夏の終わりの帰路のこと

快速列車で二時間半の帰りの夕方の車窓が素晴らしかった。川沿いをランニングするひと、水面に反射する光の揺れ。涼しくなって、畑で草刈り機を動かしているひと。私の隣の座席には、一声かけて座られたサラリーマンのおじさんが、体を通路側に少し斜めに向いて文庫本を読んでいる。
薄暗くなって電気が点いたコンビニが見えた。今日の出来事をぼんやりと反芻していく間に外は真っ暗になって、隣の席に座るひとも何度か入れ替わった。
乗客が減っていって一車両に数人くらいになり、もう少しで着くかなというところで、車両の中から照明が点いた試合中のスタジアムが見えてわくわくした。そして家に帰ってその試合をテレビで観た。

朝、ごみ出しに玄関の扉を開けた瞬間、セミの鳴き声の轟音がした。庭に父が植えた覚えのない白いサルスベリが、どこからか飛んできて立派に育っている。
夜、田んぼのかえるの大合唱、電気を消した部屋へカーテン越しに雷の光が入ってくる。