雨戸の国のサマータイム

http://blog.livedoor.jp/dankogai/archives/51239059.html

今更ながら、サマータイムなどということを言っている人がいるらしい。まぁ、なにしろ高校生のディベートでの定番のネタだから、大体議論は出尽くしている。「まぁ面倒くさいからパス」ということで大体コンセンサスがとれていると言って良い。せいぜい、ネタの切れた評論家が字数稼ぎに使う程度のどうでもいい話である。


ただ、上のエントリーを読んでちょっと思い出したことがあるので書き留めておきたい。


昔オーストラリア人に「日本はなぜサマータイムを導入しないんだ。眠れないじゃないか!」と言われたことがある。そこではたと気がついたのだが、サマータイムを導入しているイギリスやオーストラリアには雨戸がない。遮光カーテンはあるにはあるが、正直JAROに誇大広告で訴えられかねない程度の代物であって、とてもではないが陽光を遮ってはくれない。それどころか、街灯の明かりを遮るのすら心許ないのだ。


オーストラリアの南の方やイギリス等は緯度が高いから、朝の4時過ぎには夜明けを迎えてしまう。サマータイムがないと夜明けは午前3時半である。これはたまらない。金属繊維の遮光カーテンでばっちり日の光を遮る手もあるが、多分彼らはそんなカーテンの存在を知らない。知らなければ需要もないし、需要がなければ供給もない。そんなわけで、かれらとしては「朝の安眠のためのサマータイム」というのは結構大切な問題なのである。


雨戸文化の日本では、例えお天道様が高く上っても関係なく寝ていられるので、この点は余り問題にならない。


まぁ、政策の重要性という意味では「限りなくどうでも良い」政策に分類されるべきものだろうから、今後も結論を出すことなく、高校生向けのディベートのテーマとして活用されるべきではないかと。

英語って難しいよね(6):前置詞

前置詞というのはとにかく扱いが難しく、我々non-nativeを苦しませてくれます。しかも、前置詞には筋の通った用法というのは存在せず、『正しい前置詞の用法を類推することは多くの場合不可能であり、表現全体を覚えてしまうしかない』と、イギリス人のイギリス人のための文法書にも書いてあるそうであります。幸いピーターセンの「日本人の英語」という良著のおかげで、日本人の我々はある程度のとっかかりを得ることは出来るわけですが、実際使う段になってみるとやっぱり訳分からん、ということは良くあるわけで。

前置詞を文末においても良い場合

通常、前置詞を文末におくのは書き言葉では御法度な訳だが、以下の場合に限ってはOKとされている。

Wh-疑問詞で始まる疑問文

Who will you go with?
Which train (flight, bus, etc) is she travelling on?

間接疑問文でも、

Tell me what you are worried about.

はOKとなる。

文章内のsub clauseに使う場合

It's John that I'm really angry at.
This is the castle I told you about.

受身形

Most people like to be taken notice of.

(most people like situations that other people take notice of them)

infinitive(不定詞)

I've got lots of CDs to listen to.
It's a boring place to live in.

上の条件の例外(前置詞を文末においてはいけないケース)

関係代名詞whomを使う場合

He was respected by the people with whom he worked.
(less formal: He was respected by the people he worked with.)


whichでも前置詞を関係代名詞の前に持ってくることは出来るが、formal過ぎて不自然らしい(慇懃無礼な印象を与えかねない上、hierarchicalnalな響きもあるとのこと)。

It was the building about which he had told them. (too formal)
It was the building which he had told them about.


With whom did she go to the dinner?
これも同様にtoo formalな文の一例で、

Who did she go to the dinner with? でも決してinformalな表現ではないようだ。

例外その2:副詞句(adverbial phrases)

with great patience のように、前置詞+名詞で副詞句を作るケースの場合は、当然のことながら文末云々は関係なくなる。

また、
I admired the patience with which he spoke.

