東京佼成ウインドオーケストラ「第164回定期演奏会」

東京佼成ウインドオーケストラ定期演奏会に行ってきました。今回の指揮は横山奏さん。前シーズンでもアッペルモント「ブリュッセル・レクイエム」などで印象的な演奏を聞かせてくれました。(ちょうど1年前のよう)

 

■曲目
01.“地球”-美しき惑星-(真島俊夫
02.水の交響曲(S.ランセン)
03.交響詩「炎の詩」(I.ゴトコフスキー)
04.交響曲第1番「大地、水、太陽、風」(P.スパーク)

 

地、水、火、風の4元素をめぐるコンセプチュアルな曲目で、最後のスパークがすべてを兼ねるという仕掛け。タイトルの通り描写的な音楽が多く、とても楽しく聴くことができました。

 

・“地球”-美しき惑星-
真島俊夫の後期作品です。彼らしいジャズ的な洒落た和音が顔を出しつつ、全体として作品を包むポジティブなエネルギーが印象的。ソプラノサクソフォンのソロをはじめ、中間部では様々な楽器のソロが配置されています。横山さんの指揮は明瞭で迷いがなく、ぐいぐいと快速でオーケストラをドライブしていく様は心地よく聴きました。

 

・水の交響曲
きわめてゆっくりと水の循環、川を下って海にたどり着き、水蒸気へ…という描写がなされる曲です。ドビュッシー的な色彩を見せたかと思えば吹奏楽らしい豊潤な響きが見えたりと味わい深いです。特に木管楽器が活躍し、TKWOの職人芸的な演奏が楽しめました。付点を含む特徴的な水のリズムには真島作品との共通点も感じたり。仕事終わりに聴くにはなかなかハードで、聴いていて集中がもたない感もありましたが…。

 

交響詩「炎の詩」
特に楽しみにしていた曲です。ゴトコフスキーはエネルギッシュなイメージがあるがこの曲もまさにそれで、冒頭からトランペットの高音を伴う強い和音が鳴り響きます。いくらかの波はありつつも基本的には最後までハイテンションで、ぐいぐいともっていく横山さんのスタイルによく合っていました。最後の盛り上がりは圧倒的。

 

交響曲第1番「大地、水、太陽、風」
すべてアタッカで一気呵成に演奏されましたが、30分を感じさせないような濃密かつあっという間の時間。スパークらしい明るさとリズミカルさをもつ一楽章のあとは細かい動きからの盛り上がりを見せる二楽章、シンセサイザーが異物感を出しつつ現代音楽的な打楽器を聞かせる三楽章を経て明るさと厳しさを見せるように終幕へ。細かいギミックで楽しませるスパークの意図をよく引き出す指揮で、まさに音と動きが一体化しているような見ごたえがありました。最後のチャイムの余韻が完全に消え静寂を待っての拍手も印象的な瞬間になりました。

 

じゅうぶん重量級のプログラムのはずなのですが、先日の特別演奏会のあとだと爽やかさすら感じるから不思議です。ともあれ、吹奏楽の楽しいところを存分に堪能できました。今シーズンも楽しくなりそうです。次回からは土曜日開催になるはずなので、行ったことがないという方も是非一度足を運んでみては。

成子坂製作所(仮) 定時株主総会に行った話

スマートフォン用ゲーム「アリス・ギア・アイギス」のアニメ化が2023年に行われ、その締めくくりとしてのリアルイベントが2024/4/14に有楽町よみうりホールにて昼夜二部構成で開催されました。

 

私はこのゲームに思い入れが強いこともあって昼夜どちらも参加。
たっぷりとアリスギアの世界を味わってきました。
入場時のスタッフから実際のイベント内容、観客のレスポンスに至るまですべてにおいて夜公演では「経験値の活かし」が感じられたので、結果としてどちらも参加して大正解と言えました。

 

■昼の部
まずは儀武ゆう子さんの導入からの出演者登場と紹介タイム。
最初から声援や拍手を煽りまくるスタイルのおかげで、早々に場内に一体感が生まれていました。

 

