わくわくの日々

杉並区議会議員・松尾ゆりのブログ

病院跡地への杉並第一小学校移転反対(2024年3月15日杉並区議会予算特別委員会)

 2024年3月15日杉並区議会予算特別委員会において意見開陳を行いました。

 来年度予算、いろいろありますが、何よりも、杉並第一小学校を病院跡地に移転する計画が予算化されたことは許容できません。岸本区長の選挙公約とも異なります。阿佐ヶ谷の人たちが岸本さんに期待して投票した思いは裏切られました。

(以下は原稿です。実際の発言とは異なる部分があります。)

 令和6年度一般会計予算案について意見を述べます。一般質問でも述べたように、病院跡地かつ浸水地に小学校を移転するという全国でも前例のない、とんでもない計画である杉並第一小学校の移転改築検討・設計がいよいよ予算案に計上されました。

【岸本区長に期待した阿佐ヶ谷地域の人々】

 この事業について、当初より私は、学校の移転に反対し現地改築を求める地元の強い声を受けて、議会で追及してきました。一昨年には、本件を発案した田中前区長に代わり、岸本区長が「駅前再開発の見直し」をかかげて当選し、地域の方々は希望に胸を膨らませました。

 昨年8月から始まった「まちづくりを振り返る会」のプロセスは、一方的な説明と質疑に終始しつつも、この先に豊かな対話の場が開けていくものと期待したのです。

 ところが今年1月22日に岸本区長は、杉一小移転を中心とする現計画を推進していく決断をした旨のビデオメッセージを突然発信し、地域の期待は裏切られました。学校に関わっている地域の方は「5年間放置して、たった5か月で推進決定ですか」とあきれ、嘆いておられます。

【学校運営協議会はほぼ全員が移転反対】

 特に杉一小の学校運営協議会では、二度にわたる区長との懇談において、ほぼ全員が移転には承服できないとの意見をはっきり述べられています。教育委員会が一人一人呼び出して説得に努めた後でも意見は変わっていません。

 これら学校関係者はじめ疑問を持つ地域住民の方々に対し、区長はビデオメッセージで「反対の方は、にわかに気持ちを切り替えるのは難しいだろうが」などと発言していますが、行政にありがちな「反対意見は情緒的なものに過ぎない」という決めつけをそのまま言い換えたような、偏見に満ちた言葉であり大変失礼です。

【移転のメリットは全く語られない】

 区長ビデオメッセージでは、計画を見直すことの困難さや、住民の対案に対する批判はあったものの、決断の根拠はすべてネガティブなものであり、移転を進めることについてのメリットや前向きなメッセージは伝わってきません。

 これは教育長も同様であり、学校運営協議会との懇談でメリットを問われて「広くなる」ことしか言えなかったのは、教育者として、胸を張って病院跡地へ移転することが素晴らしいなどとは、やはり言えないということだと思います。

 このような、行政、教育のトップの心もとない見解のもと、この事業が新年度予算に計上されて船出することを看過することはできません。

【皆わかっている病院跡地の問題点】

 これに限らず、病院跡地に移転したら素晴らしい学校になるというポジティブなメッセージはどこにも見られません。前区長の著書にあるように、役所の多くの方がこの計画の不当さを知っているからではないでしょうか。

【区の土地を半額で安売り】

 質疑において私は、A街区、C街区の一部の土地について、区における実際の賃貸取引事例で杉一小敷地は病院の3倍の価格で取引されていることを確認しました。区画整理の換地では約1.5倍とのことなので、区有地が半分の価値で安売りされるのと同じことです。

 区の答弁においては、何ら根拠もなく、街区全体を評価した場合には、その差が縮まるかのような答弁がありましたが、それは誤りで、賃貸しているそれぞれの敷地の位置から判断すれば、A街区全体の価格はさらに上昇する可能性があるものの、C街区においてはむしろ減価要因が考えられるところから、評価しなおした場合3倍の格差ではすまないと思われます。

【病院敷地は二束三文の土地】

 換地の不均衡については区内在住の公認会計士さんから疑問が呈されているところ、区長も所管も明快な説明を行っていません。

 地域の人であれば、誰でも、杉一小の敷地が地域の高台で駅近のいい土地である一方、病院敷地が二束三文の土地であることは知っています。その交換にあたり、これほど区が損をするような計画を決めたのは前区長ですが、今回の決断により、すべては岸本区長の責任となります。土地交換の不均衡については、今後も問題になっていくでしょうし、同時に、この計画が続くかぎり、未来永劫住民の不信感がぬぐい去られることは絶対ないでしょう。

【「対話の区政」とは何だったのか】

 何よりも区民に失望を与えたのは「対話」に対する区長と区民の認識の違いです。「対話」とは、行政と住民、また住民の中でも賛成、反対、中間といった多様な立場の人々がそれぞれ意見を交換しあうことによって、100%とは言わないまでも、よりよい解決に到達する合意形成の過程のことかと私は思っていましたが、それはナイーブに過ぎたようです。

 この5か月行われたことはあくまでも行政側の「説明会」にすぎず、そこから踏み出していません。施設再編や道路問題で1つのテーブルについて行政と住民が意見を交換しあおうという萌芽があるのに、杉一小だけなぜそれができないのでしょう。理不尽です。

 区長は「このかんの対話になにひとつ無駄なことはない」といいますが、都合のいいところをピックアップしているだけで、不信や疑問の払拭にはなんらつながっていません。その限りにおいて「すべてが無駄」です。

【なぜ、既定路線にかじを切ったのか】

 住民懇談の議事録をみると、この問題を、区長は「就任直後から区役所の中でずっと言ってきたが、実現しないことに自分自身、苦しい思いをしてきた」と述べていますし、また、6年前なら変えられた、という言い方からも、決してこの移転計画がいいものではないということは認識しておられると思います。それなら子どもたちのために初心を貫くべきでした。

 それなのに、なぜ推進にかじをきったのか。厳しい言い方ですが、役所の人がいう、重大な違法行為、訴訟、損害賠償請求、などというおどろおどろしい言葉に屈したのではないか。

【助け舟にのらなかった区長】

 私は質疑の中で区が聴取した専門家の意見書を検討しました。自分たちが依頼した弁護士の意見書を、担当者が故意に誤読して、区長に伝えた可能性を考えたからです。やりとりの中で、計画をみなおしても「重大な違法行為」にはならないこと、また、住民訴訟のリスク、まして敗訴のリスクはきわめて低いことを確認しました。

 これは、区長ご自身が住民側に復帰するための最後の助け舟だったのですが、それに区長が乗ることはなく沈黙で答えられたことは残念です。もう前区長のせいにすることはできません。

【リスクはむしろ高まった】

 今回の区長の決断を称して、「幕引き」といった人がいましたが、そんなに甘いものではなく、第二幕、第三幕は容易に想定できます。土地評価の不均衡、汚染問題、軟弱地盤の対策、そしてA街区に何が建つのか、その建設利権、多くの火種があります。区長は事業を変更しないことで法的リスクを回避したつもりかもしれませんが、このまま推進することでむしろリスクは高まると指摘します。

 地盤改良一つとっても、お金をいくらでもかければ解決できるというのが専門家の見解ではありますが、その費用だけでも200億円にのぼる可能性があるとのことで、いま引き返さなかったことにより、今後の巨大な財政負担になるだろうことからも、予算審議にあたりこの事業を認めることはできません。

【杉一小問題は区政の分水嶺

 阿佐ヶ谷、杉一小のことを長々と述べました。これは1地域の問題、1小学校の問題ではなく、区政全体の方向性と、それに対する評価を決定づける区政の分水嶺だからです。

 区長は記者会見で「これ以外にもたくさんのことが現在進行形で起きている。このことだけでなく、区政全体をみてほしい」と言っていますが、区政は個別の事業、学校、地域、人々の集合です。一部の地域、一部の学校をないがしろにする区政は、他の人たちをもないがしろにするでしょう。

 杉一小の移転という重大な事業に関して、住民の不安、疑念をおきざりに見切り発車する以上、他の事案に関しても同じことは繰り返されることになります。その上に成り立つ、総体としてはすばらしい区政、などというものはありえません。

 以上をもちまして反対意見とします。一般会計予算ほか3予算、及び第1号補正に反対とします。関連議案については、議案第14号、31号については反対とし、他は賛成とします。

 終わりにあたりまして、質疑準備の過程で資料調整、また、意見交換にご協力いただきました職員の皆様に心より御礼申し上げます。ありがとうございました。

学校関係者は反対なのに?岸本区長の「移転推進」について質問しました(2024年2月19日杉並区議会第一回定例会一般質問)

 2024年2月19日、杉並区議会第1回定例会で一般質問しました。これまで何度となく質問してきましたが、今回は特別な意味があります。「駅前再開発反対」を公約して当選した(はずの)岸本聡子区長が、1月22日「ビデメッセージ」を通じて、田中前区長時代に策定した計画を見直さず続行することを決断したと宣言したあと初めての議会だからです。
 この決断は早計だったとしかいいようがありません。「重大な違法行為」だとか「賠償請求」だとかの説明は虚偽です。そのことは区が依頼した専門家の意見書でも明らかです。
 これから計画が具体化すると、さらに様々な問題が明らかになっていくと思いますが、これまでなら前職の責任ですんだものが、今後はすべて岸本区長の責任として問われていくことは覚悟していただきたいものです。