と書くと、patienceとwithが近くにあることでpatienceが強調される(一般的な用法からあえて外して書くケース)。

実際の用法


get(be) on [the bus, the flight, the train, etc]
get(be) in [the car, the taxi]

有名な使い分け。be in...の後に続くべきなのは原則として「場所」であり、動くものではないらしい。そうすると自動車はどうなのよということになるのだが、例外と思って割り切るしかないか。一応の説明は「日本人の英語」にあるのでそちらを参照されたい。


You will be eligible for promotion soon.


We regret the delay in despatching your order.


She was very conscious of her lack of experience on her first day at work.

be conscious of = be aware of (things). conscious about (body, etc)だと、自意識過剰とかナルシズムとか、そう言う意味になってしまうので注意。


You will be safe from unwarranted intrusion.


There's no doubt about the urgency of the problem.


She has always been lacking in tact.


I would like to take this opportunity of thanking my hosts.
(......opportunity to thank my hostsでも良い、ただしformalな語感は薄れる)

似たような表現として、以下のようなものもある。it is of your interestなどもよく見る表現。
It is of use to you (formal)
It is useful to/for you (less formal)


The smell is peculiar to this type of plant.


How very typical of him! Nothing is ever his fault!

”あいつらしいや。なんでも人のせいにしやがる!”みたいな感じ。typical of...は、...に特有な、という意味のほかに、「いかにも・・・がやりそうなことだ」という意味がある。


She takes great pleasure in pitting her wits against all comers.

pit one's wits against somebodyは、知恵比べをする、知恵を戦わせる、の意。


The island is rich in natural resources.


He's incapable of holding down a job.

hold down a jobで仕事をする、職に就く、の意。a jobをthe jobと書き間違えると劇的に意味が変わってしまうので注意(上の文だと、彼には何か致命的な問題があって、世の中の仕事はとてもできない、という意味。the jobだと、その仕事に必要なスキルを持っていないだけで、他の仕事ならできるかもしれない、というニュアンスに。定冠詞はいつかちゃんとまとめたい)。


I don't really see any point in continuing this conversation.


We had great difficulty in understanding the statement.

このinは省略可。


She's convinced of the justice of her case.
She's convinced about his idea.

convinced of (自分自身が信じている信念)
convinced about (他人に説得されたアイデア

と使い分けられる。前者のほうがより大きな概念(issues)に、後者はもっと小さなことに用いる。


He takes pride in showing off his garden.


I am surprised at you, forgetting your documents like that!


In this day and age, I am embarrassed to admit that I am totally baffled by the ever-changing technology that one is expected to get to grips with!

In this day and age (of ....)で、...のご時世に、の意。
get to grips with... は、理解する、(問題に)直面する、など。


The banks are not capable of investing foreign firms.

capable to invest...とはならない。

phosphorus=燐?

リーバーマン外相当確、のニュースで、久しぶりにパレスチナイスラエルがらみのニュースを眺めていたんですが、その途中で英語の解釈で盛り上がっているのを見つけました。

http://obiekt.seesaa.net/article/115344720.html
http://d.hatena.ne.jp/scopedog/20090310/1236696915

元の話は照明弾についての英語記事の記述が正しいかどうか、という議論だったようなのですが、その過程で"phosphorus canister"という単語の解釈が問題になったようです。私はテクニカルな軍事の話には余り興味がありませんので、議論の流れ自体はここでは追いかけませんが、その中で「phosphorusは化学物質の燐という意味だけとは限らない、発光する物質という意味もある」という話に少し引っかかりました。ええ、思いっきりphosphorusといえば燐、と覚えてましたので。それ以外の用法で使われているのを見たことがありません。


で、電車に乗りながら暇つぶしに電子辞書を引いていたのですが、Oxford Dictionary of English(ODE)でも、Cobuildでも元素番号15番の燐という意味しか載っていません(ODEはLearners dictionaryではなく、フルセットの方です)。それでジーニアス英和大辞典とリーダーズを引いたところ、確かに燐光体という意味が載っています(ただし、まれにしか使われないとのこと)。しかし、燐光体といわれても何の事やら分かりません。


で、ウェブを当たったら、上のブログでも参照されているように、この「燐光体」というのは、どうやら "phosphorescent substance"の訳であるらしいことが分かります。で、このphosphorescentはどういう意味なのよと思って更に英和辞典を引くと、燐光を発する、燐光性の、と。やっぱり意味が分かりません。


