メモ
荒野の恋〈第1部〉catch the tail (ファミ通文庫)
- 作者: 桜庭一樹,ミギー
- 出版社/メーカー: エンターブレイン
- 発売日: 2005/05
- メディア: 文庫
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- 作者: 北國浩二
- 出版社/メーカー: 徳間書店
- 発売日: 2005/05/21
- メディア: 単行本
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- 作者: 照下土竜
- 出版社/メーカー: 徳間書店
- 発売日: 2005/05/21
- メディア: 単行本
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■最近読んだ本(読了順)
- 黒田研二『幻影のペルセポネ』(文藝春秋)
- 木内一裕『藁の楯』(講談社)
- 五十嵐貴久『Fake』(幻冬舎)
- 沙藤一樹『新宿ミルク工場』(講談社)
- 折原一『偽りの館――叔母殺人事件』(講談社)
- 米村圭伍『退屈姫君 海を渡る』(新潮文庫)
- 畠中恵『ゆめつげ』(角川書店)
- 柳広司『聖フランシスコ・ザビエルの首』(講談社ノベルス)
この中では『Fake』『退屈姫君 海を渡る』『聖フランシスコ・ザビエルの首』が楽しめた。とりわけ『Fake』は意外な収穫で、五十嵐貴久のこれまでの著書の中で最高の出来栄え。読んでいる最中には明らかな欠点と感じられた部分を逆手にとったかのような結末に意表を衝かれた。今年発表されたミステリの中では十指に入る快作だと思う。
『聖フランシスコ・ザビエルの首』はすっきりした佳作。収録四編いずれも謎解きは小粒だが(もっとも柳広司のミステリにおいて謎はいつも小粒だと思うが)、大風呂敷を広げず連作短編の形式でコンパクトに纏めた点を買う。集中では、異文化間に発生した謎を現在視点から解き明かす構成の第一章「顕現――1549」がもっとも好み。
なお、『藁の楯』は(『ビー・バップ・ハイスクール』の著者が書いているためか)流石に内容は面白いが、残念ながら小説としては下手すぎる。但し、小説技巧を身につけたらかなり読み応えのあるものを書いてくれそう。『幻影のペルセポネ』は恋愛描写が不快だった。
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十月新刊チェック本ですよ。
■単行本
- 初野晴『漆黒の王子』(角川書店)
- 若島正『乱視読者の新冒険』(研究社)
- 小川勝己『あなたまにあ』(実業之日本社)
- 幸田真音『日銀券(上下)』(新潮社)
- 樋口有介『たき川の米造捕物控』(筑摩書房)
- 吉田篤弘『百鼠――三つの物語』(筑摩書房)
- 大山誠一郎『アルファベット・パズラーズ』(東京創元社)
- 岸田るり子『密室の鎮魂歌』(東京創元社)
- 神津慶次朗『鬼に捧げる夜想曲』(東京創元社)
- 豊崎由美/岡野宏文『百年の誤読』(ぴあ)
- 中村隆資『神なき国の神々』(双葉社)
- 乾くるみ『リピート』(文藝春秋)
- 小笠原慧『サバイバー・ミッション』(文藝春秋)
- 熊谷達也『荒蝦夷』(平凡社)
- 久美沙織『コバルト風雲録』(本の雑誌社)
- 橋本五郎『橋本五郎探偵小説選』(論創社)
- エリザベス・ムーン『くらやみの速さはどれくらい』(早川書房)
- イアン・ランキン『血に問えば』(早川書房)
- ジェフリー・ディーヴァー『魔術師』(文藝春秋)
- ジョセフィン・テイ『歌う砂』(論創社)
■ノベルス
- 島田荘司『龍臥亭幻想(上下)』(光文社カッパ・ノベルス)
- 石持浅海『水の迷宮』(光文社カッパ・ノベルス)
- 黒田研二『霧の迷宮から君を救い出すために』(実業之日本社ジョイ・ノベルス)
- 太田忠司『藍の悲劇』(祥伝社ノン・ノベル)
- 吉村達也『青龍村の惨劇』(トクマノベルズ)
- ポール・アルテ『赤い霧』(ハヤカワ・ミステリ)
■文庫
