年金相談から労働相談へ

 4月から労働基準監督署で労働相談をすることが決まった。これで、年金相談ともお別れ。社会保険庁の解体で、年金相談業務が有料化されて、ビジネスとしてやっていけるなら、またはじめるかもしれませんが、やはり社会につながる労働相談のほうが気分的にはらくだ。もっとも勉強ははるかに大変だが・・・
 多くの回数を書き続けることはできませんでしたが、とりあえず、今日で年金おばさんは終了します。

年金相談手数料

 知人の奥さんの年金手続きをしてあげたら、5000円の報酬になった。国民年金だけの人は、複雑な調査もないし、3000円ぐらいでいいかと思っていたが、相手が1万円出してきたので、慌てて5000円頂戴した。もっともそのあと、1時間ぐらい健康器具の宣伝を聞かされたから、聞き賃も含めたら1万円でもよかったかもしれない。
 手数料でいえば、障害年金は結構テマだから、高額を要求してもいいかもしれない。でも、精神病の人たちから、お金をいただくのはなんか心苦しい。たいていの人は職もなく、家族に頼って生きていて、診断書1枚書いてもらうお金だって高いと感じる人がほとんど。そんな人から、10パーセントの成功報酬なんてとったら、1か月分の食費以上になってしまう。でもこんなこと考えていたら商売にならないんだろうな。
 お金を取って年金相談をすることの意義ってなんだろうか。

カラ期間

 45歳の女性。夫は62歳。7歳の子が一人。自分の厚生年金加入期間は68月。それ以外は一切納付なし。夫の国民年金加入期間も80月。2年ほど前に来たときに、夫の前妻の厚生年金加入期間を、自分にもカラ期間として使えるという説明を受けたと言う。思わず「その時点で、あなたは赤の他人でしょう」と口走ってしまった。カラ期間は、前妻と夫との関係においてのみ生じるもので、後から結婚したこの女性には無関係。それでも一応、戸籍謄本を持ってきているので、夫の加入期間にどれほどカラ期間が使えるかを調べた。婚姻期間のうち、前妻の厚生年金加入期間は、80月ほど。これを足しても、夫に受給要件は生じない。ましてや、夫の今の妻である彼女に、このカラ期間は意味を持たないことを説明。
 なんでも彼女は、就職が決まって来月から働くと言う。そこで厚生年金に加入すると言うので、無年金の夫が、「もらるかどうかもわからないのに、払う必要はない」といったとか。国のやることだから、受給要件を満たせば、必ず支払われると答える。そのためには、あと20年働き続けなければならないことを説明。むごいようだが、いま7歳の我が子のためにも無年金の親になってしまってはいけないと言ってしまった。

確定申告

 確定申告の季節になって、私も申告書と格闘中。
 この前来た男性は、開口一番「私は確定申告をすべきなのでしょうか」ときた。よくよく聞けば、公的年金は、非課税枠、それ以外の収入も非課税となっていたので、しなくてもいいでしょうと答えてしまったけど、正しかったんだろうか。そもそも、こんな問いかけは税務署でするべきじゃないかと思うんだけど・・・ついでにその人は、66歳だが、3番目の妻は目下別居中。この女性に年金を持っていかれてしまうのかと聞く。結婚したのは、平成14年だと言うから、この5年間の報酬月額を分割することになると答えた(この人は、昨年まで、会社の役員をしていて、報酬も高い)。だが、彼は、どんなに少しでも相手に何もやりたくないのだと言う。それならば、報酬の半分を与えるだけの妻としての職務を果たしてこなかったことを立証するしかないと答える。彼女の投与した漢方薬のせいで、自分の体は病気になったと言うなら、その証拠もきちんと残して置いてくださいと教えたが、なんだか物騒なお話だ。
 この人の前にきた65歳の女性も、スモン病障害年金を貰っている人なのに、夫のDVに悩んでいた。いつ殺されるかと言う恐怖におびえながら暮らす夫婦もいるのですね。

労災の年金

 業務災害で足を失い、車椅子でやってきた男性。今年60歳で老齢年金がもらえる。もちろん障害者特例で、60歳から定額部分や加給年金もつく。ただし、在職していないことが条件。この人は現在、100パーセントの障害基礎年金1級と88パーセントの労災の障害年金1級(313日分)を受給しながら、会社から給料も貰っている。60歳すぎたらどんな貰い方をすれば一番得をするだろうかというのが今回の相談。老齢と障害では、事由が異なるため、老齢年金を貰えば労災は100パーセントもらえることになる。念のため、これでいいかを労働基準監督署に確認。間違いないことがわかる。
 件の相談者は、働き盛りで被災したため、労災の年金がかなりの金額。老齢とあわせるとサラリーマンの部長クラスの年収か。「もう正社員は辞めて週2・3日のアルバイトにして楽をしてください」と答えるしかなかった。労災って本当に凄い金額が出るんだと実感。でも当たり前のことだけど、その人の年収に応じた額が支払われるので、労災だからおいしいと言うものでもないということに注意してください。

