最近買ったCD.

■スリー・サウンズのブルーノート後期の傑作が、ようやくCD化されましたよ。時代も時代だから、まあ、全体として醸し出されているジャズ度はかなり低い。とは言え、GENE HARRIS特有の、カロリー高めの高音ピアノは相変わらずといった感じだし、バックのオーケストラともよくマッチしている。上質なアーバン・ミュージック。


■アーバン・ミュージックって言い方はどうよ!?、ってツッコミどころなのかもしれないけど、結局のところ、ブルーノートというレーベルが目指していた理念とは一貫してそこにあったんだと思う。1500番台だろうが4000番台だろうが、はたまたLA期だろうが、それはずっと変わらなかった。ハード・バップからフュージョンへという形式の変遷は、「都市」というトポス(もう少し的確に言えば、「都市」という場所におけるブラックネス)に対して忠実に向き合い続けた結果だった、つまり、ブルーノートが変わったというより、それは「都市」という場所の変化の結果だったってことなんじゃないかな。そんなことを考えさせられた。


■って、理屈はさておき、文句なく気持ち良いですよ、これ。それにしても。ブルーノートのCD化って、物凄い勢いで東芝EMIが頑張っていた時期があったけど、最近はすっかり手を抜いているよね。ずっと前にも書いた気がするけど、1500番台とか4000番台の名盤の再発はもう良いよ。もっとCD化するべきものがあるだろうに。


Elegant Soul

Elegant Soul

読書メモ。

■最近読んだ本。


■「権威」と「権力」が切り離された日本社会。ってな言い方があって、昔、ずっとコレが何を言い表しているのか分からなかったんだな。そうか、「権威」は天皇制で、「権力」は実際に政治を担っているシステム(今だったら政府)ってことか。って理解したのは、そこそこのお年頃になってから。そっから逆算的にフーコーの「パワー」(=「権力」)と「オーソリティー」(=「機能としての作者」)のハナシが見えてきたりして。倒錯も甚だしい限りですよ。フーコーだから「倒錯」って言葉を使うわけじゃないけど。


■だけれども。中世の頃は「寺社勢力」もまた、このパワー・バランスに絡まっているということを随分学ばせてもらいました。いや、そういうことなんだろうな、ってハナシは知ってはいた。だけれども、「寺社勢力」がどのような力を実際に担っていたのか、というのは皆目検討がつかなかったんだよね。コレを通じて、漠然とではあるがイメージできたというわけです。一点だけ残念なところを挙げれば、個々のエピソードは面白いんだけど、通時的な流れがちょっと見えにくい点かな。


■いきなり中国の話に飛ぶんだけど、清王朝が崩壊してから国民党支配になって、でも中国は軍閥が群雄割拠していて…ってなハナシもこれまたイメージが湧かなかったんですよ。これはホント、これまで湧かなかったって感じで。そうか。ある強力な「権力」のシステムが、軍事的暴力を一元的に管理できない状態と考えれば良いのかって、この本読んで腑に落ちた感じ。

寺社勢力の中世―無縁・有縁・移民 (ちくま新書)

寺社勢力の中世―無縁・有縁・移民 (ちくま新書)

読書メモ。

■最近読んだ本。


■数年前までは、「北朝鮮」って結構「ギャグ」な国としてマスコミで扱われていたよね。


■ほら。テリー伊藤の『お笑い北朝鮮』(←タイトルはややうろ覚え)って本があったりしたじゃない? そのあたりからの流れだと思うんだけど、北朝鮮のテレビ・ニュースキャスターの独特の口調とか、マス・ゲームの様子とか、子供たちのロボットのような笑顔とかが、面白おかしくテレビで取り上げられていたような覚えがある。今はちょっと無理な感じになってきた(テリー伊藤もすっかり「真面目」なコメンテーターとしての立ち位置を確保したし)。


■じゃあ今、存在がギャグのようになっている国ってどこだろう?間違いなくジンバブエだ。インフレ率16万%ってどういうことだよ、みたいな。いや、「うまい棒」が来年には160万円になっているってことだっていう理屈は分かる。また、ジンバブエの政情不安がムチャクチャ深刻な事態だということも理解できる。「ギャグ」という言い方は、確かに不謹慎だろう。でも、「インフレ率16万%」という数字を最初に聞いたとき、やはりオイラは飲んでいたお茶を吹かずにはいられなかったことですよ。


