▼マズいメシが心を揺さぶる パンドラの塔

 パンドラの塔買って来ました。最近アナログゲームばっかり買っていたのでコンシューマはなんか久しぶりな感じです。
 さてまぁ、パンドラの塔Wiiのワンピースアンリミテッドクルーズなんかを開発したガンバリオン開発のソフトなんですが、自分はこれまでガンバリオン開発のゲームを遊んだことがなかったのでちょいと不安ではありました。ワンピースの評判は高いですし、パンドラのトレーラーを見た感じ、アクションの手触りは良さそうに見えたんですけどね。
 まぁ、でも実際に触ってみないとわからないと。事前に情報を入れずに買うのはかなり久々だったのでドキドキしながらゲームを始めました。
 で、始めてみたところ。展開早っ! 獣化グロッ! ババアいい演技!
 最初の展開はスピーディで掴みは凄くよかったですね。まさかほぼCM通りの展開でゲームが始まるとは…… もっと説明を挟むもんだと思ってましたよ。


 チュートリアル風味のアクションシーンを挟むのもいい感じですね。使うボタンが多くて若干慣れが必要なところもありますが。
 チェーンを敵にぶっさしてリモコンで引き抜く。この一連の操作は慣れると「自分カッコイイ!」を堪能できます。ノーモアやモンハンTriでもそうだったんですが、振り操作がアクセントで入ると意図通りのアクションができた時に凄くカッコよさを味わえるんですよね。
 振りが必要なのは戦闘後の報酬回収のタイミングなので、他のアクションと干渉しないのも○ですね。振りで操作の精度が落ちるとなると、これはこれでストレスですしね。
 アクションは全般的には触感がいいですね。まぁ、もう少しSEに迫力が欲しいかなという気もしますが。
 カメラが固定……というか初期バイオハザード式? バイオは少ししか触ったことがないのでアレですが、カメラは基本固定で、立ち位置によってアングルが切り替わるという方式なので、全体的にアングルは引き気味の構成。敵との間合いを計る3Dの緻密なアクションというよりは、大雑把にでも武器を振り回していく2Dに近いタイプのアクションですね。
 溜め攻撃の爽快感がいいですねー。ヒットエフェクトバリバリ、ヒットストップバリバリで思いっきり敵をザックリ斬ってる触感があります。通常攻撃はちと軽すぎるかな。
 チェーンの使い方も独特で面白いです。2D寄りの近接アクションに、ポインティングで画面内全てを狙える遠距離攻撃を組み合わせた3Dアクション。うーん、あんまりこういうスタイルのアクションRPGって見たことないですし、Wiiならではの操作体系で新鮮味があります。
 カットシーンはモデルがややノッペリしてるかなってのは気になりますが、センスがいいですね。セレスが夢を見るシーンの多重背景の紙芝居みたいな感じが凄くいいです。王様物語をなんか思い出す感じ。これ、3D(立体映像の意)で見たいなあ!


 アイテム集めの楽しみはまだピンと来ない感じですね。現状は強化がさほど必要に感じられないのと効率的なアイテム集めの手段がイマイチわからないので。この先、難度が上がればアイテム収集にも力が入るのかなと。
 一方でタイムリミットが常に宣告されているので、落ち着いてアイテム収集に没頭できないという側面もあります。実際、獣化がどの程度シナリオ進行に関わってくるのか予測がつかないので、かなり慎重にプレイしてます。でも、もっとガッツリ行った方がいいのかなあ。うーん。悩ましい。


 ところでパンドラの塔で自分が一番ドキワクしてしまうのは、キレイに纏まったゲームデザインです。
 主人公エンデの武器が鎖、塔を支える鎖、塔の内部にも鎖、鎖、鎖…… 社長が訊くでも触れていましたが、元々無骨な鎖は華奢な女性との対比で置かれたガジェットだったワケですが、これでもかとばかりに鎖をあちこちに置いていて、存在感がしっかり示されています。
 ボス部屋の扉はこれまた鎖で封印されていまして、ボスを倒すにはまず鎖を破壊しないといけないと。鎖で守られた扉…… なんとなく逆転裁判2のサイコロックを連想させる感じです。
 鎖の端っこを破壊することで、ボス扉を封印する鎖が消滅するという仕組みになっていまして、塔の壁にはボス部屋に繋がる鎖が工場の配管よろしく這い伝っているんですね。ご家庭のLANケーブルとか電話線とかでもいいですが。
 で、壁を伝う鎖を見てプレイヤーは思うワケです。「あ、この鎖の先にボス部屋があるぞ!」「あ、この鎖を追っていけば鎖を壊せるぞ!」と。
 3Dアクションでパズルチックなゲーム。ゼルダなんかもそうですが、どうやってプレイヤーに謎解きのヒントを与えて目的地まで誘導するかは重要なポイントです。かと言ってヒントを与えすぎてはならないワケで悩みどころであります。
 パンドラの塔は鎖というガジェット一つでこの問題を解決しているんですね。世界観を統一しつつゲームシステムに組み込んでいると。これは素晴らしいアイディアです。
 また、塔を攻略する手順としてボスの扉を開けるためのチェックポイントを複数用意することで、プレイヤーに適度なタイミングでの達成感を与えることにも成功しています。
 このゲームは副題「君のもとへ帰るまで」の通り、塔を探索しつつも戻るまでが重要なゲームで、そうなるとプレイヤーとしては戻るタイミングを常に計りつつ行動することになるんですね。
 やっぱり帰る際には手土産の一つも持ち帰りたいというのが人情ですから、ボス扉を守る鎖を一つ破壊するというチェックポイントが用意されていると、攻略が一歩進んだという確かな実感を与えてくれるワケです。「よし、今回の探索はここで切り上げよう」という名目を与えてくれるんですね。
 それが意図的なものであることは、鎖の破壊後に「セレスは今どうしてるかな……」から始まるカットシーンが挿入されていることからも明らかで、「ここは一度帰るタイミングだよ」というゲーム側からの示唆でもあるんですね。
 でも、一方で強制的に帰らせるワケじゃない。この自由度が心地よく感じるんです。「危ないけど、もう少しだけ踏み込んでみようかな」みたいな挑戦意欲を同時にくすぐられるんですよね。
 また、探索の舞台が塔というのも、これまた「進むか戻るか」なゲームデザインとマッチしていて、どれだけ塔の高いところまで踏み込んでも落ちるだけで帰れるんですね。帰るのは割と簡単。
 いつでも止められるゲームをついつい続けてしまうように、中断のコストが安いとついつい深入りしてしまうことってよくあります。「いつでも帰れるから」という理由で塔の探索にのめり込んでしまった結果、気づいたら「残り時間があと僅かしかない!」なんてこともよくあることで。
 気軽に奥に踏み込んで行けるからこそ判断が遅れがちになる。人間心理を上手く使っているなあと思います。
 また、舞台が塔なので「最上階に向かえばボス部屋がある」ってのが明確なんですよね。前に進むと上に登るがほぼ等しい。このわかりやすさって大事だなと思います。


 あとはやっぱりヒロインに肉を食べさせるシーン。これはインパクト大ですね。
 日本人って「食」に凄く拘るんですよね。基本的に温厚な性質でも「食い物の恨みは怖い」なんて言葉があります。
 食文化に対する興味が深い。だからこそゲーム内の食事でも実体験に近く感じられる。生々しいんですね。
 一応、ゲーム内では宗教的な事情から肉食が禁忌とされてはいますが、それでもあんな見た目の肉(って言うか内臓)を食べるのはイヤですよ。しかも生でなんて!
 もう食事シーンのセレスへの感情移入は半端じゃないですね。しかも自分が食べさせているんだ、というのがツボで。罪悪感が芽生えますね。
 セレスがえずくところなんかもう大変です。「なんてことをさせてるんだ、自分!」みたいな。


 ただ、自分がマズいメシを食べるのって結構耐えられる気がするんです。腐ったおにぎりを食べるシレンとか。まぁ、我慢すれば食えないことはない、みたいな。
 どうしてもゲームキャラクターへの一体感ってのは限界がありまして、イヤなものからは目を背けてあっさりと一体感を拒否する仕組みを人間は備えているんですよね。
 パンドラの塔でエポックなのは、自分じゃなくて他人にマズいメシを食べさせている点なんですよね。自分のことなら「これは自分だけど自分じゃないよ」と逃げられる。でも、ヒロインは元々他人なので拒否しようがない。ヒロインの苦痛を想像して、ゲームの内でも外でも顔を歪めるしかないんです。ロールプレイングですよね、まさに。


 アニメでよく見るうまそうなメシって情感を揺さぶられるんですよ。でも、一方でマズそうなメシってのも、これはこれで情感を揺さぶられるなぁと痛感した次第です。これは本当に素晴らしいアイディアですね。
 しかし欲を言えばもっと豪快に食べて欲しかった。食事時のあのなんとも言えない罪悪感をもっとひたすら味わわせて欲しかった。割とあっさり食事シーン終わっちゃうんですよね。
 まぁ、3Dだとなかなか食べかけを表現しづらいので、そこはしょうがないところでもあるんですけどね…… 食べても食べても減らないパンとか、それはそれで違和感があったりします。


 情感を揺さぶる、情動を引き出すのがエンターティメントの仕事という観点では、パンドラの塔、素晴らしい仕事をしています。メシマズゲーという新境地!
 「メシがうまそうなゲームと言えば朧村正。そしてメシがマズそうなゲームと言えばパンドラの塔!」キャッチコピーはこれで行きましょうよ。あ、勿論アクションも楽しいですよ。ザコ戦は爽快、ボス戦は工夫が大切で手応え十分です。

▼デビルサバイバー2発表!

 http://www.famitsu.com/news/201103/24041611.html

 遅まきながらデビルサバイバー2発売決定だそうで。これは嬉しいなあ! 3DSじゃなくてDSですけど。
 元々3DSのソフトラインナップにデビサバが並んでいたので期待はあったんですけど、その後に発表されたのがデビサバ1のリメイク、デビルサバイバーオーバークロックだったもんで、そん時はズコーッてなりましたわ。
 デビサバは期待より売れなかったのかなー(新規タイトルで10万本超えてるんだから十分だと思うんですが)、デビサバOCでノウハウと開発費稼いで2作るのかなー、みたいなことをぼんやりと思っていたので、まさかこのタイミングで続編の発表があるとは思いませんでした。しかもDSで。
 まぁ、2年間開発してきたそうですから、3DSにプラットフォームを移すのも時期的に微妙だったのかもしれませんし、普及台数的にもまだまだDSに利があるでしょうから、この判断は非常にアトラスらしい堅実なやり方ではあります。……デビサバ2出してからデビサバリメイクでもよかったんじゃないかと思うんですけどね。
 なんか「バンザーイ!」と素直に喜べるところがデビサバリメイクが挟まったおかげで「バンザ…バン? バ、バンザーイ……?」みたいな、どうもぎくしゃくした挙動になっています。でもでも、嬉しいことは嬉しいんですよおっぱい!