繰上げ・繰下げ

 国民年金を65歳より前に貰い始めると年金は減額され、あとに貰うと増額されると言うのはよく知られていることみたい。ただ、60歳から貰う厚生年金は、今のところ繰上げ・繰下げはない。勤務中だから裁定請求しないで、退職したら裁定請求をしてそれまでの年金をまとめてもらおうなんて考えている人もいるようだが、65歳までの厚生年金は、あくまで経過措置で支給されているので(だから特別支給の厚生年金というのです)、いつ請求しようが過去にさかのぼり、その時点で厚生年金に加入している給与所得者であれば、年金は在職老齢年金として計算されてしまう。だから60歳で裁定請求書を提出しておくほうが、添付書類もわかりやすくていい。
 繰下げの時に、それまで貰っていたのは厚生年金だから、今までどおりの年金を貰って、国民年金分は増やそうと考える人も中に入るが、それまで貰っていた厚生年金は、報酬比例分と定額部分の合計額。この定額部分と言うのは、会社にいた期間に対しての国民年金分を、厚生年金のほうから肩代わりして支給しているだけだから65歳になればこの定額部分は出ない。65歳からの国民年金(基礎年金)を止めれば、厚生年金は報酬比例分だけになるから、現役世代と変わらぬ収入を得ている人でもなければ生活は大変だろう。
 70歳をすぎた奥さんが来て、ご主人の年金があまりに少ないので理由を聞きに来た。ご主人は75歳。実は国民年金の繰下げをしていて、そのあと受給請求を忘れていたのだった。この年代の人だから、5年間据え置いた国民年金は、1.8倍ぐらいに増額されていた。しかし70歳で請求したとみなしてさかのぼって支払われることはない。あくまで請求月の翌月からの支給になり、この人はまるまる5年間の年金をふいにしてしまった。もちろんさかのぼれないわけではないが、その場合には、65歳から貰ったのと同じ金額で計算され、65歳から70歳までの分は時効消滅。なんだか不親切な制度だが、年金はあくまで自分で請求するものということなのでしょう。

相談にのれない事

 来月60歳定年を迎える夫と、一回り年下の妻。子供は、15歳の高校生。直前になって年金額を調べに来た。報酬比例分で、月額5万に届かない。再雇用の月給は、25万円の予定。在職老齢年金の仕組みを教え、実際に計算すると、い年前の賞与のせいで年金は出ないことがわかった。「何で1年前の賞与が問題になるのか」といわれても、賞与は予定できるものではないからと言うぐらいしかできない。「こんなんじゃ暮らせない」と言われても答えようがない。「まだ子供の学費もかかるし、年よりもいるし、家のローンもある」と窮状を訴えられても、私にはどうしてあげることもできない。『再雇用をやめて、今の給料をくれるところを探そうか」と夫。「60歳すぎて45万で新規採用なんて無理です」というのが精一杯。「私は、あなたがどれほどのキャリアを持ち、どれほどの能力があるのかを知らないから、正確なことはいえないけれど、一般的に言えば、60歳からの求職活動は大変だし、無職になるよりは25万でも貰ったほうがいいのではありませんか」と。
 奥さんのほうは「退職金が普通に出れば、それを取り崩して・・・」と言い出す。この奥さんは、大企業並みに2千万ぐらい出るものと思っているようだ。「中小企業だと、せいぜい中退共から数百万ぐらいかな」というと、顔色が変わった。夫は「2か月分だよ」と言い出す。奥さんの顔が凍りつく。
 賞与の影響で年金が出ないのは1年間だけで、あとは少しは出るのだから、とりあえずこの1年間だけは、月給を3万円ぐらい上げてもらうように会社と交渉してみては・・・ということで帰ってもらった。
 もう少し早く気づいて、退職後の生活を計画しておかなくては。自己責任・自助努力なんて言葉が頭に浮かんだ。「奥さんも働いているんでしょう」と遠まわしに聞いてみたが、あの奥さんは、自分がフルに働いて生活を助けようなんて気はなさそうだし、生活が厳しくなるということを教えるところまでが私の仕事だから、これ以上は踏み込めません。