監督の花井宏和さんも加わり、まずは「自分のキャラクターを一言で表すなら」というテーマに沿って各出演者が語り、それに合わせて場面カットや動画が流されたり、監督や他キャストからのコメントがあったりという内容。

 

・夜露と薫子の演じ分けの実演。
・のどかは普通の子だが、表現が盛ってあるだけ。
・桃歌はなんだかんだいじられつつ愛されキャラ。
・ゆみはいつのまにか面白いキャラになっていて驚いた。
・来弥は「ちゃんと忍者している」と思っている(監督は微妙な反応)。
・杏奈はストイックだが、それに徹しすぎると杏奈らしさが見えなくなるので、アナウンサーとしての比重を下げ、キャラを出してほしいというディレクションがあった。

 

事前に募集された質問も読まれました。
・のどかには姉がいるが、優秀な姉に比べられることから別のフィールドに移りたいタイミングで夜露にあこがれて…という前日譚(というか設定)があった(監督情報)。

 

キャラについてのトークが押したからか、本来はここでやるはずだったというミニゲームはまさかのカットとなり、来場者プレゼントの抽選だけ行ってトークパート終了となりました。

 

朗読劇パートは各キャラが閉じ込められ、「罪の告白」を迫られるというもの。
夜露ーのどか、ゆみー来弥の中身が入れ替わるというギミック付きで、お互いのキャラの演じ分けという面でたいへん貴重かつ大変そうでした。


のどかのハイテンションを完全再現する沼倉さんをはじめ、各自演じ分けの精度がすごく、とても面白く見ることができました。また、シナリオもいい意味でメタジョークが多数盛り込まれ、アリスギアらしいカオス感に一役買っていたと思われます。

 

オチにカットインする形で「中野慕情」に入ったのちOP,ED曲のライブパートに入り、最後は全員でOVA曲「ココロふわり」を歌って終幕となりました。

 

■夜の部
まずは儀武ゆう子さんの導入からの出演者登場と紹介タイム。
昼の部も来た人?という問いに物凄い比率(7割くらいとのこと)で手が上がり、ここでみんなのスイッチが入った気がしますね。

 

監督の花井宏和さんも加わり、今度は「いちばん印象に残っているシーン」というテーマに沿って各出演者が語り、それに合わせて場面カットや動画が流されたり、監督や他キャストからのコメントがあったりという内容。

 

・泣いている薫子さんはあまりにもイメージが持てなかった。
・入浴シーンののどかは「吶喊します!」のあと「どひゃあ」と言っているが、「どっかん」と聞き間違えた人から韻を踏んでいるとほめられた。
・「中野慕情」は「やったな」と思った。
・来弥の分身バルーンがかわいいので商品化してほしい。
・シタラが杏奈の像を作っているところは、シタラの理想が反映されているのだなと思った。
・「下落合桃歌殺人事件」「整備部の日常!」は監督がタイトルだけ思いついて、そこから広げてもらった。
などなど…

 

夜の部ではタイムキープ意識が強まったのか、ここでミニゲームパートも実施。各出演者がA,Bのうちわを持ち、選択肢に対しどちらかを選んで全員揃ったらポイント獲得というもの。最後の問題がポイント多めのサービス問題というお約束で、見事突破となりました。

 

朗読劇パートは昼の部と同じシナリオでしたが、昼も参加した人が多かったということもあってか、とにかくアドリブが多め。はては古畑のマネも飛び出すというカオスっぷりに観客も大ウケでした。

 

同じようにライブパートに突入し、全員の一言挨拶を経て終幕へ。
もともと大きな発表は無いと明言されていたとおり(それでもメガミデバイスなどいくつかの情報はありましたが)、とにかくアニメを振り返って楽しむというまったりと楽しめる素敵な会だったと思います。

できればまた、こういう機会があると嬉しいですね。

 

東京ゲーム音楽ショー2024に行った話

今年も東京ゲーム音楽ショー(以下、TGMS)に行ってきました。

 

 

