1954

 終わらない恋に、覚めない夢に、明日のこない今日に、頼りない一瞬に鳴らされる音に
 縋り付いて離したくなかった。
 この夜のバンドと離れたくなかった。


ドレスコーズは大変かっこいいバンドですが、その中でもドラムは飛び抜けて良く聴こえました。
音楽とセックスしてるみたいだった。抱かれてぇ。

孤高のロマンチスト達の一夜、あの場に居られてよかった。

「まだ見ていたい」


お付き合いをするのはだいぶ久しいことですが、おかげさまで毎日とっても楽しくて幸せです。
こころの行先があることはとても安心なことだ。それを受けとめてくれる人がいることも含めて。

線路の端から端まで電車に揺られてついた先で、海岸沿いを歩いた時に見た夕日が照らす海と
逆光で見えなくなったあなたの顔がとてもとても印象的で
私はそれが、大変愛しく好きだなぁと思ったのだ。
ずっとずっと見ていられると思ったのだ。

好き!

ラメ散りばめた半熟卵

 強く心に残っても、強い感情をかきたてられても、好きになれない作品がある。
 赤いハートにぐさりと突き刺さる抜けない矢みたいな、抜き方がわからないのに痛みがその存在をいつまでも主張して、気になって気になって仕方ないものがある。

きらきらひかる (新潮文庫)

きらきらひかる (新潮文庫)

笑子はアル中、睦月はホモで恋人あり。そんな二人はすべてを許しあって結婚した、筈だったのだが……。セックスレスの奇妙な夫婦関係から浮かび上がる誠実、友情、そして恋愛とは?傷つき傷つけられながらも、愛することを止められないすべての人々に贈る、純度100%の恋愛小説。

 1回目は、笑子が泣いてしまう場面がとっても怖くて恐ろしくて、早くこの人が大丈夫になればいいのに、安心できればいいのに、って祈りながら最後のページまで急いだ。
 2回目は、もしかしたらどこかに救いがあったのかもしれない、泣いてる笑子を見るのはとっても辛いけど、でも最後に彼女は幸せになるんだから、私はそれを読み取らなければいけない、って、ゆっくりゆっくりヒリヒリしながら丁寧に読んだ。
 でも、1回目も2回目も、ヒリヒリはヒリヒリのままで終わってしまった。
 笑子の泣きたくなるくらいのヒリヒリが、最後の1ページにも残っていて、そこから先の透明なお話にもヒリヒリの余波を感じてしまった。

 笑子はとっても不安定。ハンプティ・ダンプティな人間はみんな殻をまとっているのに、笑子はつるつる白身が丸出し。お酒を飲んだり壁の絵とお話したりしてどうにか白身のまま生きようとするけれど、睦月の優しさがその白身に傷をつけてしまう。私はそれがとっても悲しい。睦月の無神経さに怒っちゃう。
 でもでも、睦月は笑子を傷つけたいわけじゃない。ハンプティ・ダンプティ白身のままの笑子を愛しながら、「このままじゃいられないんだよ」って懸命に、殻つき卵なりにどうにかしようとしてる。でも、その「どうにか」が、笑子の剥き出しつるつるたまご肌を傷つけていく。優しく、悪気なく、でも着実に。

 笑子は白身ハンプティ・ダンプティなりに活路を見出そうとしているのに、かぎカッコつきの『ハンプティ・ダンプティ』がそれを許さない。震えて泣いてしまう笑子の気持ちが、とってもとっても、痛いくらいにわかる。白身の肌についた傷を、自分のみたいにさすってしまう。
 きっと私は、笑子を自分だと思って読んでる。だから睦月を許せないし、このラストを許せない。
 同時に、白身のままの「私」を愛してくれるハンプティ・ダンプティを持つ笑子が辛いくらいに羨ましい。ハンプティ・ダンプティがいてもヒリヒリするだけなのはわかっているけれど。

 白身卵の肌を保ったまま、ハンプティ・ダンプティと寄り添って幸せに生きていきたいのかもしれない。
 白身卵とハンプティ・ダンプティって言葉は通じるのに、その気持ちが通じないのが悲しいのかもしれない。ヒリヒリみみずばれの痛みみたいに肌を刺すのかもしれない。

 丁寧に優しく優しく薄皮を剥いだのはあなたなのに、結局壁から落ちることを知っている(ように見える)睦月のことを、私は愛せる日が来るのだろうか。
 笑子みたいに、愛せたらいいなと思うのに。