 

(以下は原稿です。実際の発言とは一部異なる部分があります)
 阿佐ヶ谷駅北東地区再開発と杉並第一小学校移転計画について質問します。代表質問においてすべての会派が立場を問わずこの問題に言及するなど、阿佐谷にとどまらず、区政の分水嶺となる大問題となっています。
 しかし、勘違いしてはいけないのは、今日この事業で何より問われているのは、杉一小の改築にあたって、いかに教育環境を確保、向上するか、だということです。この点で、考え得るかぎり最善をめざすのが杉並区の責務といえます。
【開発に翻弄されてきた杉一小】
 ところが、阿佐ヶ谷駅北東地区という名前がついた途端に、「あんなところに小学校があるのはもったいない」と言い出す人が出てきたのはどういうわけでしょうか。先人が地域の最もいい場所に学校を置いた意味を忘れていないでしょうか。
 JR駅至便、商業地域、建築規制がゆるく、容積率が600%もある、というのは不動産広告のような発想です。大きな建築物を建てないともったいないというのは教育の論理ではなく、経済の論理。金儲けの論理でしかありません。この10年ほど、杉一小は再開発意図をもったこのような声に翻弄されてきました。
(1)「違法行為」「賠償請求」の説明は虚偽
【岸本区長「推進を決断」の根拠は正しいか】 
 さて1月22日、区長はビデオメッセージで、「総合的に勘案。現計画を推進する判断をした」と述べました。しかし、その判断の根拠となった情報は果たして正確なのか。検証します。
 区長メッセージと同時に発表された「これまでの質問に対する区の見解」という文書(以下当初のタイトルによりFAQといいます)には法律の専門家の意見書が「参考」として掲載されています(以下意見書とよびます)。そこで、移転をやめ計画変更した場合の法的リスクについて、この意見書によって確認していきたいと思います。
【「重大な違法行為」は「想定しえない」】
 第一に、移転をとりやめることは「重大な違法行為となりうる」という点について検討します。
 8月の振り返る会では、質疑応答の中で杉一小の移転を中止しても法的に問題ないことが確認されました。しかしFAQでは「区において一方的に学校の移転を取りやめた場合、私法上の契約とも解される3つの協定や地区計画、土地区画整理事業の事業計画違反など重大な違法行為となります」と述べています。この「重大な違法行為」という文言は10月以降の会でもさかんに説明会等の場で強調されてきました。
 他方、「意見書」の記述はこのようになっています。
「関係者の同意なく、区において一方的に学校の移転を取りやめるケースも理論上想定しうるが、これは、上記の三協定違反、地区計画違反、すでに進行している土地区画整理事業の事業計画違反など、重大な違法行為に当たるため、かかるケースは現実には想定しえない」
 注意してほしいのですが「かかるケース」つまり区が一方的に移転をとりやめることは「現実には想定しえない」と意見書は述べているのです。ところがFAQを含むこれまでの区の説明ではこの一文の一部だけを切り取って、計画を変更することそのものがあたかも「重大な違法行為」になるかのようにたびたび説明してきました。
 全く正反対の意味に利用されて、趣旨を歪曲されたことを知ったら、この法律の専門家は、いったいどのような感想を持たれることでしょうか。
【スケジュール遅延即罰金ではない】
 次に、賠償責任や訴訟リスクについて確認します。
 区長メッセージでも、FAQでも、随所に「損害賠償請求」「金銭補償などの大きな負担」といった文言が正確な定義なしにちりばめられています。他方、意見書ではどう言っているか。
 まず、移転中止の場合の責任ですが、事業の関係者については、先に述べたように計画変更は全員同意が前提ですので、同意した上での賠償請求は成り立ちません。
 次にスケジュール遅延についての責任です。3者協定により、スケジュールの遵守義務が課せられているので、遅延は協定違反になります。しかし、区画整理事業の終期は、これも全員同意のもと変更は全く可能です。
 スケジュール遅延に関連して、指摘されているのは、土地の使用収益開始時期との関係で賃借料が発生するケースです。これはありえないことではありませんが、協定上に定めがないため相互の協議によって定めるものとなります。
住民訴訟のリスクもきわめて低い】
 なお、住民訴訟のリスクについて意見書は、手続き違法、実質違法の2つの可能性について述べ、第一に手続き違法については、当然ながら、区の事務において瑕疵のない手続きを行うことで防げるものとしています。また、第二に実質違法については、例えば費用について、計画変更により「増加を招くことは不可避だとしても、単に費用が高額になるから違法との主張は、学校建設に際して費用の多寡のみを考慮している点で失当といわざるを得ない。学校建設に際して考慮すべきは教育環境など様々であり、費用は考慮要素のひとつにすぎない」と指摘しています。
 また、計画変更に同意してもらうために支払う、いわゆる「同意金」について住民訴訟で取り上げられる可能性があるが「この支出は適法たり得る」と意見書は述べています。
【計画見直しに違法性はない】
 このように見てくると、計画見直しを「重大な違法行為」とし、あるいは多額の賠償請求の可能性があるとした区の説明は、区が依頼した専門家の意見書の見解に反しています。計画見直し自体に違法性は全くないことを確認するがいかがか。答弁を求めます。(Q1)
 ちなみに、この方は23区の法務実務に通じた民間の弁護士であるとのことです。区としてこの方にはどのような依頼をいつからお願いしてきたか。また、この意見書が提出されたのはいつかうかがいます。(Q2)
【賠償リスクはほとんどゼロ】
 総じて、意見書が述べていることは、杉並区が移転計画を仮に中止、変更したとしても、損害賠償や訴訟のリスクはきわめて低いということです。まして、区長個人が賠償責任を負う可能性はほとんどゼロです。そのことを区長ご自身もしっかりと認識していただきたいと思います。
【河北病院の着工遅れは協定違反か】
 第三に、関連してスケジュールについて述べます。現在、河北病院の着工遅れのため、区画整理事業のスケジュールはすでに7.5か月遅れています。これは先の「スケジュール遵守義務」違反となりうるかと思いますが、今のところ罰則や補償の話が出たとは聞いていません。ならば、仮に今後杉並区がなんらかの要因でスケジュールを遅らせたとしても同様にペナルティはないのではないでしょうか。
【河北病院のスケジュール変更と区スケジュールの矛盾】
 河北病院側は、着工の7.5か月遅れの結果、病院の移転は2025年6月、病院解体・汚染除去の完了は2026年11月とする計画変更を施行者会に提出、すでに了承されていますが、他方、事業全体の終期、すなわち、2029年3月に杉一小を解体して引き渡す時期が施行者会として変更されていないのは奇妙なことです。また、現計画における杉一小新校舎開校時期についても、この間、なし崩し的に「2029年度内」などと説明されるようになっていますが、これは事業終期に間に合わない、すなわち「スケジュール遵守義務違反」です。
【スケジュール遅延すべてが区の責任にされる心配】
 そこで、区としては、少なくとも現計画においては杉一小新校舎開校予定時期は、河北病院の工事遅延による影響を見込んで変更、確定すべきではないか問います。またその場合の開校時期はいつになるでしょうか。同時に施行者会としてのスケジュールも当然仕切り直すべきと指摘します。そうしないと、最後に土地を引き渡すことになっている杉並区が事業全体の遅延の責任、スケジュール遵守義務違反の責任を一手に引き受けることになりはしないかと心配です。病院の着工から1年たってもこれらの修正がなされない理由はどういうことなのでしょうか。説明を求めます。(Q3)
【「見直しに最短5年」は誤り】
 スケジュールに関連して、区長メッセージでは、現地建替えに変更した場合、新校舎開校が「最短でも5年は遅れる」と述べています。しかし、計画を見直してもそんなにはかからないということを次にお話ししたいと思います。
 昨年5月に提出された「阿佐ヶ谷の原風景を守るまちづくり協議会」による現地建替えを求める要望書では、関係地権者や行政計画への影響を最小限にとどめる案を提案しています。
 この提案は、現在定められた土地区画整理事業と地区計画のルールを変えずにできる現地共同建替えの案であり、土地区画整理事業も地区計画も根本的なルールや事業の条件について見直しの必要はなく、学校に関わる文言の修正レベルですみます。
 このほかFAQで改定が必要となるとして掲げられている文書を列挙すると、施設整備等方針、これは杉一小の計画本体なので別として、ほかに、まちづくり基本方針、阿佐ヶ谷駅等周辺まちづくり方針、阿佐ヶ谷駅北東地区まちづくり計画がありますが、どれも整備等方針を受けての記述を改めればよく、改定は一部文言の修正等にとどまるものです。
【見直しは短期間で可能】
 このように「5年」には全く根拠がなく、ずっと短期間で見直しは可能と考えられます。
 計画変更を考える場合に、最も丁寧に時間をかけるべきは、住民との合意形成であり、その中には当然関係地権者の同意も含まれています。現計画を策定する際、3か月という短期間で決断してしまったぐらいなので、きちんと順を追ったプロセスを構築しさえすれば1年程度で合意に達することは可能と思われます。
 以上、本計画の法的リスク及び、関連してスケジュール遅延に関する責任問題を論じてきましたが、いずれも、専門家の意見書によれば、リスクはきわめて低いことがわかります。
【これまでの施行者の負担とは】
なお、区長メッセージでは「これまでの施行者の負担等を踏まえた補償金などの支払いが必要となりそのリスク」が云々と述べていますが、いま述べたように、専門家の意見書に照らしてもそのようなリスクはほとんどゼロに近く、これは誤りです。
 この発言にかぎらず、区長、行政はたびたび地権者が負担することで区画整理事業が進んでいるという説明をしますが、事業の参加者はそれぞれ土地を提供するものの、それを上回る利用増進を期待できるのであって、本件の場合も、道路整備等により土地の面積は減っても資産価値が向上、約1%の増進率が得られるようにあらかじめ設計されているものです。
【道路拡張はほとんど区の持ち出し】
 他方、この事業に関連する主要生活道路はその拡幅のほとんどが、区が地権者から買い取って行われるものであり、区画整理事業による地権者の負担とまではいえないことも付言します。
 そこでお聞きしますが、区長ビデオメッセージにある「これまでの共同施行者の負担」とは何を指すのでしょうか。説明を求めます(Q4)
(2)仮換地の不公平性
 さて、10月22日の「振り返る会」の継続の会では、区内在住の公認会計士の方から、仮換地における、杉一小と病院の評価が不均衡であり、公共用地である杉一小の敷地が不当に低く評価され、区が損しているのではないかという疑問が示されました。
【換地で杉並区が17億円の損】