TGMSはゲーム音楽の作曲家が集まった即売会で、会場内ではトークショーやミニライブも行われます。TAITOのZUNTATAのOBなど、かつては会社内で作曲していて今は独立している人などが数多く出展しており、ここでしか買えないセルフカバーやオリジナル作品もあります。

 

イベントとしては10年の歴史がありますが、私が足を運び始めたのは2020年くらいから。スマートフォンシューティングゲーム「アリス・ギア・アイギス」にハマり、その作曲家陣のセルフアレンジ作品を入手したいという動機からでした。

 

アリスギアは驚くほどサントラに力を入れているゲームで、ZUNTATA人脈のみならず幅広い作曲家に「毎回ミニアルバムができるレベルのボリュームで」書き下ろし楽曲を提供してもらっています。


特にプログレ好きの私としてありがたかったのが中潟憲雄さん、川田宏行さん、桜庭統さんといったプログレを色濃く反映させた方々の曲。正直、ゲームを知らなくてもこれらの作品群のためにサントラを購入していいレベルだと思います。

 

アリスギア関連のセルフアレンジをリリースしているのはCOSIOさん、ヨナオケイシさん、なかやまらいでんさん、川田宏行さん。渡部恭久さんはセルフアレンジでなくイメージ曲で数作のミニアルバムを制作しており、私は例年これらを入手しに足を運んでいました。

 

去年までは目当ての作品をゲットしたら比較的すぐに離脱していたのですが、今回は思い立って各トークステージやライブを回遊しつつ味わい尽くしてみました。
すると楽しいこと楽しいこと。

 

架空の格闘ゲームを想定して各作曲家が曲を持ち寄った作品があったり、その裏話トークがあったり…
ZUNTATAメンバーが集まった企画CDとその裏話トークがあったり…
東方の派生ゲームのサントラとその裏話トークがあったり…
ZUNTATAのMASAKI氏のソロアルバムと演奏ライブがあったりしました。

 

いずれも当日のノリでふわっと進行していくゆるさがあり、うろうろしながら堪能することができました。
来年は会場未定とのことですが、ぜひ続けてほしいですね。

 

東京佼成ウインドオーケストラ「大井剛史常任指揮者就任記念演奏会」

東京佼成ウインドオーケストラの大井剛史常任指揮者就任記念演奏会を観てきました。

 

大井氏は10年間正指揮者として東京佼成WOを振ってきており、誠実な音楽づくりと高解像度なサウンドで名録音も多数作ってきました。

今回から常任指揮者ということで、かつてのフレデリック・フェネルやダグラス・ボストックと同等のポストに就いたことになります。同時にTKWOには学芸員として作曲家の中橋愛生氏も着任し、より盤石かつ挑戦的な体制と言えるでしょう。

 

■曲目
01.セレブレイション(P.スパーク)
02.2つのコラール前奏曲(J.ブラームス/R.ギュンター編)
  一輪のばらは咲きて(作品122-8)
  おお、汝正しくして善なる神よ(作品122-7)
03.秘儀 IX「アスラ」(⻄村 朗)
04.交響曲第2番(D.マスランカ)
En.
05.ウェディング・ダンス(J.プレス/H.N.ジョンストン、F.フェネル編)

 

今回もサポーターズクラブ特典でゲネプロを見学しました。見学できたのは前半プログラム。
セレブレイションでのバンダの位置の調整や飽和しないようなサウンドへの意識の確認、ブラームスでの響きの確認とアスラでのアンサンブルが難しいポイントの確認…と、たっぷりプロの仕事を見ることができました。中でもアスラでは団員から確認したいポイントやバランスについての提案もあり、双方向での音作りがなされていることにたいへん感銘を受けました。

 

少し休憩して本番へ。
オペラシティは演奏者と観客の距離が近く良く響くホールというイメージで、バルコニー席も含めなかなかの埋まりっぷりでした。

 

セレブレイションはスパークらしい明るい曲。分散和音の動機が顔を出しつつ進行し、最後はお得意のメロディアスに疾走する展開へ。オフステージでトランペットのファンファーレがあるのですが、今回は舞台裏で演奏されました。各所にソロが配置され、団員の技量や音色を堪能できる魅力的な楽曲でした。タイミング早めなブラボーも飛んでいましたね。

