新・三つの棺-「幻影の書庫」日記

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怪物

TSUTAYA西友町田店でレンタル。今回は全て邦画で4本。


これはかなり良かった。
少なくともカンヌのパルム・ドールを獲得した「万引き家族」よりも、
個人的にはこちらの方が断然好きだ。
 
本当に正しく受け止めきれているかはわからないけれど、
自分としては自分自身を納得させられる程度には解釈できたつもりになれたので。
 
この作品は三部構成になっている。
そのパートごとに、それぞれの視点人物が異なっている。
 
第一部は”被害者(仮)”の保護者の視点から。
第二部は”加害者(仮)”の視点から。
第三部は”被害者(仮)”自身の視点から。
 
それぞれの視点から見える”怪物(仮)”は異なっていて、
別の視点から見ると、それこそ全く怪物ではないようにも見えることも。
 
芥川龍之介「藪の中」や、それを下敷きとした黒澤明羅生門」のようにも思えるが、
事件の様相は一つで、ただその視点から見える光景が違うだけ。
盲人がそれぞれ違う箇所を触って象を評する「群盲象を評す」が最も近いかも。
 
最後に、この映画の感想を述べる人の多くが口にするように、
この子役二人の演技が本当に素晴らしかった。
 

超短編! 大どんでん返し Special

 
どこぞの知らないライターが適当にでっち上げたようなものとは違って、
真っ当な作家陣が名を連ねた作品集で、それぞれにアイデアが凝らされており、
及第点以上ばかりが集まった作品集だと思う。
 
ただ、2000字ってのが少なすぎるのかなぁ。
ショートショートの痛快さに「やれたぁ~」ってなる作品は少なかったような。
タイトルがコンセプトを表しているように、ショートショートというより、
短編の超短い奴ぅ~~、ってな感じなのかなぁ。
 
「大どんでん返し Special」と銘打たれてるわけなので、
もうちょっとは、どかんとした意外性を味わいたかったなと。
 
順不同でベスト5を選んでみるならば、
・恋に落ちたら(一穂ミチ
・訪ねてきた女(竹本健治
・井村健吾の話(澤村伊智)
・昼下がり、行きつけのカフェにて(結城真一郎)
・美味しいラーメンの作り方(七尾与史)
かな。
 
このうちベストは、この手法の可能性を感じた結城真一郎かな。
 
あと5作選んで、自分のベスト10とするならば、
・イズカからユウトへ(浅倉秋成)
・矜持(小川哲)
・契約書の謎(柚月裕子
・はじめてのサイン会(綾崎隼
・二十三時、タクシーは西麻布へ(麻布競馬場)
ってところで。
 
全体的に悪くはないんだけど、「大どんでん返し」とするには
やはり弱いとしか思えなかったので、採点は6点止まりかな。
 

奇妙な事件簿

このところ土曜日は人間ドックの尻拭い(適当な表現ではない気はするが)
で病院通い。昨日は逆流性食道炎とLDL(悪玉)コレステロールの対策で内科医へ。
その後電車で町田へ出かけ、今日も今日とて歩きで町田へ。9,526歩、14,552歩。
 

とりあえず見つけたときに買っておく。でも、14巻から続く「人狼ゲーム殺人事件」の解決は16巻まで持ち越しで、発売日は6/21のようだ。だいぶ先だな。
 

京極のコミカライズしている作者による、「世にも」4編を漫画化したもののようだ。
 

アミュレット・ホテル

警察の介入が一切なく、偽造パスポートでもグレネードランチャーでもルームサービスでお届け可能な犯罪者御用達ホテル。そこでは守るべき2つのルールが存在する。①ホテルに損害を与えない。②ホテルの敷地内で障害・殺人事件を起こさない。そんな絶対的なルールが破られる時、ホテル探偵が独自の捜査で犯人を追い詰める。

 
本格ミステリとしての精度が非常に高い作品集。
 
彼女にしては特殊設定は非常に緩いものではあるけれど、
その分、純粋に本格としての作り込みが割り増しされている印象。
作者の本格力をまざまざと魅せ付けてくれる好編になった。
 
ベストはやはり最初の表題作だろう。
本格としての攻め手が実に豊か。
複層のミスリードで読者を翻弄し、ロジックで導く。
密室物は動機がおざなりになることが多いものだけど、
そこにも意表を突く回答が用意されている。
短編とは思えないくらいの盛り込み具合が素晴らしい。
 
次点は「タイタンの殺人」かな。
ハウが解かれることで、潜んでいたホワイも同時に解き明かされる。
 
残りの二作品も間違いなく秀作。
 
これだけの秀逸な短編が揃ったら、文句なく採点は8点。
 

意味がわかると怖い4コマ 2巻

 
まぁ、1巻でレベルはわかっていたので、
完璧に想定通りの作品だった。
 
お子ちゃま向けとして認識していれば、そのレベルにおいては、
ひどすぎてどうしようもないってほどではないだろう。
 
減点評価ではなく、極端な加点評価を取ることにして、
ベスト3を選ぶなら、「不自由しない」「安全」「鉛筆」かな。
 
5章のひどい童話が今回は短い1本だけだったのも
まだ許容範囲だった所以かも。