 国税庁のホームページ上にも公開されている相続税路線価は一般的な売買価格のめやすとされます。これをもとに計算すると、杉一小等現在の区有地が約85億円に対し、換地後の区有地となる病院敷地等は約68億円であり、換地によって17億円も減価、面積にして杉一小敷地の10%ほど損しているとのことです。
 この点、区長メッセージでは「区の財産が毀損されることはないことを確認した」と述べていますが、その根拠は何ら示されていません。
 そこで質問します。本件仮換地は区と民間地権者との間で大きく均衡を欠くことは明らかです。なぜこのような不均衡を許容したのか。その理由の説明を求めます。(Q5)
【換地情報はいまだに非公開】
 公平性を確認するために必要な、共同施行者2者の数値に関わる情報がいまだに公開されないことも不透明さを助長しています。
 情報公開について、10月の継続の会で、担当者は「個人情報なので公開できない」むね発言しましたが、この発言は誤りです。また、FAQでは、個々の土地の修正係数を公開することは「各権利者に著しい不利益を与える」ため公開できないとしていますが、これも誤りです。なぜ誤りかは、今日の杉並区の管理職なら全員が知っていなければならないことです。
【「個人情報」だけでは非公開事由にならない】
 岸本区長就任後の2022年9月22日付全庁通知「情報の原則公開の徹底等について」では、とりわけ「非公開事由の適正かつ厳格な判断」が求められています。
 FAQの「著しい不利益を与える」のうち「著しい」について、全庁通知では「著しいとは:一般的抽象的な不利益や困難が発生する可能性が推測されるだけでは足りず、不利益や困難が発生することについて客観的具体的に合理的理由が説明されることが必要である」としています。
 したがって、この場合の仮換地に関する情報についても、非公開にする場合は「客観的具体的な理由を合理的に」説明する必要がありますが、いかがか。説明を求めます。(Q6)
【岸本区政下の全庁通知に反する】
 さらに、第三者への意見照会についても付言します。通知は「当該法人等から非公開とすべき旨の意見があった場合でも前例を踏襲せず、法人等には条例の趣旨を十分に説明したうえで、原則公開することを基本に判断すること」と指示しています。情報公開の主体はあくまでも保有者である区であって、関係法人が非公開を望んでいるからという理由で非公開とすることは通りません。
 なお、いま述べた「著しい」の定義等は、「杉並区情報公開・個人情報保護制度事務手引」に基づくものであり、東京地裁判決も採用した見解です。重要な書類ですが、区のホームページには掲載されていないので、区役所の情報公開窓口まで来ないと見ることができません。また、先の全庁通知もホームページに公開はされていません。これらがホームページ上に公開されていない理由を説明してください。また、事務手引については改定するとの話でしたが、その進捗状況、また課題があれば説明してください。(Q7)
(3)「対話」の扉が閉じられた
【参加者のほとんどが反対意見なのに】
 さて次に一番大切な対話についてのべます。岸本区長が対話の扉を開いてくれたことには、掛値なしに感謝しています。しかし、開いた扉がいきなり閉じられてしまったと思っている住民は少なくありません。
 私は8月31日の「振り返る会」、10月19、22日の継続の会、及び12月に開かれた3回のオープンハウスにおける車座の話し合いのすべてに参加しましたが、ほとんどの意見は、杉一小移転に対し疑問と懸念を示し、計画の変更を求める意見でした。また、団体との懇談会においても、1団体を除いては、同様だったと承知してています。この点、区も同様の認識かどうかうかがいます。(Q8)
【学校運営協議会は皆反対意見】
 区は区民にひろく「振り返る会」への参加を呼び掛けており、その中で反対の声が圧倒的に多かったということ、つまり移転に反対する意見が世論の多数ということを素直にとらえるべきでしょう。それなのに、なぜここで一方的に「計画は変更しません」と結論されるのか。とうてい納得できるものではありません。
 とりわけ注目すべきは学校関係者の意見です。振り返る会等で、保護者が何人も現地建替えを希望して発言しました。現在杉一小に在籍する児童からも発言がありました。また、区長と杉一小学校運営協議会(CS)との懇談会では、ほぼ全員が移転反対の立場で発言されたと聞いています。
【杉並区のめざす「地域がつくる学校」とは】
 杉並区は地域がつくる学校をめざして、全区立学校に学校運営協議会を設置しています。CSの委員は教育長が任命する非常勤公務員です。CSは学校の運営について意見を述べる権利と責任を負っています。特に杉一小のCS委員さんたちは、朝先生などの活動を通じ、日頃から学校と児童の現実をよく把握している人たちです。
 その方々のほとんどが移転に反対なのに、それを無視して移転を強行することに道理はあるのでしょうか。教育委員会は学校経営におけるCSの役割をどのように認識しているのか、行政と意見が合わなければ意見を無視してよい、そのくらい軽い存在と考えているのでしょうか。認識を問います。
【CS委員を一人ずつ呼び出し!】
 また、昨年12月のCSの懇談会で、反対意見が続出したあと、教育委員会はCS委員を一人一人個別に呼び出し面談をしたと聞き、あきれました。我々議員のような場慣れした者ならともかく、区民の方が、ひとりずつ役所に呼び出され、複数の職員に囲まれたら本音を発言できなくなるのが普通です。そこで説得するのが狙いだったのでしょうか。個別面談の目的は何だったのか。説明を求めます。(Q9)
 その後、再度のCSが開催され、区長は今回の決断を伝えたが、CS委員のほとんどは、変わらず移転反対の意見を述べたと聞いています。いまも委員さんたちの意見は変わっていないことでしょう。
【「反対の皆さんだけではない。大勢の人がいるんです」】
 ここで、第三回定例会でも紹介した書籍『人をつなぐ街を創る 世田谷のまちづくり報告』の文章をもう一度紹介します。
 「行政は住民の中の語らない賛成者をサイレント・マジョリティと称し、正義の後ろ盾として活用する。しかし本当にマジョリティなのだろうか。(中略)多くの人々で議論する場を排除する。それが一番とるべきではない行動であることを理解してほしい」
 区長は10月22日の会で「反対しているみなさんだけではない。この部屋の外に、多くの重要な話があることを理解していただきたい」と述べました。この発言は「サイレント・マジョリティを後ろ盾にするもの」とはいえないでしょうか。これに対し、杉一小保護者の方から次のような発言がありました。
 「区長のいう、ここに来ていない賛成の方はどこへいったのでしょうか?私は普通の一市民で、勇気をもってやっているのに、なんで一部の反対派みたいに言われなければならないのか」
 区長は、いわゆる「サイレント・マジョリティ」論を支持するのか否か。見解を求めます。第三回定例会でも同じ質問をしましたが、明確な答弁が得られませんでしたので重ねて問うものです。(Q10
【「反対派」などときめつける行政】
 なお、先日の他の議員の一般質問において、参加者を「区外の活動家」などと決めつける発言があったことは大変遺憾です。現場を見ずに聞いた話で発言されたのだと思いますが、振り返る会で発言した方々は当然皆区民で多くが阿佐ヶ谷の住民、杉一小の保護者、学校関係者、OBでした。区長に対して批判することは議員として自由ですが、公の場で区民の存在を否定することは厳に慎んでいただきたい。
 これは行政側もよくなくて、反対意見を述べる区民のことを「反対派」などといって話すから、経験の浅い議員さんがそのまま口に出してしまうのです。行政のこういう姿勢から改めていただかなくてはなりません。
(4)今後について
【杉一小跡地に区役所が移転?】
 最後に今後について述べます。まず、A街区の今後についてです。A街区(杉一小敷地)にはタワマンや大規模商業施設の計画が今のところないということですが、今後も計画しないと保証されるのでしょうか。答弁を求めます。(Q11)
 タワマンや大型店がないとすれば、あとはオフィスでしょうか。しかし、中野駅周辺が大規模に再開発される中、阿佐ヶ谷にオフィス需要があるとは全く思えません。それだからか、最近、区役所本庁舎の一部を移転するという説が出回っていますが、そのような計画があるのか否か確認します。(Q12)
【白紙のはずが「土地利用を検討されている方も」】
 振り返る会の区長発言では、地権者の計画は全く白紙、とのことでしたが、他方、所管課長は「A街区の土地利用を検討されている方もいるので」と述べており食い違っています。実は区は事情を把握しているのではないでしょうか。
 ちなみに、仮に区役所を建てるなら当然地代も払うことになるので、それなら杉一小現地建替えしても金銭的負担は同じことになります。それなら、学校でいいじゃないですか。
【病院跡地の汚染対策】
 さらに、どうしても心配なことは、病院跡地の土壌汚染の問題です。土壌汚染は原因発生者である病院側が対策するのは法的に当然です。FAQには深さ3mまですべての土壌を入れ替えると7億円かかるという記載があったので、てっきり病院の負担で入れ替えをするのかと思っていたら、違うのだそうです。実際は、10mメッシュでボーリングし、有害物質が検出されたブロックのみの土壌入れ替えと聞きました。かなり粗い調査になります。当たらなかったところに汚染物質がある可能性もあります。
 杉並区では校庭から大量の釘が発見されたことも記憶に新しいところであり、病院に任せきりでいいのでしょうか。区は主体的に汚染調査の計画と対策およびモニタリングに取り組むべきではないでしょうか。所見を伺います。(Q13)
【移転前提ではなく、柔軟な対話継続を】
 さて、これまで述べてきたように、計画見直しの法的リスク、賠償リスクはきわめて低いことが、確認されました。重大な違法行為だとか、賠償責任だとかいう区の説明はミスリードであり、いずれも計画変更できない理由にはなりません。
 したがって区長は、今後とも話し合いを継続すべきですが、その場合、移転前提の見直しなき対話ではなく、柔軟な対話であるべきです。
 区長の今議会答弁では「これまでの対話になにひとつ無駄なことはない」が決め台詞になっているようですが、それは違います。政治の場では結果がすべてです。下高井戸児童館、ゆうゆう天沼館の例も引き合いに出されていますが、どちらも住民が望んでいたのは、あくまでも施設の存続でした。それが拒絶されたのに、一部を取り出して対話の成果のように語ることは、住民も本意ではないし、住民自治の否定につながります。杉一小に関して、今後とも意味のある対話の再開を求めます。
【私たちぬきで私たちのことを決めないで】
 最後に、振り返る会で発言してくれた勇気ある小学生の言葉を紹介します。
「私たちの大好きな杉一小の場所を、その場所にいない大人が勝手に変えないでほしい」
 まさに、Nothing About Us Without Us。「当事者ぬきで決めるな」という人権の大原則をあの場で子どもさんが教えてくれたのです。私たち大人は子どもたちに恥ずかしくない対話をしなければなりません。 