 

ブラームスのコラール前奏曲は事前に吹奏楽カフェで経緯などを聞いていたこともありさらに面白く聴けたように思います。前後の曲とはがらっと変わり小編成でアンサンブル的な味わい。オペラシティはよく響くので小さい音でもよく響きます。後ろに配置されたパイプオルガンから出てきているかのような綺麗な終結部の和音が特に印象的でした。

 

アスラはたいへんな爆演かつ名演だったと言えるでしょう。いくつかのパートに分かれ、それぞれガラッと異なる趣の儀式的な音響で、各パートの後半で特にティンパニが重要な役割を持ちます。前半の静かな緊張感を切り裂くティンパニから、後半の全体の中でアクセントをつけるティンパニまで。まさに名人芸といったところでしょうか。合奏体ももちろん素晴らしく、特徴的な打楽器群や細かい音符のパズルのような組み合わせ、息のあったテンポ変化に舌を巻きました。最後の一撃の決めもばっちり決まり、圧巻でした。

 

マスランカの交響曲も熱演。一楽章冒頭から殺人的な音域が頻発する困難な楽曲ですが、気合の入った演奏でした。あらためて実演で接するとティンパニコントラバスの不在もあって、通常の吹奏楽らしい厚いサウンドとは全く異なる、薄く繊細な響きがあらわになるのがよくわかり、その面でも大変そうな曲です。二楽章の冒頭はサクソフォンアンサンブルから開始しますが、あらかじめ聴いていた他の団体の録音に比べアルト以下の内声パートがしっかりと聞こえるバランスになっており、絡み合いの妙味が味わえました。最後の静かな打楽器のあとはたっぷりの静寂をとって三楽章へ。早いテンポで15分近くを駆け抜けるスタミナが必要な楽章ですが、リズム遊びの部分などを浮立させつつのメリハリをきかせたよい演奏だったと思います。終わり方も難しいポイントですが、見事にテンションを上げて最後まで持っていきました。

 

静かなところでくしゃみが止まらない悪夢を見た…という冗談をはさみながらの常任指揮者への就任スピーチを経てアンコールは「ウェディング・ダンス」。フェネルもよく取り上げた曲ですね。短いながらも各パートの見せ場があり、楽しく終演となりました。

 

今後の定期演奏会への意欲にあふれた、たいへん充実した演奏会だったと思います。月末の定期も楽しみです。

 

なお、「アスラ」は初演団体の演奏が動画サイトで視聴可能なのでぜひ。凄い曲です。

 

 

People In The Box「2024年 春の航海 @ 恵比寿 The Garden Hall 2024/03/31」

People In The Boxを観てきました。

 

■セットリスト
01.日曜日/浴室
02.スマート製品
03.ベルリン
04.螺旋をほどく話
05.潜水
06.親愛なるニュートン街の
07.数秒前の果物
08.鍵盤のない、
09.ニコラとテスラ
10.どこでもないところ
11.水晶体に漂う世界
12.動物になりたい
13.いきている
14.真夜中
15.逆光
16.DPPLGNGR
17.旧市街
18.バースデイ

 

MCの中で「リリースに合わせたとかでない、平常運転のツアーがやりたかった」という話もありましたが、まさにそのとおりの、今の彼らのサウンドをただただ楽しもうというとても良い雰囲気のライブでした。

 

冒頭から私の大好きな日曜日ではじまり、初期の曲もかなり多めに取り入れたセットリストだったと思います。「親愛なるニュートン街の」などはライブで聴くのも久しぶりだった気がしますし、一時はよくやっていた「潜水」「真夜中」といったウェザリポ曲も嬉しかったですね。

 