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頁数の少ない二冊の本を読了する。北森鴻『螢坂』(講談社)は『花の下にて春死なむ』『桜宵』に続くシリーズ第三弾。ミステリとしては異色の構成を持つ作品が多く、もとより本格ミステリとは全く無縁の内容になっているが、読み物としてはたいへん上質で、この作者のストーリーテラーとしての力量を明快に示している。巻末の「孤拳」がとりわけ味わい深い。もう一冊、伊藤たかみ『雪の華』(角川春樹事務所)は共感覚を構成要素に採り入れた青春恋愛小説で、ややストーリーを作り込み過ぎという憾みはあるが、若干ミステリ風のプロットが上手い具合に作用して、これも楽しくすらすらと読めた。主要登場人物をつなぐ事件として割と生々しい事件を描いているのだが、それがほとんど汚らしく感じられないのが好ましい。個人的にはもう少し深みが感じられたほうが好みではあるけれども、これはこれで良いのだと思う。
読み終えたもう二冊の本、堂場瞬一『焔』(実業之日本社)と森福都『琥珀枕』(光文社)についてはまた後日。端的に言えば、この二冊は現時点における今年の私的ベスト10候補。
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津原泰水の『綺譚集』(集英社)を読了したが、それにしても(敢えて誤解を恐れずに言えば)津原泰水はつくづく因果な物書きであると思わずにはいられない。この作家にこれほど文章力が無ければ、エンタテインメント作家としてもっと無難に評価されていただろうに……文学とは文章そのものであるとするなら、この『綺譚集』はきわめて端整な、講談社文芸文庫で読みたいような文学作品である。しかし、その文書によって綴られる内容はエンタテインメントなので、やや「つくりもの」めいた印象が、その高い文章力ゆえにどうしてもつきまとってしまうように感じられる*1。個人的には技巧を徹底して抑えた作品を読んでみたいのだが、どうか。集中では川端康成の「片腕」を連想させる「脛骨」やスケッチのような軽い味わいが素晴らしい「アクアポリス」、そして「ドービニィの庭で」(梅崎春生「植木屋」、赤江瀑「花夜叉殺し」、山口雅也「永劫の庭」など、突発的に現れる庭小説の系譜に連なる秀作。どうでも良いが、先日読んだエリザベス・ボウエンの「あの薔薇を見てよ」や福武文庫の『イギリス怪奇傑作集』巻頭に収録されていたR・C・クック*2の「園芸上手」など、ガーデニングの本場イギリスではこの手の短編が山のように書かれているんだろうな)が印象に残った。
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藤村いずみ『あまんじゃく』(早川書房)読了。巻末短編のタイトルが「セラー」になっているのは、同じ殺し屋を主人公に据えたローレンス・ブロックのケラー・シリーズに対するオマージュなのかも知れない。と、そんなことはさておき、その最終短編(というか連作の幕引き)がどうにも感心できない。乱れ気味の文章に目をつぶればそこそこ楽しく読めたのだが、巻末においてここまでやられてしまうと、それまでの各短編の味わいが抹消された気分になってしまって……新人らしい気負い、と笑って片付けて良いかどうかはちょっと微妙。*1
続いて森福都の『琥珀枕』(光文社)を読み始める。まだ二編目までしか読んでいないが、帯に書いてある「森福版聊斎志異」というフレーズに嘘は無いと感じさせる上質な読み物。ここ最近の森福都の成長ぶりには眼を瞠らされる。ミステリだけを求める読者にはやや辛いものがあるかも知れないが、緩やかな意外性もあるし、何よりな典雅な作品世界に浸れて満足。
津原泰水の『綺譚集』(集英社)ももうすぐ読み終わるが、……これについては読み終えた後で纏めて。誤解を恐れずに敢えて言えば、津原泰水はつくづく因果な物書きであると思わずにはいられない。
*1:まあ、読みながら感じた「そんなに簡単に殺して良いのか」という疑問には、予想外の形で解答が与えられたわけだが。