 ……失礼、取り乱しました。さてまぁ、初報を見る感じでは前作とあんまり見た目的には変わりはなさげですね。あ、開発スタッフでは音楽にイトケンさんってのがビックリしたところかなー。前作の音楽は激しすぎて自分はあんまり好みじゃなかったので、イトケンさんのBGMは期待しちゃいますね。メガテン+イトケンってなんかあんまイメージが浮かばないんですけど! どうなるんだろなあ。
 ヤスダさんがメインキャラだけ担当ってのもいいですね。それだけ集中できるってことですし、前作はモブのヤクザとか自衛官が迫力不足でちょっと緊張感を損ねていたように思うんですよね。あ、メインキャラは申し分なかったですよ。
 鬼頭さんについては…… 鬼頭さん自身よりむしろ金子さん忙しいのかという印象が(笑) 前作もボスだけ書き下ろしていましたけど、いよいよ金子さん離れちゃったなあという。まぁ、自分は「金子さんじゃなきゃダメ!」っていうほど筋金入りでもないので特徴的でわかりやすいデザインならそれでいいですね。
 前作から継投するディレクターの高田さんと古東さんについては前回も楽しませて貰ったので心配無用と考えていますけども、一つ気になるのは古東さんのコメント「デビサバは選択のゲームです」という一言です。
 今回、舞台が山手線の中から日本全土に広がるんですが、タイムスケールは前作と大差ないってのが非常に気になるんですよね。ゲーム的な都合はあってもまぁ、山手線圏内なら一日でウロウロ歩き回れるなーって範囲じゃないですか。
 でも、日本全国、まぁ、主要都市って言ってますから北海道から沖縄までってスケールではないでしょうけど、未知の侵略者が攻めこんできたこの非常事態で日本全国を駆け巡って7日で幕を下ろすって結構大変じゃないかしら、と思うんですよね。まぁ、ベルトスクロールな展開ならやってやれないことはないですけど。
 なんとなく今回のデビサバ、「選択のゲーム」ってひょっとして「救う都市と見捨てる都市を選択するゲーム」だったりするんじゃないかなー、なんて思ったりします。東京から名古屋に向かう間に侵略者が静岡と新潟に現れた。さあどうする、みたいな。……ないかな。
 13人の悪魔使いが一つのマップで犇めくのも前作の感覚で言えば難しいので、何チームかに分かれて行動しそうな気もするんですけども(てか、13人全員が戦闘要員とは限らないんですが)、その辺で戦術級のゲームだった前作と比べて戦略級のゲームになっていると前作からの進化が明確になるなあと思ったりもして。まぁ、それだけシステムに差異があるならもっと前面に出してくると思うので、やっぱり違うかなと思ったりしますが。日本全国が舞台ってことでこんな妄想をしてみました、ということです。


 あと、今回の敵キャラ、侵略者、セプテントリオンセプテントリオンと聞いてヒューマンを思い出すか、ガンパレードマーチを思い出すかで年齢がわかるような気がしますが、さておいてセプテントリオン。日本でいうところの北斗七星ですね。今現在明らかになっている木曜の侵略者アリオト、あとスクショに名前のあるドゥべも名前の由来は北斗七星です。
 じゃあ、今回のボスキャラは北斗七星の名前にちなんだボスキャラなのかなとパッと想像がつきます。アリオトは北斗七星で言えば5番目の星です。日、月、火、水、木……ああ、5番目だ。あってるあってる。
 ……と、考えたところで「あれ?」と首を傾げたんですよね。日曜日から始まってる。なんか妙だぞと。
 一週間の区切りを考える場合、始まりを日曜日と考えるか月曜日と考えるか。カレンダーは日曜始まりですけど、メガテンの場合、月曜日から始まって日曜日で終わるほうがしっくり来るような気がするんです。それはやっぱり創世記を連想するからですよね。神様は初めに昼と夜を作って、7日目に休んだというアレ。
 前作も割とそういうイメージを重ねた節があったんですけど、また同じことをやるとワンパターンになってしまうので、今回は趣向を変えてキリスト教色は薄めますよ、ということなのかもしれません。……ちょっとググッてみたら月曜始まりは旧約聖書由来、日曜始まりはキリストの復活絡みだとかって話が出てきたので、どっちでもいいのかっていうなんとも締まらない結論になったりもしたんですけど。まぁ、これも妄想ですね!


 ともあれそんな感じで今はスナップショットから得られるちょっとした情報から色々と妄想を逞しくするのが楽しいです。続報出てきたら全然違ってたりすることはしょっちゅうなんですけどね。

▼3DSのARゲームズでボードゲーム「パンデミック」を紹介する・その4

 これまでのあらすじ! 足元がぐにゃりとしたのでプレイヤーカードをめくってみるとエピデミックカードが転がっていた。世はまさにヨハネスブルグ


 先日の大地震からこの方、福島原発では必死の復旧作業が続けらています。建屋の爆発事故や燃料貯蔵プールの核燃料の露出など傍から見ている分には血の気の引くような局面も多々ありましたが、現場の方々はまさに文字通り命を懸けた作業で最悪の事態に繋がらないよう努めています。不眠不休の対応には本当に感謝に絶えません。
 敢えて原発事故とパンデミックを絡めて語ると「ダメージコントロールの重要性」をひしひしと感じます。一度起きてしまったトラブルはもうどうしようもないと。じゃあどうやって被害を最小限に食い止めるか。今後発生するであろう災害に対してどんな予防策を今から講じられるか、実行できるか。被害は被害として総括した上で、致命傷だけはなんとか避ける、という考え方が非常に重要だなと感じるのですね。
 パンデミックに慣れたプレイヤーは、感染の少ない都市に病原体が置かれた時に「ああ、よかった」と感じます。どの都市に置かれようが病原体が病原体に変わりないことを思えばなんだか不謹慎にも思えますが、ダメージコントロールの観点で言えば致命的な病原体とそうでない病原体ってのは確実に差があるんですよね。
 リソースが限定された状況では、発生したトラブルが致命的か否か、今すぐ対処する必要があるか否か、的確に見極める知識が生き抜く力になります。パンデミックでは刻一刻と変わっていく状況に適したプライオリティの変更が重要になりますが、現実でも指先の怪我でパニックを起こさずに済むように日頃から正確な知識と判断力を身につけたいものですね。






 東アジア、中央アジア、アフリカと病原体拡大のラッシュが予告された今、何よりも急ぐべきは「感染者の治療」による病原体の除染です。このまま放置していればアウトブレイクの連続、まさに題字通りのパンデミックが引き起こされる事態に至るのです。



 さて、そんな危機的状況でのマリオの手番。本来であれば人類に希望をもたらすはずの4枚の赤の手札も、この状況ではいささか力不足に感じられます。



 とは言え、この局面でやることは一つ。まずは4枚の赤の手札を消費して治療薬を作ります。



 ようやく4つの治療薬のうちの1つ目が完成しました。ここにいたるまで既に2度のエピデミックと2度のアウトブレイクが発生。遅れを取り戻さなければなりません。



 さて、赤の治療薬が完成したことで、今後東アジアに対しては効率的な処置が期待できます。未だ爆発前の危うさを秘めてはいるものの一安心といったところでしょうか。




 さて、東アジアはひとまず置いて、まずは中央アジアに蔓延る病原体の鎮圧に向かいます。



 病原体ビル群の中央に屹立するカラチの病原体を排除。



 ひとまずこれでカラチ発のアウトブレイクを阻止することはできました。……が、貴重な手番を消費した割にはあまり除菌が進んでいないのも事実。歯がゆさを覚えつつも今できるこれが最善の手です。



 さて、マリオのドロー。ひとまずエピデミックを引く可能性がないのは安心できるところでしょうか。



 引いたカードは赤のジャカルタと青のサンフランシスコ。



 欲しかったのはどちらかと言えば黒のカードだったんですけどね…… 赤の治療薬は既に完成済みなので赤カードの需要は薄く、青の欧米エリアは病原体の拡大がさほど見られません。



 続いてガノン様の手番。まぁ、出てくる感染カードは既に「予知」で明らかになっているのですが……



 というワケで赤のソウルと黒のカラチを引きました。



 マリオ懸命のBダッシュでなんとかカラチのフォローには間に合いましたが、これでカラチには再び3つ目の病原体が乗ります。次のエピデミックまでは安全とは言え、今回のような「予知」でのフォローが不可能なことを思えば早急な対処も考慮に入れなければなりません。



 そしてソウルは都合4つ目の病原体コマ。アウトブレイクの発生です。
 ソウルかカラチ、どちらか一方を捨てなければならない状況でソウルを選んだのはソウルの方が隣接都市の数が少なく、病原体の飛散を最小限に抑えられると踏んだからです。
 しかし、ソウルはこれで2度目のアウトブレイク…… 1つの都市が複数回アウトブレイクしたところでルール的な影響はないのですが、その光景を想像するとなんとも心が重くなるところです。




