーパーカーとか他の外車と同列に展示しているところ。写真はマーチスーパーターボ。埃をかぶったままというのが何かストーリーを秘めていそうでよい。

デ・トマソ・パンテーラGT4

6台だけ作られたパンテーラのレース用ホモロゲーションモデル。

シンプルなエンジンルームもいかにもレース向け。エンジンは座席の方にぐっと突っ込んで配置してあり、その後ろのデフとドライブシャフト、そしてその後ろにトランスミッションが出っ張っている。エンジンを重心位置に置く走り重視のレイアウト。

VWゴルフ50周年の展示。初代ゴルフは今見るとBセグメントコンパクトカーのサイズ。

ボディの前後が絞り込まれてぐっと丸くなった2台目のGTI。

その後大きく、重くなっていくが、デザインはやはり国産車とは一味違い存在感がある。個人的に好きなのはこのCピラー。前後の分割線が>>と平行に蛇行しているのがおもしろい。こんなパネルの面に目線を持っていくデザインはほかにはそうそうない。

オースチン・ヒーレー・スプライト。

アルピーヌ・A110。ミサトさんのクルマでよく知られる。

リアには直4のエンジンが収まっている。トラクションがいいのでモンテカルロラリーをブイブイ言わせていた。

アルファロメオ・ジュリア。

フェラーリ365GT4BB。レアな英国向け右ハンドル車。

S30ZやGC10に混じってR31スカイラインGTS-R。

フィアット500。リアにエンジンが縦置きなのを確認した。

フェラーリテスタロッサ

ギャランVR-4のラリー車。

バブル期に三菱は突然インパクトのあるデザインのクルマを次々売り出した。VR-4はラリーで勝つためのクルマで、後により小さいランサーがWRCで活躍する。

ランチア・デルタHFインテグラーレ。ベースのデルタが5ドアハッチバックの大衆車なのにやたらとかっこよく、HFインテグラーレはさらにかっこよくなっている。

アイルトン・セナの追悼コーナー。写真はマクラーレンMP4/6。

セナのヘルメット。

先日亡くなったガンディーニの追悼コーナー。エスパーダ、ミウラ、カウンタックストラトス、ディノ308の5台が展示されて注目を集めていた。

写真はミウラ。4LのV12エンジンをミッドマウントしたエキゾチックカー。市販車で大排気量のエンジンをミッドシップにしたクルマはこれが初で、スーパーカーの時代がここから始まったと言っていい。

ガンディーニの代表作、カウンタック。日本のスーパーカーブームはこのクルマなしには語れない。

割り切った後方視界。4LのV12エンジンを縦置きにして、ミウラより前方に配置。エンジンから前にトランスミッションを出して、プロペラシャフトで動力を後輪に伝える独特のレイアウト。ホイールベースを過度に長くしないためドライバーは極端に前に位置し、ドアヒンジが置けないため独自のシザースドアになった。なお、このレイアウトのおかげで最後尾にそこそこ使えるトランクがある。

ランチアストラトス。ラリー車として極端に短いホイールベースに仕上げたクルマ。実際に活躍した。

5台のクルマを横から。

隣は日産のブース。ヘリテージカーとしてP10プリメーラ、S13シルビア、フィガロ。新車として現行のE13ノートが展示されていた。

S13シルビア。プリメーラともどもバブル期の日産の優れたデザインのクルマ。

マツダのブースにはRX500が展示されていた。

2ローターのヴァンケルエンジンはミッドマウント。コンパクトなのでレイアウト上の無理は全くない。

貴重な右ハンドルのフェラーリ365GT4BBがもう一台。180°V12のエンジンをミッドマウントしているが、最後のシリンダーは後車軸より後ろにある。エンジンブロックは位置が高く、その下にトランスミッションが置いてあってリアオーバーハングには飛び出していない。重心がだいぶ後ろに行くしエンジンの重心も高く、その上リアサスのレイアウトも苦しいが、フェラーリのブランドと流麗なデザインで許されてしまうクルマ。どのみちこういうクルマはワインディングをストックに攻めるクルマではない。

