バッドエンドで丁度好い

手前の海馬と大脳新皮質は、とうの昔に腐ってしまってるわけよ。
私に関する部分だけ。
そこだけぽっかり穴空けて、そこに何埋めてるわけ?
テキトーな女でもつっこんどくのが丁度好いね。
貴方の幸せを願っているよ。



長い睫毛に舞って落ちた真っ白い雪
赤くなった頬
話題のない喫茶店



釣れたばかりの魚も放置しておけば腐るし
腐ってゴミ箱行くよりは良かったんじゃない?
冷え切った指先と霜柱
白バイに捕まるカイエン
だせえハット被った業界人
気づかないうちに汚れてた靴


そんなもんよ
ただの流れる景色だっただけ

要らない脳みそをあなたの病院の先生から取って貰って
ホルマリンにつけて父の隣に置いて
そのほかは火葬場に持って行って
棺には七五三の時撮ったみんな笑顔の写真を入れて
花は桜を全面に敷き詰めて
枝を折ってきて顔の周りに置いて
足の裏に張り付いた硬貨が邪魔くさくて
浴槽に溜まる音符と香料をさっさと排水口に流して
蝋の溶ける瞬間を見ていて
変わらない表情を死ぬまで持ち続けて
外国の香りをインドの瓶に詰めて持ち帰って
気管支炎になった私の喉にテキーラ1瓶つっこんで
胃洗浄するならタイドで、そのあとちゃんとダウニー使って柔らかくして
靴の裏に張り付いた汚いガムを募金箱に入れて


要らないもの 要るもの
在るもの 無いもの
雪原に響くジングルベル
あと何回聴ける?
貴方たちにとってわたしの優先順位は最下位
あなたの心はとても美しい

You always hurt the ones you love


母の愛は強いし偉大だ
無性に涙が出て耐えられなくて、震えた指で母の番号を押した
お互いしんどいことたくさんあるね
年老いた背中や皺の増えた手を見るたびに胸が痛むね

私は母を守らなくてはいけない
父との約束
守れるかな

家の荷物全部持っていけよ
服もHDも勝手に持ってきたゴムも
全部持って鍵もポストに入れておいて
写真だって一枚も残さない
貴方の音楽だって全部消してしまいたい
今の貴方はこれっぽっちも好きじゃない
昔の貴方にずーーーっと恋していただけ

知識も経験も増えたけど
愛はひとかけらも心の中に残っていない
心を形作るのは母と友人と音楽と映画
愛って何?知らねえよ

お前の肝臓

壁にもたれかかってゲロを吐くサラリーマン
電車でぶつかってくる髪の毛が汚い女
誰とラインしてんだよ
噂話が大好きな下衆
他人行儀
都合よく連絡してくる男
カラコン買いに並ぶ風俗嬢
19歳の頃人生を狂わせた7つ上の男
煙草と同じ 命があるうちが花
渋谷でYouTubeの撮影でもしてろよ


お前らの肝臓健康?




レースのカーテン越しに見える
夢でつかんだ父の手
父を愛してる 祖母も
母を愛してる 友人を愛してる
音楽を 映画を愛してる
目線をくれ




波が爪先に触れた瞬間
スカートがはためいた瞬間
もういなかったね





1月10日に戻りたいんだよ
匂いが愛しかったんだよ
動かなくなった手足を見ていられなかった
頑張ったんだよ
モルヒネたさなかったんだよ
最後まで耳は聞こえていたんだよ
貴方の大きい手が愛しかったんだよ
水をいっぱい飲ませてあげたかったんだよ
母を泣かせないで
貴方も泣かないで
どこにいても元気でいて