■インフレを打破しようと、「物品は安値で売らないといけない」としたジンバブエのムカベ大統領。人々は、「まあ目標みたいなもんだよね」ってことで聞いていた。そしたら値下げを行わない商店主が逮捕されちゃった。一気に各店舗は物品の値下げに踏み切る。お客はどこに向かったか?靴を買い漁ったそうな。でもなんで靴なの?「いや、なんであの時靴を買い急いだのか、自分でも分からない」と述べる住民…。「現実」を突き抜けた状況。いやさ。ここまでいくと、「ギャグ」というより南米文学のような幻惑感すら漂ってくるよね。


■去年ちょっと話題になった朝日新聞ジンバブエ・レポートの記者が、他のアフリカ各国の状況も入れながらまとめた一冊。読みやすくコンパクトにまとまっていて、一気に読みました。アフリカに必要なのは「ナショナリズム」なのだいう結論は、物凄く説得力があった。「ナショナリズム」とか「公共性」とかを一国の範囲だけを視野に入れながら議論することの限界についても、自ずと考えさせられたことですよ。







アフリカ・レポート―壊れる国、生きる人々 (岩波新書)

アフリカ・レポート―壊れる国、生きる人々 (岩波新書)

山下達郎先生はどう読むのか?

■ジム・フシーリ、村上春樹訳『ペット・サウンズ』(新潮社)


■ウィルソン一家の暗部やブライアンの狂気などといったテーマと『ペット・サウンズ』とを絡めて論じた本かな、と思ったら違っていました(その辺のダークな話はちょこっと出てくるけど)。


■録音時のエピソードやメンバーの声などを少し挟みながら、『ペット・サウンズ』の一曲一曲を細かく音楽的に分析した本、って感じ。だから、筆者の『ペット・サウンズ』に対する愛情の深さはよく伝わる。


村上春樹の小説で言えば、『ノルウェイの森』の下巻で、一緒のところでバイトをしている美大生の家に「僕」がお邪魔した時、クラシック好きなその美大生が「僕」にレコードを聴かせながら、「ほら、ここのところが良いんだよね」と曲を解説していた場面が思い出される。楽典的知識をある程度踏まえたその人独自の趣味基準から、「音楽」を「音楽」として自立させて語るというのが、村上春樹の好きな「音楽」の語り口なんだよね、きっと。そしてこれは、エッセイ度の強いクラシックの批評に多い語り口であると言っても良いと思う。


カルフォルニアの陽光の裏側に潜む、深さの底知れない陰惨さ。ビーチ・ボーイズをその観点から論じた本というのはいっぱいあるんだろうけれど、ビーチ・ボーイズ関係書籍って、何を選べば良いのか分からないところがあり、山下達郎御大とか萩原健太閣下のように、厳しい批評眼を備えた人が、あの本は本当に素晴らしいけどこの本は書いた奴はおろか読む奴すら許せん、みたいなことを言っている気がしてならず(←すいません。完全にこれワタシの妄想だと思うのですが)、思いのほか敷居が高い。この敷居の高さというのも、なんだかクラシックっぽいよなあ。クラシックとしてのビーチ・ボーイズ。まあ、『ペット・サウンズ』って、いろいろな意味で現在のクラシックみたいなところがあるからね。


ペット・サウンズ (新潮クレスト・ブックス)

ペット・サウンズ (新潮クレスト・ブックス)

大人買い。

アマゾンで注文していた、20世紀のUKのインディーズの名曲を集めたボックスセットが届いたですよ。ライノ、良い仕事するなあ。以下は曲順。桜井幸子がコマーシャル出ていた「R35」だっけ?マッキーとかJ-WALKとか、オイラが高校〜大学の頃にヒットしていた曲を集めたコンピ。アレのUK盤ってとこでしょうかね。ちょっと違うか。


DISC ONE
How soon is Now? - The Smiths
Lorelei - Cocteau Twins
Primitive Painters - Felt
Somewhere in China - Shop Assistants
My Biggest Thrill - The Mighty Lemon Drops
Just Like Heaven - The Cure
Lips Like Sugar - Echo & The Bunnymen
April Skies - The Jesus And Mary Chain
Walkin' With Jesus (sound Of confusion) - Spacemen 3
Crash - The Primitives
Unbearable - The Wonder Stuff
She Bangs The Drums - The Stone Roses
The Only One I Know - The Charlatans UK
Step On - Happy Mondays
Loaded (Single Version) - Primal Scream
This is How it Feels - Inspiral Carpets
Obscurity Knocks - The Trash Can Sinatras
There She Goes - The La's
Here's Where The Story Ends - The Sundays