アメ車コーナー。写真はシボレー・コルベットの2台目。リアウィンドウが左右分割だったり際立って個性的なデザイン。レトロフューチャーっぽくかっこいい。

昭和の小学生を虜にしたスーパーカーは、改めてふり返ると技術的にいろいろと興味深い。しかし、本や動画であれこれ語っても細かいところまでなかなか分からない。実写を見る機会はとても貴重。たとえ所有して乗り回すことができなくても、間直に隅々まで見ることができれば得るものは大きい。

なので、来年以降も可能な限りまた来たい。

新町駐屯地創設73周年記念行事

新町駐屯地の記念行事に10年ぶりに行ってきた。

glemaker.hatenablog.com

12旅団は戦車を装備していたが、編成はここ新町駐屯地だったようだ。

正門を入ったところで61式戦車、M24チャーフィーと74式戦車(写真には写っていない)が展示されている。

記念式典開始。手前の4人の士官のうち2人が女性。前に来たときに比べてさらに女性が増えている。実際女性を活用しないと人材不足はどうにもならないし、女性を活用できる組織こそ強い組織と言える。

国旗入場。

観閲行進。写真は燃料補給車。

第12施設体のグレーダー。災害が発生したときに自衛隊と消防と警察が派遣されるが、道路が破壊された場所で道路を作れるのは自衛隊だけ。「自己完結」の意味の重さ。

アトラクション。県立藤岡中央高校の太鼓演奏。男女いるので私立かと思ったが県立。県立高校が男女別学なのは昔の話。

戦闘訓練展示。敵の武装組織が侵入して状況開始。

89式小銃に茶色いテープを巻いてAKっぽくしている。

ゲリコマかと思ったら装甲車も搭乗。87式偵察警戒車。

敵装甲車を16式機動戦闘車が排除。その後同軸機銃を発射しながら敵陣を攻撃。

第12後方支援隊衛生隊が負傷者を収容。

情け無用ファイヤー!

決死隊が敵地雷原と鉄条網に爆破筒を挿入。ほどなく突撃路を啓開。

敵陣を火力により制圧し、最後に隊員が突撃。

敵陣制圧。敵といえども負傷者を応急処置して救急車に収容。

さすがに死者は放置。

行事が一通り終わったので他の展示を見学。野上武志氏のポップがここにもあった。

16式機動戦闘車。相馬ヶ原の12旅団は74式戦車を装備していたが現在はこれに置き換わっている。

化学防護車

短SAMの模擬弾。下志津駐屯地から来た車両。

120mm迫撃砲の砲弾。持たせていただいたがかなり重かった。これをよく砲口の高さまで持ち上げられるものだ。

ひっそり置かれていた資材運搬者。ウクライナにも送られているが、災害派遣などでも有用な車両。可愛い。

新町駐屯地内の桜の回廊。満開までもう少し。あと太陽があれば!

ひっそり置かれていた戦車トランスポーター。10式戦車が武器学校から運ばれてきて展示されていた。本州の戦車廃止はよくないんじゃないでしょうか。

昼食。群馬らしくスパゲティと、ブラジル風鶏もも肉

帰りに新町駅で見つけた煉瓦造りの小屋。ガチの煉瓦積みで、窓の開口で煉瓦が崩れないように積み方が工夫してある。地震が多い日本では組積造の建物はあまりないから、こういうのは参考になる。

野木神社のニリンソウ

春です!