今回特に驚かされたのはまずドラムの切れ味。もともとオーケストラの打楽器パートのような多彩な表現をするドラムでしたがここ数年はどんどん切れ味もまして行っているように見え、本当に達人芸だなと惚れ惚れします。過去の曲に対してもその変化が顕著に出ていて、凄い…とあっけにとられている間にどんどん曲が進んでいく感じ。今回の座席が右端だったこともあり、手元がかなりはっきり見られて勉強になりました。勢いと切れ味のあるショットに目が行きますが、繊細かつ敷き詰められたゴーストの数々も凄かったです。

 

また、初期曲と最新曲のギャップがさらに埋まっているようにも感じられたことも面白かったですね。少し前は初期曲について少し距離があったというか、ある意味演じようとしているような要素があったと思うのですが、今回はもっと自然に歌が紡がれていたように感じました。まだ昔の曲でも新しい反応がバンド内で起こっているんだなというのがわかり聴いていて嬉しくなりました。

 

18曲とたっぷりでありつつも体感は一瞬で、毎回これだけ楽しませてくれるバンドのファンでよかったとしみじみと感じてしまいました。また次に観られるときが楽しみです。

 

 

 

cali≠gari「cali≠gari 30th Caliversary”1993-2024″ カリ≠ガリ vs プロレス @ 新宿FACE 2024/03/30」

特濃のイベントでした。ヴィジュアル系バンドであるカリガリとプロレス団体である
暗黒プロレス組織666のコラボ。

 

 

■セットリスト
~第0試合 説明マッチ~
01.トカゲのロミオ
02.赤色矮星
03.トレーションデモンス
04.マネキン
~第1試合 ●青 - 石○~
 政岡淳/ガイア・ホックス VS 塚本拓海/Ken
05.紅麗死異愛羅武勇
06.コック ア ドゥードゥル
07.色悪
08.ゼリー
09.いつか花は咲くだろう
~第2試合 ○青 - 石●~
 怨霊/ラム会長 VS ガッツ石島/条柴拓真
10.マッキーナ with かおり
11.マグロ with かおり
12.混沌の猿
13.嘔吐
~第3試合 ●青 - 石○~
 宮本裕向/小仲=ペールワン VS 柴田正人/植木嵩行
~桜井青断髪式(ならず)~
~第4試合(12人) ●青 - 石○~
14.-187- (試合中)
15.37564。 (試合中)
16.失禁 (試合中)
17.クソバカゴミゲロ (試合中)
~桜井青断髪式~
18.エロトピア

 

フロアの真ん中にリングがあり、花道で奥のステージと繋がっている状態でした。
演奏に先立ち、まずはリングでcali≠gari村井さんとベッド・インかおりさんによる前説。プロレス好きらしいテンションの高さで、村井さんは過剰なほど下ネタをぶっこんでおりました。

 

プロレス初めての人?という問いかけに私を含めかなりの観客が挙手、ではcali≠gariファンに説明を、という流れでルール説明マッチが行われました。3カウントのルールやブーイングのタイミング、応援の仕方などのチュートリアルが行われ、たいへんわかりやすく入門できたのではと思われます。

 

説明が終わると両チーム入場し挨拶。ライブパート以外は撮影可能ということで、東西南北に向かって撮影タイムを設けており、サービス精神が伺えます。赤組が石井さん、青組が青さんというチーム分けで、プロレス選手たちは青さん側がヴィジュアル系っぽい選手たち、石井さん側がガッチリした選手たちというチーム構成。各チーム挨拶では青さんチームの紅一点であったラム会長が「青さんを待ち受けにしていたこともある」とcali≠gariファンであったことをアピールし、たいへんあたたかい空気が流れていました。

 

負けた方に罰ゲームという話で石井さんは「オレは負けたらマスク取りますよ」と言っていましたが、結局「負けたほうが髪を切る」という条件に。正直、ここで展開は読めた気もします…。

 

そしてライブパートへ。村井さんの企画ということもあってかベースが大活躍する曲ばかりで、トカゲのロミオからはじまりマネキンまで一気に駆け抜け第一試合へ。音量は普段のライブハウスよりかなり小さめだったこともあって、余裕を持って楽しめたようにも思います。村井さんや青さんがリングに来るたび審判の方々がロープを持ち上げてリングへの入口を作っていて、息を合わせるのがなかなか大変そうだなとも思いました。

