『趣味とジェンダー:〈手づくり〉と〈自作〉の近代』刊行!

来たる6月18日、神野由紀・辻泉・飯田豊編著『趣味とジェンダー:〈手づくり〉と〈自作〉の近代』が青弓社から刊行されます。

本書は、神野由紀先生を中心に2014年から続けてきた「手づくりとジェンダー研究会」の成果を収めた論文集です。溝尻は第9章「日曜大工の社会史―男性の手作り趣味と家庭主義」を担当しました。家庭生活をより楽しく明るく便利にする行為であるはずの日曜大工が、どうしようもなく「お父さんの趣味」として位置づけられてきたその背景について、歴史的に紐解いてみました。

 

「手づくりとジェンダー研究会」では、デザイン研究、家政学社会学、メディア研究の各領域から研究者が集まって、手芸や模型製作など、なぜかジェンダーで分断してしまう手づくり趣味のあり方について調査・報告と議論を重ねてきました。特にメディア研究や社会学の周辺(もしくは周縁)で生きてきた自分にとって、家政学との出会いは目からウロコが落ちる経験でした。改めて、趣味を研究するための視点・立場の幅広さに気づかされた研究会だったように思います。

 

この研究会を通して得た気づきは、とても今回の論文1本に収まりきれるようなものではないので、今後も少しずつ整理して発表していきたいと思っています。

6月8日(日)には、跡見学園女子大学で開催される日本生活学会第46回研究発表大会で「日本におけるDIYの展開をめぐる社会史―松下紀久雄の普及・啓蒙活動を軸に」と題した個人発表を行います(学会大会の詳細はこちら)。ここでは『趣味とジェンダー』でも触れている、1970年代日曜大工ブームの仕掛け人・松下紀久雄について、さらに掘り下げて報告する予定です。彼のライフヒストリーは本当に面白いので、お時間のある方はぜひご参加くださいませ。

  

www.seikyusha.co.jp

 

 

『音楽化社会の現在―統計データで読み解くポピュラー音楽』刊行!

去る2019年4月15日『音楽化社会の現在―統計データで読み解くポピュラー音楽』(南田勝也, 木島由晶, 永井純一, 小川博司編著、溝尻真也, 小川豊夢著、新曜社)が刊行されました。若者を主な対象とした大規模な統計調査の結果を基に、2010年代の音楽はどのように楽しまれているのかを分析した論文集です。

 

CD離れが叫ばれるようになって久しい昨今ですが、一方で音楽はいまでも、若者の間で非常に強い興味の対象であり続けています。ではそんな2010年代に、若者たちはどのような音楽を、どのように聴いてきたのか。6人の社会学者・メディア研究者が、ジェンダー,コミュニケーション,アイデンティティ,メディア,消費,地域といったキーワードを軸に、2010年代の音楽文化について論じました。

 

溝尻は第7章「Media: 音質へのこだわりとその行方」を担当しました。今回の調査を行った2010年代前半は、iPodWalkmanからスマホへと、音楽再生のためのメディアが移行した過渡期にあたります。そんな時期に、ユーザーたちは音楽再生機器に何を望んでいたのか、またその傾向は時代とともにどのように変化してきたのかを記述しました。

 

このような、統計データに基いて音楽ファンのありようを分析した研究は、実はこの業界でもあまり多くはありません。その意味でも、本書は貴重な研究成果になるのではないかと思っています。

 

小川博司先生曰く「(たぶん)平成最後のポピュラー音楽研究本」、どうぞよろしくお願いします!

 

音楽化社会の現在―統計データで読むポピュラー音楽

音楽化社会の現在―統計データで読むポピュラー音楽

 

 

「あなたの名所ものがたり」文京映画祭で上映します!