 さて、これでアウトブレイクマーカーは2から3へ。残りの猶予は4回。ハイペースで推移しています。



 続いてたぬきちの手番。手札に4枚の黄色カードが揃っているので、今後は黄色の治療薬の作製を狙いたいところです。



 が、ここでたぬきちはマイアミカードの使用を決断します。治療薬を完成させるよりもまずは病原体の拡大を抑える方が先決だと判断したためです。



 マイアミカードはさきほどサムスから譲渡されたばかりのカードです。つまり現在マイアミにいるたぬきちは、マイアミカードを使用することで世界中の好きな都市に一足飛びで移動することができるんですね。この行動はルール的には「チャーター便による移動」と呼ばれています。



 ということでマイアミから一路ヨハネスブルグへ移動します。




 ヨハネスブルグで「感染者の治療」。これでヨハネスブルグアウトブレイクを阻止することができました。



 そのまま息をつかずにハルツームへと移動します。




 そしてここでも「感染者の治療」。爆発寸前の危険なアフリカ大陸でガス抜きに成功しました。



 続いてプレイヤーカードのドロー。今回消費してしまった黄色カードを上手く補充したいところです。



 しかし、引いたのは黒のアルジェと赤の台北。治療薬が完成してからいらないカードを引くのは稀に良くあることです。



 黒のカードはできればマリオに引いて貰いたかったのですが…… 手札の色が散らばってしまったのはあまり好ましい状況ではありません。



 さて、次はガノン様の出番です。今回の感染カードも予告通り……



 黄色のハルツームヨハネスブルグ。これで予知で先読みした感染カードは全て出尽くしました。



 間一髪でアウトブレイクを避けたものの再びアフリカ大陸に病原菌が蔓延することに…… 苦しい防戦が今なお続きます。



 続いてフォックスの手番。手札も方向性が乏しくイマイチ目的が見えてきません。



 中央アジア、アフリカとアウトブレイクを回避してきましたが、次に爆発的感染が予期されるのは東アジア。なんとか危険性を排除したいところです。(あ、たぬきちMii置くの忘れてた)



 ここでフォックスはモスクワカードを使用。現在地がモスクワのフォックスは、さきほどのたぬきちと同様にチャーター便による移動ができるのです。




 ということでフォックスは一路ジャカルタへと移動します。




 そしてジャカルタでフォックスが何をするかというと……



 フォックスの特殊能力でサムスをジャカルタに引き寄せます!



 ここでサムスの特殊能力が発動! 「自分がいる都市にある治療薬が発見されている病原体すべてを、アクションを消費せずに即座に取り除く」というものがそれです。



 この能力はサムスのターンでなくても発動するので、今回のような通信兵の特殊能力による移動、もしくはスペシャルイベントカード「空輸」による移動でも同様に効果を発揮するのです。



 ということでジャカルタの病原体はサムスによって一掃されます。同じコマンド1回分ですが、フォックスが「感染者の治療」を試みるよりも効率的な治癒ができました。



 サムスとの共同作業を終えたフォックスは足早にジャカルタを後にします。




 またしても自身の特殊能力でフォックスはたぬきちのいるハルツームへと移動。その目的はというと……



 手札にあるハルツームカードを手渡すためです。そう、たぬきちに必要なハルツームのカードを手渡すために、二人はここまでの行動を計画実行してきたのです。



 これでたぬきちの手には再び4枚の黄色カードが。フォックスの手札にはもう1枚黄色のメキシコシティのカードがありますが、これを上手く手渡せれば黄色の治療薬の完成が見えてきます。



 さて、パンデミックでは手札の上限が7枚までと決まっています。8枚以上の手札を得た場合にはその瞬間に手札の整理を行わなければなりません。
 ということで既に治療薬の完成した赤のカードを捨てることにします。



 製薬に5枚のカードが必要なマリオ以外のプレイヤーは何気にこの手札制限が厳しかったりします。引けるカードには限りがあるので無駄に手札を捨てる事態はなるべく避けたいところです。



 さて、アクションを使い果たしたところで手札の補充です。不測の事態を回避すべくスペシャルイベントカードでも引きたいところではありますが。



 ということで引いたのは黒のチェンナイと青のマドリード。うーん、微妙だ……



 青のカードが地味に3枚揃ってきましたが、今回優先度の低い青の治療薬は後回しでも構わないんですよね。黄色や黒のカードは必要としているマリオやたぬきちに渡せればベストではありますが。



 さて、続いてはガノン様の手番。「予知」の効果が終わり、ここからは全く先の読めない展開が続きます。



 注目のカードはバグダッドとマイアミ! 果たしてどうなるか……



 バグダッドには2つ目の病原体が積まれます。中央アジアの攻防は一進一退が続きます。



 そしてマイアミ。こちらは周囲に病原体がないので最悪の事態が起きても被害は軽微といったところでしょうか。中南米にはまだまだ余裕があります。



 続いてサムスの手番。手札の少ないサムスはひとまず衛生兵の本分を尽くしたほうがよさそうです。



 先程のフォックスの能力のおかげでサムスには力を存分に振るえる環境が整っています。まずは病原体のタワーが乱立するこの東アジアに平穏を取り戻さなければなりません。



 ということでパワードスーツ蒸着!



 モーフィングボール形態になった彼女は……



 ジャカルタを北上し、バンコクへ。この瞬間、彼女の能力が発動し、行動アクションの消費なしに病原体が消滅します。



 病原体を轢き潰すように香港へ。



 さらに上海。



 最後に北京に到達。



 なんとこのターンでサムスは東アジアに巣食っていた病原体を纏めて一気に駆逐しました! まさにサムス無双。背中に天の文字が浮かんで見えるようです。



 この成果にサムスもご満悦。続いてカードの補充です。



 引いたカードは黒のバグダッドと青のニューヨーク。



 色はイマイチ揃いが悪いですが、彼女の手札は移動用と割り切るのもありかもしれません。



 フィーバー状態の東アジアを鎮火されてちょっぴり気怠げなガノン様。出番ですよ!



 さて、ガノンが引いたのは青のトロントと黒のデリー。



 トロントは地味に病原体を積み上げていよいよ3つ目。北米は比較的平穏な状況が続いていますが今後の展開次第では荒れるかもしれません。



 そしてそれ以上に問題なのは中央アジアのデリー。排除しても排除しても次から次に病原体が積み上がっていきます。ここ3ターンほど、ずっと黒の感染カードを引き続けていることもあり、中央アジアにまたしても爆発の気配が漂って参りました。



 という感じで2度目のエピデミックカードと直後の「予知」カードによる攻防も終わり、1度のアウトブレイクを許しながらもプレイヤー側はなんとか命を繋いでいるといった感じでしょうか。アウトブレイクの連鎖という最悪の事態を回避できたため、人類にもなんとか行動の自由が生まれてきましたが、治療薬の作製に必要なカードを消費してしまったりと未だに反撃の糸口は見えないままです。
 次のエピデミックカードも着々と近づきつつあることを考えれば、その対処も今から考えねばならず、プレイヤー側は製薬と治療の両睨みでシビアな舵取りを求められる状況が続きそうです。

▼3DSのARゲームズでボードゲーム「パンデミック」を紹介する・その3

 これまでのあらすじ! あ…ありのまま 今 起こったことを話すぜ! 『エピデミックカードを引いたと思ったらいつのまにかアウトブレイクしていた』 な… 何を言ってるのか わからねーと思うが(略)


 ARゲームズを使って紹介するパンデミック。今回はARゲームズの扱いで困った点についてちょっと触れてみましょうか。
 ARゲームズMiiを写すにはARカードが必要です。盤面に?カードがチラチラ見えますが、それがARカードですね。
 ARカードがなぜ必要かと言えば、Miiを置くための地面の基準点を設定するためで、これがないと基準となる地面がわからず、Miiが宙に浮いた状態になってしまうんですね。盤面も情報が詰まっているボードゲームではARカードの置き場にも結構苦労します。
 カメラの写角にARカードが入っていないとMiiが出てこない。かと言ってARカードを写角に収めると邪魔になるこのジレンマ。もう一回り小さいサイズのARカードを用意すればこの問題は解決するのかな、と思いますが、一方でカメラの分解能の範囲でしかARカードは認識できないのであまりにも小さなカードは認識できません。
 同様の理由でカメラを思いっきり引いたアングルも難しいんですね。盤面全体を見渡すアングルが少ないのは実はそうした理由があったりします。


 さて、プレイヤーターンが一巡し、再びマリオに手番が戻ります。マリオの手札は黒1枚、赤3枚。マリオは特殊能力で同色のカードが4枚あれば治療薬を作れるので、次の手番では確実に治療薬を完成させたいところです。


 手札の補充に任せるのも手ではありますが、確実を期すならば「知識の共有」でサムスから赤カードを貰うべきでしょう。現在サムスは北京と大阪、2枚の赤カードを有しています。


 さて、そうなると問題は北京と大阪、どちらのカードを貰うべきか。ここで色々な選択肢が生まれます。勝利を目指すのであれば、より効率的なカードの受け渡しや、製薬後の見通しにも注意を払わなければなりません。
 また、治療薬を作るためには調査基地が必要です。調査基地の設置には「自分が現在いる都市のカードを捨札にする」必要があるので、北京か大阪、どちらかに調査基地を設置して、残ったカードを手渡すという流れが一番スタンダードになるでしょうか。
 そうなると調査基地を置くべきは北京か大阪か、という視点からも選択を考慮する必要がありそうです。


 とりあえず、盤面を観察してみると、シドニーから大阪、北京はそれぞれ3マスの距離。どちらで受け渡すにしても大差はないように思えます。
 そうなると考慮すべきは調査基地の設置になるでしょうか? 調査基地の設置が必要なら、話はマリオとサムスだけではなくたぬきちの起用も選択の俎上に上ります。そしてたぬきちを極東で活躍させるならフォックスの協力も不可欠です。あるいはサムスのスペシャルイベントカード、「空輸」を使う手もあります。
 よりスムーズに製薬を完了するための手順は何か? 4人は喧々諤々の議論を重ねた末に一つの回答を導き出しました。





 まずはマリオ。シドニーからマニラ、台北を経て大阪に移動。1アクション余すのはもったいないところですが、これで終わりです。



 次に手札の補充。あるいはここであっさり赤カードが出てしまう可能性もあるわけですが、さて。



 引いたカードは黒のカラチとスペシャルイベント「予測」でした。



 「予測」のイベントカードは、「感染カードの山札の上から6枚のカードを見て、好きな順番に並び替え、山札の上に戻す」というもの。エピデミック直後のような、次の感染が予測できないタイミングでは頼りになるカードです。



