説得の柔道

以下は組織行動を議論する際に使うケーススタディです。あなたがプレンゼンターとして、この質疑のどこを直しますか?

新規事業検討役員会(トップは社長)で、中国進出の新規事業プランをプレゼンテーションしたマネージャーと、それに質問した常務との会話です。

プレゼンター:「〜という巨大な市場の存在、当社と同様の技術力を持つ強力な競争相手のいない中国への進出を提案いたします。」
常務:「人事担当の立場からいえば、中国進出をサポートできる人材は当社にはほとんどいないじゃないか。」
プレゼンター:「いいえそんなことはありません。プロジェクトマネジメントそのものは、当社の社員の中で拠出できると思います。ただ、中国に明るい人材を新規に数人採用する必要はあると思います。」
常務:「中国は外資に対する規制が厳しい。うちが規制を突破して入るのは無理だろう。」
プレゼンター「しかし、規制があるからといってしり込みしていては新規事業なんか立ち上げられません。覚悟を決めて行くべきです。」
常務:「うちは国内基盤しか持っていないが、中国で事業を立ち上げることが可能だと本気で考えているのか!」
プレゼンター:「…」
常務:「中国でプロジェクトマネージャーできる人間ってだれのことを指しているのか?まさか、おまえではあるまい。」
プレゼンター:「…」

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つぶれるやつら

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Dackスポーツの集中戦略のケース

「1985年、Dackスポーツ(仮称)は国内業界7位(シェア5%程度)の、スポーツ用具全般を扱うスポーツ用品メーカーでした。しかし、これといったヒット商品もなく、年々シェアは下降し、利益率も下がる一方でした。そこで、社長の太田さん(仮称)は、ポーターの基本戦略※という経営戦略の研修を受け、80年代にはあまり商品化されていなかった左利き用のゴルフクラブ市場にフォーカスする「集中戦略」を考えました。当時、左利きゴルファーは無理やり右利き用クラブを使っていることが多く、左利きは人口構成で5%前後といわれ、若い世代では10%近くいるとも考えられていました。」

この集中戦略はうまくいくでしょうか?周囲の方と集中戦略はなぜ勝てるのかについて昼休みにでも検討してみてください。

※脚注:戦略の基本パターンとして、低価格で勝負するコストリーダーシップ戦略、価格以外で勝負する差別化戦略、小さな市場に集中して競争を回避する集中戦略の3つがあるという主張。

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丸の内のオアゾってひどいね?

丸の内で、家族で食事しようとオアゾのレストランに入った。いつもは新丸ビルとかに行くのだけど、今回はオアゾを試してみることに。
一軒目、まず、「禁煙席ありますか?」という問いに露骨にいやそうな感じ。中に入ってメニューを見てまたびっくり。ソフトドリンクがない。子供連れだったので、「何かジュース類ある?」と聞くと、「ウーロン茶と酢」と答えられてしまった。ここは何も食べずに出てきた。
次の店、入る前にメニューでソフトドリンクを確かめてから入る。竹の子が2〜3切れ入ったお通しが1個500円、しかも子供からも取る。おにぎりが1個500円弱で、お味噌汁をつけるとなんと握り飯1個で1000円弱になる。馬刺しやトロ刺しなど、和民クラスの質の料理が和民の3〜4倍の値段を取る。ちょっと尋常じゃない。サービスが取り立てていいわけでもない。

丸ビルも確かに高い。しかし、高い値段にあうものが出てくる。オアゾはただ高い。きっとうちの家族は2度とオアゾで飯を食うことはないだろう!オアゾのテナントを管理しているプロパティーマネージャーの顔が見てみたいものだ。

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店長の決断

巣鴨にあるK食品スーパー(仮称)の店長、沖田は悩んでいた。駅そばに衣食住全て揃う大型スーパーができるという噂があったからだ。床面積はK食品スーパーの3倍、かつ5階建てで、食品だけ1フロアを使用し、地元のJAからではなく各地の契約農家から配送される食材を扱うと考えられていた。

K食品スーパーは駅から10分ほど離れた高齢者の多い住居地に隣接し、駐車場・駐輪場はないものの、道路付けがよいため、夕方には歩道に買い物客の自転車が多く並んでいた。また、住居地の周辺には、Kと似たような位置関係にあるF食品スーパー、M食品スーパーらと競合していた。

沖田は、高齢のため引退する隣の商店主から敷地を譲渡してもよいという話を聞いていた。この話にのれば、床面積は今の倍になり、FやMに大きな差をつけることができた。大型スーパーには及ばないものの、かなりの広さになるため、買い物客が回遊するのにたっぷり時間をとらせることができる。しかし、土地だけで1億円ほどの資金が必要だ。一方で、現在の平屋を2階建てにすれば、資金は建屋の改築だけで済む。

沖田は何をすべきであろうか?