 

第一試合では青チームの二人が印象的で、ヒールらしいふるまい(看板を使ったり、2対1を演出してみたり)であったり、「ほらほら、応援しないと負けちゃうよ!」と応援ポイントを教えてくれたりとかなり手厚い試合運びだったように思います。ガイア選手のジャンプも映えていて、あれで一気に観客がプロレスの派手さに惹き込まれていったのを感じました。

 

続くライブパートでは「ゼリー」など珍し目の曲も披露。初期の曲に頼る必要のないライブができているバンドとはいえ、やはりテンションは上がります。終盤以外で演奏される「いつか花は咲くだろう」も新鮮。やっぱりこの曲のイントロのベースライン凄すぎますよね。

 

第二試合ではラム会長や怨霊選手と石島選手、条島選手のバトル。特に体重差、体格差を見せる試合運びで、パワーで押す赤チームと技で攻める青チームという村井さんの解説どおり、個性がよく現れた試合だったと思います。このあたりでプロレスは勝敗とかじゃなくて魅せ方に注目するヤツなんだなと気づき始めました。

 

続くライブの前にベッド・インのライブでも行われるかおりさんの生着替えタイムが入り、ツインボーカル体制で「マッキーナ」「マグロ」。特にマグロでの掛け合い部分などは新鮮でとても良かったです。「嘔吐」もやはり最高にテンション上がりますね。村井さんのソロもバキバキでした。

 

第三試合は赤チームの植木選手の独壇場。元警察官という肩書を強調しつつ自由すぎるふるまい(ダダをこねたり、銃をつきつけてみせるなど)のギャップで笑いを取りに行っており、とても面白かったです。リング外で各チームの他の選手たちがやりあったりしていたのも賑やかでした。

 

赤チームの勝ちということで青さんの断髪式が始まりかけますが、もう一回!ということで全員参加の第四試合に突入。さらにライブも開始し、ライブしながら試合も進んでいくというカオスな状態に。曲も187をはじめ暴れ曲ばかりでマッチしてましたね。

 

最後も赤チームの勝ちということで本当に青さんの断髪式へ。かおりさんがハサミで勢いよく青さんの髪を切り落とし、上がる歓声、落ちる髪、それを拾うラム会長…という光景でした。最後はエロトピアで終幕。

 

プロレスは見たこともなかったのでどうなることやらと思いながらの参加でしたが、たっぷり楽しめて本当に面白かったです。cali≠gariにも666にも感謝ですね。数日前に行われた色々な十字架のトークショーでも「cali≠gariは知らない文化への入口になってくれた」という話が出ていましたが、今回もまさにそれだったと思います。撮影も入っていたので映像化も期待しちゃいますね。

 

 

第1回 TKWO吹奏楽カフェに行った話

私がよく聴きに行っている吹奏楽団が新しい取り組みとして「吹奏楽カフェ」なるものを開催したので、行ってきた。

 

 

メインの部分は後日youtubeにもアップロード予定とのことなので、内容についてはそちらを参照いただけたらと思う。19:15~21:10のおよそ2時間のトークイベントであった。

 

観客は30人弱で、スタッフはTKWOの事務局や団員が行っていた。各テーブルにお菓子がおかれ、飲み物もサービスされるため、それらをつまみながらトークに耳を傾けることができるスタイルだ。「講座」のような格式ばったものにしないという意図から「カフェ」と名付けたとのことで、本当に飲食物をふるまうつもりは当初はなかったそうだが、話の枕としてお菓子の話題でくだけた雰囲気になっていたので、あって良かったと感じた。

 

吹奏楽についてのこういったトークイベントはあまり聞いたことがないのではないかと感じる。というのも、指揮者や作曲家が聴衆の前で喋る機会としてよく思い浮かぶのはプレコンサートなど演奏会場であって、トークそのものを独立させてイベントとする例があまりない(私の観測範囲だけかもしれないが)からだ。

 