紫の僕らと、親愛なるブルーに

毎日前は通るけど、半年に1回くらいしか中には入らない近所の名画座で映画2つ。

鍵泥棒のメソッド [DVD]

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苦役列車(通常版) [DVD]

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鍵泥棒は主題歌が吉井和哉苦役列車ドレスコーズってところにワーっとなってしまったのでした。
映画館の人に訊いたら「えー、自分もそれ知らなかった。偶然。」って。
エンドロールに鳴り響くロケンローは、スウィングしててとってもよろしかった。

「2人で歩き出そう、綺麗な靴で行こう
紫の朝日の赤と青の結晶!」

「いっそこのまま何も知らない少女みたいに死ねたら?
なんて、なぁ。
派手にとどめをさしてくれ!」

点描のしくみ

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Trash(初回限定盤CD+DVD)

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2012 Autumn

20121121
スウィングするには冬の空気は乾きすぎていていけない。指と指が滑ってしまう湿度、紙が傷まず上等な顔を保っていられる温度。

20121112
それにしても、こころを言葉で語ることの難しさよ。それ自体は決して語り得なくて、こころの働きを記述することでしか私は私のこころのことすらわからない気がしている昨今。

それこそ、「イヌ」という言葉だけが抜け落ちた状態で「イヌ」を語ることのような。動物で、4本足で、色んな種類がいて、毛が生えてて…みたいな。極端すぎる話かもしれませんが。

だからこそ、精神分析家の仕事はとても面白い。なんとなくぷわぷわ浮かぶ対話の中からヒュッと本質的なものが飛び出してくる感覚はとてもわかる。そしてそれは"感覚"としか呼べないようなものなので、大変説明するのに困るのもとてもわかる。

20121111
「一生の内に読んだ本の総重量が魂の重さ」

20121109
不思議な縁とでも言えばいいのか、波が打ち寄せる場所は、いつだって似通ったところなのだ。心を注ぐ理由なんて、「好きな人が好きだったから」だけで十分だ。

20121107
それこそ、水底から太陽を見てるみたい。屈折した光が影のように形作るなにか。実際影なんだろうなぁ。

20121104
たまにダーガーのことを考える。永遠に損なわれた閉じた王国と唯一の語らない証言者だった彼のことを思うとき、「そのことを思う」というこの行為こそがあの世界に介入した暴力だったことを思う。

悲しい水たまりに嬉しいさざ波、開かれたこころにぷかぷか広がっていく。ひび割れた光のダンスは、私の前で一斉にまばたきする百万の眼。宇宙の端から呼ぶ声がする。

20121103
1時間が限度の脆弱な集中力に、くっつかない言葉をたくさん放り込んでかき回して分離を試みる。脳の皺の隙間に入ってぶるぶる震える小さい蟻を考える。マリアナ海溝より深く深く巣を作ることを考える。

20121029
いつもボヤけて見えないものも、雲ひとつない満月の夜には見えるようになるんだよ。両手のゴーグル越しに見る世界は、普段より30度くらいずれている。

20121028
悲しみは残酷、毎日を切り刻んでしまう。悲しいことはきらい。抗いようがない。さらされることでしか受容できない。辛さや悲しみがどうか薄らいで、安らぎが少しでもスカスカになった心を埋めるように祈ることしかできない。

だから神様、どうか私たちをその手に握っていてください、と思う。願う。

20121019
耳が全部隠れるのなんて大学1年以来じゃないかすら。髪が耳にかかるあいだは、きっと「魔法使いの耳をしている」のだと信じたい。

20121015
空中ブランコ軽々跳べるくらい運動神経良くなりたい。華やかに見える道化師の黒い見世物小屋へようこそ!

ブランコも玉乗りもできたら面白そうだけど、やらなくてもきっといいのだろ。私サーカスの子じゃないし、別にできなくても困るわけではない。ババールもたぶん玉乗りはしなかったろうし。

終わり。たぶん私空中ブランコ跳べないわ、なぜなら跳びたくないから。とゆー話をした魔神。待て次週!