ODEをひくと、物理学の専門用語であると同時に、"light emitted by a substance without combustion or perceptible heat"とあります。・・・こんなとらえどころのない定義をされても困ります。こういうときはdescriptiveなCobuildが便利です。こちらは、"A phosphorescent object or colour glows in the dark with a soft light, but gives out little or no heat"とあります。つまり、「phosphorescentな物体(または色)は、闇の中で柔らかい光を発するが、殆どまたは全く発熱しない。」ということです。


どうもニュアンス的には「人魂の燐光」と同じような用法であるように思います。燐の発光現象から派生した意味なのでしょうね。ただ、"phosphorus canister"をこちらの意味で使うと、なんだか「ぼやーっと光る人魂を缶につめて蓋をしました」みたいな、ちょっとよく分からない意味になってしまう気がしますが(または、缶自体が柔らかく光る物質で出来ているとか。どちらにしても、専門用語としての独特の定義がある場合を別にして、ちょっと無理のある解釈のように思えます)。


ちなみに、googlephosphorus canisterを引くと、8割以上はwhite phosphorus canisterという記述の一部でした。数少ない例外の一つがこれで、"A canister reportedly containing phosphorus"と定義されているので、これも「燐が入っている筒」という意味でしょうね。Wordbankの例文でも燐光体の意味で使われている文章はありませんでしたし、やはりまれにしか使われない用法のようです。


と、ここまで書いてから、ネイティブスピーカーに聞くのが手っ取り早いことに気がつきました。今度機会があれば聞いてみます。

中川氏の酔っぱらい会見などどうということはなかった件について

あの仕様もない記者会見以降、外人と会うたんびに「お前のとこの財務大臣アル中なんだって?」みたいなネタが振られるわけですが、いやいやフランスも人のこと言えないだろ、というYoutube映像を送ってもらいました。まぁ、古い話なので知ってる人は知ってると思いますが。

この会見、プーチンとの会談の後に行われたものですが、ウォッカをぶら下げてやる気満々でエリゼ宮にやってきたプーチン大統領に、下戸で知られるサルコジ大統領あえなく撃沈、とまぁそういう話のようでございます。


で、適当に検索をかけて掲示板を見てみたら、でるわでるわ非難の嵐。まぁ、演台にしがみついてようやく立っているという体たらくですから、国民の視線が厳しくなるのも無理はないというものです。


サルコジは下戸だからな・・・シラクだったらこんな事にはならなかったのに』

『ワインの国の大統領が酒に弱いなんて恥ずべき事だ(確かにウォッカの国はロシアだが、そんなことは言い訳にならん)』

『ワインだけじゃないよ!コニャックだってあるよ!』

パスティスとラムだってフランスのだろ』

『一国の大統領が酒も飲めないなんて悲しいね・・・。賭けてもいいが、あいつはドラッグだって手を出したこと無いね。我らが大統領の一人、フェリックス・ファーレはフェ○チオしてもらってる最中に心臓麻痺で死んだっていうのに。あれこそがフランス大統領のあるべき姿だ。サルコジが我らが共和国のために、ファーレと同じように命を投げ出すシーンなんて想像も出来ないよ』

http://www.uspoliticsonline.com/just-fun/38927-putin-makes-sarkozy-drunk.html


やはり記者会見に酔って醜態をさらすというのは、洋の東西を問わず非難の対象となるようですね。中川氏にも今後いっそうの奮起を期待したいところです。ワインごときで酔っぱらっているようでは、プーチン大統領と戦う資格もありません。

イスラエルの選挙

派手な戦争が一段落して話題から消えつつあるパレスチナ問題だが、2月10日はイスラエル議会選の投票日だ。今後数年のパレスチナ情勢を左右する重要なイベントであることは間違いない。The Economistの記事によると、支持率1位はネタニヤフ率いる右翼政党リクード。それを、リブニ率いるカディマと、バラク率いる労働党という、中道(労働党は今でも左翼なのだろうか?)穏健派が追いかける展開となっている。


