映画は時代を映す鏡 

<ブログ18年目です>

アカデミー賞生放送を観る

第96回アカデミー賞生放送をWOWOWで観た。
毎年生放送を楽しみに観てきたが、ここ数年で最も充実の授賞式だった。

司会のジミー・キンメルは原稿なしで次々とショーを盛り上げる。
トランプ元大統領も、真っ青。
数々のショーのなかでは「Ken」を歌ったライアン・ゴズリングが最高のパフォーマンス。

今年の特徴は。男優女優賞ノミネート紹介に各5人のオスカー受賞者が登場してそれぞれ先輩からのコメントが良かったこと。

長編ドキュメンタリー部門の「実録アリウポリの20日間」のスピーチは、歴史の記録を訴えて感動を呼んだ。
君たちはどう生きるか」受賞に出席者がいなかったのは残念。
"せめてアオサギだけでも出席してもらいたかった”と司会が突っ込む。
ゴジラー1.0」受賞のほうは、山崎監督がしっかりと名スピーチ。
日本映画2作の受賞、おめでとう!

2023年マイベスト映画5本

今年も100本以上の映画を観たのだが、
今年公開の新作映画は18本だけ。
その中からマイベスト5本を選びました。

第1位「別れる決心」パク・チャヌク監督
ヒッチコック監督「めまい」降臨。ファムファタールにゾクゾクした。

第2位「TAR ター」トッド・フィールド監督
ケイト・ブランシェットの圧倒的演技に脱帽。

第3位「ベネデッタ」ポール・バーホーベン監督
ペストの時代。宗教と性を大胆に描くのが監督の本領。

第4位「フェイブルマンズ」スティーブン・スピルバーグ監督
スピルバーグの自伝的物語は、家族愛と映画愛にあふれていた。

第5位「Winny」松本優作監
出る杭は打たれて、またひとり天才が消されていく日本の悲劇。

 

新作映画以外での今年の収穫は、日本映画専門チャンネルの「伊丹十三の映画4K」。
伊丹十三監督の全作品が放映され、改めて監督の偉大さを認識した。

ビリー・ワイルダー監督作5選

監督作5選(制作順)を選べば

サンセット大通り」1950年
サイレント映画時代の大女優で過去の栄光にすがって暮らしている老女役のグロリア・スワンソンが不気味で妖気が漂う迫真の演技に圧倒される。

昼下りの情事」 1957年 
プレイボーイの大富豪(ゲイリー・クーパー)と初心な娘(オードリー・ヘップバーン)のラブコメ

師と仰ぐルビッチへのオマージュ味を楽しむ。

情婦」1958年 
 アガサ・クリスティの法廷劇。小道具の使い方が巧く、最後のどんでん返しシーンまで息つく暇もないサスペンスがたまらない。

お熱いのがお好き」 1959年
マリリン・モンローが精神不安状態、33歳の時の映画だが、明るく楽しいラブコメに仕上がる。
伝説になったラストのセリフに、ぶっ飛んだ。

アパートの鍵貸します」1960年  
笑いとペーソスのバランスが絶妙のドラマ。
アカデミー作品賞ほか5部門受賞の、米で今でも繰り返し放映される
クリスマス映画の傑作。

第12作「翼よ! あれが巴里の灯だ」以後4年間は監督の黄金時代です。

写真は、東京オペラシティー「和田誠展」より

 

ビリー・ワイルダー監督第8作~12作

ビリー・ワイルダー監督第8作「地獄の英雄」(1951)
事故現場に遭遇した新聞記者を通して騒動を客観的な描写力で描く。
カーク・ダグラスの演技も光る。

第9作「第十七捕虜収容所」(1953)
収容所内の人物描写が素晴らしく、最後まで飽きさせず、実に面白い。
パラマウント社での監督最大のヒット作となった。

波に乗る監督は、 
第10作「 麗しのサブリナ」(1954)で、オードリー・ヘップバーンを、
第11作「七年目の浮気」(1955)でマリリン・モンローを主役に迎える。
同じ俳優を何度も使う監督は、二人の女優を後に再び起用していく。
マリリン作は、地下鉄通風口でのスカートを抑える有名なシーンがあるが、内容はイマイチの映画。

私がリアルタイムで監督作を観たのは
第12作「翼よ! あれが巴里の灯だ」(1957)
狭い操縦席内だけでドラマを作ってしまう映画は、初めての衝撃だった。
監督の名前を頭に刻み、以後監督作は欠ささず観るようになった。

写真は、東京オペラシティー「和田誠展」より

 

2022年マイベスト映画5本

今年も映画館に足を運ぶことが少なくなりました。
なんとか選んだ2022年新作映画のベスト5です。

第1位「ベルファストケネス・ブラナー監督
現代の不確かで分断の世界情勢に、あえて監督の少年時代を描いて家族愛に感動でふくらむ。

第2位「カモン カモン」マイク・ミルズ監督
様々な子供たちへのインタビューシーンとドラマが見事に融合。

第3位「クライ・マッチョ」クリント・イーストウッド監督
監督50周年・40作目の監督作にハズレなし。

第4位「トップガン マーヴェリック」ジョセフ・コジンスキー監督
トム・クルーズという大スターあっての正統なる続編。

第5位「さがす」片山慎三監督
予想を覆す語り口に、引き込まれ、離されて、生と死と今の現実を描ききる。

ビリー・ワイルダー監督第7作「サンセット大通り」

フィルム・ノワールの傑作であり、ワイルダー監督代表作の一本。

サイレント映画時代の大女優であったが今や老女となり過去の栄光にすがって名監督を召使にして暮らしている大邸宅にやってくる脚本家。

老女優を演じるグロリア・スワンソンが不気味で妖気が漂う迫真の演技。
召使を演じるエリッヒ・フォン・シュトロハイムの怪演。
この二人のキャラクターに圧倒されてしまうが、脚本家役のウイリアム・ホールディンが主役です。

スワンソンは、1919年セシル・B・デミルにみ見いだされて
人気スターとなり週100万ドル稼ぐスターであったが、映画公開当時は過去のひとで、彼女自身を投影したこの映画でカムバックした。
サイレント映画時代の大女優のカムバックといえば、日本でも。
戦前日活の大女優・入江たか子が1953年に大映「化け猫映画」で戦後初主演で大ヒットをとばした例もあり、なにか共通点を感じる。

撮影当時、実際のスワンソンはとても若々しかったため、化粧部は彼女が老けて見えるように白髪やしわを足したという。

死体が語るというファーストシーンから映画史上屈指のラストシーンまで、やはり上手い、堪能する。

 

 

#ビリーワイルダー #サンセット大通り