 補充を終えてマリオの手札はこんな感じです。黒のカードが揃ってきたので赤の治療薬が完成してからは黒の治療薬の完成を目指す、という方向性もうっすら見えてきました。



 続いて感染カードのドローです。



 ガノンドロフが引いたのは黒のモスクワと青のトロントでした。



 モスクワは先のターンでサムスが病原体の除去に成功した都市です。病原体を駆逐していなければここでアウトブレイクが発生していたことを思えば、先程のサムスの選択は正解だったと言うことでしょう。



 トロントにも病原体が乗ります。北米地方は比較的おとなしい状況ですが、シカゴに感染が広がりでもすれば一瞬で火薬庫になりかねない状況でもあ
ります。



 続いてたぬきちの手番です。手札はこのように黄色一色。ドロー運はおしなべて良好といったところでしょうか。



 さて、たぬきちの現在地はバグダッド。ヨーロッパ、アジア、アフリカを繋ぐこの都市は、6つもの近隣都市を持ち、交通上、非常に重要な地位を占めています。つまり、バグダッドは調査基地を設置するのにうってつけの都市というワケです。



 ここでたぬきちの作戦エキスパートとしての能力が役立ちます。前述したように調査基地の設置には都市に対応した手札が必要になるのですがたぬきちはその制限を無視して調査基地を設置することができるのです。
 ちなみに置ける調査基地の上限は6個です。7個目の調査基地を設置する場合、設置済みの調査基地を1つ破棄しなければなりません。



 村人の了承も得ずに増築工事を済ませる手際の良さがここでも活かされ、たぬきちは調査基地の設置を滞り無く完了させます。「お代は銀行に振りこんでくれだも!」



 さらにここでサムスがスペシャルイベント「空輸」を使用。このようにスペシャルイベントカードは自分の手番でなくてもいつでも使用できるのです。



 目標は言わずと知れたたぬきち



 たぬきちをマリオの待つ大阪へと一気に空輸します。



 そしてここでも特殊能力で調査基地を設置します。これで治療薬を作る条件がまた一つ整いました。



 調査基地から飛び立つたぬきち。ありがとうたぬきち! ……って、一体たぬきちはどこに行くつもりなんだ?



 たぬきちが訪れたのは本部のあるアトランタ。実は調査基地から他の調査基地へは1回のアクション消費だけで移動できるんです。現在、調査基地が設置されたアトランタバグダッド、大阪はそれぞれ相互に移動可能なんですね。言ってみれば調査基地はワープゾーンのような働きもするんです。



 さて、ここまで調査基地の設置→調査基地の設置→シャトル便による移動(調査基地間の移動)と3つのアクションを消費したたぬきちは最後にマイアミに移動してエンド。



 カードドローで青のシカゴとエッセンをゲット。



 手札はこのようになりました。黄色が欲しかったところですが、青も伸びてきましたね。



 続いてガノンドロフが感染カードを引く番です。引いたのはマイアミとリャド。




 マイアミ、リャドそれぞれ一つ目の病原体が置かれました。どちらも一つ目の病原体。……実はここが重要なポイントだったりします。
 というのは、今まで引かれてきた感染カードは全てセットアップで引かれて病原体が積まれた都市だったんですね。それらの都市はエピデミックを機会に山札に戻ったワケですが、ここに来て全部が捨札に送られたということになります。
 そしてこれから出てくる感染カードは全て初出の都市ばかりになります。襲い来る危機を脱してようやく安心して治療や製薬に励む猶予がプレイヤーに与えられたということなんですね。



 さて、ようやく攻めに転じる機会が与えられた人類側。今度はフォックスの手番です。



 このターンでフォックスがやらなければならないのはサムスを大阪に送ること。サムス自身は北京のカードを持っているので自力で大阪にたどり着くことはできますが、行動回数を有意義に使うためにもフォックスの能力を活用した方がいいでしょう。



 しかし、その前にまずはフォックス自身が移動します。



 自分の能力を使ってサムスのいるテヘランに移動。



 がっちりと腕を組み交わす二人。勤務地を引き継ぐバトンタッチと言ったところでしょうか。



 続いてフォックスがサムスを飛ばします。目標はもちろん大阪。



 大阪にてサムスとマリオの邂逅。これでいよいよ舞台は整いました。



 フォックスはモスクワへと移動し……



 「感染者の治療」で病原体を蹴り出して終わりです。
 ……ちょっと以前のサムスのターンを振り返ってみると、テヘランとモスクワを往復したサムスの前回の行動は勿体無かったですね。サムスがモスクワに留まっていればフォックスの行動もよりスムーズに進んだとも言えるのですが、そのタイミングでは直後に赤のカードを引くとは予想できなかったので仕方のないところです。カードの引き次第で緻密な計画に綻びが生じるのもよくあることですね。



 さて、フォックスの手札の補充。引いたのは青のサンクトペテルブルクと黄のメキシコシティでした。



 フォックスは青2枚、黄2枚、黒1枚とバラバラの手札です。今後はたぬきちやマリオに不要な手札を渡したいところですね。




 続いてガノンドロフの手番。バグダッドと香港の感染カードを引きました。



 香港に一つ目の病原体が置かれます。赤の治療薬が完成間近な現状ではダメージは微々たるものでしょう。



 バグダッドも一つ目の病原体。こちらはたぬきちが調査基地を置いたこともあり、対処は比較的容易い都市とも言えます。
 やはり、新出の都市が出てきてアウトブレイクの危険性が消えると安心感が違いますね。初手エピデミックだったことから次のエピデミックは遠くなるので、ガノンドロフとしては攻めあぐねる時間が続きそうですが、さてさて……



 続いてはサムスの手番です。既に彼女の役割は決まっていますね。



 まずは大阪のカードをマリオに手渡し。これで念願の治療薬完成にリーチがかかりました。



 シドニー、上海、ソウル、大阪のカードがマリオの手札。繰り返しになりますが、マリオだけは自身の能力で4枚の同色カードから治療薬を作ることができます。



 大阪を渡したサムスの手札はこんな感じ。黄色のマイアミと赤の北京が残っています。



 さて、サムスはこれからどうするか……?



 まずは空路で移動します。目的地は……



 本拠地アトランタ。ここからどうするかというと……



 マイアミに移動します。鬼の居ぬ間とサボりをキメていたたぬきちは哀れサムスに蹴られるハメに……



 それはさておきマイアミのカードをたぬきちに手渡します。すると……



 たぬきちの手札は黄色が4枚。今度は黄色の治療薬にリーチがかかりました。
 たぬきちはマリオと違い、同色のカード5枚を揃えなければ治療薬は作れません。しかしながら確実に手札は揃いつつあります。



 振り返ってみると前回のたぬきちは、赤の治療薬を完成させるための拠点設置と同時に、カードのパスを受け取るためにマイアミに走りこんでいました。ジャストタイミングの受け渡しを果たすべく計画が練られていたのですね。
 さらに遡ると、たぬきちがマイアミまで辿り着けたのはフォックスがたぬきちバグダッドに押し込んだこと、「空輸」のカードを惜しみなく使ったこと、様々な一手一手が重なった結果とも言えます。プレイヤー間の協力がなければこの受け渡しは次の機会へと長引いてしまい、時間を無駄に費やしてしまった可能性もある。そう考えると一手の重みがことさら感じられるんですよね。



 さて、2度のカード受け渡しでめっきり手札が寂しくなったサムスがカードの補充に臨みます。



 と、ここで引いたカードはエピデミック! 順調に事態が動き始めたと思わせた瞬間にまさかのカウンターです。
 簡単に計算したところ、2枚目のエピデミックカードを引くのは期待値で9ターン目っぽいので、8ターン目での遭遇は若干早いお目見えという感じでしょうか。いずれにせよ、反撃の糸口が一瞬で潰された。そんな印象を受けます。



 ここ2ターンほどダルダルだったガノン様大喜びの図。まさに逆転の一手と言っても過言ではありません。




 まずは感染度表マーカーを一つ動かします。今回は影響がありませんが、次にエピデミックカードを引いたらいよいよ感染度が3になる=毎ターン、3枚の感染カードを引くことになります。



 続いてエピデミックの発生都市を決定します。感染カードの山札の一番下からカードを引き抜いて出たのは……



 ジャ、ジャカルタ……? それって……



 もうすぐ治療薬が完成する東アジアじゃないかと。アウトブレイクの危険性を孕みつつも、速攻で除去される可能性もあり、両陣営にとってなんとも良否の判断が付きにくい場所です。



 続いてこれまでの捨札置き場に置かれていた感染カードを纏めてシャッフルし……




 山札に戻します。なんとか危険都市の処理にも目処がついたと思ったら、またしても感染の再拡大が危惧されるという…… これでまたプレイヤー側はアウトブレイクの恐怖に怯える時間が始まったということになります。



 さて、それでは記念すべき最初の感染カードを引くとしましょうか。



 と、ここでマリオが制止をかけます! スペシャルイベントカード「予測」は、エピデミック→感染カードドローの流れに割り込める数少ない手段の一つです。



 「予測」は「感染カードの山札の上から6枚のカードを見て、好きな順番に並び替え、山札の上に戻す」というスペシャルイベントカード。果たしてトップデッキにはどのようなカードが潜んでいるのでしょうか。



 ということで引いてみた6枚のカードがこれ。まぁ、見事に色分けされていますね。それぞれボードを見直してみましょう。



 まずはアフリカのハルツームヨハネスブルグ。って、これはヒドい……
 どちらも3つの病原体が乗っている上に、アウトブレイクが発生したらもう片方の都市でもアウトブレイクが発生する……いわゆる「連鎖反応」が起こる状態にあります。
 さらに言えば、ハルツームヨハネスブルグの両都市と隣接しているキンシャサでもアウトブレイクが発生する可能性があり、この2枚のカードを引いていたら間違いなく致命傷でしたね。