児童館事業の新たな転換点(2023年12月6日本会議賛成討論)

 杉並区議会本会議において、阿佐谷南児童館について発言しました。児童館廃止の議案ですが、廃止される児童館の代替事業が新たに始まること、また、児童館全廃の方針を区としていったんストップし、子どもの居場所を充実していく方針であることから、廃止される南児童館についても今後代替施設整備の可能性があることを評価し、賛成しました。

 杉並区は現在「子どもの居場所づくり基本方針」を策定する検討会を開始しています。約1年間検討が行われる予定です。新たなステージで、あらためて杉並区が児童館の再整備について積極的に取り組むよう、引き続き発言していきたいと思います。

 保護者・子ども・住民の皆さんからもぜひ声を上げてください。

(以下は発言原稿です。実際の発言とは違う部分もあります)

 議案第83号 児童青少年センター及び児童館条例の一部を改正する条例について意見を述べます。この議案は、新たに区立児童相談所を設置するため、同用地の既存建物にある阿佐谷南児童館を廃止するものです。

【岸本区政で「児童館全廃」はいったんストップ】

 これまで区立施設再編整備計画において、施設としての児童館はすべて廃止し学校内の事業等に機能継承することを区は基本方針としてきました。

 しかし、岸本区長のもとで、今回、パブリックコメントに付された新たな「施設マネジメント計画(案)」においては、児童館全廃の方針は記載されていません。今後の児童館の行方については未定であり、あくまでも「子どもの居場所づくり基本方針」により今後決定するものとされているものの、10年間続いてきた「すべての児童館を廃止する方針」はいったんストップしたものと評価しています。

【児童館の代替事業】

 さて、本議案に関する保健福祉委員会の質疑を傍聴し、注目したポイントがいくつかありました。

 第一に、代替事業についてです。利用者からの代替施設の要望、また、区職員組合との交渉においても、代替事業を求める意見が出されたと聞いています。この点、委員会では、まず、乳幼児の居場所について、近隣の児童館や子ども子育てプラザだけでなく、新たに区役所本庁舎内に居場所を設置する方針が示されました。

【「出前児童館」を試行】

 そして、小学生の居場所について、小学校内の放課後等居場所事業設置はこれまでと同様ですが、それに加え、新たに、アウトリーチ型の事業、出前児童館を試行的に行う方針が示されました。児童館の廃止に対応するものとしては初めての試みです。

 この事業が、期限付きから常設型に変わっていくか、また、回数や時間が増えていくのか、すなわち阿佐谷南児童館の小学生の居場所を代替するものとして十分機能するのかは未知数ですが、少なくともその可能性があることは重要です。これまでの児童館廃止にあたり、小学生の一般来館の継承は学校内の放課後等居場所事業で問題ない、としてきた区の姿勢の転換と受け止めています。

 第二に、委員会では、今後の子どもの居場所について、縮小するというより充実させていく考え方であるとの答弁があり、阿佐谷南地域においても、新たな居場所の拡充の可能性が見えたことです。

【児童館職員の専門性は杉並の宝】

 第三に、委員会では、児童館をになう区職員さんたちのスキルのすばらしさについても質疑応答がありました。区長からも、児童館には職員の専門性が蓄積されており、それが杉並区の財産であること。子どもの福祉政策を実現するため児童館職員をはじめとした福祉職の役割がこれまで以上に重要であり、今後、計画的な採用を進め、適切な人員配置を行っていく、という見解が示されたことは重要でした。

【児童館政策で新たなステップ】

 以上に示された一連の考え方は、一部の議員がおっしゃるような「田中区政の継続」などではなく、過去の計画とは一線を画して、新たなステップに区政が明確に踏み出したものと認識しています。

 もちろん阿佐谷南児童館については、代替施設が確保されることが一番望ましいことで、私なりにいろいろ調べてみましたし、区側も可能性を検討してくれたと聞いています。しかし、今すぐに同地域の中で代替施設を確保することは極めて困難でした。そのもとで、最大限の努力として、アウトリーチ試行を含む代替事業が打ち出されたことは、これまでの学校への機能継承一辺倒の方針から脱却し、新たな一歩が踏み出されたものと評価し、本議案には賛成といたします。

【今後の児童館の役割】

 さて、今後の子どもの居場所検討について一言申し上げます。先の決算特別委員会において、私は次のように述べました。

「今後、杉並区は子どもの権利条例と自前の児童相談所を持つ自治体になっていく予定です。そのときに、区内にあまねく設置された児童館と職員は、子ども施策を地域できめこまかく展開していくための基幹的なインフラになるものと思います。この点からの再評価が必要です。

 もちろん児童館自体も変わっていく必要があります。児童館にくる子の対応だけでなく、児童館に来ない子にもアウトリーチしていくため、たとえば、出前児童館にとりくみ、児童館のない地域でも、子どもたちに遊びと支援を提供できるしくみを要望します。」

 今回、こうした取り組みが初歩的ながら始まったことに期待をするものです。

【児童館「ならでは」の特性】

 児童館再編の検証においては、放課後等居場所事業などでは維持することが困難な「児童館の特性」があることが確認されました。たとえば、

・子ども自身が自由に好きな場所、好きな遊びを選んで、利用することができること。

・世代を超えた子ども同士が出会い交流できること。

・乳幼児期から、子どもや保護者が職員とつながれること。

などです。

 これらの特性をこれからも十分に保障するため、今後とも、区内における児童館の適正かつ十分な再配置と子どもの居場所の拡充を求めます。さらにその際には、民間まかせで居場所の数さえあればよいということではなく、区が児童福祉の観点からその質に責任をもつ直営の児童館職員による事業をあらためて要望し、以上意見とします。