 

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目白大学社会学部メディア表現学科溝尻ゼミが3年にわたり企画・協力してきた、地域の思い出語りワークショップ「あなたの名所ものがたり」の様子を紹介する映像作品が、2019年3月3日開催の第4回文京映画祭で上映されます。

 

この活動は、小学生から年配の方までさまざまな方々に地域の思い出を語っていただき、それを自らの声で録音し、WEB上で公開・共有することで「地域の歴史」を積み重ねていこうという試みです。東京大学と文京区の主催で、2016年から計6回にわたり開催されてきました。(実際に制作された作品はこちらからご覧いただけます)

 

溝尻ゼミの学生は、東京大学大学院工学系研究科・真鍋研究室と共同で、この活動に毎回ファシリテーター(参加者の思い出を引き出したり、作品作りのお手伝いをするサポーター役)として参加しています。学生たちは、参加者と二人三脚でおこなう作品作りを通して、世代を超えたコミュニケーションの重要性を学んできました。

 

文京映画祭では、映像クリエーターの栗原大介さん(sashimi media lab)にまとめていただいた、この活動の様子と、参加者それぞれの物語を紹介する16分の映像作品を上映します。

 

文京映画祭は、今年で4回目を迎える地域の手作り映画祭です。アマチュアクリエイターや、文京区内にある中・高・大学の学生、さらには区内在住の小学生が制作した作品まで、さまざまな映像作品が上映されます(「あなたの名所ものがたり」上映は13時~14時頃の予定)。

 

場所は文化シャッターBXビル(都営三田線春日駅 A5,A6出口 徒歩3分)、入場は無料です。
みなさまのご来場を、心からお待ちしています!

 

「あなたの名所ものがたり」Webサイト

 

文京映画祭 公式サイト

 

 

『スクリーン・スタディーズ』刊行しました!

2019年1月30日、光岡寿郎・大久保遼編『スクリーン・スタディーズ―デジタル時代の映像/メディア表現』東京大学出版会 が刊行されました。この中で私は第9章「1970年代のビデオ技術受容とセクシュアリティ」を担当しています。映像の保存・所有を可能にするビデオという技術が家庭に普及していく際、どのようなイメージでこの技術が語られたかを論じました。簡単にいうと「ビデオが一般家庭に普及する際には、アダルトビデオの存在が決定的に大きな役割を果たした」というイメージが、どのように広がっていったかを記述した論文です。
 
自分自身このブログを辿ると、2006年11月、まだ博士課程に上がったばかりの初々しい(?)大学院生だったころに、私はこの論文の元ネタを思いついたようです。その後、学会で発表したり紀要に書いたりはしていたのですが、2019年になってついにその成果が書店に並ぶことになったのでした。まさに構想・執筆12年の超大作になりました(笑)。
 
自分としてはメインの研究というより、修士の大学院生時代に、オーディオやビデオなどのメディア技術受容史を調べたときの副産物として生まれた研究成果でした。だからこそ肩肘張らずに、興味を持った事象を素直に追求することができて、書いていて非常に楽しかった論文でもあります。それを編者のお二人が偶然見つけてくださったことで、このような形で世に出ることになりました。本当にニッチな研究ですが、何でも書いてみるもんだなと思います。
 
本全体は、映像メディア研究の最前線といえるものになっています。テレビや映画の表象分析にとどまらず、スマホ画面やパブリックビューイングなどの公共空間に偏在する「スクリーン」を軸に、映像メディアがどのように経験されてきたか/いるかを論じた全16章の論文集です。自分は鉄道好きなので、第5章「明治期のヴァーチャル・リアリティ」(上田学)は特に一推しです。明治時代の博覧会で上映された(いまでいうところの)VR映像が、当時最先端の乗り物だった鉄道の乗車体験映像だったという時点で大興奮でした。
 
学術書ということで値段も高価(税抜5200円!)ですが、研究者のみなさんはぜひお買い求めを、それ以外の皆さんはぜひ図書館へのリクエストを、何とぞよろしくお願い申し上げます。出版社のWEBサイトはこちら。

http://www.utp.or.jp/book/b378009.html

 

スクリーン・スタディーズ: デジタル時代の映像/メディア経験

スクリーン・スタディーズ: デジタル時代の映像/メディア経験

 

 

氷川神社に行こう!

11月25日(日)東京流通センターで開催される「第二十七回 文学フリマ東京」に、目白大学社会学部メディア表現学科・溝尻ゼミが出展します。
 
今年は「HKW200〜氷川神社に行こう〜」というサークル名で、埼玉・東京の氷川神社を取材した小冊子を頒布します。
 
自分も今回初めて気がついたのですが、よく見ると、埼玉・東京には「氷川神社」という名前の神社がいたるところに建っており、その数は200社以上といわれています。どうしてこんなに多いのか?という素朴な疑問の下、ゼミ生たちは大宮にある総本社・武蔵一宮氷川神社で神主さんへのインタビューを行いました。
 