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選択の時

以下のビジネスエシックスケーススタディについて、いかなる視点で解決しますか?

成績優秀で人望も厚く生徒会長をしていた中学生の武が旅行中事故にあった。運ばれてきた田舎の病院で手術を受け、無事成功したものの、絶対安静の状態であった。この病院にはベッドがひとつしかなく、この病院から次の病院までは100km程離れており、そこへ運ぶことはできなかった。そして、その病院のたったひとつのベッドには末期癌の老人患者が治療を受けていた。ペースメーカー、酸素マスク、点滴、輸血ポンプなどの設備も一組しかなく、すべてその老人が使用しており、外せば死を意味していた。しかし、武にも同じ設備が必要であった。医者は、たったひとつのベッドと一組の設備を老人に使わせるべきか、武に使わせるべきか悩んでいた。早くしなければ武が死んでしまう。しかし、老人も外せばすぐに死んでしまう。

あなたが、医者ならばどうしますか?

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格差是正

格差是正論議が盛りあがっているが、格差是正には2つのサイドがある。
一つは、成り上がろうとするものの可能性を高める施策、もう一つは、できた格差を固定化しない施策である。
前者の中心は教育であり、後者の中心は相続財産の取り扱いである。

前者の話は今日は置いておいて、後者の話をしたい。

高齢化が進み、年金や福祉の財源を消費税に見出す方向がかなり鮮明になっているが、私はそこに再考を促したい。格差是正のためには、持っている人が多くを出すことが重要であり、持たない人にも最低限の可能性を確保する必要がある。そのために、重要なのは相続税のあり方である。
これまで、自民党政権相続税の引き下げにこそ終始してきたが、そろそろこれを元にもどす必要がある。
例えば、ネットの相続財産(資産ー負債)が1億円以下なら無税、10億円以下なら50%課税、10億円超なら70%課税などである。これなら、自営業など相続財産を引き継がなければならない零細企業もその存続が危ぶまれることが少ない。唯一の懸念は、資産家が海外への資産移転を進めることであるが、これに対しては、諸外国と相続税に関する協定を結ぶ、相続税の水準をあわせるなどが考えられ、移転したい先進国と足並みを揃えればかなり効果がある。発展途上国に資産を移せば、発展途上国の経済も潤う。
また、奨学金や弱者救済のための財団拠出を非課税などにすれば、わざわざ資産移転をせずとも、資産家の慈善事業による再配分機能が高まることも考えられる。

安易に消費税を上げるのではなく、どんな社会を目指すのかの思想的背景を税に投影して欲しいものだ。

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新聞広告

私事だが、この正月に本を出した。
そして、出版社が新聞広告を打ってくれたのだが、これが非常に面白かった。
僕の本は正月元旦に本屋に並ぶよう版元から本屋に年末ぎりぎりに送られていた。そして、出版社が新聞広告を打ったのが、12月20日〜23日なのである。これをどう思う?

新聞広告は、効果が長続きがしない一過性の広告である。だれも新聞広告を切り抜いてまで保存する人はいない。ましてや新刊広告をやである。その日見て、興味があれば本屋に行ったり、アマゾンに発注をかけたりするだろうが、翌日以降にはそういう行為をする人がいない。
つまり、本屋でアクセスできない状態で、広告を打ってもほとんど読者には効果がないのである。

100歩譲って、新聞広告を打つことで、本屋の棚割りを増やすのに影響を及ぼすのだという抗弁がありうる。しかし、年末年始の忙しいさなかに、その効果はほとんど望めないだろう。タイミングが悪すぎるのだ。

世の中にはプロと言われている人達が五万といる。しかし、本当に考えて仕事している人は少ないんだなと感じた年の瀬であった。

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