教育委員のバランスについて(2023年10月16日質問しました)

 10月16日、定例会最終日の本会議で、教育委員の任命同意について質問しました。

 気になっていることは、杉並区の社会教育行政がきわめて弱いことです。これでは岸本区長のめざす「住民自治」の強化は難しいと思っています。教育行政も転換されることを願い、質問しました。(教育委員の任命には賛成しました)

(以下は発言原稿です。実際の発言とは一部異なっています)

 議案第76号、77号について質問します。

 提案されているお二人の人事につきましては、再任の対馬さんはもちろん、新任の前田さんにつきましても、それぞれ人柄も存じ上げている方であり、適任と考えます。

 質問しますのは、教育委員のバランスについてです。お二人が任命されますと、教育委員会の構成は、校長先生2人、PTA3人となります。退任される委員さんが学識経験者の委員ですので、本来は学識経験者を任命すべきではなかったかと思います。その点どのように判断されたのかをまずお伺いします。

 というのは、杉並区教育委員会は、現在の教育長も、前任者も校長先生であり、学校教育については大変熱心でいらっしゃる一方、社会教育や文化施設等については手薄の印象が否めません。私はひそかに、杉並区学校教育委員会、とよんでいるくらいです。

 岸本区長が重視する住民自治を育てるには、学校教育だけでなく、住民が自ら学ぶ、社会教育をもっと強化する必要があると思います。古くは、原水禁署名運動が杉並区の公民館に学ぶ主婦の方たちから始まったという歴史もあり、杉並区は社会教育にも熱心な区でしたが、近年は残念ながら社会教育分野が極めて弱いことは大きな問題です。

 基本構想の委員会では、社会教育を専門とされる先生が座長を務められた経緯もあり、その分野の方を任命できなかったのかは残念です。

 そこでおうかがいしますが、今後の教育委員会において、その関心事や力点に偏りが生じることを心配していますが、その点について、どのようにお考えか。おうかがいします。

令和4年度決算認定に反対しました(2023年10月13日杉並区議会決算特別委員会)

 杉並区議会決算特別委員会の最終日、各決算の認定に反対する立場から意見を述べました。

 昨年度は、区長選挙の結果、7月から岸本聡子区長が就任したものの、予算じたいは前区長時代に編成されており、区長がかわっても下井高井戸児童館の廃止やゆうゆう天沼館の廃止準備は変わらず進められました。またこれらの計画である「施設再編整備計画」については、昨年度から検証が始まったものの、計画が転換できるか否かはいぜん不透明な状況です。こうした理由から決算の認定には反対しました。

(以下は発言原稿です。実際の発言とは違うところもあります)

 令和4年度決算について意見を述べます。

 私は、令和4年度予算案に対して、私は主に以下の点から反対しました。

 第一に、新自由主義的行革概念からの脱却といいながら、民営化の推進がひきつづき行われていること。第二に、施設再編整備計画の問題。特に、児童館の廃止が全区的に大きな問題となっていること。第三に、阿佐ヶ谷、西荻の駅前再開発、都市計画道路の推進、です。

 また、前区長による行事などの政治利用に反対する立場から、否決はされたものの、修正案も提出しました。

 これら前区政下で策定された令和4年度予算は、その後、区長選挙を経て、岸本区長就任後、一部修正されたものもありますが、多くは問題を残したまま執行されました。

 施設再編整備計画については、岸本区政下において、検証が進められたものの、児童館、ゆうゆう館の廃止方針は転換されるのか否か、いまだ不透明で問題は解決されていません。また、阿佐ヶ谷駅北東地区の再開発計画についても、先日、振り返る会が開催されたものの、対話は緒に就いたばかりです。

 とりわけ看過できないのは、下高井戸児童館の廃止であり、また、結果として今年度の実施となりましたが、本天沼集会所・天沼集会所・ゆうゆう天沼館の廃止・再編が当該年度は計画にそって具体的に進められたことです。

 このように前区政のもとで策定された方針を大方そのまま引き継ぎ実施した形になった令和4年度一般会計歳入歳出決算ほか3件についてはすべて反対とします。

【新たな地域コミュニティの可能性】

 さて、以下は質疑を踏まえて、今後を展望します。

 第一に施設再編整備計画について述べます。

 今後、見直し案が発表されるとのことですが、質疑ではコミュニティふらっとと児童館についてうかがいました。

 コミュニティふらっとは、どうしても、ゆうゆう館の後継施設として扱われがちですが、高齢者福祉施設ではなく、コミュニティの核となる施設として位置づけられています。質疑の中では、重度障害児の保護者の方の要望から、ふらっとの取組として避難訓練が実現できた例を紹介しました。

 ふらっと東原の利用者である地域の私たちは、子どもや学校の情報をはじめ、地域の様々な情報を取り交わしています。そうした中で、運営事業者さんの理解のもと課題解決の第一歩になるこうした取り組みができたことで、私はコミュニティふらっとの可能性を改めて認識することができました。

 町会の高齢化が問題となるなか、新たな地域コミュニティのあり方として、ふらっとを介して出会った人たちが、課題に気づき、解決へと行動にのりだしていく、そうした場になっていくことを望みます。

 そのためには、民間事業者におまかせではなく、地域課をはじめ区職員が積極的に住民と関わるしくみをつくる必要があります。施設再編の検証報告書では、ふらっとでの多世代交流を一過性のものでなく定着させていくには「しかけ」が必要と書かれており、これには共感するものです。

 たとえば、すぎなみ大人塾の例もあります。社教センターや社会教育主事さんたちの知恵も借りて「しかけ」をつくっていくことは、地域の自治を育てていく萌芽となることでしょう。

【児童館でしかできない児童館の特性】

 次に児童館については、まず放課後等居場所の検証において、学校になじめない子への対応、学校施設の利用に制約があること、放課後居場所ではできない児童館ならではの特性があることなどの課題があることが示されました。重要なポイントだと思います。

 特に児童館の特性として、子ども自身が自由に居場所を選び、遊びを選べること。おやつやゲームなどの持ち込みができること。学童と一般来館の子どもがいっしょに遊べること。小学生だけでなく幼児さんや中高生とも交流できること、などたくさんの特性が挙げられています。

 今後、よりよい子どもの居場所について検討するといいますが、居場所は託児所とは違います。また、児童館は単なる居場所ではありません。

 今後、杉並区は子どもの権利条例と自前の児童相談所を持つ自治体になっていく予定です。そのときに、区内にあまねく設置された児童館と職員は、子ども施策を地域できめこまかく展開していくための基幹的なインフラになるものと思います。この点からの再評価が必要です。

 もちろん児童館自体も変わっていく必要があります。児童館にくる子の対応だけでなく、児童館に来ない子にもアウトリーチしていくため、たとえば、出前児童館にとりくみ、児童館のない地域でも、子どもたちに遊びと支援を提供できるしくみを要望します。

【「対話」について】

 第二に、対話について述べます。

 このかん、聴っくオフ・ミーティング、さとことブレスト、施設再編整備計画の意見交換会、さらに阿佐ヶ谷駅北東地区まちづくりを振り返る会など多くの対話の機会がもたれました。どの取組も、対話を前向きに進めようとする区の姿勢がみられることは評価します。

 他方で、運営方法などについては、まだまだ改善の余地があることは行政も自覚していると思います。なによりも、個々のテーマについて、話し合いさえすればいいというものではなく、最終的には新たな結論を得てこその話し合いです。現状はまだそこまでは至っていません。

 先の一般質問で私は世田谷区幹部が書かれた『人をつなぐ街を創る』という本を紹介しました。そこに描かれた対話は、住民と行政が時にぶつかりながらも、次第にコミュニケーションを会得し信頼関係を築いていく過程です。その道のりはもちろん平坦なものではありません。

 複数の委員から「いつまで話し合えばいいのか」と早くも音を上げる意見もありましたが、民主主義は時間がかかります。対話とは、予定調和の結論をみんなが飲み込むこととは全く正反対です。むしろ対立する意見を戦わせることで、新たな可能性を見出していくことこそ、対話のだいご味です。激論を超えて1つの結論にたどりつく未来を見てみたいと思います。

【住民とともに自治を担う職員に】

 第三に、こうした事業を担っていく職員の問題です。コミュニティふらっとにしても、児童館にしても、住民とともに地域の課題にとりくむ職員の配置と人材確保、そしてスキルアップは重要な課題です。

 これまで、職員定数の削減にまい進する中で、杉並区では、特に若手の職員が、出張所はじめ、行政サービスの第一線で地域住民と接触する機会が極端に減ってしまいました。コミュニティふらっとにかぎらず、住民とともに自治を担う力を、職員さんたちにはもう一度取り戻していただきたいと思います。

 質疑では会計年度任用職員についてただしましたが、委託・指定管理で働く人も含め、低賃金や待遇面の課題は山積しています。重ねて改善を求めます。

【「公共の再生」】

 これらすべてを包括するのが、岸本区長のかかげる「公共の再生」という大きな目標であると受け止めています。働く人が十分に報われ、かつ、良質な行政サービスを提供していくために、新たな時代の公共の役割とはなにかを、様々な場面で一つひとつ考えながらも、住民自治にもとづきしっかりと自立する公共を杉並に取り戻していきたいと考えます。

