エリック・ジマーマン『遊びと創造』(高崎拓哉訳、BNN)

エリック・ジマーマン『遊びと創造』(高崎拓哉訳、BNN、2024/04/17)

プレイ(遊び)、それを成り立たせるシステム(しくみ)、それを作って試すデザイン(設計)という三つの要素から、遊びと創造を探る本です。ルールをつくって試し、気づいたことを考察してルールをつくり直す、という応用範囲の広いテーマを扱っています。加えて、遊んで試して考えるためのゲームつき。冒頭で「この本で遊ぼう」と誘われます。

原題のThe Rules We Break: Lessons in Play, Thinking, and Design(ルールを破ることーー遊び、思考、デザインのレッスン)によく表されているように、ルールを使って遊び、課題や可能性を探るあれこれの考え方と実践について書かれています。版元はPrinceton Architectural Press 。

同書に解説を書きました。

また、著者のエリック・ジマーマンが、ケイティ・サレンと書いた『ルールズ・オブ・プレイーーゲームデザインの基礎』を、以前拙訳でソフトバンククリエイティブから刊行しました。現在は、改訂版がニューゲームズオーダーから発売中です。電子版もありますよ。

⇒BNN > 『遊びと創造』
 https://bnn.co.jp/products/9784802512831

⇒ニューゲームズオーダー > 『ルールズ・オブ・プレイ』
 https://www.newgamesorder.jp/games/rulesofplay

東工大に着任して4年目になりました

東京工業大学に着任して4年目となりました。

第1クォーターは「立志プロジェクト」と「哲学B」を担当します。

また、昨年度に続いて、伊藤亜紗さんが率いる「未来の人類研究センター」で活動します。

そういえば、今年は吉川浩満くんと最初の本である『心脳問題 「脳の世紀」を生き抜く』(朝日出版社、2004)を刊行してから20年目でもありました。つまり、物書きになってからそれだけの時間が経ったわけで、こう書きながら自分でもちょっとびっくりします。

ほとんど当人以外の人にはどちらでもよいようなことではありますが、赤井茂樹さんのディレクションの下、『心脳問題』を執筆・刊行したあとで、吉川くんと「他に書きたいことがあるでもなし、これが続くとは思えないよね……」(大意)と話し合っていたことを思い出します。

2004年に10年勤めたコーエーを辞めたあと、しばらくぶらぶらしたら、またどこかのゲーム会社に入ってゲームをつくるつもりでいました。

ところが、ぶらぶらしている間に専門学校に呼ばれて先生のようなものになり、やがて大学にもお呼びいただき、そうこうするあいだも、どうしたわけだか物書きのご依頼があり、気がつけばこれらの仕事を続けて今日にいたるわけです。そういう意味では、先生のようなものになって20年目でもあります。

思えば自分で積極的に(というか実際には消去法で)選んだ仕事は、大学卒業後に入社したコーエーでのゲーム開発だけで、その他はいずれもそのつどの偶然というか、成り行きでそうなった、てなものです。

そんなエエカゲンな人生を歩んできているので、学生たちに将来のヴィジョンや志をもとうといったことは、少々話しづらくもあり、そうしたことを口にする場面では、率直に伝えるようにしています。私がいま大学生だったら、ゲーム会社に入れないかもなあなどと思いながら。

なにはともあれ、引き続きどうぞよろしくお願い申し上げます。

 

「文芸的事象クロニクル 2023.12-2024.02」(『文藝』)

『文藝』2024年夏季号(河出書房新社)に連載「文芸的事象クロニクル 2023.12-2024.02」を書きました。

これは過去3カ月に世界のあちこちで生じた「文芸的事象」を選んでクロニクルとして構成するものです。

できるだけ日本や欧米に偏らないように、あちこち見てみるようにしています。

といっても、山本が読める言語や手の届く範囲の情報に基づいているため、たいへん限られた内容になっております。

今回は、オセアノス・ポルトガル語文学賞、ハンナ・アーレント政治思想賞授与を巡る混乱、レフ・ルビンシテイン死去、ヒューゴー賞の審査過程、書店からLGBT関連書を撤去(ロシア)ほかに触れています。