20101002
与えるものがなくなったとき、それこそ悲しくなるでしょう。だってもう気持ちを託す術がない。そそがれても与えられない、何もできない。きっとそんなことはないのだろうけど、「与える」主体は悲しいでしょう。与えることがすべてなのだから。

行為以前はない、ということ?好意は行為、/koui/、はてさて。

20120930
ぐんぐん進む厚い雲の上はきっと絨毯で、風を産み出すパレートがご機嫌にぴーひゃらやっているのでしょう。

こんな妄想ばかり膨らましてしまうからか、「でも本当はサンタさんはいない」、というような言葉をどうもしっくり飲み込めない。デロリアン型のタイムマシンはあるし、火星にはたんぽぽが待ってるし、半時間先を見てるカメもそこらにいる。どうして"ない"と言えるんだろう。悲しくなってしまう。

20120928
大学一年からの友達の、恋人との話を聞いていたらなんか色々うるうるしてしまった。大事なものを語る言葉は、どんなものであれやわらかいひだのような場所を打つのだと。もしくはしみこんでいくのだと。

20120926
「そんなに良く見ちゃだめよ、体より目のが大きくなっちゃうから。」「そんなに良く寝ちゃだめよ、脳の内側が膨張して頭蓋骨に収まらなくなってしまうから。」

20120922
誠実であるためにもやさしくあるためにも勇気がいるということ。べちゃべちゃに泣いてしまった。ありがとう。プレパラートは割れてしまったけれど、カケラはキラキラに光っている。

20120921
あの鳥よりも、短距離選手よりも、銃弾よりも、遠くで響く雷鳴よりも、宇宙から届く光よりも、もっともっと速く速く思いが走るなら、一方通行に逆らってあの時のあの人に届けられるのかしら。

乱反射してうるさい夜に、この世界に真っ赤なジャムを塗って食べようとする夜に。

20120917
いらないことしか言えないわ。言えないことの周りを言えることで埋め尽くしていったら、残った白抜きマルが言えないことになるかしら。夜のバンドのにおいがする夜。

20120916
宇宙船のウより速く駆け抜けて、あれのしっぽを捕まえねば。宇宙服からこぼれ落ちた月の塵が魔法の粉、ほら光はいつだって見えているでしょう。

20120908
「哲学はとてもタフ、ずっとぐるぐる考え続けて、考え続けた先に考え続けることがある。」友達に言われた言葉が支えになっている。フランス訛りの下手な英語で詰まりながら話したことを、昨日のように思い出す。

20120904
ぼたぼた垂れるカスタード。もう思い出せないことのが多いのにこだわっている。こないだ連絡したのも、ずっとあのタイミングであの場所でメールしようと決めていたから。私が大事にしてきた詩の故郷、教えてくれた詩人の生まれた本屋。

モーターを強に叩き込んだミキサーを、突然胸に突っ込まれたよう。シュークリームからはみ出したカスタードクリームみたい。でろでろ気持ちが流れ出る。

イランイランの香りがずっと好き。

この人は墓に住んでいたが、もはやだれも彼を縛っておくことはできなかった。鎖をもってしてもだめであった。
その人はたびたび足かせや鎖で縛られたが、そのつど鎖を引きちぎり、また足かせを打ち砕いたからである。それで、だれも彼を取り押さえることができなかった。
その人は夜となく昼となく、墓や山で叫びたて、自分の体を石で傷つけていた。

自分の身体を石で傷つけること、自分の存在を自分で否認すること。

蓋をしてきたあのことを、知らんぷりを突き通してきたあのことを、言葉にするのはまだとてもつらい。それと同時に、知らんぷりを突き通せなかった、蓋をし続けられなかった自分のみじめさに腹がたってしまう。

「暴力に理由を求めること自体が不毛なんだから」と誰かがささやき続けるけれど、私は涙でしか応えることができない。どうして?って、なんで?って、訊いたら駄目なんだよ。(だって答えはないもん。)っていうのはわかりきっているけれど、ついでに、なんで?が解決されてどーにかなるもんでもないでしょ、っていうまた違う誰かの声も聞こえてくるけれど、そして、だからこそ私は蓋をして知らんぷりをして、もう全部終わってそんなことはどーでもいいの過ぎたことは忘れて私は私の人生を生きるの!って思ってきたけれど、それでも、噴き出したら止まらない「どうして?」に、私はどうこたえてあげたらいいかわからない。

「暴力」の上に積み上げられた、色んな「こたえられないこと」がついでに顔を出す。嫌な噴火、見たくもない地層。すべてを連れて、どろどろに熱された赤銅色のマグマが脳味噌をかき乱す。あぁもう本当に、この身体なんてなければいいのに!と思うたびに、"私"を私が呪う業の深さに涙があふれる。

同時に、私はまだ生きていたいと思う。
私が果たすべきことを、成し遂げるために"生"にしがみついていたいと思う。
あなたを抱きしめたいと思う。