先日「e-visa」を取得しました。
最後にインドへ行った5年前までは、九段下の大使館まで行っていました。
オンライン申請は今回が初めてで、最初に詐欺サイトを掴んでしまいました。
途中で気がつきましたが、そのサイトの作りの精妙さとSEOの真面目さに驚きました。
どこで気づいたか
25ドルのはずが185ドルと表示されたところで気がつきました。
パスポートや顔写真画像のアップロードの前に支払いを済ませる手順になっていました。本来支払いは手順として最後のはずです。
おかしいなぁ、滞在先の住所とか過去の渡航歴とかまだ入力していないのに・・・ と思いながら入力していたので、途中で気がつきました。
ブラウザに保存された情報をスーっと抜いてくる
過去にどこかで英語で入力したことのある氏名や住所のほか、最後の支払いのクレジットカード番号入力も、ブラウザに保存されているカード番号をスーッと引っ張ってきます。
実際このサイトに情報を入力したあと、GW中に不正使用をカード会社のシステムが検知し、電話で確認するまで一旦止めていますというメールが来ました。
USドルでの支払い使用が検知されたそうです。1ドルでテストをした形跡があるとのこと。
クレジットカードは再発行をすすめられ、現在再発行中です。
不安で面倒な作業だからこそ
詐欺を行う側は、利用者の心の奥にある怠惰と不安を理解し尽くしています。
テンポのよい画面遷移で、余計なことを考えさせないサイト作りは感心するレベル。
入力項目が多いインドビザ申請はPCで済ませる人が多い作業です。スマホが主流の時代でも、PC版だけかなりの人数が釣れるのでしょう。
インドに限らず、海外旅行に関する手続きは全般的にIT化が進み便利になり続けています。忙しいさなかに作業をしていると、「インドビザもここまで便利になったのか」なんて思いながらつい手を動かし続けてしまいます。ああおそろしい。
支払いが未完了です。とメールでリマインドが来る
ふうぅ。危なかったぁ〜。と胸をなでおろした後、「決済手順でお困りですか?」というメールが20分後に来ました。
ここがすごいの! マメなの。しかも丁寧な文章で来ます。
英文でかなりちゃんとしたメールが来ます。このホスピタリティこそ怪しさなのですが、どうにも感心しちゃう。
メールは翌々日にも来て、合計2通届きます。だけどしつこくはなく、ピタッと来なくなります。(このさじ加減!)
もうこのあたりで、次のフェーズへ判断を移しているのでしょう。
詐欺グループ側がこのカード番号を使って何かを購入できるかテストした時点で、カード会社のシステムがフィッシングの可能性を検知しました。
誠実なインターフェース
感心している場合じゃないのですが、サイト作りが凝ってます。
- 検索結果に表示される文章の精巧さ(meta discriptionとか真面目)
- サイト自体の文章の精巧さ(本サイトをコピーしているので翻訳くささがない)
- デザイン(フッタまで凝っていて、フッタはよくある申請代理店のサイトに似せてる)
すごいです。有能です。わたしがウェブ制作会社の社長なら採用したいところです。
検索の沼
わたしはGoogleの検索結果の上部にAI生成の概要が出るように設定しています。
そこに「インド内務省のホームページでオンラインでe-Visa(オンラインビザ)を申請します。」とあるのだけど、肝心なそのサイトが検索結果の1ページ目に表示されません。
外務省の海外安全ホームページが1番上に表示されますが、
以後の検索結果は
「解説サイト」「代理店&解説サイト」「詐欺&解説サイト」です。
本体が出てきません。
Googleの検索ポリシーでは権威のあるサイトや、そこから被リンクを受けているサイトが上位にくるポリシーのはずなのですが、こういうところがザルになっています。
ここで、ああそうかと思うことがありました。
AIが騙され、それを信じた人間も騙される。
── という連鎖の世界がもう始まっている。
ということです。
ありがちな失敗理由の検索キーワードでしっかりSEOしてる
さらに感心するのが、ビザ申請でありがちな失敗理由の検索キーワードを狙って解説ページを作っている所です。
「この入力項目って都道府県でいいのかな? 都市名? どっち?」という意図で検索する「パスポート Place of issue」などのキーワード検索まで細かく対応しています。
困った時に検索をすると、回答の書いてあるこのサイトへ到着します。
SEOのやり方はホワイトハットな王道の手法です。(存在自体はブラックですが)
有能です。わたしがSEOを請け負う会社の社長なら採用したいところです。
デザイン上で怪しさを見抜くポイント
以下を触ると穴が見えてきます。
これは怪しさを見抜くポイントではあるのだけど、まあ見ませんわな。
結論:予習するしかない
どのサイトが正式なサイトなのか、そのUI(画面デザインやイメージ)を「解説サイト」で予習し、確認してからアクションを起こさなければなりません。
「indianvisaonline.gov.in/」という綴りが含まれているのが正式ですが、そもそもGoogle検索ですんなりここにたどり着けません。(2024年4月現在)
▼このYoutubeで予習をするのがおすすめです。
【インドビザ】オンライン申請フォームの入力方法などeビザの取得方法をすべて解説します! - YouTube
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そんなわけで。
今回は旅に出る前から、ガツガツした手口に驚きました。
そして実際にインドへ着いてからも、Uberタクシーの客を横取りする手口や運転手同士の喧嘩を目の当たりにし、テクノロジーを取り入れながら騙すテクニックが進化している現実を見ました。
コルカタのネータージー・スバース・チャンドラ・ボース空港(NSCBI)です。
画像は帰国時に撮ったものなのでほのぼのしていますが、到着時はバッキバキに緊張してカメラも出さずに集中していました。
2023年3月に発行された本の情報を参考にしていましたが、数ヶ月単位で状況が変わっています。現地の人が使う配車アプリは7つ以上あるそうです。
わたしは事前にインストールしておいた配車アプリ(Uber)を使いましたが、「お待たせ♪」といって別の運転手が客を横取りしようする、想像の斜め上をゆく世界が展開されていました。
帰ってから大使館サイトの令和5年5月4日の情報を確認したら「配車アプリを利用するときも、必要な警戒は怠らないようにしてください」とあり、本当にその通りでした。
1ミリも油断できない修羅の都市
「デカい・多い・速い」が同時に押し寄せる。
そこでさらに「スマイル & 嘘 & 悪意なし」が三点セットで差し出される。
罪を憎んで人を憎まずという言葉があるけれど、そもそも相手がそれを罪だと思っていないので、憎むという感情自体が無駄です。ひとことでいうと、ものすごい競争社会。
誰かに頼りたい気持ちになった時ほど、ひと息おいて冷静になる必要があります。早く決めてスッキリしたい気持ちとの闘いの日々で、気が抜けません。
「信じる心の行為」の主体性について学ぶ旅になりました。
インド・コルカタは修羅の都市です。