ネタニヤフは最近改めてヨルダン川西岸地帯からの撤退はあり得ないと明言している。まぁ、いつものリクードのノリそのままなのだが。そもそも、西岸地帯に入植地を展開したのもリクードなので、彼らに西岸地帯の入植民を見捨てる選択肢などあるわけがない。とはいえ、ガザの入植民を力ずくで排除してガザからの撤退を果たしたシャロンも元はリクードの党首なので、リクードだからどうこう、という議論はしづらいのだけれど(ネタニヤフはこのシャロン路線に猛反対して、シャロンリクードから追い出そうとしたのだが、シャロンが先手を打って党を割ったために失敗に終わった。この割れた党の片割れがカディマへとつながる)。


ただし、現時点ではリクードは120ある議席のうち30程度しか押さえられない見込みなので、むしろ勝負は選挙後のどろどろの連立仲間捜しと言うことになる。そこで問題になるのが最近ダークホースとして成長著しい極右政党、リーバーマン率いるベイテヌ(我が家イスラエル)。リーバーマンはとにかく発言が過激で、最近も日本がらみの発言で日本人の顰蹙を買っている。適当に検索すればいくらでも出てくるが、典型的な人種差別主義者として悪し様に罵られる人物だ。


現在10議席強のベイテヌが躍進することになると、リクードとの連立政権という夢の右翼タッグが成立する。正直、せっかく安定しているヨルダン川西岸地帯ですら不安定化しかねない嫌なシナリオではある(とは言え、ベイテヌの躍進はリクードの票田を奪うことになるので、リクードとベイテヌ両方が躍進する可能性は低いというのがThe Economistの見立てだが)。


だが、どうもThe Economistを読んでいるとそれほど単純な話でもないらしい。ユダヤ教正統派(ニューヨークとかでよく見かける、もみあげを伸ばして黒い帽子をかぶっている人たち)を支持基盤とするリクードに対して、リーバーマンのベイテヌはユダヤ教の導師(ラビ)の権力を抑制する政策を掲げている(ラビを必要としない「無宗教婚(civil marriage)」を認めることなど)。現時点ではリーバーマンがネタニヤフを支持するかどうかすら不分明のようだ。


それ以外のリーバーマンの政策を挙げていくと、「no loyality, no citizenship」。Wikipediaでは『アラブ系住民の参政権を剥奪するよう主張』と書いてあるが、正確には、イスラエルに2割ほど居るアラブ人に対して、国家への忠誠の誓約と、軍務ないしはその他の義務(national service)の履行を求め、それが果たされない場合には公民権を剥奪する、というもの。また、西岸地帯の入植地を保持する代わりに、現在イスラエルの領土となっているところをパレスチナに割譲すると言う案も出している(入植地には宗教的、農業的に重要な地域が含まれているため、パレスチナ側がこれに応じる可能性はないが)。どうしようもなく極右なのは明らかだが、既知外というわけでもないようだ。


The Economistとしては、防衛大臣ラク(穏健派だが、今回のガザ侵攻でイスラエル人からの支持を固めた)率いる労働党と、リクードとの挙国一致政権を期待しているようだ(ドリームチームとまで書いている)。とりあえず、20年前のリクード政権のときのような、傲慢と軽率を絵に描いたような政権だけは勘弁願いたいところなのだが。



ところでハマスのほうはどうしているかと言うと、国連からの援助物資の食料を数百トン横領して国連をぶち切れさせている。これは単純なこそ泥と言うわけではなく、ハマスとしては「援助物資をガザ市民に供給するのはハマスであるべきで、国連はハマスに物資を供給すればいいのだ、国連はすっこんでろ(意訳:not to "become a political player in Gaza")、ということであるらしい。更にいえば、援助物資をハマスの支持者・協力者にだけ供給することで、自らの支持基盤を強化する目的もあるようだ。それを国連が拒否したので実力行使に出たものの、ぶちきれた国連が援助を停止してしまったので、慌てて軌道修正を図っている、と。本サイトで書いたとおり、ハマスの外交的孤立に改善の兆しは見られず、当面密輸ルートも限られるとなると、今後のハマスの戦略はかなり限定的になってしまうような気がする。

