石井哲+大山顕PRESENTS 『製鉄所ナイト』 新宿ロフトプラスワン/2012年6月18日 

■『製鉄所ナイト』
【日時】2012年6月18日(金) 18:00 会場 19:00開演
【料金】前売\1,500 当日券 \1,800円(共に飲食代別)
【場所】新宿ロフトプラスワン地図

慌ただしい告知となり申し訳ありませんが、製鉄所の湛える魅力の一端を紹介する『製鉄所萌え』の発売に合せて、明日18日の夕方19:00から新宿ロフトプラスワンにてトークイベントの開催が決まりました。
過去に2度開催させていただいた『工場ナイト』と同じく大山さんと御一緒させていただく『製鉄所ナイト』、今回は製鉄所や映像製作にまつわる御話をさせていただくのですが、過去の工場イベントと最も異なるのは意外なジャンルで活躍されるスペシャルゲストのお二人に参加いただいているところです。
御一人は、特技が測量と云う弱冠18歳の紗倉まなさん、もう御一人は、幼い頃から八幡で製鉄所に親しまれてきた瀬戸ちひろさん。
これまでお会いしてきた工場好きな方々とはまた異なる視点でのお話を沢山聴かせていただけると思いますので、お時間のある方は是非気軽にお越し下さい。

製鉄所の夜。

■輝きが生まれ行く場所


製鉄所。
重量感溢れる造形、立ち上がる水蒸気、肌に感じる輻射熱、響き渡る鋼板の振動…、連休シーズンになると各地で開催される見学会も即時に定員が埋まる盛況を見せる。
その姿を出来るだけ多くの人が身近に眺めることが出来ないかという想いから、1つの映像ソフトに関わってきました。
その名もシンプルに『製鉄所萌え』。
以前にシリーズで3作目まで製作された工場映像集『工場萌えな日々』は石油化学コンビナートを中心に収められていましたが、今回はタイトル通り製鉄所の姿だけを追っています。
静寂を伝える『工場萌えな日々』シリーズとは対照的に、銑鉄や鋼板の発する瞬きや音色が華やかなまでに詰まっています。
主役の1人である音を伝える為にBlu-rayでは5.1chを採用、もしも興味を持たれた方は是非手に取ってもらえれば嬉しいです。

■『製鉄所萌え』
 2012.5.2 RELEASE
 Blu-Ray:SEXW1 \4,990- (tax in)
 DVD:SEBW2 \3,990- (tax in)

灯火が消えた跡に。

wami2009-02-25

■製鉄の街

千葉市蘇我駅に降り立つと、誰もが目にするランドマークがある。それは、この街が製鉄の街であると云う事実を圧倒的視覚によって訴えてくるJFEスチール千葉地区の第5高炉。1965年より鉄を産み出し続けたこの巨大建造物も、現在はその役目を全て終え、2004年以降は物言わぬ存在として静かにこの地を見守って来た。周辺の臨海工業地帯を海から眺められる千葉港巡りの遊覧船でも、港内を一周した最後に控えて、真打ちに相応しい風情をいつも漂わせていた。
フクダ電子アリーナを訪れるJEF市原のサポーターを始め、蘇我駅を利用する全ての人にとって馴染み深いこの第5高炉も、遂に姿を消す時が近付いている。スタジアムが建つ以前は3基並んだ雄壮な姿が見られたJFEの高炉も、離れた場所に佇む現役の第6高炉を残し、これで全て撤去される事になる。公園として生まれ変わるこの場所の近くには、原寸大の鉄製ロボット製作で知られる造形作家・倉田光吾郎氏の記念モニュメントが昨年末に完成。デュイスブルグのランドシャフトパークのように市民の憩いの場としてそのまま高炉が保存されていても素晴らしかったかもしれないとの気持ちも残るが、これからは第5高炉に代わり時代を超えてこの街を見守り続けるだろう。

(写真/重機に囲まれて佇む、JFEスチール東日本製鉄所千葉地区の第5高炉)

(写真/GoogleMapより)

あなただけの工場の眺め方。

wami2009-02-19

■新・工場鑑賞ガイド『工場萌えF』

雄壮な工場の姿を眺める事が好きで、その気持ちを誰かに届けられる日を願ってこのささやかなブログを更新してきたのですが、そんな拙い想いを1冊の本にまとめる機会に恵まれた2007年3月。
個性豊かで様々な魅力を湛えたその姿を少しでも誰かに知ってもらえたらと、工場の秘めた楽しさを一杯に詰め込んで出版されました。
工場へ静かに惹かれる多くの方へ向けたその《初心者向け工場ガイド》から2年、また新しい工場の眺め方が形になります。
タイトルは、今回も分かり易く『工場萌えF』。
昨年も多くの方と共に各地の工業地帯を御一緒して歩いた住宅都市整理公団総裁/大山顕さんに、工場景観に就いて更に踏み込んだ解説をお願いした共著となります。
製鉄所、石油化学コンビナート、セメント工場と云った様々な形状を持つ工場を前にして、その展望が好きだと自覚しながらも具体的に何処へ惹かれているのかを心の中で模索しているような方にとって、もしも自分だけの工場の楽しみ方を見付ける切っ掛けの1つになりましたら本当に嬉しいです。
因みに、発売元は今回も東京書籍さん、発売日は明日、金曜日2009年2月20日となります。
これから徐々に日差しも暖かくなり工場鑑賞日和が増えますけれど、消え行く高炉の姿を眺められる遊覧船や対岸に広がるコンビナートを落ち着いて一望出来る臨海公園で心地良い週末の一時を過ごされる時、是非気軽に手に取っていただけましたら幸いです。