プレコンサートでは長くても15分とかで、想定客層も幅広くなるため、そこまで深入りした話はできない。また、その後に演奏を控えていたりすることもあってどうしてもトーク自体に全力投球は難しいと思われる。その点、今回は完全にトークのみに焦点をあてているところが好感を持てたし、なにより「語る場」を作ろうというその姿勢に強く感銘を受けた。また、対象を一般に開いているところもありがたい。

 

というのも、こういったクラシックの作品についての語りというのはどうしてもプロとアマチュアが分断しやすい分野だと思われるからだ。これがロックなどの場合はフリーライターなど在野から出てくる語り手というのも想定されるが、ことクラシックについては大学をはじめ、「内部にしか見えない」情報が大変多く、なかなかこういったトークイベントのような商業的なイベントという発想が出てきづらいのではないか。これは職業演奏家、職業作曲家になるために必要な知識の膨大さを鑑みてもある程度納得いくいっぽうで、趣味が多様化しリスナーの確保がむずかしくなっていく現代社会においては裾野を広げるハードルにもなっているのではないかと感じる部分だ。

 

今回語られたような、「作曲者の人となり」「作品が書かれるにあたっての意図とその技法」「想定されたのではないかと思われる参照項」といった語りは、それこそ本来は大学やレッスンの中で行われるものにも近いのではないかと思う。しかし、こういった内容は作る側だけに閉じてしまうのはあまりにもったいないのではないかと思っていた。会の後半で中橋氏も触れていたが、情報を知るにあたってインターネットはもちろん、書籍すら誤りがあることも少なくない昨今、一次情報(当時のプログラムノートなど)を調査したり、実際にその場にいることの多い人からその語りを聴くことができる機会というのは貴重だ。

 

さらに今回の特筆すべき点として、「リスナー≒演奏者」である吹奏楽というジャンルのイベントであるに関わらず、演奏上のポイントのような「実用的」な話題がほぼ登場しなかったことも素晴らしかった。あくまで吹奏楽を音楽作品としてリスナーとして楽しむうえでの見方であったり、楽譜の読み方という視座にあったのが私のような「聴き専」リスナーにとっては心地よく、また吹奏楽を芸術作品として扱いたいという想いの表れにも感じられた。

 

今回は第1回ということでこれからブラッシュアップされていくと思われるが、とても可能性のある座組だと感じられたので、今後に期待することをいくつか挙げておきたい。
※ダメ出しのような意図は全くないのでご容赦いただきたい。

 

・時間配分
 今回は2時間で2つの演奏会にフォーカスするという内容上、仕方なかったと思うが、話が盛り上がりかけたところで次の話題に進まざるを得なくなっている箇所が何回かあったと思う。「カフェ」という命名からは私が普段ほかに見ているプラットフォームである「ゲンロンカフェ」も想起するが、そちらの特徴として「延長自由とすることで長い時間を登壇者と共有し、より人間らしい話を引き出す」ところがある。会場がレンタルである以上、限界はあると思うが、これだけ面白いのであれば全開で話す二人をもっと見てみたいと思わされた。
 ※なお、上記プラットフォームは関連会社のサービスとして「シラス」という動画配信を行っており、作曲家の新垣隆氏もチャンネルを持っている。私もたまに視聴しているが、自作を解説していた番組などはたいへん面白かった。

shirasu.io

 

・想定視聴者
 大井氏はTwitter上で「初心者にも」という趣旨のポストをしていたが、内容としては演奏会で取り上げられるランセンやゴトコフスキーだけでなく、スクリャービンやパリ警視庁音楽隊、スヴェトラーノフやフェネルなどがどんどん登場し、かなりハイコンテクストだったとは思う(わかる側としては大変楽しかった)。個人的には今の路線でも十分面白いと思っているのだが、もし初心者を取り込むのであれば、「初心者想定の質問者」を配置するか、「パワポなど視覚的な補足資料を用意しておく」という対処が考えられるのではないかと感じた。もちろん人件費や準備の増加にはなるのだが…。

 

次回は5/8にマッキーについて取り上げるとのこと。期待。