武蔵一宮氷川神社は「大宮」という地名の由来にもなった立派な神社で、2000年以上の歴史があると伝えられています。その他、東中野、沼袋、赤坂など、都内各地の氷川神社でも関係者へのインタビューを行い、地域の歴史や近辺のお勧めスポットなどを取材してきました。
 
今回の文学フリマでは、そんな学生たちの3ヶ月にわたるフィールドワークの成果をまとめた小冊子『氷川BOOK』を、フルカラー26p,1冊100円で頒布します。いまなら「facebook見たよ」の一言で担当教員の直筆サインもプレゼント!(ただし先着100名限定なのでお早めに)
 
みなさまのご来場を、心からお待ちしております!
 
◆第二十七回 文学フリマ東京(入場無料)
2018年11月25日(日)11:00-17:00
東京流通センター 第二展示場
東京モノレール流通センター駅」下車徒歩1分)
 
HKW200〜氷川神社に行こう〜
2階Fホール カ-51&52

『メディア社会論』刊行しました!

去る9月18日、辻泉・南田勝也・土橋臣吾編『メディア社会論』有斐閣が刊行されました。メディアの歴史と未来について、その土台にある社会の変化とともに考える大学生向けテキストです。

音楽のデジタル化、インターネット広告、アイドル文化、SNSなどの現代的なテーマが並ぶ中、自分は第2章『ネットワーク化の来歴―メディアがつないできたもの』で、情報社会論の歴史についてまとめています。ネットワーク上を大量の情報が常に行き交う社会=情報社会のあるべき姿は、いつごろから、どのように語られきたのか。また実際の社会が変化する中で、その語りもどのように変わってきたかについて、論じました。

正直かなりお堅いテーマで、結構な確率で読み飛ばされてしまいそうな不安も拭えませんが、この本の導入にあたる章でもあるので、後半の章で論じられる現代的なメディア文化が、どのような議論の積み重ねの上に成り立っているかを考えるきっかけになればと思っています。

この「有斐閣ストゥディア」シリーズは、岸政彦他『質的社会調査の方法』や、加藤秀一『はじめてのジェンダー論』をはじめ、世の中の事象を学問的に調べ考える難しさと面白さを、初学者にもしっかり伝えてくれる良書ぞろいのシリーズです。今回の『メディア社会論』も、先行する良書に負けない、自信を持ってお勧めできる一冊になったと思います。本屋さんになければ注文しよう!(注文は下記Webサイトから!)

http://www.yuhikaku.co.jp/books/detail/9784641150553
 

メディア社会論 (有斐閣ストゥディア)

メディア社会論 (有斐閣ストゥディア)

第91回日本社会学会で報告します

2018年9月15日(土),16日(日)に、甲南大学岡本キャンパスで開催される日本社会学会第91回大会で、個人報告を行います。

日本社会学会では2016年の大会で初報告を行ったのですが、今回はその続編で、テーマは「DIYの多様性をめぐる一考察:英米および日本における関連研究の比較から」。DIYという営みが、海外ではどのように生まれ展開してきたのか、またそれを学術的に研究しようとした場合にどのような視点があり得るのかについて、主にイギリス・アメリカの先行研究を整理しながら考えてみたこの約1年間の成果をご報告します。

お世辞にも英語の読み書きが得意とはいえない自分なので、まだまだ研究途上ではあるのですが、そんなこと言ってたらたぶん一生報告できないと思い、今回は恐る恐るエントリーしてみました。

ただ、現段階でも見えてきた面白い点は多々あって、同時にこうした論文や書籍を読んでいると、イギリスやアメリカの(あとオーストラリアも)生活に、DIYがいかに埋め込まれているかを痛感させられます。何せヤンコビック先生がこんなパロディソングを作ってみんなで笑ってるような国だ。

"Weird Al"Yankovic -Handy
こうした国々で営まれているDIYと、日本のものづくり趣味の間にはどのような違いがあるのか。またその違いはどのような背景に起因するものなのか。今回の報告が、そんなことを考える一端になればと思っています。

報告は、9月16日(日)9:30〜12:30に、3号館5階352教室で実施される「文化・社会意識(5)」セッションにて。司会は宮台真司氏(!!!)
みなさまと神戸でお会いできるのを、楽しみにしています。

第91回日本社会学会大会についての詳細はこちら