過去の自分を振り返って後悔なんてし、しないんだからねっ
｢ははは・・・簡単じゃないか、あははは。」
血溜まりに佇む少年が呟く。
周りには既に事切れ伏せる者が3人。
｢こんな事ならもっと早くやっておけばよかったぜ。｣
人を殺したにもかかわらず罪悪感を感じることもない。
それどころか感極まるといった感じに見られる。
｢オイ。てめぇが奪ったモン耳そろえて返してからくたばれってんだ糞がっ。｣
死体に何度も何度もナイフを突き立てる。
周りなど気にせず、今まで溜まったものを全部吐き出すかのように恨み言を呟きながら
一心不乱にただ 振り上げる 刺す 引き抜く 振り上げる 刺す 引き抜く 振り上げる・・・
｢ははは・・・あははははは・・ぐっっっぅぅ・・・。｣
｢てめぇ、調子乗ってんじゃねーぞゴラァ！！」
背後から繰り出されたナイフは致命傷・・・生き残りかまたは新手か・・・
不意打ちに少年は為すすべなく・・だが嘲笑は止まらず
｢グゥゥ・・・ククク・・・アーッハハハハハハ。｣
振り向きざまに一閃、背後の敵の頚動脈を絶つ。
よろけるようにふらつき崩れ落ちる敵を一瞥
ふらふらと2歩、3歩と歩いたところで糸の切れた人形のように崩れ落ちる。
｢限界・・かぁ ククク。 まぁこんなもんだろ。」
生への執着は見られない。
｢散々見下してやがった屑にはケジメつけたし。我が生涯に一片の悔い無し!ってか？ カカカカ。」
白に染まり行く視界の端に映る黒い羽根はと羽音は幻か・・・
世界は白に染まる。何も聞こえない。何も感じない。
・・・
・・・
｢んっ？」
目覚める・・・と表現すべきか？ 既に体の感覚は無く。しかし少年の意識が戻る。
知覚できるのは唯 白・・白・・白 何も無い世界。 そこに少年の意識は確かに存在した。
｢死後の世界・・・か？」
｢残念無念また来週ってねｖ。｣
不意に振ってきた声に対し意識を空へと向ける。
｢やぁやぁ。ハジメマシテだね。ボクのコエがキコエルかい？ボクのスガタがミエルかい？」
無垢とも思える微笑を浮かべた少年・・髪は白そして背から生える大きな黒き翼・・・
｢天使か？」
｢近いとも遠いとも言えるね。とりあえずそういう認識でいいよｖ。」
｢天国に案内でもしてくれるのか？ いや地獄か？ どちらでもいいがな。｣
嘲笑を浮かべる少年
｢選択肢をあげようと思ってね？ どう？ 興味アル？｣
｢その見下した態度は気にくわねぇが、話は聞いてやる。」
｢キミも随分な態度だと思うけどね？ ますます気に入っちゃったよ。」
クスリと嫌味な感情は感じない、引き込まれるような微笑を浮かべる。
｢一つは地獄。 罪を贖うべく無限に等しき苦痛を浴び続ける。
もう一つは異世界への転生。 新たな世界にてもう一度生を享受する。
あっ、天国は無しね。分かってたとは思うけど。｣
｢異世界ってのは何だ？」
｢そうだね・・・地球では無い世界。って言っても想像し難いね。
簡単な例を挙げれば、そうだね・・・ゲームの中の世界、アニメの中の世界、絵本の中の世界、
個人の妄想の中の世界、世界は無数に存在するんだよ。キミにはその中の一つに行ってもらいたい。｣
｢よく分からんが、ま、地獄よりはいいわな。 で？ どんな世界なんだ？」
ニヤリ と唇の端を吊り上げて笑う。
｢最近の需要とボク個人の期待を込めた独裁的決定方法により、HUNTER×HUNTERの世界に決まりました。｣
｢随分不純な選定基準だな・・・ってHUNTER×HUNTER？ あのコミックのか？」
｢ええ、それです。ボク好きなんだよね、あの本。だって念って万能じゃん？魔法よりも応用効くしさっ。」
｢地が出てるぞ？」
｢やかましっ！ っと、ゴホン。 で、どうしますか？」
｢いいだろう、俺もある程度知ってる世界だしな。 全く知らない世界よりは安心できる。｣
｢そうですか。 それでは連絡事項を、質問・要望は受け付けませんのであしからず。
転生するにあたって、まず年齢が若返ります。おおよそ５年ほどですね。｣
｢俺が１７だから向こうに行きゃ１２か。 ガキ過ぎないか？」
｢要望は受け付けないといいましたよ？ あとある程度肉体改造もさせてもらいます。 あの世界危ないしね。
あ、あとこれにサインヨロシク。｣
｢契約書か。 これにサインすれば後戻りはできないってか？ まぁ、端からする気はないが。」
躊躇無く記入を済まし突き返す。
｢ここに契約は結ばれた。キミに新たな生を与えよう。ボクへの見返りはその人生という名の喜劇悲劇だ。
悩み、苦しみ、嘆き、歓喜し、恐怖し、悲観し、足掻いてくれ。 そしてボクを、ボク達を『楽しませてくれ』よ？」
脳に響くように紡がれた台詞と共にまた意識は白に・・・白に・・・純白に染まっていく。
