或る医師の話

 或る有名な大学病院の先生が、現代人のこころの問題について講演されました。
 少し意外だったのが、ほとんどが仏教の話だったことです。仏教の中にその答え、解決方法があるというのです。現代人のストレスやこころの病気を、医学的見地から語るのではなく、仏教からその解決方法を説明されました。仏教はそもそも心の世界を問題にしているのですから、当然といえば当然かもしれません。

 達磨大師に「求むるところあらば皆苦なり」があります。 
 「本来、心が楽になるためにお金、地位、名声をえようと努力しているはずなのに、逆にそれが心を苦しめている」と。我々は求むるところからはじまりますが、求めれば求めるほど苦は大きくなるというのです。求めて豊かになろうする考えと、求めずして豊かになろうとする方法があるのかもしれません。

 また、お釈迦様は、「考えるから苦しいのだ」、苦しみを無くする方法は「それは考えないこと、思い出さないことだ」と言っておられるそうです。この言葉もよく耳にする言葉で、聞くとすぐ理解出来ますが、それを身につけた人は皆無でしょう。しかしよくよく考えると、非常に深い言葉です。