ロボットと美術展見て芸術の秋してきました。

芸術の秋ということで、ロボット美術展見て来ました。場所は静岡県立美術館。特別展示がある時にちょこちょこ覗いている美術館です。
展示品は4つのセクションに分かれており、セクション0からセクション3まで順番に見ていくことで、古くは1883年のルイス・P・セレナンズの「フランク・リードと平原の蒸気人間」から、最新のものは2010年の浅井真紀の「初音ミク・アペンド」(フィギュア)まで、ロボットの歴史を追いながらその変化と変遷を見られる形になってました。と言うことで各セクションから印象に残った物の感想を個別につらつらと書いて行こうかと。


セクション0〜ロボット以前「動く人型」の夢
まだ「ロボット」という名前で呼ばれる前の物語で描かれた機械人形の出版物や、ロボットと呼ばれる前のカラクリ人形等がこのセクション0に展示されていました。オズ魔法使いの心が欲しいブリキ人形とかピノキオとか子供の頃好きだったなぁ。

  • 細川半蔵頼直/「機工図彙」・茶運びからくり人形(レプリカ)


茶運びカラクリ人形に関しては出品リストではセクション0の出品物だったんですが、実際の展示は何故かセクション1のところにありました。図面の描かれた「機工図彙」は発見されているものの、該当の時代に作られた人形は見つかっていないこの作品、細川半蔵頼直「機工図彙」とともに、図面から復元されたレプリカが展示されていました。テレビ等で見たことはあったんですが実物は見たこと無かったこの人形。日本も古くは江戸から機械人形に対して関心を抱いてたことを証明する貴重な資料だなと再確認。


セクション1〜戦前−ロボットの誕生と同時代文化
はじめてRobotという名前が呼ばれたカレル・チャペックの小説「R.U.P」の各国出版物や、ロボット「マリア」が有名なサイレント映画の「メトロポリス」の資料やそれを元にしたオブジェ、戦前のどこか幾何的で機工的なイメージを漂わせる彫刻や絵画などがここに展示されていました。多分、未来派とかシュルレアリスムとかキュビスムと言った名前で分類される作品群だと思うんですが、中学のころ美術で2を取った程度の視覚芸術知識しかないので自信が無い。

  • ジョルジュ・デ・キリコ/広場での二人の哲学者の遭遇


分類はシュルレアリスム?でいいはず。僕でも知ってるくらい有名な画家、日本人からも結構愛されてるジョルジュ・デ・キリコの広場での二人の哲学者の遭遇。中学の頃、美術の授業で使ってた美術図録にも載ってた記憶があります。描かれた2人(2体?)の哲学者には確かに機工とか幾何的な意匠を感じ取ることが出来ました。一回実物を見てみたかったので、思わぬところで出会えてちょっと感動。

  • 西村真琴/學天則(レプリカ)とオリジナルの資料写真


東洋ではじめて作られたロボットとして呼び声高い學天則。オリジナルは海を渡った遠い異国で行方不明になってしまったらしい。大阪市が復元したレプリカが今回展示されてました。今回の展示物の中でも一番強く印象に残ったこの作品。セクション1の一番最後の奥まった場所に展示されていたのですが物凄い存在感。子供がみたら泣き出しそうなくらい。「天測(自然)に学ぶ」「すべての人種を合わせたような顔=人類の調和」等といった作者の意図が込められているらしい。その姿から受けた個人的な印象は仏の柔和な安心感と閻魔大王の荘厳な恐怖感みたいなあべこべなものがちゃんと一つの作品にしっかり収まっているという凄さ。そんな大きなロボットの前に立ってみるとなにかの審判で今にも裁かれそうな感覚になりました。


セクション2〜戦後Ⅰ−大衆美術の興隆と戦後美術の動向
戦後にロボットをモチーフとした美術作品、ロボットに影響を受けたオブジェやSF小説SFマガジンの挿絵。そして、アトムやガンダムを初めとして漫画やアニメや特撮やゲームで大人気になったロボットの原画、漫画原稿、セル画、プラモデルやフィギュアやそのボックスアートなどがここに展示されていました。原画や決定稿で一番古かったのは多分成田亨のキングジョーの決定稿だったかな?そこから始まった巨大ロボットのはじまりと歴史。ダイナミックプロ作品や長浜作品に見られるビビットカラーの角ばったいかにもスーパーロボット!な意匠から勧善懲悪なストーリーから複雑なストーリーへ変遷する中で作中設定を反映するための意匠へ、その後どんどん洗練された流線型の意匠へ、といった変遷がフィギュアやプラモデル、デザイン決定稿から見てとることが出来ました。

  • 等身大テムジン


電脳戦記バーチャロンシリーズのテムジンの等身大フィギュア。今回コレも楽しみだったものの一つでした。全長は多分僕と同じ位。(180ちょい超えたくらいか?)とはいっても、毎週通る道に実寸台ガンダム(静岡ホビーフェスのアレ)あるし、直前に學天則に中てられていたこともあって、それほど感動的なご対面みたいな感じでは無かったです。それでも出来は細部まで拘っていてすばらしい作りでした。背中の方も見たけどちゃんと光ディスクが装着されてた。でも、ボディだけで武器装備してませんでした。ガンダムビームサーベル持ったことだし、作ればよかったのに。


セクション3〜戦後Ⅱ‐ロボットのイメージの現在:ロボティクスからアートまで。
このセクションでラストです。先のセクションの明るいイメージ展示室からシックな印象の展示室へ。現在様々な場所で研究が進められ実用化がなされ始めているロボティクスと、現代美術でモチーフとされたロボットがこのセクションに展示されいてました。あとロボ美オリジナルアニメ上映もこのセクション。ここの展示はロボティクス分野では映像資料が多く、実物展示がないものもあったのが残念。ジェミノイドとかCB2とか一回みてみたかった。

  • フラワー・ロボティクス/Posy、Palette


「動くマネキン」を作る会社があるとは知っていたのですが、実物を見るのはコレが初めてでした。フラワーロボティクスって会社が作ってるらしい。展示室入って一番最初に目に飛び込んできたのが真っ白なPosyでした。おそらく製品の性質上、魅せるためのアートな部分と実用性を求められるロボティクス両方を背負わなければならないのが「動くマネキン」というロボットなのでしょう。将来実用化されたらショップなんかでマネキンが動いてこっち見たり話しかけてきたりポーズとったりするんですかね。


ソフト自体は実体を持たないロボットですが彼女も展示されてました。あの有名なソフトのボックスアートとフィギュア、後初音ミクの歌も流れてましたね。初音ミクに関しても、狙ってか狙わずかは分かりませんがボーカルシーケンサーという実用性と、描かれた容姿と人工的に作られた少女というキャラクター性という複数の分野を背負ったロボット(Vocaloid)になりましたね。



というわけで全展示を1時間半くらいかけてみて回って芸術の秋堪能してきました。帰りに今回のロボ美の図録買おうと思ったんだけど、月末で懐状況が厳しく諦めることに・・・。


ああ公式張り忘れてた。11月20日からは島根でやるらしいですよ。
ロボ美公式:http://robot-art.jp/