英語って難しいよね(5):英文メールのお作法


結構勘違いしていたことが多く、習っていて頭を抱えたのでメモ。これをお読みの皆さんは同じような失敗をしないですみますように。

文頭

Hi Bob が基本。外部の人間で改まる必要がある場合はDear Bob。Dear Mr. Smithはかなりの距離感を感じさせる表現であるらしく、Eメールではあまり使わないとのこと。

また、Hi Bob, または Dear Bob, とカンマ付きで書き始めた場合、最後のBest regards, Kind regards, もカンマ付きで締める。Hi Bob とカンマ無しではじめたら、最後もKind regard でカンマ無し。ちなみに、カンマ付きの方がold styleで、最近のトレンドはカンマ無しなのだそうだ。

書き始め

たまに「英文は突然用件から書き始めて良い」と言ったコメントを目にするが、海外にだって礼儀はある。もしミーティングで会った相手にメールを送るなら、Thank you for the interesting discussion about.... くらいの挨拶はしておかなければ失礼になる。原則はpositiveなトーンで始めてpositiveなトーンで締めること。

人にものを頼むとき

悪い例は I want to confirm the delivery of the book I require. みたいな文章。上から目線にもほどがある。

とりあえず、requireは文字通り「要求する」という感じになるので、自分が相手に1億円を稼がせている上得意でもなければ使ってはいけない。無難なのはask、requestなどだけれど、これらは「相手にYes/Noを選択する権利がある」ことを示唆する言葉なので、相手に選択の権利など無い!と思っているとき、Noなどと言われては困るときには使わない方が無難。こういうときには、...the book I need. と、自分の動作で置き換えてしまうことで、相手に対する命令のニュアンスを消すことが出来る。ちなみに、出来のいい文章とは、

I thought it might be useful to confirm the delivery of the book I need. とか。ただし、これは多分イギリス流で、アメリカならI would like toでもビジネス英語として十分通用しそうな気がする。


同様の理由で、I wish to meet with you...よりもI look forward to meeting you の方がよい。

まずwishには「叶わない願いを願う」というニュアンスがあるので(イギリスの場合は単なる願いの意味もあるが)避けた方が無難。また、A meets with Bは、AとBとの身分に何かhierarchicalな関係がある場合に使う表現なので避けなければならない(AとBどちらの身分が上でもこの表現になる)。


Please send me...のような単純な文章はつい使いたくなるが、これもかなり「命令」の度合いが強い文章なので、使う際には注意を要する。もっとひどいのがKindly send me..と、Kindlyを使う場合。pleaseよりも慇懃無礼な表現の上に時代がかっている。「今時はtaxmanくらいしか使わない」とのこと(Kindly pay the following amount by.... など。Or you will be summoned!という強制力をもった文が後に続くわけだ)。


とりあえず無難なのがcould you...で始める文章。この文にpleaseまで付けるのは少々やり過ぎではないか、というのが先生のコメント。Could you "please" do....と書くと、読み手の読み方次第でpleaseに妙にいやみったらしい語感がつきまとうため。


忙しいんだけどそこを何とか、という表現を込めたいなら、以下の文章が便利。

  • I know you are busy, but...
  • I know this is a lot of work, but...
  • I apologise for the tight deadline, but...

人に説明したいとき

I would like to inform you は避けるべき。informはかなりhierarchicalな表現。何を偉そうに、と思われかねない。I would like to tell you にも、informほどではないが同様のニュアンスがあるので、避けた方が無難。Can you tell me...のように、相手の行動に対して使う場合は問題ない。

上下関係を気にせずに使えるのはupdate。使い勝手がよいので最近はかなり頻繁に使われるらしい。

結びの言葉

ビジネスEメールであれば次の3つ。下に行けば行くほどカジュアルになる。

  • Kind regards
  • Best regards
  • Regards (Cheers: イギリスのみ)

Regardsはinformalなので、相手のことをよく知っている場合にのみ使うのが原則。Kind regardsがもっともスタンダードなので、迷ったらこれにしておくのが吉。


Eメールではなく、少し畏まった英文レターを送る場合は、以下の4通りの可能性がある(以下のものはイギリス流で、アメリカだとSincerely yours、と順序が逆になる)。