 このほか、質疑では、福祉避難所、施設使用料、図書館、校庭開放など、それぞれ要望したところです。

 また、質疑では触れられませんでしたが、不況のなか、地域経済の振興についてはまったなしの課題と認識しています。特に商業振興において、プレミアム商品券は有効であることがわかっています。引き続きの事業実施を要望します。

【グローバルサウスと日本。中国と日本】  

 さて、ウクライナ戦争開始以来、国際関係の変化は、いっきに加速しました。欧米が戦争に足をとられる一方、グローバルサウスの発言力が強まり、日本も対応を迫られています。

 「次は台湾有事」などと危機をあおるような政治家の発言が相次いできましたが、日本は米中対立にまきこまれることなく、中国との友好平和、そして平和で繁栄する東アジアを築いていく責任があります。

 排外主義に陥ることなく、近隣諸国との善隣友好、また、日本国内に居住する外国籍の方々との共生を進めなくてはなりません。

【区民生活を守る区政の責務】

 一方、アベノミクスの10年により、国民生活は困窮に追い込まれています。円安は一時的なことではなく、国力の低下がそのまま通貨に表れたとみるべきで、政治を変え、根本的な政策転換をはからない限り、私たち国民の生き延びる道はありません。

 こうした中、杉並区政は、区民の生活と営業、福祉をしっかりと守り、支えていかなくてはなりません。区長、職員の皆さんはもとより、議会の立場からもそのためにいっそう働く決意です。

 以上をもって決算に関する意見とします。

 終わりにあたり、多くの資料を調整してくださり、また有意義な意見交換の場を与えてくださった、区長はじめ職員の皆様に、心より感謝申し上げます。ありがとうございました。

阿佐ヶ谷北東問題は住民と行政の対話で解決を(2023年9月14日一般質問)

(*杉並区議会公式動画リンクを追加しました。2023/12/5)

 2023年9月14日、杉並区議会第三回定例会で一般質問しました。テーマは、

阿佐ヶ谷駅北東地区の再開発と杉並第一小学校の移転計画について」

(杉並区議会公式動画はこちら

 杉並第一小学校の移転計画については、地域からずっと疑問の声が絶えません。

 その中でも区が説明を避けている「病院日影の懸念」「震災救援所として不適切」「近隣苦情の可能性大」の3つの問題は、どれか1つだけでも、学校にとって致命的です。

 また、前回(6月)一般質問で明確な回答がなかった「移転を見直したとき、誰かが損害を被ることがあるのか」について尋ねました。「相手が何を請求するかによって異なる」とかあいまいな答弁でした。

 杉並区は区長が交代したにもかかわらず、一貫して見直しを避け、「移転ありき」の姿勢です。

 岸本区長が進める「対話と共有」のまちづくりはそんなものではないはず。世田谷区のまちづくりの対話手法を紹介して、住民主権のまちづくりを提案しました。

(以下原稿です。実際の発言とは一部異なるところがあります)

 一般質問します。本日は、阿佐ヶ谷駅北東地区の再開発と杉並第一小学校の移転計画について質問します。

 8月31日、「阿佐ヶ谷駅北東地区まちづくりを振り返る会」が開催され、特に杉一小の移転計画について、満席の会場からは、多くの疑問が区に対して投げかけられました。「対話と共有」「住民自治」をかかげる岸本区政において、阿佐ヶ谷の開発、杉一小の移転についても、行政と住民の十分な対話によって課題が解決されていくことを期待して以下質問します。

【『人をつなぐ街を創る』】

 さて、具体的な話に入る前に、一冊の本を紹介します。

 『人をつなぐ街を創る 東京・世田谷のまちづくり報告』という本です。日本で最も先進的という評価を受けている、お隣、世田谷区のまちづくりに長年携わってきた職員の方が書かれた、住民主権のまちづくりのレポートです。

 「行政をにらみつけてくる反対者との対立をどう乗り越えるのか。行政マンとして常に考えて続けてきた課題である」。本書の著者は、こういいます。

 そして「行政は往々にして反対勢力を排除する行動を選択するが、私の経験から、こうした人々をも巻き込んだ議論の場こそが、次の関係をはぐくんでくれると思える」とも述べています。

【反対する人を排除しない。情報公開をつくすこと】

 本書では繰り返し、計画に反対する人を排除せずにその声を聴くこと、行政が徹底して情報公開し説明をつくすことの有効性、必要性を具体的な経験を紹介しつつ説いています。区職員の皆さんにはぜひ一度手に取っていただきたい一冊です。

 世田谷のまちづくりは90年代から長い時間をかけて練り上げられてきました。本書に紹介されるどのエピソードも、最初は「やじと怒号の説明会」で始まりながらも、2年3年と対話の場を重ねて、反対する人の意見も聞きながら皆で知恵を出していく過程で、最後は住民も行政も、課題と解決方法を共有し、ともにまちづくりに踏み出していく、その姿は感動的です。

 杉並区役所においては、本書の著者とも連絡をとっておられると伺いましたが、区長は本書をご存じでしょうか。また、読まれたのであれば、感想を求めます。(Q1)

 すでに、世田谷区にならった「デザイン会議」の名称が西荻などの都市計画道路で使われているようですが、付け焼刃でできるような簡単なことではありません。

【反対住民を徹底して排除したきた杉並区】

 岸本区長のもとで、話し合いの場が広がり、7月の施設再編整備計画についての7地区での意見交換会では、参加者の多くが行政と話し合えたことを素直に感謝し、喜び、今後に期待しています。

 しかし、話し合いのプロセスは目的ではなく手段です。どのような結論を出していくかこそが問われています。

 阿佐ヶ谷北東も同じです。議論がちゃんと受け止められ、住民の意見を取り入れたプランになってこそ、プロセスに意味が出てくるのであって、そうでなければ、いくら話し合いがうまくなっても、ただのガス抜きです。

 ましてこれまで住民意見を徹底的に排除してきた杉並区政において、住民主権への転換は容易ではありません。

サイレント・マジョリティとは】

 かつて「あんさんぶる荻窪」の税務署との財産交換の説明会で、住民が「ここで反対意見が多ければ、計画を見直してもらえるのか」と尋ねたところ、当時の企画課長は「サイレント・マジョリティという言葉がある。この場で反対といっている人はごく少数。57万区民のほとんどは賛成なのだから、計画はそのまま進める」と言い放ちました。わざわざ説明会に足を運び、時間を使って意見を言ってくれる貴重な住民を「ノイジー・マイノリティ」として切り捨てる、行政にはとても都合のいい論法ですが、世田谷のまちづくりとは対極にあります。

 また前区長は、政策に対する反対の声を「特定の政治的意図をもつ一部の反対者」などと断じていましたが、前区長を批判して当選した岸本区長に対しても、変わらず、杉一小移転や児童館廃止に対する疑問の声が出ていること自体が、政治的な思惑などではないことを証明しています。

【反対意見は先鋭的な活動家?】

 再び本書から引用します。「行政は住民の中の語らない賛成者をサイレント・マジョリティと称し、正義の後ろ盾として活用する。しかし本当にマジョリティなのだろうか。(中略)多くの人々で議論する場を排除する。それが一番とるべきではない行動であることを理解してほしい」

 そこで区長に質問しますが、区長はこうした「サイレント・マジョリティ」論法、区政に反対するのは一部の政治的、先鋭的な住民で、少数であれば排除していいという考え方を支持しますか。いかがですか。

 また、先日の阿佐ヶ谷の「振り返る会」では、杉一小の保護者からの強い懸念の声や、近隣の方から水害の経験にもとづく反対の声が聴かれましたが、こうした住民は排除してもかまわない少数の先鋭的な住民でしょうか。当日の会場発言についてはどのように受け止めたか。感想を求めます。(Q2)

【移転は法的に決まっていない】

 さて、ここから「振り返る会」を振り返ります。会では、多くの見るべき意見、鋭い指摘があったと思います。特に冒頭「杉一小の移転は法的に決まっているのか」との質問から始まったことは重要でした。

 杉一小の移転計画の見直しについて、区側の具体的な回答としては「法的に禁じられてはいない」「100%不可能というわけではない」「法的には問題ない」などの表現で、学校の移転が法的に決定していないこと、決定しているのは、欅興産、河北財団と区との3者が合意した協定のみであることが明らかになりました。

 そこでうかがいますが、阿佐ヶ谷北東地区の再開発計画、特に杉一小移転の見直しについて、法的に禁止されていないこと、法的には不可能ではないことはあの場で確認されたと認識していますがいかがか。所見を求めます。(Q3)

【学校移転中止で損害賠償請求になることはない】

 関連して、第二回定例会の私の質問に対し、明確な答弁がなかったので再度質問します。杉一小の移転計画を見直した場合、誰かが損害を被ることがあるのかないのか。あるとすればそれは誰でどのような損害でしょうか。「振り返る会」での法的決定に関する発言を踏まえて見解を示してください。(Q4)