そのうち、このページだけコピーして束ねておきましょう。

本誌の特集は「世界はマッチングで回っている」、「さよなら渋谷区千駄ヶ谷2-32-2」、緊急企画として「ガザへの言葉#CeasefireNOW」。同誌の発行元である河出書房新社は、これまで千駄ヶ谷にあったのですが、このたび移転したようです。

私は以前、教えに行っていた専門学校が千駄ヶ谷にあって、何年か通っていたこともあり、また、時々河出書房新社にもお邪魔していたりして、なにかしらの記憶がある場所だったりするのでした。

一度見せていただいた、河出書房新社の旧ビル地下にあった書庫も新しくなったのかしらん。

 

www.kawade.co.jp

澤直哉『架空線』(港の人)書評

「図書新聞」2024年4月6日号に、澤直哉『架空線』(港の人)の書評を書きました。

一枚の紙から出発して、本とそれが人間にもたらすものを論じる講義「本をめぐる/こころの/ことばの/形にふれる」、詩と人とのあいだに生じうることを記した試論「発生へ」を収めています。

私がブックデザインや本に強い関心を持っているのは、ひとりの小さな人間の心や言葉が生み出す虚構が、どのようにして形ある物となり、複数の人間に共有される現実となるのか、という問いが、文学の、もっといえば人間の思考様式や存在形式の根本に関わるのではないか、という直観があるからです。

とは、同書の言葉。

toshoshimbun.com

www.minatonohito.jp

川名晋史+山本貴光「日本に130の米軍基地がある意味とは」(丸善ジュンク堂書店)

3月28日(木)の夜、川名晋史さんの新著『在日米軍基地 米軍と国連軍、「2つの顔」の80年史』(中公新書)の刊行を記念して対談します。

川名さんは、東京工業大学の同僚でもあり、同大学の「未来の人類研究センター」で共同研究「水プロジェクト」にとりくんでいるところでもあります。

今回の『在日米軍基地』は、副題にも見えるように、在日米軍がもつ「国連軍」という顔とその意味について、史料に基づいた記述と分析を展開したもので、安全保障について考える上でもたいへん重要な指摘をしていると思います。

私は、あらゆることについて素人であるという立場を活かして、川名さんとざっくばらんに話しながら伺ってみたいと思います。もちろん、いつものように同書をまだ手にしていない方にも楽しんでいただける場にしますので、気になる方は下記リンク先をご覧くださいませ。

場所は丸善ジュンク堂書店池袋本店で、オンライン視聴もあります。

 

3/28 川名晋史×山本貴光「日本に130の米軍基地がある意味とは」 中公新書『在日米軍基地』刊行記念トークイベントonline.maruzenjunkudo.co.jp

追記:

ご来場、ご視聴いただき、ありがとうございました。私自身、たくさんのことを学んだ対談でした。とりわけ、川名さんが国際政治という複雑な事象を、どのような方法でとらえ、記述しているかという点を詳しく伺えたことは大きな収穫でした。

川名晋史さんとの対談は、4月5日までアーカイヴ視聴の購入・視聴ができるとのことです。『在日米軍基地』をこれからお読みの方も、すでに読まれた方にも、川名さんのお話からたくさんの示唆を得ていただけると思います。詳しくは上記リンクをご覧くださいませ。

 

川名さんは、3月13日にゲンロンカフェで小泉悠さんと対談もしています。

genron-cafe.jp



 

「利他をつくる/つくるの中の利他」(1)

以前、ここでもご紹介した「利他学会」で、伊藤亜紗さん、中島岳志さん、北村匡平さん、塚本由晴さんと行った座談会が記事になりました。掲載は、ミシマ社のウェブページ「みんなのミシマガジン」です。

『RITA MAGAZINE』(ミシマ社、2024)とそのテーマである「テクノロジーに利他はあるのか?」をめぐって、あれこれ議論しています。

全4回に分けての掲載で、第1回は「何かを意図して設計し、意図せざる者と出会う」です。お楽しみいただけましたら幸いです。

www.mishimaga.com