心の病で労災請求、過去最多 認定者も2番目の多さ

 うつ病など「心の病」で2013年度に労災請求をした人が1400人を超え、過去最多を更新したことが厚生労働省のまとめでわかった。認定者も436人おり、前年度に次ぎ過去2番目の多さ。職場のストレスやパワハラで発病した場合にも労災が認められると、広く知られるようになったことが背景にある。
 厚労省が27日、労災の請求・認定件数を発表した。 「心の病」である精神障害での請求は1409人。前年度より152人増え、記録をさかのぼれる1983年度以降で最多だった。
 認定者は前年度より39人減ったが、400人超えは2年連続。うち自殺と自殺未遂が63人いた。原因別では「仕事の内容や量の変化」「嫌がらせやいじめ、暴行」(ともに55人)のほか、「悲惨な事故や災害を体験、目撃」(49人)が目立つ。認定は幅広い職種であり、年代別では30代が全体の4割近くを占めた。
(2014年6月28日 朝日新聞

<精神疾患>病名に新指針 パニック障害は「パニック症」

 性同一性障害は「性別違和」に、パニック障害は「パニック症」に言い換えを−−。日本精神神経学会は28日、精神疾患の病名に関する新しい指針を発表した。本人や家族の差別感や不快感を減らすとともに、分かりやすい表現を用いて認知度を高めるのが目的だ。学会は今後、医療現場などに新指針による病名を用いるよう呼び掛けていく。
 米国の新診断基準「DSM−5」が昨年策定されたのを契機に、関連学会が表現を検討してきた。主な変更点として、患者や家族に配慮して「障害」を「症」に言い換えた。「障害」の表現が、症状が回復しないとの誤解を与えるためだ。
 例えば、物事に集中できないなどの症状がある注意欠陥多動性障害ADHD)は「注意欠陥・多動症」に、急に動悸(どうき)や息苦しさなどに襲われる「パニック障害」はパニック症、拒食症も「神経性やせ症」に変更した。
 身体的な性別と、心理的な性別が一致せず、強い違和感に苦しむ性同一性障害では、「障害」との表現に、患者の間で異論が多いことに配慮した。
 一方、新指針では比較的新しい疾患とされる「カフェイン使用障害」と「インターネットゲーム障害」などについて、「今後研究するための病態」として病名を盛り込んだ。

 ◇変更された主な精神疾患
 アルコール依存症→アルコール使用障害
 パニック障害→パニック症
 神経性無食欲症(拒食症)→神経性やせ症
 性同一性障害→性別違和
 言語障害→言語症
 注意欠陥・多動性障害(ADHD)→注意欠如・多動症
 アスペルガー症候群自閉症自閉スペクトラム症

(2014年5月29日 毎日新聞

うつ病、若者の疾患と障害の最大要因 WHO報告

 世界保健機関(WHO)は14日、うつ病が若者の疾患と障害における最大の要因であるとの報告書を発表した。報告書によると、若者の死因では自殺が3番目に多いという。
 WHOは、10〜19歳の各国の若者との直接面談および多くの調査論文をもとに報告書をまとめた。WHOの家族・女性・子どもの健康事務局のフラビア・ブストレオ事務局補は「世界は若者の健康に対して十分な注意を払っていない」とのコメントを発表した。
 一部の研究で、精神疾患を発症する人の約半数が14歳までに最初の症状を示すと指摘されたことを受け、報告書には「メンタルヘルスの問題がある若者に必要なケアを与えることができれば、死亡や、その後の人生を通じた苦しみを予防することができる」と記された。

死因トップ3は交通事故、エイズ、自殺
 報告書はタバコやアルコール、薬物、ヒト免疫不全ウイルス(HIV)、メンタルヘルス、栄養、性と生殖の健康、暴力など、多岐にわたる問題を調査した。若者の疾患と障害の要因として、うつ病に次いで2番目に多かったのは交通事故だった。
 また報告書によると、2012年に死亡した若者は全世界で推計130万人。死因のトップ3は交通事故、後天性免疫不全症候群エイズ)、自殺だった。
 交通事故による死亡の確率では、少年が少女の約3倍高かった。一方、少女で最も高い死因は自殺で、出産に伴う合併症がそれに続いた。HIVによる死者数は若者の間で増加しており、アフリカでは他の全ての年齢集団でHIV関連死が減少しているにもかかわらず、若者だけ増加していた。
【2014年5月15日 時事通信 翻訳編集AFPBBNews】