  • Yours sincerely
  • Yours truly
  • Yours faithfully
  • Yours aye

最後のayeというのはスコットランド語で、スコティッシュ専用だそうだ。この中で、2番目のYours trulyは死語になりつつなるので、実質的には2つ。Yours sincerelyはDear Mr. Smithのように、名前を知っている相手に対して使う。Yours faithfullyは、Dear Sir or Madamとか、名前を知らない相手に対して書き送る場合に使う。

ちなみに、英文レターでも、Kind regardsは十分通用する。


それから、もし頼み事をしたのであれば、これらの結語を書く前にMany thanks,とかThank you in advanceとかは書いておくべき。これが無い英文メールはあまり見ないので、その文だけ忘れると目立ちそうな気がする。

英語って難しいよね(4):英語の何を学ぶのか

http://blog.livedoor.jp/dankogai/archives/51133522.html
http://d.hatena.ne.jp/finalvent/20081103/1225671650

上のお二方のエントリーを読んでいると、結局のところ、万人に適した英語の勉強法など存在しないということが良くわかって面白い。以下、少し雑談を。

技術系英語ライティング(西海岸風味)

Dankogai氏が必要としていたのは、アメリカ人(特に西海岸在住の技術者)を対象にしたビジネス英語であり、明瞭に、簡潔に、が旨とされる。その一方で個々の単語のformalityはあまり問題にならないし、相手を怒らせずに相手の間違いを指摘するスキルなどもそれほど重視はされないだろう。更に、ある専門分野に限って英文を書くのであれば、必要な単語はある程度絞り込める。この場合、氏が薦めるように、頻出単語に特化したthesaurus的な辞書というのは実に役に立つ。

政治系英語リーディング

一方でfinalvent氏が必要としていたのは「文系の文章を読みこむスキル」であり、しかも文系の中でも簡潔明瞭であることがあまり重視されない政治系の文章が対象だ(政治の文章がやたらと装飾過剰になりがちなのは洋の東西を問わない)。おハイソな文章になればなるほど、自分の感情を文章に直接表現することはしなくなる。事実を淡々と記すその表現の中に、微妙に色をつけて「個人の感想」を埋め込んでいくのだ。The Economistあたりではそういう文章が結構多い(筆者の好みではないのだが)。

こうなると、個別の単語のちょっとしたニュアンスの違いを悟るために辞書を読み比べたり、正直かなり大変な作業が要求される。大体、ネイティブスピーカーですら細かい言葉の使い分けは統一されていない。in contrastとby contrastには意味上の違いがあるという人もいるし、in contrastは後にtoが続く場合にしか使わない、という人だっている。求道という言葉が浮かんでくるくらい面倒な道のりだが、そこを潜り抜けないと見えてこない世界は確かにあるのだろう。

文系英語ライティング(東寄り)

筆者に必要なのはDankogai氏と同じビジネス英語ライティングなのだが、読み手は主にもっと東、アメリ東海岸やイギリス辺りで文系(法律とか経済とか)の人が対象になる。この場合、簡潔明瞭に加えてフォーマルであることもある程度要求される(例えば、sort outは書き言葉としては不適切で、resolveとかに変えた方がよい)。ある程度の単語は分かっていないと話にならないし、似た単語の意味の違いもある程度はわきまえる必要が出てくる。たとえば、angry, fury, livid, irateはどれも似た意味だが、irateはangryよりもずっと深刻な怒りを表す。この辺りの違いが気になりだすと、英和・和英はほとんど役に立たない(以前のエントリーも参照されたい)。シソーラスも単体では説明不足に過ぎる。


ただし、逆に言えば、単語の微妙な違いにそこまで気を配る必要がないなら、無理をして英英辞典を読む必要はない。もちろん、英和辞典でニュアンスを勘違いしたまま後で大恥をかく、ということはあり得る。というか、よくある。それでも、初学者の独学のお供に英英辞典というのはやはり荷が重いだろう。筆者は今でも大体英和と和英で事足りている。