DISC2
Vapour Trail - Ride
Sight Of You - Pale Saints
Only shallow - My Bloody Valentine
For Love - Lush
Flying - The Telescopes
Pearl - Chapterhouse
I Want To Touch You - Catherine Wheel
Trip & slide - Bleach
Coast is clear - Curve
You - Five Thirty
This River Will Never Run Dry - Moose
(Thought i'd Died) And Gone To Heaven - The Family Cat
(Don't cut Me Down) Mary Quant in Blue - The Dylans
0-0 A.E.T. (No score After Extra Time) - Thousand Yard Stare
Grey cell Green - Ned's Atomic Dustbin
Shoot You Down - Birdland
Stay Beautiful - Manic Street Preachers
Star sign (Single Version) - Teenage Fanclub


DISC3
Metal Mickey - Suede
Duel (Radio Edit) - Swervedriver
Breakfast - Eugenius
Barfly - Superstar
Regret - New Order
Laid - James
Kite - Nick Heyward
Lazarus - The Boo Radleys
You're in A Bad Way - Saint Etienne
Wow & Flutter - Stereolab
Tracy Jacks - Blur
Live Forever - Oasis
Common People - Pulp
Speeed King - These Animal Men
Wallflower - Mega City Four
Insomniac - Echobelly
Sleep Well Tonight - Gene
Sleeping in - Menswear
Alright - Supergrass
Alright - Cast
Stutter - Elastica


DISC4
In A Room - Dodgy
Girl From Mars - Ash
Sale Of The Century - Sleeper
Sleep - Marion
Tattva - Kula Shaker
The Riverboat song - Ocean Colour Scene
You're Gorgeous - Babybird
Slight Return - The Bluetones
Something 4 The Weekend - Super Furry Animals
Something For The Weekend - The Divine Comedy
Brimful Of Asha - Cornershop
Service - Silver Sun
Ladies And Gentlemen We Are Floating in Space - Spiritualized
Wide Open space - Mansun
Step into My World - Hurricane #1
Lucky Man - The Verve
Untouchable - Rialto
Mulder And scully - Catatonia
You Don't care About Us - Placebo
Oh Jim - Gay Dad

Brit Box: UK Indie Shoegaze & Brit Pop Gems

Brit Box: UK Indie Shoegaze & Brit Pop Gems

ヤマジカズヒデ&灰野敬二@高円寺SHOW BOAT

■ライブ前にちょっと腹ごなしでも、と高円寺駅前の冨士そばでかき揚げそばを啜っていたら、杖を持った灰野敬二が現れて、鼻からそばを吹き出しそうになりましたよ(笑)。灰野さん、なめこうどん食っていました。うーん、さもありなんと言うか何と言うか。


■灰野さんって、これまで不失者とかを観てきたものだから、痙攣しながら轟音ギターをかます印象しかなかったもので、正直言うとヤマジカズヒデ先生との相性ってどうなんだろう?っていう心配があった。何と言うか、ギターのダイナミクスが相当に違うタイプの二人だよな、っていう。しかしこれは全くの杞憂でした。互いに相手を立てることで、ギタリストとしての引き出しの多さを二人が存分に発揮するという、デュオの理想型が展開されていたのでした。うん。本当に物凄いデュオだった。こんな相性が良いとは!定期的にライブやって欲しいぞ、これ。


■ヤマジの静謐なギターのアルペジオに乗っかる灰野さんの高音ヴォイスはあたかもシガー・ロスのようであり、その後はジム・オルーク加入直後のソニック・ユースのような展開があったり、裸のラリーズを思い出さずにはいられない展開があったりと、一時間強、二人は激しくギター弾きまくりで、決して轟音という程ではないにもかかわらず、サイケな音圧の強さに圧倒されまくりでございました。色んなアーティストの名前を出してみたけれど、もちろんこれは、オリジナリティの欠如という観点から今日のライブを貶めるために言ったわけではない。エクスペリメンタルな音楽に対する二人の理解と愛情の深さが、僕の耳にそのような形で届いた、ということなのだ。


■ベラさん、豊田道倫氏、ナカダッチさんなどの姿がありました。豊田道倫氏、間近で見たら、スキマスイッチのヴォーカルにどことなく似ているということに気付いた。あと、ナカダッチが面白いくらいに酔っ払っていた(笑)。

■木股知史『画文共鳴』(岩波書店


■読了。最後の朔太郎についての論が一番面白かった。

画文共鳴―『みだれ髪』から『月に吠える』へ

画文共鳴―『みだれ髪』から『月に吠える』へ