睡眠、高齢者は量より質 厚労省が「新・睡眠指針」

 年をとると朝型になるので睡眠時間は短くてOK、中高生は寝床での携帯電話の使用を控えて――。厚生労働省は近く、世代別の注意点を盛り込んだ健康のための「睡眠指針」をまとめる。2003年の策定以来11年ぶりの見直しで、年齢による生活や睡眠の特徴の違いを反映させる。
 新指針では、眠くなってから床につき、起きる時間を一定に保って、日中に眠気で困ることのない自然な睡眠をとるようすすめる。特に高齢者には、年齢に合った睡眠時間を心がけ、寝床で過ごしすぎないよう「メリハリをつける」ことを推奨する。
 一晩に眠る時間は、年をとるにつれ20年で約30分の割合で減っていく。10代前半までは平均8時間以上なのに対し、25歳で約7時間、45歳は約6・5時間、65歳は約6時間と、次第に短くなる。「若いころのように眠らなくては」と無理に床にとどまると睡眠の質が落ち、熟睡したと実感しにくくなるという。
(2014年3月23日 朝日新聞

メンタル休職、42%退職 期間短く完治せぬまま

 うつ病などメンタルヘルスの不調で会社を休職した社員の42.3%が、休職制度の利用中や職場復帰後に退職しているとの調査結果を、独立行政法人労働政策研究・研修機構」(東京・練馬)が18日までにまとめた。休職できる期間が短く治療が十分でないことや、復職後の支援体制が不十分なことが退職の背景にあるとみられる。
 退職者の多さは企業経営にとっても大きな損失で、就業継続への取り組みが不可欠だ。
 調査は2012年11月に実施。メンタルヘルスやがん、脳疾患、糖尿病などによる病気について、休職制度の有無や期間、退職・復職の状況などを尋ねた。5904社が回答した。
 調査結果によると、過去3年間にメンタル不調を理由に休職制度を利用した社員の退職率は、全疾病平均の37.8%を4.5ポイント上回った。
 最も高いのはがんの42.7%だが、がんによる休職は50代以上の割合が高く、定年など病気以外の理由による退職も多数含まれているとみられる。同機構の奥田栄二主任調査員補佐は「メンタル不調は30代以下の割合が高いため、病気を直接の原因とする退職率はメンタル不調が最も高いと考えられる」としている。
 また、メンタル不調者の退職率は休職制度の上限期間が短い企業ほど高い傾向があり、上限が3カ月までの場合は、59.3%が離職。2年6カ月超3年までの企業では29.8%で、2倍の差が出た。企業の規模別でみると、上限期間の短い企業が多い中小(50人以上100人未満)は退職率も48.0%と、千人以上の企業より15ポイント高かった。
 復職後に短時間勤務などの「試し出勤」や、産業医面談などのフォローアップを実施していない企業の退職率も実施企業より高かった。
 企業が最も対策を重視している疾病として挙げた割合が高いのは、メンタルヘルスが21.9%で、生活習慣病(8.9%)やがん(5.4%)を大きく上回った。
(2014年3月18日 日本経済新聞

「心の病」検査、年1回を義務化 政府が50人以上の事業所に

 政府は従業員50人以上の事業所に対して、メンタルヘルスの対策を義務付ける。全ての従業員を対象に年1回、ストレス状態の検査を実施し、希望者には医師による面接指導を行う。今の仕事を続けることが難しい人は職場を変えたり、労働時間を短くしたりすることを義務付ける。「心の病」が深刻になる前に予防して、不本意な離職や休職を減らす。
 政府はメンタルヘルス対策を盛り込んだ改正労働安全衛生法案を11日に閣議決定し、今国会での成立を目指す。当初は全ての事業所を対象とする予定だったが、中小企業の負担が大きいとして50人未満の事業所は努力義務にとどめた。
 メンタルヘルスの検査は書面で「ひどく疲れたと感じる」「ゆううつだ」といった項目について、従業員本人が答えることを想定。検査結果は本人だけに通知する。従業員が申し込めば、医師の面接指導を受けることができる。
 精神障害による労災の認定件数は2012年度で475件と前年度から46%増え、3年連続で過去最高を更新した。
 法案には規模の大きい工場で生産ラインを新設したり、変更したりするのに必要だった事前の届け出義務を廃止することも盛り込む。企業の設備投資を促す狙いだ。
(2014年3月10日 日本経済新聞

厚労省、「心の病」検査は義務化 中小企業で遅れ

 労働安全衛生法の改正案には、全企業へのメンタルヘルス対策の義務付けも盛り込まれる。全従業員に年1回、医師か保健師による「心の病」のチェックを実施しなければならなくなり、企業にとっては負担が増える。
 厚生労働省は「何をするのも面倒だ」など疲労や憂鬱感など10項目程度の質問票をだす見込みだ。状況次第では医師による面接指導を実施し、必要な措置を講じなければならない。診断結果は従業員の同意なしに企業に通知することを禁じる。
 コストは従業員1人当たり、350円程度かかる見通しだ。大企業を中心に、メンヘル対策は広がっているが、中小企業では普及が遅れている。厚労省の調査では全従業員にストレスチェックを実施している企業は全体の12%程度。法律が施行すれば、大半の企業が対策を迫られそうだ。
 メンヘル対策を義務化する法改正案は民主党政権時代の2011年に国会に提出されたが、12年末の政権交代で廃案になっていた。
(2014年1月22日 日本経済新聞