 続いて中央アジア。カラチは2つの病原体を抱えていますが、テヘランはキレイな状態です。とりあえずアウトブレイクが発生することはありませんが、早めに種火を消したいところです。



 最後に東アジア。ソウルは言わずと知れたアウトブレイク発生都市。あいかわらずヤバいです。香港は1つ病原体が乗っていますが、この地方は治療薬の完成を控えているので比較的対処はしやすいところです。



 とまぁ、各地の状況を鑑みて、こんな感じで感染カードを山札に戻すことに決めました。ガイドライン通りのヤバさを垣間見せるヨハネスブルグハルツームはとにかく後に回して、なんとか病原体を除去する時間を稼ぎたいところです。
 まぁ、あとはソウルも早くなんとかしないとヤバい……



 ちなみに各プレイヤーの感染カードの割り当てはこんな感じです。サムスはもう行動の余地なくカードを引かざるをえないので、どうしようもない状況です。



 そういう意味では「なんとかしてくれ!」と回りから詰め寄られるのがマリオ。果たしてマリオの限られた手数でどれだけの危険を排除することができるのでしょうか。



 さて、そんなワケでガノン様が予定調和に感染カードを引き……



 香港に2つ目の病原体を。



 テヘランに1つ目の病原体を配置して、このターンは終了。アウトブレイクは回避したとは言え、着実に危険水位へと近づいています。



 プレイヤー有利に運ぶかと思われた状況がたった1枚のエピデミックカードでひっくり返される。この混沌ぶりがパンデミックの醍醐味です。
 マリオの引いた「予測」のおかげでかろうじて方針を定めえたという状況ではありますが、先が見えるだけにここからの行動は詰め将棋の色合いを帯びてきます。病魔の跋扈するこの世界で、果たしてプレイヤーは何を捨てて何を守るのか、まさしく一手が生死を分かつ極限の盤面が今後は展開されるワケです。重いですね。ひたすら重いです。

▼3DSのARゲームズでボードゲーム「パンデミック」を紹介する・その2

 これまでのあらすじ! 開始1ターン目でまさかのエピデミック! 人類は滅亡するんだよ! な、なんだってー!


 ……というワケで、ARゲームズを使ったパンデミック紹介の続きです。紹介の順序としては「ターンの進行はこうなるんですよ〜」と基本的な流れを一度お見せしてから「うわ、エピデミック引いちゃった!」という展開が望ましく、また自分自身もそうなるだろうとタカをくくっていたんですが、さにあらず。カードの神様は恐ろしいですね。
 ちなみにこのパンデミック、乱数要素は基本的にカードドローだけでサイコロを振ったりはしません。なので運よりも計算、作戦が重要になるゲームです。
 ……と言いつつ、予定していた今後の作戦が一回のエピデミックカードでパァになっちゃうことも珍しくもなく。その辺、運と計算が非常に巧みに織り込まれたゲームなんですね。


 さて、そんなワケでプレイングを再開します。1巡目2番目はたぬきちの手番。スタート地点はマリオと同じくアトランタです。


 さて、たぬきちの手札を確認してみると南米アルゼンチンのブエノスアイレスとインドのカルカッタが持ち札にあります。治療薬を目指すにはちと遠い手ですね。


 一方でエピデミックの発生により中央アジアは病原体のタワーが乱立。一刻も早く病原体を除去しなければならない危険な状況です!
 というのもこのゲーム、一つの都市に置ける病原体は3つまでという制限があるんですね。で、もし4つ目の病原体を置かなければならない事態に至ったらどうなるか……? その時に起こるのが「アウトブレイク」なんです。
 アウトブレイク! 字面だけ見るとなんかのハリウッド映画のタイトルみたいですね。アクション映画っぽい感じの。実際に同名のバイオハザードな映画もあったりするんですが、アウトブレイクの詳細については実際にそれが発生してから説明することにしましょう。


 さて、話がそれましたが、この状況ではたぬきちは一刻も早く中央アジアの被害軽減に向かった方がよさそうです。とは言えアトランタ中央アジアは遠く隔たれていて、4回分のアクションを全て注ぎ込んだとしてもすぐに辿りつける距離にはありません。
 では、何か手はないのか? 実はそこでプレイヤーカードの出番が来るのです。
 ここまで地名が記された各色のプレイヤーカードは「治療薬の材料」とだけ説明してきましたが、実はプレイヤーカードには他にも3つの使い道があるんです。
 その1つが「カードを使用することでカードに書かれた都市に移動できる」。2つ目は「カードに書かれた都市にいる場合、カードを使用することで好きな都市に移動できる」というものです。
 この2つは、通常の移動に比べて遥かに自由な移動が可能ではありますが、カードを消費するということは治療薬の作製が遅れるのと同義なので、カードを移動に使うべきか否かは非常に判断に悩むところです。
 そして残る1つは「自分が現在いる都市のカードを使用して、調査基地を設置する」というものです。これも非常に重要なカードの用途の一つではあるのですが、調査基地について説明が必要になるのでここでは説明を割愛します。


 さて、そんなワケで一刻も早く中央アジアに向かいたいたぬきちカルカッタのカードを使うことに決めました。


 カードを使って空を舞うたぬきち! フレーバーとしては直行便を使った移動ということになっています。


 さて、カルカッタに到着後、デリーを経由してテヘランに移動します。


 残った1アクションで「感染者の治療」。これは都市にある病原体を1個取り除くアクションです。実に単純明快ですね。


 たぬきちのパンチで病原体タワーが崩れました。とりあえずテヘランアウトブレイクの危険を回避することには成功したと言えます。そのすぐ近く、モスクワは未だにアウトブレイクの危険性を抱えているワケではありますが……


 さて、アクションが終わったので次にカードの補充です。一度エピデミックが発生してしまえばしばらくは落ち着いた状況が続きます。そういう意味では先の読みやすい状況ではあるんですよね。
 で、たぬきちの引いたカードはキンシャササンパウロ。黄色2枚ですね。


 元々たぬきちの持っていたブエノスアイレスと合わせて一気に黄色カードが3枚たまりました。これはナイスドロー! 治療薬に必要なカード5枚が見えてきました。


 手札の補充が終わってからは感染カードのドローに移ります。これがエピデミックカードがない場合の通常のターン進行です。これが!


 ガノンドロフの引いたカードはバンコクとソウル。どちらも赤のアジアのカードですね。
 ……ん、っていうか、ソウル!?



 ソウルと言えば、一番最初に大規模感染が起きた超危険な都市じゃないですかーっ! つか、この展開ちょっとリアルで笑えない……


 というワケでソウルに4つ目の病原体が置かれる……のではなく、前述の通り、ここで「アウトブレイク」が発生します。……してしまいます。


 で、アウトブレイクとはなんぞやと言うと、話はごく簡単で「隣接する都市(赤の線で結ばれた都市)全部に病原体を1個置く」というイベントです。ソウルの場合、隣接する3つの都市、東京、上海、北京それぞれが病原体に冒されることになります。いよいよ(と言ってもまだ2ターン目!)病魔が海を超えて日本にも上陸してまいりました……!


 続いてボード左端にあるアウトブレイク表示表のマーカーを一つ動かします。初期位置は0にあるんですが……


 これを一つずらすと。
 勝利条件である4つの治療薬が完成する前にアウトブレイクマーカーが最大の8に達するとプレイヤー側が敗北します。つまり残りHPみたいなものですね。
 プレイヤーの敗北条件はアウトブレイクの回数の他、病原体が多すぎてコマが足りなくなったり、ゲームが長引いて山札がなくなったり(いわゆるライブラリアウト)といった場合もありますが、まぁ、一番よくあるのがアウトブレイクを重ねてのゲームオーバーなんじゃないかなと思います。
 ということで、病原体コマが3つ乗った都市は言わばアウトブレイクまでの死の宣告を食らっているようなもので、一刻も早く病原体を減らす努力を求められるワケですね。たぬきちが貴重なプレイヤーカードを投じてまでテヘランに急いだのはそんな理由があるワケです。
 一方でたぬきちの努力もむなしくソウルではアウトブレイクが発生してしまいました。これもカードの巡り合わせと言えばそうで、1回でも多くシャッフルしていれば状況がガラっと変わった可能性はあるんですよね。パンデミックはそんな避けがたい運命と時に戦い、時に受容するゲームとも言えます。


 さて、たぬきちの手番が終わり、続いてフォックスのターンです。ソウルでのアウトブレイクを目の前にしてさすがのフォックスもおかんむりといったところでしょうか。


 フォックスの手札をおさらいするとこの通り。先行したマリオを追ってシドニーの赤カードを渡したいところです。


 さて、前回マリオは陸路と海路、3回分のアクションを使ってシドニーまで移動しましたが、フォックスはなんと特殊能力で一気にシドニーまで移動できるのです。それが通信連絡員の「1アクションを消費して、いずれかのコマ1つをプレイヤーコマがある別の都市へと移動する」という能力。
 ここでいう「いずれかのコマ」はフォックス自身も含むので1アクションを消費することでフォックスは他の3人の滞在する都市ならどこでも一瞬で移動することができるのです。なんたるチート能力!


 ということで、あっという間にシドニーに到着。そりゃマリオも驚くってなもんです。


 カードを受け渡す条件である「二人が同じ都市にいる」「受け渡すカードと同名の都市にいる」を満たしているので、フォックスはシドニーのカードを滞りなくマリオに届けることに成功しました。
 さて、ここまでで消費したアクションは「移動」と「カードの受け渡し」で2回。フォックスの残りアクション2回はどのように使えばいいでしょうか?


 色々考えた結果、フォックスはサムスを移動させることにします。まだ一度も手番が回ってこないというのにエピデミックやらアウトブレイクやらハデな事件が頻発してサムスもどうにも困り顔といった風情ですが、それだけに世界は彼女の衛生兵としての働きを求めているのです。


 再び「1アクションを消費して、いずれかのコマ1つをプレイヤーコマがある別の都市へと移動する」能力を利用して、今度はサムスをたぬきちのいるテヘランへと移動させます。サムスの手札を温存したまま、サムスを中央アジアに送り込むことに成功したワケですが、実はたぬきちのカード使用はこれを見越した選択でもあったのです。


 さらにフォックスはたぬきちを隣の都市バグダッドに移動させます。これは通信連絡員のもう一つの能力です。
 たぬきちの移動は次の行動への布石なのですが、果たして青写真通りに上手く行くのか、さて……?