しばらく行ってなかったので、小山市渡良瀬遊水地野木町の野木神社に行ってきた。

今年もコウノトリが営巣しているのを確認(写真はトリミング)。

国道4号を南下して野木町へ。国道から少しそれたところに野木神社がある。

突然5月並の暖かさ(暑さ)になり桜も咲き始めた。

野木神社の横の谷戸ニリンソウの自生地がある。6割ぐらい咲いている。

夜に雨が降ったようで水滴が玉ボケになった。

ニリンソウの名の通り花が2つずつ咲いている。

厳島神社ニリンソウ自生地は人が入れないようにしてある。

2021年に行ったときはちょうど花の盛りでこんなに咲いていた。

野木神社に戻るとき足元を見たら特徴的な5つの葉のあるつる植物が。これがアケビ

境内にはタチツボスミレが咲いていた。

前に来たときはニコンZ用のマクロレンズを持っていなかったが、マクロレンズを用意して改めて来ることができた。手軽に野草を大きく写せて便利。

世界一シンプルで科学的に証明された究極の食事

食事と病気の関係は様々な研究があり、エビデンスとできる論文も多くある。

しかしそれは、本当に個々の食事と個々の病気についての限られた情報で、しかも確認できる関係は相関であり、因果関係にまで行き着く例は稀。まずこの学術論文の現実を把握すべき。

そして本書。「科学的に証明された究極の食事」とあるが、それは単に食品を体にいい〜悪いのグラデーションで5グループに分け、体にいいグループの食事は腹いっぱい食べればいいというもの。そんなわけあるかw

この本のキモである表1-1の内容はこれ。

グループ 説明 食品の例
グループ1 健康に良いということが複数の信頼できる研究で報告されている食品 ①魚、②野菜と果物、③茶色い炭水化物、④オリーブオイル、⑤ナッツ類
グループ2 ひょっとしたら健康に良いかもしれない食品。少数の研究で健康に良い可能性が示唆されている。 ダークチョコレート、コーヒー、納豆、ヨーグルト、酢、豆乳お茶
グループ3 健康へのメリットもデメリットも報告されていない食品。 その他多くの食品
グループ4 ひょっとしたら健康に悪いかもしれない食品。少数の研究で健康に悪い可能性が示唆されている。 マヨネーズ、マーガリン(トランス脂肪酸を含むものはグループ5)
グループ5 健康に悪いということが複数の信頼できる研究で報告されている食品。 ①赤い肉(牛肉や豚肉のこと。鶏肉は含まない)と加工肉(ハムやソーセージなど)、②白い炭水化物(じゃがいもを含む)、③バターなどの飽和脂肪酸

説明の列を読んで分かるように、エビデンスがあるのはそれぞれの食品であり、この表ではない。グループ1から5の階層分けは著者の主観に過ぎない。

しかも、グループ5の「健康に悪いということが複数の信頼できる研究で報告されている食品。」には嘘がある。バターについて33ページに「バターの摂取量と病気のリスクとの関係に関するエビデンスはそれほど強くない」と書いてある。「新しいエビデンスが出てくるまではできるだけ摂取しない方が良いと著者は考えている」ともある。エビデンスがないのにイメージだけでバターを悪者にしているのだ。

アメリカ在住の医師がその権威で表1-1を信じさせようとしているが、騙されてはいけない。こんなものは昔から言われている通説をそれっぽく整理しただけで、表そのものには何のエビデンスもない

論文で健康に良いといされる食品も、それは研究の範囲内の話。食品と健康の関係は人によって異なり、誰にでも無条件で健康に良い食事はあり得ない。また、たとえ健康に良いものでも食べ過ぎれば害になる。つまり本書に下記のようにあるのは明確に誤り(23ページ)。

 では何と何を置き換えれば良いのだろうか。答えはシンプルである。健康に悪い食品を健康に良い食品と置き換えればよいのだ。つまり赤い肉や白い炭水化物を減らし、その一方で、前述の5つの食べ物をお腹一杯になるまで食べれば良い。

「前述の5つ」とはグループ1の①〜⑤。繰り返すが、過ぎたるは及ばざるが如し。特に代謝が落ちた中高年は腹いっぱい食べるのは慎むべきで、満足度の高い食事を腹八分目にいただくのが推奨される。グループ1を腹いっぱいになるまで食べるということはかえって健康を害する。