【杉一小移転の大きな3つのリスク】

 さて「振り返る会」で区は膨大な資料を用意して説明していましたが、重要なポイントがいくつか抜けていましたので指摘します。

 2017年1月の「阿佐ヶ谷駅北東地区大規模敷地活用に関する調査業務委託」の報告書については、これまで幾度となく何人もの議員が取り上げてきましたが、ここでは特に、杉一小を複合施設・屋上校庭で現地建替えとする案(A案)と、現在の計画、つまり病院跡地に単体の施設として新築する案(B案)のメリット・デメリットの比較の中で、「振り返る会」では故意にか省略された、重大なデメリットについて改めて指摘します。

【9階建ての病院に隣接。日影懸念】

 第一に「病院日影の影響懸念」、第二に「震災救援所として不適切」、第三に「近隣苦情の可能性大」です。

 第一に日照です。報告書では※印で強調されています。現在建築工事中の河北病院は完成すれば9階建て、高さ40mです。屋上建屋含め45m。病院が示した冬至日影図によれば、となりの敷地には朝10時から影がかかりはじめ、一日中日陰となります。病院に近い南側に校舎を建てれば冬場は校舎が一日中日陰、かつ北側におかれる校庭には校舎の影もかかります。北側に校舎を建てれば南側の校庭が日陰、かつ校舎にも病院の影がかかります。しかも、なんと、地区計画決定時に現在の病院敷地は日影規制が解除されているので、学校が計画されているにも関わらず、隣地にいくら影がかかってもいい前提で病院を設計、つまり、初めから日陰の学校を前提している計画だということです。

【延焼・類焼により震災救援所には不適】

 第二の震災救援所。これは報告書でゴシック体の一回り大きな字で書かれています。「住宅密集地移転で、震災火災時延焼・類焼の恐れ」があるから震災救援所として不適切。また、地盤が弱いことから、現在の杉一の場所に比べると、揺れが大きいことは防災科学技術研究所のハザードカルテで明らかになっています。

 また、水害避難所については「振り返る会」でも多くの方から「もともと川である場所、かつて浸水もしており、水害の懸念が強い」こと、当然水害の避難所にはならないことが指摘されました。

【「静かな場所」に移転すると、近隣迷惑】

 第三の近隣苦情についても、ゴシック体です。先日、深刻なケースをうかがいました。以前新宿区の小学校に勤務されていた教員の方の話です。小学校が住宅地に移転し、音楽室は二重の防音、窓は一切あけずに授業、それでも近隣からどなりこまれる。子どもたちの声にもものすごい苦情があった。杉一小が病院跡地に移転したらとても学校教育は成り立たないとのご指摘でした。特に器楽が有名な学校でもあります。その活動はどうなるのでしょうか。また、区は静かな環境に移転することをメリットと説明していますが、逆に、その静かな環境に現在住んでいる人たちはどうなるのでしょう。

【リスクを知っているのになぜ学校を移転?】

 区から当日説明のなかった部分のうち重大な3点だけ補足しましたが、改めて、地域にこれらを公開し、意見を求めるべきです。

 お伺いしますが、これらのリスクを認識しているのに、それでも病院跡地に移転すべきと考えるのでしょうか。その理由を説明するよう求めます。

 さらに、「振り返る会」では「法的に問題がないとしても、道義的に責任がある」という区側の発言もありました。すなわち、民間地権者との協定などを示すものと思われますが、前区長の当時ならともかく、区長が交代したいま、そして「地域のことは地域が決める」と打ち出しているいま、これらの明白なデメリットが指摘されてなお、子どもたちの安全と教育環境、地域の災害避難所を犠牲にしても、地域の有力者との関係性「道義的責任」を優先するのでしょうか。見解を求めます。(Q6)

【そもそもどこから出てきた計画か】

 次に当日の説明にはなかったこの計画の経緯について指摘します。そもそもこの土地区画整理事業の発端は、2014年にさかのぼります。河北病院のホームページには、沿革に「まちづくり団体「阿佐ヶ谷駅北東地区を考える会」設立」と明記されており、河北病院の経営サイドが設立を主導した会です。この会が区に提出した報告書を情報公開で入手したところ、メンバーは10人ほどの少人数です。

【懇談会委員は全く説明を受けていない】

 ここで「振り返る会」で住民が読み上げた「改築検討懇談会委員から託された手紙」の一部を紹介します。 

 「最終検討決定のおりに、今までは懇談会委員として参加されていなかった「阿佐ヶ谷北東の会」と称する方々が同席され、違和感を覚えたことを記憶しています。後日、あくまでも河北総合病院理事長の私的な会の方と知りました。

 「検討懇談会」の意見はすべてなきものとなり、至った経緯、及び、きちんとした説明も全く受けていない状況で今日に至っています。

 不思議に感じていた私的な「北東の会」の名称を使った行政会議が行われている無神経さに、憤りを感じずにはいられません」

とのことです。

 10人ほどの私的な会の提案が、学校関係者も知らない間に杉一小を巻き込み、子どもたち、学校教育に重大な影響を与える区政の一大プロジェクトになったことには、今更ながら私物化を感じます。ことの発端から問題ですが、そこにとどまりません。

【「A案は凍結」】

 2016年2月、杉一小改築検討懇談会は複合施設・現地建替え・屋上校庭の案に概ね賛意を示し、これで基本計画が地元の合意を得たことになりました。この日の最後には事務局から「次回の懇談会は6~7月くらいでの開催となるかと思います」とありましたが、次回が開かれることはついになく、現在に至るまで開かれていません。

 ある委員のところには6月に連絡があり、計画は変更になる。このことは内密にお願いするといわれたそうです。この時点ですでに現地建替え案は変更が前提されていたのです。しかし、公式には8月に河北病院から移転の連絡があったとされ、以降区は公然と建て替え案の変更にむけて動き出しました。

意見交換会は非公開。委員は呼ばれていない】

 10月には意見交換会があったと区は言いますが、私も含め議員にも情報提供はなく、全く非公開の会議でした。検討懇談会委員にも何人も確認していますが全く知らされていなかったそうです。情報公開により入手した当日の資料には、先ほど述べたようなA案、B案の比較検討情報は一切記されておらず、意見の言いようがありません。これは区民との話し合いとはとうていよべないものであり、まして、検討懇談会が開かれないままであったことは、先ほど紹介した手紙の

「「検討懇談会」の意見はすべて無きものとなり、至った経緯及び、きちんとした説明も全く受けていない状況で今日に至っています。」のとおりです。

 そこで伺いますが、杉一小改築検討懇談会の予定されていた第8回が今日まで開かれなかったのはなぜか。(Q6)

 また、懇談会の中断により、学校関係者、保護者は蚊帳の外におかれて、約1年が経過し、B案つまり河北病院跡地への移転が決められてしまいました。前区長の時代のことなので岸本区長はこれまでご存じなかったと思います。いまこれを知って、区長はどう感じますか。感想をうかがいます。(Q7)

【学校関係者は蚊帳の外。プロセスに決定的な瑕疵】

 形だけの非公開の意見交換会がアリバイ的に開催された直後の11月、庁内の「実務検討会」が始まります。他の議員の質問にもあったように、この時点ですでにB案ありき、杉一小移転ありきでした。

 区が委嘱した委員さんが何回も集まっては話し合い、視察にも行って、悩みながらも出した結論であるA案をくつがえすというのに、委員には、検討自体知らせないまま約1年が経過ました。それこそ道義的にもあってはならないことで、B案決定のプロセスには決定的な瑕疵があったといわざるをえません。

【ホームページから消された議事録】

 私はこの経緯を確認するために、検討懇談会の議事録を読もうと教育委員会ホームページを検索しましたが、杉一小の検討懇談会の議事録が見当たりません。教育委員会にきくと削除されているとのことでした。しかし、高円寺学園や桃二小のように、とっくに工事が完了している学校であっても、検討懇談会の議事録はホームページにすべて残されています。

 いまだ改築ならず、検討の途上にある杉一小の懇談会の議事録こそ、むしろ公開されていなければならないはずですが、なぜ杉一だけが消されたのでしょう。計画を変更したので都合の悪い履歴ということなのでしょうか。

 そこでうかがいますが、杉一小検討懇談会の議事録を削除したのはいつか、また削除の理由は何か。説明を求めます。(Q8)

 削除は前区長の時代のことかとは思いますが、情報公開ナンバーワンをかかげる岸本区政においては、隠すことなく、だれもがアクセスできるよう、すぐにもホームページ上に復活するよう、これは要望といたします。

【まちづくり部長の発言は少数排除?】

 次に今後の進め方についてうかがいます。

 「振り返る会」では、最後に区長が話し合いを継続する旨を明言して終わりましたので、遠からず次回の話し合いの場が開催されるものと期待しています。

 しかし他方、この会でのまちづくり担当部長の発言には会場から驚きの声が上がりました。部長の「法的な問題がないから見直すというが、法的問題がないから何をしてもいいわけではない」「これまで協力・応援してくださった方を裏切るわけにはいかない」などの発言です。これらは、既定路線の見直しを拒否し、反対意見を排除する考えを示したものなのでしょうか。発言の真意を問うものです。(Q9)