猛雨だ。水滴が落ちる前髪が目に掛かり、額に張り付き、鬱陶しく思う。
失うものはもう何も無いはずなのに、また部屋の扉を開けたら、私はきっといつものように口角をあげて、嘘くさい作り笑顔をするんだろう。
昨晩は今日の猛雨が嘘のように晴れていて、黄金色の月の前を雲が引っ越ししているのがはっきりと見えた。私はいつもの公園のベンチの、いつもの場所に座ってそれを見ている。ベンチへ来る前に見た映画のシーンが、ひとつ、またひとつ、嫌になるくらい瞼の裏に浮かんでいて、それで映画を2回見たような感覚になってしまった。そのときの私には映画も、音楽も、部屋の住人も、虫がか細く羽を鳴らす音も、風も、遠くで揺れるネオンの青もおまけのようなものでしかなく、暗闇の芝生に投げ出された両足の甲にうっすらと、左足に「絶」右足に「望」と書かれてあるように見えた。引っ越しを照らす月は、そんな私の絶望を避けるかのように、マンションの陰に隠れて行ってしまった。何気なくベンチの空白に手を伸ばすと、昼間、砂場で遊んだ子供が座ったのか、風が強かったのか、砂埃で手が真っ黒になってしまった。耳につけている、私らしからぬピンクのイヤフォンからは、外国人が作った冬の曲が流れていた。いつか聴いた事のあるような曲だな、初めて曲を聴いたとき、そう感じ、その「いつか」を思い出すのに時間はかからなかった。真冬の灰色の空の下で、1m以上積もる雪を見渡し、造られた道路の真ん中に立って、飼い犬の左右に揺れる尻尾を見て、灯りのついた台所に母親の姿を探し、マフラーで口元を隠して氷点下の冷気から逃れている、あの場面だった。その場面に音は無い筈だったが、外国人の作ったこの曲は、まさにあの場面を見て、あの場所に立っていたかのように、私が聴こえたような気がした音をそのまま作っていたので、私は大層その曲を気に入っていた。道路の真ん中に立ち尽くし、白に埋め尽くされた畑たちは、すやすやと寝息を立てている、それを感じていた。そう遠くない春を思い、安心が寄り添って暮らしていたあの景色を、目を瞑るとすぐに思い出す。妙な寂しさにかられたけれど、寂しさは安心以上に、いつも私のとなりにいたなあ、と改めて思う。

まだみんな生きてる?私は?

2008年の曲は未だに丸くて甘くて
可愛い包装紙の中で溶ける日を想ってる。
新しいマルタンのコートはおだやかなグレーで
肩幅よりすこし大きい。なぜかシロップのにおいがする。
遠くの国のひつじさんが わたしを寒さから守ってくれる。
濡れた枯れ葉が重なって腐っていって
乾いた枯れ葉のなかで虫が春を待つ準備をしている。
CLINIQUEグロスを4つ 、
ピンク色のグレープフルーツのような色を特に気に入る。
そのあとNARSでアイシャドー。
塗ったくってばかりで なにかに良く似ている、と ふと思う。
こんなに塗るものばかり。結局必要なのはなんなのか。
小さい石を何気なく蹴っても わたしはもう23歳になろうとしている。
結局マフラーだって買う予定がなかったのに買ってしまった。
新しいL'OCCITANEのトワレのにおい。
控えめでいいにおいだね、って言って 目元がゆるくなっていた。
CHANCEは少し お姉さんすぎるみたいだ。
小さい私の鼻を笑って 小学生みたいだと言って
フランス人と似たような高さのあの人を羨んで
ベースみたいに低い声を聴いて 赤くなってしまった手を握って
ずっとこうやって歩いてきたんだなあと懐かしむけど
まだそんなに時間は経っていなかったり。

あしたの夕ご飯はなににしようか。
お肉が安いから買って帰ろうか、あ、でも、
ピーコックよりオオゼキの方が安いから
ちょっと遠いけどそっち行こうか。
ちょっとっていってもすぐだし。
風呂屋さんが古着屋さんに成ったね。
線路が変わってしまうね。
祐子はよくシーシャ吸いにいってたね。
ほんとうは行かせたくなかったよ。

夜中に電話をしてみるけど切られてしまった。
いつだってあのネコを思い出すようになってしまう。
CSSの歌の名前を思い出すようになってしまう。
腐った枯れ葉のようになってしまう。
栄養なんかないから汚く溶ける。害ばかり。

『ねえもし、僕がフランスに行くんだったら、ユウも行く?』

『てめえみたいなブタは死ね』

素敵な言葉ももらったし、汚い言葉ももらった。
ぐわぐわ思い出しながらボディクリームを足に塗って
手にも塗って また思い出して
どうしようもなく頭に血が上ってしまった。
ああもう死んでしまいたい
お母さんお母さん。
泣きながら頬を掻きむしったら
傷がついて腫れてしまって今でもそれが痛む。
身体を傷つけることが多くなった。
痕は一生消えないのに
ねえ おかあさん
もう、どうしたらいいかわからないんだよ。
人の恩を仇で返すようなことしかできない私はどうしたらいいのですか。
もう雪がふったんだね。会いたいね。

浅草 八景島 金沢
私は箱根に連れて行ってもらえなかった。
浮気相手はたくさん旅行に連れて行った。
わたしはいつもふとんの上で泣いていた。
見る夢はおばあちゃんの夢ばかりだった。

本当わたしはいまに生きる場所がないから
過去か未来かどちらかに意識を飛ばして暮らしている。
たのしかったこと、これからたのしいかもしれないこと。
死ぬのってとっても怖いことだと思うんだよ。
だって、いまだって私は
眠ることが怖くておどおどしているのに。

千円札にホイップクリームを塗って食べた。
盲目の愛。手探りで温度を探している。
ハルシオン エクラーレ ノワレ
TOGAの新しいバッグに