 そしてフォックス自身はシドニーでターンエンドです。


 さて、アクションが終わってから手札の補充です。


 フォックスが引いたのは青のトロントと黒のモスクワ。


 手札は見事にバラバラな色。とは言えフォックスは持ち前のスピードでサイドラインを駆け上がり、フォワードにラストパスを送る役どころ。バラバラの手札はむしろカバーできる範囲が広がったとも言えますね。


 さて、次はガノンドロフの恐怖の感染カードのお時間です。いまだに各都市でアウトブレイクの恐怖が残っているだけにこのドローは注目ですね。


 ガノンドロフが引いたのはテヘランとカラチ。黒の中央アジアに集中爆撃を敢行です!


 ところがどっこい、テヘランはさきほどたぬきちが感染者の治療を行った場所。アウトブレイクの発生の回避に見事に成功し、プレイヤー側は「してやったり!」といった表情です。
 仮にたぬきちがカードの使用を躊躇っていればここで2度目のアウトブレイクが発生していたワケで、これは幸運な巡り合わせである一方、果敢な努力の結果でもあるんですよね。パンデミックのプレイヤーとして一番興奮するのは、こういうギリギリのタイミングでアウトブレイクを避けた時だったりします。


 一方でテヘランの南にあるカラチは3つ目の病原体が積まれてアウトブレイク目前です。とは言え、カラチの感染カードは今引かれたばかりなので、もう一度エピデミックが起きて捨札が山札に戻らない限りは安全とも言えるのですが……


 さて、1巡目最後のサムスのターン。フォックスの能力で中央アジアテヘランからのスタートになります。


 サムスの手札は黄色のマイアミとスペシャルイベントの空路。今は特に積極的にカードを使いたい状況ではないですね。


 サムスはモスクワに移動。モスクワの感染カードは未だに山札に残っていて、アウトブレイクが起きる可能性を残しているため早々に病原体を減らす必要があります。


 モスクワで「感染者の治療」。ここでサムスの能力が発動します。


 衛生兵であるサムスの能力は「その都市にある病原体コマ1色を全部取り除く」というもの。まさに病魔との最前線で力を発揮する能力です。


 パワードスーツに身を包んだサムスのチャージビーム一閃!




 モスクワは壊滅しました(ウソ)


 冗談はさておきモスクワの混乱を収めたサムスはテヘランへと踵を返します。


 テヘランの病原体タワーにパンチ!


 テヘランを病原菌から開放し、中央アジアの沈静化に貢献しました。
 ちなみに今回の行動はテヘランから始まって、モスクワに移動→治療→テヘランに移動→治療と流れたワケですが、何もテヘランに戻ってこなくても、最初にテヘランで治療を済ませてからモスクワに移動してもよかったんですよね。
 なぜこのような順番でターンを終えたかと言えば、そこは次の作戦があったりなかったり…… 取り敢えず次の行動を見越してテヘランでターンエンドするのが望ましいとここでは判断した次第です。


 続いてサムスの手札補充。何が来るでしょうか?


 引いたのは赤の大阪と北京(多分)。ちょっと字が潰れて自分でも判断がつかないところがあるんですが、確かそうだったような気がします……
 マリオが喜んでいるのは、これで赤の治療薬の完成に目処がついたからですね。サムスがマリオにどちらかのカードを渡せば、マリオの手元には赤のカードが4枚揃うことになります(※マリオは特殊能力でカード4枚で治療薬を精製できます)。


 ということでサムスの手札はこんな感じ。スペシャルカードの空路は温存したまま緊急時に使いたいですね。


 続いてガノンドロフのターン。中央アジアをあっさりと鎮火させられてガノンも少々腹に据えかねた様子です。


 怒りの感染カードドロー。出たのは黄色のハルツームと黒のデリー。ここまで黒の出現率がかなり高いですね……


 デリーには2つ目の病原体コマが乗せられます。決して安全というワケではありませんがまだまだ手の打ちようはあるという状況ですね。


 が、ハルツームは都合4つ目の病原体コマ(そう言えばセットアップで3個乗ってた!)。もちろん一つの都市に4つの病原体コマを乗せることはできませんから……


 2度目のアウトブレイクが発生! ハルツームで拡大した感染症は陸路を通じて近隣都市へと拡大。南アフリカのほぼ全てが病魔の渦巻く暗黒大陸へと姿を変じてしまったのです。


 そしてアウトブレイクマーカーも2へと移動。まだ薬は一つも完成していないというのに、あまりにも急激な展開です。


 これでプレイヤー的にはようやく1巡完了なのですが、非常に濃密な1巡目だったように思います。初手のエピデミックに始まる2度のアウトブレイク。ぶっちゃけ自分がプレイしてきたパンデミックのゲームプレイの中でも屈指のキツい立ち上がりだったりします。ホントはもうちょっとゆっくりと始まるハズなんですが……
 パンデミックの展開には波があります。ピンチの後にはチャンスがあり、チャンスの後にはピンチがある。緩急が止めどなく続くジェットコースター感こそがパンデミックの面白さのキモではあるんですが、果たしてプレイヤー達はこの難局を乗り越えてチャンスを掴めるのでしょうか? 文字通り人類の戦いはまだ始まったばかりなのです……

▼3DSのARゲームズでボードゲーム「パンデミック」を紹介する


 3DSが発売されてからこの方、一つは何かしら記事を書こうと思っていたんですが、犬がかわいすぎてすっかり忘れていたワケです。あと、ARゲームズも面白くて。
 AR(拡張現実)って言葉はあんまり馴染みのない単語ではありますけども、カメラを通して見える画像に色々と映像効果をつける、みたいな感じでしょうかね。実際にその場にはないものが映し出されるんです。なんかこの説明だと心霊写真みたいにも思えますが。


 で、このARを見て誰もが考えるのが「飛び出すカードゲームとか面白そう!」ってことなんですよね。以前PS3でそれを実現したアイオブジャッジメントってゲームがありましたけど、あれはカメラどうしてたんだろ……?
 さておいて、実際にAR機能をプラスしたカードゲームが出たら面白そうですが、その前に自分で試してみちゃえ、と思ったのが今回の発端です。そうすればARの利点と欠点もよくわかるかなと。
 で、今回題材として選んだのはボードゲーム、「パンデミック」です。アメリカのZ-Man Gamesという会社が発売したゲームで、様々なボードゲーム賞を受賞した超面白いボードゲームなんですが、ボードゲームには珍しい協力型のシステムが非常に特徴的です。コンピューターゲームの世界でも近年は協力型のマルチプレイが非常に流行っていますけども、ボードゲームでも同じようなトレンドが見えるってのは面白いところですね。


 パンデミックについて色々解説すると、もうそれだけで延々長くなってしまうので、代わりにウィキペディアの解説ページを紹介しておきます。


 http://ja.wikipedia.org/wiki/%E3%83%91%E3%83%B3%E3%83%87%E3%83%9F%E3%83%83%E3%82%AF


 さてまぁ、このパンデミック。説明書のコピーを借りるとこんな感じのゲームです。


 君たちは、4種類の命にかかわる病原体に立ち向かう、高度な技術を持った医療研究チームの一員だ。君たちのチームは、病原体の感染の拡大を食いとめ、治療薬を開発するために、世界を飛び回ることになる。病原体が世界全体を覆う前に、これを撲滅すべく、個々の能力を生かして、チーム内で力を合わせなければならない。病原体が拡散(アウトブレイク)し、疫病が加速度的に広がるまで残された時間はわずか。君たちは、時間内に治療法を発見できるだろうか? 人類の命運は君たちの手に委ねられている!


 3行で言うと。
 1.病原体の爆発的感染で人類は滅亡するんだよ!
 2.な、なんだってー! なにか手はないのかキバヤシ!?
 3.よし、薬を作ろう!
 ということです。


 ウィルスが世界中に広がる前に


 4つのワクチンを作って世界を救おう!


 なんかARカードを使ってみたくてやってみました、って感じですけど。わかりづらいだけですね、これ。3Dだともうちょっとわかりやすく見えるんですよ!(言い訳)
 で、そうなると、「どうやってワクチンを作るの?」という話に派生するワケですが、これは「同じ色のカードを5枚集める」ことでワクチンを作ることができます。



 ボード上の各都市は大雑把に4つの地域(色)に分かれてまして、カードの入手は「現地の感染情報を手に入れる」みたいな意味なんだと思います。で、複数の感染情報を集めることで有効なワクチンを作ることができると。演繹的な発想ですね。
 一方で世界を死滅させる病原体は手札の補充と同時にガンガン拡大していきます。なのでこのゲームは病原体と製薬のマッチレースの様相を呈するワケです。


 さてまぁ、概要はこの辺で留めて、細かい説明についてはプレイリポートに挟んでいきたいと思います。
 ということで、ここからは世界を救う4人の医療研究メンバーとその能力を紹介します。メンバーはそれぞれ異なる能力を有していて、MMOの役割分担のようにそれぞれの長所を活かして目標達成に貢献するワケですね。


 まずは一人目。ドクターマリオ。科学者です。能力は「同一の色のカード4枚で、治療薬を発見できる」というもの。治療薬の作成には同色のカードが5枚必要ですが、マリオだけはカード4枚で治療薬が作れるワケですね。サッカーで言えば、ラストパスを貰ってシュートを決めるストライカー的な存在です。


 そして二人目はたぬきち。作戦エキスパートです。能力は「1アクションを消費することで、手札を出さずに、自分が現在いる年に調査基地を1つ設置できる」というもの。
 アクション、手札、調査基地と、ゲームで重要な単語が幾つか出てきました。調査基地は治療薬を作るために必要な拠点であり、同時に移動の中枢となる重要な施設です。本来、調査基地の設置には手札が必要なのですが、作戦エキスパートだけは手札を消費することなく調査基地を設置することができるんですね。