もっと踏み込むと、上で書いたのは「自分の書いた文章を読む義務も義理もない人に何とか読んでもらう」ために必要なスキル(の一部)であって、読み手側にある程度解読の熱意なり義務なりが期待できるなら、必要な英語の訓練はぐっと軽減される。極端な話、thereforeとかfor exampleとかButとか、接続詞の使い分けさえ何とかなっていれば、文法はそこまで気にする必要はない(ただし、文法には大変大らかなことで知られるアメリカ人も、三単現のsを間違うと流石に問題だと思うらしいが)。


文法や多彩な単語の使い分けよりもずっと重要なのは、明快な筋道と適切な段落分けだ。意味の通る文章を書いていれば、文法を間違おうが、単語の微妙なニュアンスを無視しようが、読み手が適当に補完してくれる。本当に理路整然とした文章ならば、読み手は無意識のうちに意味を補完していくので、読み手の負担はそれほど大きくならない。


ただし、日本語での読み書きになれていると、この理路整然というのが意外と難しい。例えば、上の段落で「こうなると、個別の単語の・・・」という文章がある。もしこの文章を英語で書いていたら、まずこのような表現はしない。「このような政治的な文章を読み解くには、個々の単語のニュアンスを正確に読み取るために辞書を読み比べるといった、かなり大変な作業が要求される」といった文章になるだろう。長くなるので、第2節はコロンで繋げて別の文章に分けるかもしれない。ここで、”こうなると”を"In this case"とか書いてしまうと、「ぼやけた文章」と見なされて、貴重なる森林資源が無為にゴミ箱へと投じられてしまうのである。


「一文で2つ以上のことを語らない」「1段落のメッセージはひとつ」「キーメッセージは段落の最初の文章か最後」「前の文章で書いたことを差すときにitは使わない」「どれとどれとが並列関係にあるかを明示する」といった、日本語でも普通に通用する文章テクニックが英語でもそのまま役に立つ。英語に自信がなく、にもかかわらず英語で書き物をせねばならないなら、単語をこねくり回すよりも、文章の論理構成をフローチャートを起こす勢いで再確認した方が多分有効だ。

コミュニケーションのための英語(おまけ)

ウェブの議論らしく、上のエントリーでは読み書きの英語ばかりが話題に上っているが、失礼のない会話がしたいと思えば、また違う知識が必要になってくる。例えば、boy/girlは坊っちゃん嬢ちゃん的なニュアンスを含む言葉であって、高校生に向かって使えば「なめてんの?」位の反応を覚悟せねばならない。ladyというのも微妙な表現で、かなりのお年寄りが使うならばともかく、そこら辺の若造が使えば「見下しやがって」と思われる恐れがある。


この手の地雷は山ほど(とはいえ、勉強すれば一通り覚えられる程度の数)あって、例えばhandicappedという言葉。この言葉の由来はhand in capで、そこから物乞いの姿が連想されることもあり、「politically incorrect(要するに、地雷)」な単語の一つとなっている。"blind"も、the blindのように定冠詞を付けてしまうと特定個人を指さすニュアンスが強まり、結果「あのメクラ」的な蔑視のニュアンスを生むので避けた方が無難だ(いずれ書くつもりだが、theの扱いは本当に難しい)。


もしあなたが色々なバックグラウンドを持った外人と話さねばならない立場にいるのなら、必要なのはLongmanでも一括検索英英辞典でもなく、politically incorrectな表現を避けるノウハウになる。表現が単調すぎてつまらない会話になったとしても、相手を怒らせるよりも遥かにましなのだから。



結局の所、筆者の結論は非常につまらないところに行き着く。英語が出来ない理由はたくさんある。なぜなら、それぞれの人にとって必要な英語は違うから。だから、「まず勉強することから始めよう」ではなく、「まず使ってみよう」の方が、回り道に見えて上達は早いような気がする。興味分野を適当に検索して掲示板やらブログやらを読んでみてもいい。オンラインゲームで外人と無理矢理コミュニケーションを図ってもいい。そうすれば、自分に必要な英語というのがある程度見えてくると思うので。ちゃんとした英会話学校に通ったりするのはそれからでも十分間に合う。