本書では定量的な話がないが、カロリー計算をして消費カロリーと釣り合うようにバランスよく食べるのがよく、また、その日その日でバランスを極める必要はなく、一週間ぐらいの期間でバランスがとれるようにすればいい。昨日は食べすぎたから今日は減らそう、とかでよい。

人に健康をもたらすものは確かにシンプルだが、それは食事だけではない。高橋久仁子氏は『「健康食品」ウソ・ホント』の終章「ふつうに」食べましょうで「健康の維持増進の3要素は<略>「栄養」「運動」「休養」です」と書いている。食事は1要素似すぎず、食事の健康への影響を過大評価すべきではない。

食事の健康への影響を過大評価し、特定の食べ物を過剰に摂取したり、逆に過剰に忌避したりする考えをフードファディズムという。

髙橋久仁子:『「食べもの神話」の落とし穴』(講談社ブルーバックス)から、フードファディズムの3つのタイプのうち3番目を下記に示す(16-17ページ)。

③食品に対する不安の扇動:食生活を全体としてとらえることなく、特定の食品を体に悪いと決めつけ、非難攻撃し排斥する一方で、ある食品を体によいとして推奨したり万能薬視したりすることです。「自然」「植物性」はよく、「人工」「動物性」は悪い、とする傾向がみられます。
 なお、このタイプは「普及品は危険だらけ。安全なこちらの製品を」と、消費者の不安をあおる商法によく利用されます。消費者の不安をあおったり、便乗する商法という意味で「不安扇動ビジネス」あるいは「不安便乗ビジネス」と私は呼ぶことにしています。

この本は20年も前に指摘されたフードファディズムの特徴に見事に合致する。だから信じてはいけない。表1-1はフードファディズムの見本であり、食品に誰にでも当てはまる健康への影響ランクなど存在しない。こんな空虚な情報で食事に過剰に意味づけするのはやめていただきたい。ここに科学的なエビデンスの有無は関係ない。研究成果の位置づけを適切に認識すれば、強い表現は不可能だからだ。

人の幸せを願うのに呪いの言葉は必要だろうか? いいや、必要ない(反語)。

本を読んで読者に健康になってほしいなら、呪いの言葉を吐く必要はない。<白米は少量でも体に悪い、エビデンスがある>こういうたぐいの言葉だ。不安につけ込んで空虚な情報を植え付けようとしないこと。

フードファディズムといえば、東日本大震災の後に福島県の農産物が忌避された。しかし、放射能の検査は厳密に行われており、市場に問題のある食品は出なかった。しかし福島県産の食品は科学的な根拠のない風説により値段が落ちる等の被害を受けた。これは風評被害であり、風評が情報であるから、「情報災害」という言い方もできる。

そして、風評被害とは風評を流す者がいることで起きる人災だ。林智裕氏はこれを「風評加害」と呼んだ。情報災害の策源地をずばりと示す鋭い表現だ。

要するにフードファディズムは情報災害の一種だ。風評加害があってはならない。

食事は安心できる環境で、美味しく味わうべきだ。その上で量やバランスに気をつければいい。◯◯は健康に悪い、などという過剰な情報は不要である。

人は食べ物と一緒に、情報も食べる生き物だ。食事の栄養や健康への影響に気をつけるのであれば、それに付随する情報の質も気をつけよう。

なお、科学的なエビデンスに基づく推奨される食事は、国の研究機関も提示している。フードファディズムの見本である本書との表現の違いを確認していただければと思う。

www.nibiohn.go.jp

本書おすすめの地中海料理については下記により詳しい情報がある。

www.nikkei.com

出版後すぐに出た下記書評でエビデンスがチェリーピッキングされているのが分かる。(このブログと違って)言葉は穏やかだが本書が科学に基づいていないことを指摘している。

minato.sip21c.org