 最初に紹介した世田谷に比べ、杉並区政の対話の実践は絶望的なまでにレベルが違いすぎ、全く遅れていると感じました。これまで述べてきた検討懇談会の経緯に鑑みても、見切り発車は決して許されるものではありません。

【5つの会議体が並走する。ちゃんとやれるの?】

 さて、今後ですが、「振り返る会」の続きの会を行うのは当然として、もうひとつ「阿佐ヶ谷まちづくりセッション」というものが、今定例会にも補正予算で提案されます。来年1~3月に2回開催する、その内容は北東地区だそうです。さらに第三に、杉一小改築検討懇談会が12月から開催される予定であるときいています。第四に、エリアマネジメント。これまで少人数の非公開会合として行われてきたものが、今後公開されていくのか、あやしいところではありますが、いちおうこういうものがある。第五に、都市計画道路補助133号線に関する対話集会は、今後の事業区間だけでなく、阿佐ヶ谷駅北口、北東地区も、会議体の一部として指定されています。阿佐ヶ谷駅北東地区だけで、合計5つもの会議体が並走することになりますが、これ全部本当に区役所は運営できるのでしょうか。もう少し整理すべきでしょう。むしろ、以前から指摘しているように、阿佐ヶ谷のまちの様々な問題を広く話し合う協議会をまず設定して、だれもが自由に話し合える場を設置すべきと考えます。

 そこでうかがいますが、第一に、5つの事業それぞれの主旨・目的、及び5つは相互にどう関係するのか。第二に、各々の開催スケジュールについて説明を求めます。

 また、これらは所管がばらばらです。そもそも阿佐ヶ谷北東再開発全体の統括責任はだれが負うのか。事業調整担当、施設マネジメント担当、学校整備担当、まちづくり担当と、それぞれの担当に「どこが統括するんですか」と聞いても首をかしげて答が返ってこない。みんな嫌がっているのかもしれません。前区長時代は、田中区長マターだから区長が統括します、ですんだのかもしれませんが、区長が交代したいま、それでは通りません。どこが統括するのか明らかにしてください。(Q10

【A街区・C街区の両方を活用する方法を】

 さて、今後についてはまだ何も決まっていないようですので、提案を申し上げます。

 第二回定例会でも述べたように、また「振り返る会」でも確認されたように、阿佐ヶ谷北東の事業は、変更したとしても、なんら法的に問題ないことは確認されています。とはいえ、相手のあることなのですべてを見直すことは不可能に近いでしょう。

 ではどうするか。私は、第二回定例会で紹介した「阿佐ヶ谷の原風景を守るまちづくり協議会」から提案されたように、仮換地によって区の換地先とされている現在の杉一小敷地(A街区)、及び、現在の河北病院敷地(C街区)、の両敷地をうまく活用して、よりよい学校を建築する計画を住民自治にもとづき検討すべきと考えますが、いかがか伺います。(Q11)

【保護者の思い「子どもに説明できない!」】

 質問を終わるにあたり、「振り返る会」での保護者の方の発言の一部を紹介します。

「子どもに、お父さん、どうして杉一小は移転しなきゃいけないの?って言われて、答えがないんですよ。(中略)移転する理由がない。にぎわいとかきれいごと、美しい言葉はけっこうです。

「それじゃ、移転するしかないよね」とみんなが納得するシンプルな理由がないと小学校っていうのは移転しちゃいけないと思うんです。

区のみなさんが小学校を単なる不動産として見ているのが悔しいです。(中略)

148年もあそこで先生や生徒や親ごさんや地域の方々がいっしょになって育んできた教育の場、教育の風土があそこで培われているんですよ。それを簡単に区の財産、区の不動産として移転される。これは子どもには説明できない。なんでこんなにみんなが不満に思っているのかよくよく考えていただきたいと思います。」

 この方の声をしっかえりと受け止めていただきたいと思います。

 杉並区内で最も古い小学校である杉一小は、再来年150周年を迎えます。150年の学校には、目先のことではなく、これからの150年を考える必要があります。

 先に紹介した世田谷のまちづくりにも学びつつ、この阿佐ヶ谷の問題こそ住民主権と呼ぶにふさわしいまちづくりを実現できるよう、区長、教育長、職員の皆さまにはよくよく考えていただきたいと要望して質問を終わります。

天沼地域の再編に反対する。保育園移転プロセスにも問題あり(2023年6月19日本会議での討論)

 先日の区民生活委員会で否決された天沼地域の施設再編(本天沼集会所・天沼集会所・ゆうゆう天沼館の廃止とコミュニティふらっと本天沼の設置)関連の条例は、先ほど(6/19)の本会議で残念ながら可決されました。

 私は同条例に反対するとともに、関連予算を計上した補正予算案にも反対の討論をしました(採決結果は可決)。以下にその原稿を掲載します。

 なお、同計画は新旧10所もの施設の廃止・移転・新設が絡む大変複雑な計画で、1つ躓けば全てが渋滞する欠陥計画です。(立案した人たちは「無駄のない精緻な計画」と思っていたかも)

 計画の詳細については、2022年11月21日の私の一般質問のうち、2.本天沼集会所等の再編について をご覧ください。  

(以下は原稿です。実際の発言とは異なる部分もあります)

 議案第44号 一般会計補正予算(第3号)について意見を述べます。本議案は多数の項目を含むものであり、その大半には異議のないところではありますが、コミュニティふらっと本天沼の整備に伴う予算と債務負担行為が計上されていることから反対します。

【区民生活委員会で反対した理由】

 ふらっと本天沼整備等に関連する反対理由は、区民生活委員会において述べた通り、第一に、3つの施設を1つに統合することに無理があること。特にゆうゆう館を廃止すべきでないこと。第二に、ふらっと本天沼の設計や改修とその後の利用計画に無理があること。第三にゆうゆう天沼館・保育園廃止後の民間保育園移転の根拠が不透明であること の大きく3点です。

【計画を止めないとの判断は早計だった】

 施設再編整備計画については、岸本区長就任後、当面する再編を、いったん休止する取り組みと、止めないで計画通り実施していく取り組みの2つにわけ、本件天沼地域の再編については、止めないほうに分類したわけですが、止めずに進めるとの決断は早計であったと指摘します。

児童相談所開設には影響しない】

 なぜなら第一に、児童相談所開設に対する影響ですが、区民生活委員会の質疑では、天沼集会所は利用者を消費者センターや隣接の特養の地域交流施設に分散することが可能であることが示されました。したがって廃止しなくても、利用者の調整等により発達相談係の移転と児相開設の時期には影響を与えないものと判断します。

【パピーナ保育園移転に関する訴訟リスクはない】

 第二に、天沼保育園等跡地に予定されているパピーナ保育園の移転については、中止、見直しが可能だからです。委員会では、移転を約束する契約書や覚書に類する文書は存在しないこと。また、事業者は移転のための準備行為を行っていないと区が確認しているとの答弁を得ました。

 したがって、損害賠償を請求する根拠となる文書がないこと、また損害金が発生しないことから、仮に計画を変更、あるいは中止しても、事業者が損害賠償を主張する可能性は極めてひくく、訴訟リスクはほぼないことは明らかです。

 パピーナ保育園の移転が決まっているから、計画はもう止められない、といわれてきました。しかし、中止や見直し、例えば複合施設としての建て替えが全く不可能かといえば、契約上、さらには訴訟リスクの上からは全く可能であると指摘します。

【通常の手続きではない、区として前例ない保育園の移転】

 質疑ではさらに、旧若杉小の事業者公募時に将来の移転先が明記されていないこと、にもかかわらず、天沼保育園等跡地の賃貸に関して公募が行われていないことを指摘して、こうした手法は通常の手続きではないこと、また、区として前例のない手続きであるとの答弁を得ました。

 行政計画として移転を計画しているので、違法な手続きとまではいえないものの、特に天沼保育園等跡地の賃貸については、旧若杉小学校内からあたかも自動的に移転できるかのように、公募をせずに決定したことは、著しく公正を欠く手続きであったといえます。その点からも、一度立ち止まって計画を見直す必要があります。

 以上が反対の理由です。議員各位のご賛同をお願いします。

【阿佐ヶ谷再開発でも損害賠償との虚偽答弁】

 なお、一般質問で、阿佐ヶ谷駅北東地区再開発についても、損害賠償請求が生じるから計画を見直せないとの理屈は法律的に誤りであり虚偽答弁であることを指摘しました。区民に誤った情報を流して転換をあきらめさせようとする手法はもはや通用しないことを認識していただきたいと思います。

 前区政の、阿佐ヶ谷、西荻等再開発や児童館・ゆうゆう館廃止に対してNOの声をつきつけたのが、昨年の区長選挙だったはずです。区長および関係所管の皆さんは、選挙に示された区民の意思を尊重し、地域の声に誠実に向き合っていただくよう、強く要望し、反対の意見とします。