 三人目はフォックス・マクラウド。通信指令員です。能力は「自分のターンに、仲間のプレイヤーのコマを自分のコマと同じ要領で移動する」「1アクションを消費して、いずれかのコマ1つを、プレイヤーコマがある別の場所へ移動する」というもの。
 通信指令員は移動のエキスパートで、パンデミックの中でも屈指の強カードです。行動の際には取り得る選択肢が非常に広いだけに仲間プレイヤーとの相談が不可欠ですね。


 最後はサムス・アラン。衛生兵、いわゆるメディックですね。能力は「感染者の治療時に、その都市にある病原体コマのうち1色すべてを取り除く」「自分がいる都市にある治療薬が発見されている病原体すべてを、アクションを消費せず即座に取り除く」の二つ。
 衛生兵は病原体を排除するプロです。基本的にこのゲームは病原体の感染速度が除去速度を上回るので、その役割は病原体の撲滅というよりは感染の遅滞と言った方が正しいのですが、上手く病原体の撲滅に成功すれば後の展開が非常にラクになります。と言っても、1つの病原体を撲滅したところで残り3つを抑え切れないようでは本末転倒なので、衛生兵はピンポイントに危険都市を浄化して回るのが主な役割になるでしょうか。


 ちなみにパンデミックに収録されている役割カードはもう1枚あるんですが、このゲームは2〜4人用のゲームなので今回は登場しません。残り1枚は研究員というカードの受け渡しに特化したメンバーで、これまた強力なカードです。


 さて、メンツの紹介が終わったところでそれぞれカードを2枚引きます。ここで同じ色のカードを引けるとのちのち展開がラクになるんですが……


 お、マリオがソウルと上海、2枚の赤カードを引いていますね。フォックスも1枚シドニーの赤カードを引いているので、カードの受け渡しでかなりスピーディに赤の治療薬の完成が目指せそうです。


 サムスはスペシャルイベントと書かれたカードを引いていますね。これは特別な能力を持ったカードで、他のカードのように治療薬の材料としては数えられないのですが、それぞれ強力な固有の能力を持っています。いつでも使えるのが特徴なので、ピンチに直面した時に使うのが望ましいでしょう。
 ちなみにこの「空輸」というカードはプレイヤーのコマを好きな場所に移動させることができます。単純な能力ではありますが、それだけにどんな局面でも無駄にならない使い勝手のいいカードですね。


 さて、初期の手札が決まったら次に山札を準備します。山札は難易度によって作り方がちょっと変わってきます。
 難易度? そう、このゲームはプレイヤーが任意に難易度を設定することができるんですね。コンピューターゲームで言うところのイージー、ノーマル、ハードのようなモード選択です。
 難易度の調節はものすごく簡単で、山札に仕込むエピデミックカードの枚数で決まります。エピデミックカードは一言で言えばヤバいイベントカードです。


 エピデミック? 聞きなれない単語が出てきましたが、これはマニュアルによれば「一定の地域にある種の感染症や伝染病が予想値を越えて発症する、またはこれまで流行がなかった地域で発症する予期せぬ状況のこと」です。似たような言葉でゲームのタイトルでもあるパンデミックとはどう違うかというと、パンデミックは「感染爆発、汎発性流行、ある種の感染症や伝染病が世界的に流行すること。エピデミックが同時期に世界の複数の地域で発生すること」とあります。
 以前流行った新型インフルエンザで言えば、メキシコで爆発的に流行したのがエピデミック、それが世界各国に感染拡大したのがパンデミックと表現できる……のかなと思います。辞書的な正しさではないかもしれませんが。
 で、話を難易度に戻しますと、山札に仕込むエピデミックカードの枚数で難易度は調整できます。4枚〜6枚の範囲で選択できて、エピデミックカードが多いほど高難度ということですね。
 今回は一番簡単な4枚のエピデミックカードでプレイします。ちなみにルールを全く知らないプレイヤーが4枚のカードでプレイした場合、勝率は50%ほどなんだそうです。


 さてまぁ、最初に触れたようにパンデミックは協力型のゲームなんですが、捉えようによっては病原体との対戦ゲームとも言えます。本来パンデミックにはTRPGGMのような存在はいないんですが、便宜上「敵」の存在が明確だと話を進めやすいので、ここではガノンドロフを病原体の親玉的存在として扱ってゲームを進めたいと思います。このリプレイでガノンドロフが担当する処理は通常はプレイヤーが行うものです。


 まずはエピデミックカードを4枚並べ、その上にプレイヤーカードを乗せていきます。いわゆる4枚切りってヤツですね。


 で、山札が4つできました。4つの山にはエピデミックカードがそれぞれ1枚含まれているワケですが、これを混ぜないようにしてそれぞれシャッフルします。こうすることで定期的にエピデミックが発生するように調整しているワケですね。これ、チートとかでなく、公式なルールです。エピデミックカードの出現が偏るとプレイにムラが出すぎてしまうんですね。


 最後に山札を一つに纏めて完成。山札は治療薬の材料となるプレイヤーカードと狂乱を巻き起こすエピデミックカードが混ざっているワケです。エピデミックカードがどのような被害をもたらすかは、まぁ、実際にプレイを進めながら紹介していきたいと思います。


 さて、次に世界に病原体をばらまきます。このゲームでは病原体はブロック状の4色のコマで表現されています。


 どこに病原体を配置するかはボード上部に積まれた感染カードで決めます。良くシャッフルした感染カードを上からめくると……


 ソウルが出ました。



 ドカーン! はい、ソウルは3つの病原体に冒されてしまいました。
 めくられた感染カードの場所に病原体を積んでいきます。最初のセットアップでは、まず3枚のカードをめくりそれぞれの都市に3つの病原体を置きます。


 次いで中東のテヘランとアフリカのハルツームのカードが出ました。


 それぞれ3つの病原体を置きます。病原体のタワーですね。


 次にもう一度3枚カードをめくります。ここで出た3つの都市には2つの病原体を置きます。


 さらにもう3枚。ここで出た都市には1つ病原体を置きます。


 最終的な配置はこんな感じになりました。ちょっと遠目で分かりにくいかもしれませんが。


 中東、アジアが特に病原体が集まっていてヤバい感じですね。


 ということでセットアップは終了。ここからプレイヤーの手番が始まります。プレイヤーの初期位置はアメリカのアトランタアトランタにはドラマで良く出てくるアメリカ疾病予防管理センターがあるんだそうです。


 さて、このゲーム、スタートプレイヤーの指定にはこう書かれています。「プレイヤーの中で、一番最近病気にかかった人が先手プレイヤーとなります」……なるほど、ボードゲームらしいユーモア精神にあふれたルールですが、この連中の中で最近病気にかかったのって一体誰よ!?
 ……まぁ、よくわからなかったので最近マリオルイージRPG3でメタコロ病の撲滅に一役買ったマリオから順番に進めていきたいと思います。
 さて、プレイヤーは自分の手番に4回アクションを行うことができます。アクションの主な内訳は、「各種移動」、「調査基地の設置」、「治療薬の発見」、「感染者の治療」、「知識の共有」の5種類がありますが、治療薬の材料となるカードを交換する「知識の共有」をするために「各種移動」を繰り返すのが基本になるでしょうか。



 ↑手元でアクションを確認できるカードもあります。
 ちなみにこのゲーム、カードを受け渡すには結構な縛りがあります。
 例えばワシントンのカードを誰かに渡したい場合、カードを渡す側と貰う側の両方がワシントンにいなければならないという…… 現地の生の情報は現地でしか渡せないということなんでしょうね。
 なので、プレイヤーはかなり頻繁に移動を繰り返すことになります。移動はパンデミックの基本にして奥義ですね。


 さて、初期の手札を思い出して貰うと、まずは赤の治療薬が一番簡単に作れそうです。フォックスの持つシドニーのカードをマリオに渡したいので、まずは貰う側のマリオはシドニーに移動することにします。





 アトランタからシカゴ、ロサンゼルスを経てシドニーへ。都市間の移動1回につき1アクションを消費します。都合3アクションでシドニーへの移動を完了しましたが、これ以上やることがないので4回目のアクションはパスで終了します。
 アクションを使い切ったら今度はプレイヤーカードを2枚補充します。マリオがめくったカードは……


 げ、まさかの初手エピデミック!? まぁ、確率としてあるにはあるんですが、これはのっけから厳しい展開です……


 ということで、エピデミックカードの効果を紹介します。エピデミックカードには3つの効果がありまして、それぞれ1.感染率の上昇、2.感染、3.度合いの増加となっています。ここからはこれらの効果を順々に処理していきたいと思います。


 まずは「感染率の上昇」。感染カードの下にある感染率表にあるマーカーを一つ右にずらします。感染率表の数字が何を意味しているかと言えば、これはターンごとにめくる感染カード(ガノンが今乗ってるヤツですね)の枚数を示します。初期は毎ターン2枚の感染カードをめくるのですが、感染率が3になると毎ターン3枚の感染カードをめくることになります。


 次に「感染」。感染カードの山札の一番下から一枚引いて、この都市に3つの病原体を置きます。山札の一番下からカードを引くということはこれまで全く病原体に冒されていなかった都市が突如として被害に遭うということで、これはエピデミックを上手く表現したシステムだなーと初めて見た時感心したものです。まぁ、感心して済むだけならいいんですが、これはこれで発症都市の予測が全くつかないので恐ろしいことこの上ありません。


 ということでエピデミックが発生したのはモスクワ!


 中央アジアに黒いタワーが乱立しています。これはヤバい……


 さて、最後に「度合いの増加」。字面だけ眺めてもイマイチ意味の通らない言葉なんですが、まぁ、手順を追えば意味はわかると思います。


 まず、今めくったモスクワのカードを感染カードの捨札置き場の上に置きます。


 で、捨札を全部纏めてシャッフルします。



 最後に捨札を山札の「上」に置きます。……つまり、一回感染した都市は漏れなくもう一回引きます(感染が広がる)よ、という意味なんですね。この仕様を考えたデザイナーはドSに違いないですよ!