■工場鑑賞ガイド『工場萌えF』
http://www.amazon.co.jp/exec/obidos/ASIN/4487803454/

緑の中の巨人。

wami2009-02-17

■触れ合う世界

続いて、本数の少ない路面電車に乗り継いで到着した場所は、到る所で野ウサギを見掛ける、自然に恵まれた広大な敷地を持つ公園。
そこへ足を踏み入れて緑が生い茂る小道を進むと、フェルクリンゲンに比べて幾らか小振りな溶鉱炉が2つ並んで建っているのが遠目にも見えてくる。
ドイツのデュイスブルグに在るこのランドシャフトパークは、巨大なスケールに反してひっそりと佇んでいたフェルクリンゲン製鉄所とは対照的に、敷地内一杯に所狭しと家族連れが集まって盛大に賑わっていた。
高炉脇に並ぶ建物の外観には工業建築物の写真を撮り続けたベッヒャー夫妻の作品が大きく飾られ、中では大音量で様々なバンドが生演奏を繰り広げている。

日本で高炉を利用した産業遺産と言うとやはり東田第一高炉跡広場が有名だが、フェルクリンゲンと同じく静かに歴史を語っていたこのモニュメントを思い出しながら沢山の家族が行き交い子供達の歓声に包まれたこの空間に立つと、余りに近い市民と工場との距離に圧倒されつつも自然と笑みが零れてくる。
この場所は、誰にも咎められず工場跡地を存分と散策出来る公園となっていて、狭い階段を上り下りして自由にプラントの上部まで辿り着けたり、土台となる基礎部分を利用してフリークライミングの練習場として活用したり、廃タンクの中に水を張ってダイビングの教習所にしたり、それこそ多種多様な目的に沿って多くの人達が気侭に遊ぶ事が出来る。

一通り散策するには短い滞在時間の中、足元を走り抜ける子供達や躾の行き届いた飼い犬達を横目に、希有な存在の中を通り雨に降られながらも黙々と歩く。
そうして、巨大なプラントを真下から煽ったり高炉に登って俯瞰したりと、普段の工場鑑賞では体験出来ない貴重で心地良い一瞬が過ぎ、慌ただしく次の目的地へ向かう為に名残りを惜しみながらこの地を後にした。

(写真/役目を終えて以降も人々に親しまれる場所)

限定復刻/コンテナ荷役用クレーンTシャツ『キリンT』

前回、当blogでさせていただいた工場グッズ・プレゼントへ多数の御応募を頂き本当にありがとうございました。
抽選の結果、男女御二人の方に発送させていただきましたけれど、工場鑑賞のお供として末永く可愛がっていただければ嬉しいです。
その、とても反響の大きかったコンテナ荷役用クレーンTシャツ(ガントリークレーン)をモチーフとした『キリンT』が期間限定で再販されます。
締め切りは明日一杯ですので、興味を持たれた方は制作されているバドンさんのblogに是非アクセスしてみて下さい。
申し込み先【http://app.blog.livedoor.jp/r2koba/tb.cgi/64945399
http://mixi.jp/view_event.pl?id=20426040&comm_id=2105047

■因みに、バドンさん制作の他のインダストリアル系グッズは、新宿ジュンク堂6階でも購入可能ですので、気になる方はゆっくりと足を運ばれてみては如何でしょうか。

新しい絆。

頭上を配管が縦横に走る

■錆色の森を抜けて

■操業を停止したプラントが素早く姿を消し、廃工場が当時の状態のまま一般に公開される機会が少ないこの国とは少し事情が異なる街へ、在る日突然訪れる事に。
慌しくソウルとフランクフルトを経由して訪れたのは、フランスとの国境近いドイツのフェルクリンゲン。
長閑な街並みが広がる小さな街だが、駅を降りると直ぐ脇に巨大な黒い影が目に飛び込んで来る。

重量感漲るその建造物は、1873年に稼働を始め1986年に閉鎖された廃製鉄所で、1994年には世界遺産に登録され2000年より一般公開もされている、工場に惹かれる人間にとって素晴らしく稀有な存在。
入り口でチケットを購入し足を踏み入れると、色や造形に手を加えられる事無く剥き出しのまま保存された高炉等のプラントが、何処までも視野一杯に続いている。

広大な敷地を鬱蒼と覆う錆びた金属の塊を見上げながら歩いていると、瞬く間に時間が流れ去って行く。
時折擦れ違う、懐かしそうな顔で空間に浸る老夫婦や社会科見学に訪れた元気な子供達と共に一歩一歩視線を巡らしながら進んでいると、蘇我駅を降りて真っ直ぐに見える姿が印象的だったJFE東日本製鉄所の第5高炉の姿が不意に脳裏へと浮んで来る。
結局、高炉に寄り添う熱風炉の上にまで登る事が出来たこの場所に2日続けて通った後は、一旦観光都市ケルンに移り、廃製鉄所跡地を利用した公園ランドシャフトパークを目指す。

(写真/歩みを止めた後も続く穏やかな時間)