 さて、これでエピデミックカードの効果は終わりです。悲惨なイベントでしたね……
 だけどガノンドロフのターンはまだまだ続くぜ! ここからは通常の進行として感染カードを2枚引きます。セットアップでは1〜3個の病原体を都市に置きましたが、通常の進行では都市に置く病原体は1個になります。
 運が悪いとエピデミックカードで引いたばかりのカードをさらに引くこともあります。この間、抵抗する術はほぼ皆無。恐ろしすぎる悪夢の連続……


 ところがどっこいガノンドロフが引いたのはサンフランシスコとヨハネスブルグ。幸いにしてどちらも病原体の少ない都市だったのでこれ以上の感染拡大は避けられました……


 すっかり忘れてましたが、補充の終わったマリオの手札はこんな状態です。エピデミックカードを引くと単純に手札が1枚しか補充されないのが痛いところでもありますね。


 エピデミックカードをまさかの初手に引いたので、いまいちエピデミックの怖さが伝わりにくかったかもしれません。エピデミックの恐ろしさは、もう一つの重要なルール、アウトブレイクを引き起こす可能性がムチャクチャ高まるせいなんですが、アウトブレイクについてはまた改めて説明したいと思います。
 まぁ、セットアップで引いた感染カードが早々に山札に戻った以上、アウトブレイクもすぐに説明することになりそうですが……

▼ラジアントヒストリアのキャラクターについて

 前回のレポートではユーザビリティや演出面などゲームの根本となる骨格の部分について触れてみました。手触りは客観的に良否を判別できる部分なのでまずはそちらを優先しましたが、立派な骨組みも全ては肉が伴ってこそです。
 なので、今回は「肉」の部分、どちらかと言えば主観的な評価が滲みやすい、テキスト、キャラクターの味について感じたことを述べて行きたいと思います。


 ラジアントヒストリアは、開発者の方が何度も言明しているように滅びの世界を舞台に様々な人々が織り成す群像劇を謳っています。ということはシナリオの中心となるのは何よりも「人間」、キャラクターです。キャラクターを語ることがテキストを語るための最短の近道ではないかなと自分は考えます。
 キャラクターの評価ってのは何気に難しいものです。体験を通してしか感想を共有できないものなので、自分が「○○○はかっこいいよ! 魅力的だよ!」と言ったところで、「そんなものかね?」とまずは疑問が先立つのではないかと思います。それは自分も同じで、例えば開発者の方がキャラの魅力について熱弁を奮ってもイマイチ実感を覚えられないんですよね。
 それはなぜかと言えば、キャラクターの具体的な言動を抜きに語っているからなんですよね。極力ネタバレを避けたい商品の性質上、それは仕方のないことではありますが、一方で多彩なキャラクターの織り成す群像劇が魅力の本作ではキャラクターに触れずして魅力の全てを語ることはできないんじゃないか、と前回のレポートを自分で読み返してみて思いました。自分がワクワクした部分について伝えきれていないように思えたんですね。
 まぁ、自分がワクワクした部分はかなり主観的な、個人の趣味の入った部分なので、実際にユーザがソフトに触れた際に同じ感想を共有できるかどうかはわかりませんが、できるだけ具体的な言動を添えて、魅力を伝えられるように努めてみます。


 さて、主人公の設定が固定的な、物語を追体験するRPGでまず求められるのは、主人公に「共感」を抱けるかではないかと思います。
 それには人物の外面から内面を想像しやすいことが重要なんですが、事前の情報から極力耳を塞いで体験会に臨んだにも関わらず、自分は主人公ストックのパーソナリティをすんなりと掴むことができました。
 任務の遂行を第一とする職業人。人との関わりを避けようとする繊細な人柄という感じでしょうかね。こういう内省的なキャラの場合、一歩間違えると自意識過剰だったりナルシストだったりでイタさを覚えるキャラクターにもなりかねないんですが、自分が触れた感じでは、まぁ、立場相応の安定した性格だなと感じました。


 ゲーム冒頭で下されるとある任務の遂行のために、ストックは上司であるハイスから2人の部下を与えられます。ちなみにこれが上司のハイスさん。DSだと黒みが強くなるせいか、もうちょっと見た目の悪人度が高くなります。



 ※公式サイトのTwitter用画像をお借りしました。


 しかし、ストックはこれを固辞します。彼は単独行動を好んでいるようですね。裏を返せば自分の腕に対する自信の現れでもあります。
 ところがハイスはこう諭すワケです。


 「部下だと思わず、自分が生き延びるための道具だと思えばいい」


 ひっでぇ。これはひっでぇ。アンタの部下でもあるでしょうに。
 そこまで言われては、とストックもハイスの申し出を承諾するワケですが、実はこの台詞が伏線となって、ストックは後に大きな決断を迫られることになるんですね。
 その決断でさらに彼の隠れた人間性が浮き彫りになるのですが、序盤の一連のイベントを経て、外面から内面へと段階的に無理なく主人公の性格を開陳する構成は整っていて素性がいいなと感じました。


 ちなみに自分の一番好きなキャラは実はハイスなんです。
 イラストからして既に悪人の瘴気が漂っていますよね。油断ならなさ加減が半端ないです。
 何よりハイスはゲーム冒頭からイメージ通りの胡散臭さを遺憾なく発揮してくれるので堪りません。
 先程の話の補足になりますが、最初の任務を与えたストックに対し、ハイスはおもむろに取り出した○○○を持って行くように促し、ストックが「邪魔だからいらね」と断ると、「お守り代わりと思えばいい」と無理やり持たせるわけです。なんですかそれ、怪しすぎる……
 ハイスは敵なのか味方なのか? どこで○○○を手に入れたのか? そしてその真意は一体? ……と、プレイヤーに対してシンプルながら大きな謎を提示してくれるのですね。
 これはRPGの掴みとしては申し分ないなと思いました。単に自分がハイス好きだけなせいかもしれませんが。
 ちなみにストックと同道することになるレイニーとマルコはハイスの部下でもあるワケですが、彼らはハイスのことを「ハイス様」と呼んでいて、有能な上司に対する順当な敬意を抱いているようです。
 それだけを見てもハイスが単に腹黒いだけではなく、余人の人望を得るだけの計算高さを備えた人物であることが窺えます。ちょっとしたことではありますが、それだけでもキャラクターの奥行きが広がりますね。


 あと、もう一人自分が好きなキャラクターはプロテア女王です。

 
 ※公式サイトのTwitter用画像をお借りしました。


 初報を見た瞬間に革命の熱に浮かされた民衆の手によって断頭台に掛けられる女王の姿を幻視したんですが、ちょっと触れてみた感じ、なんだかんだで生き残りそうだなーとも感じました。もしくは改心して死ぬか。


 「すまぬエルーカ。わらわは愚かな女じゃった。ぐふっ……!」
 「お、お母様ーっ!」
 「ふふっ、初めて母と呼んでくれたな、エルーカ……」 ガクリ。
 「いやあああ、お母様ーっ!」


 ベッタベタやぞ! ベッタベタやぞ! ゾックゾクするやろ!(サブングルの筋肉の人のポーズで)


 ……妄想は置いといて、思えばこのゲーム、王道のRPGという触れ込みでしたが、「王道とは一体何か?」と発表当時より久しく疑問に思っていました。
 しかし考えてみるに、王道とはすなわちベタ。今の世の中では思わず赤面してしまうようなベタ中のベタをあるいはこのゲームでは徹底しようとしているのかもしれません。……いや、勝手な想像ですが。
 まぁ、少なくともキャラの配置はすさまじくベタです。プロテア女王はヒロインの義理の母親という立ち位置ですが、義理の母親ってことはつまりアレです。継母。古来より連綿と続く悪女のアーキタイプですよ! 娘をイビってイビって、娘のヒロイン度数を上げていく宿命の存在です。
 大体にして彼女の最初の台詞からして凄いですよ。圧制に苦しむ国民を他所に遊興に耽る典型的な暗君、女王プロテア。そして彼女に諫言する王女エルーカ。しかし、プロテア様の返答はこうです。


 「国民にとって君主は理想の存在でなければならない!」
   ↓
 「そして、君主が贅を尽くすのは国民の求める理想の生活を見せるため!」
   ↓
 「つまり、贅沢は君主の義務なんだよ!」


 な、なんだってー!


 澱みのなさすぎる三段論法で一瞬納得しかけましたが、いやいや、それはおかしいでしょうよと。なおも食い下がるエルーカに対してプロテア様は、「兄と同じことを言っておる。お前の兄も愚かな男だった……」てなことを言って挑発するワケです。プロテア様はさらに続けて、


 「愚かなあの男はたった一つだけ賢明な判断を残してくれたわ。それは……」



 ※公式絵をちょいと加工しました。


 「このわらわに玉座を譲り渡したことよ!」


 まさに外道。ホント人生満喫してますね、プロテア様。
 台詞はぶっちゃけうろ覚えですが、ニュアンスとしてはこんな感じです。インパクト大でしたね。


 とまぁ、まるっきり自分の好みで抜粋してみましたが、キャラクターの性格をストレートに伝える印象深い言動が作中には多かったように感じます。
 基本的に自分はキャラクターイラストの良し悪しはゲームの良し悪しと直結しないと考えています。当たり前ですけど、優れたイラストは購買意欲を刺激することはあっても、シナリオの出来を保証するものじゃないんですよね。
 ただ、このゲームに関しては、原案の高屋敷さんとキャラクターデザインのこにしさんがガッチリスクラムを組んでキャラクターの内面まで掘り下げたおかげか、「外面を見るだけで内面が窺える」、逆に「内面を見るだけでも外面を想像できる」、非常に息の合った二人三脚が実現できているように感じます。
 そういう意味では、キャラクターイラストを見て、何かしら魅力を感じる点があるのなら、その魅力はゲームでも味わうことができるんじゃないかな、と自分は思っています。「キャラが気に入ったなら買い!」って表現は、まぁ、なんかキャラゲーの常套文句のようで好みではないんですが、少なくとも見たままのキャラを期待できる、というのは安心できる材料の一つではないかなと。そんなワケで参考にでもなれば幸いです。