夜が暗いとはかぎらない

大阪近郊が舞台。閉鎖が決まったマーケットのゆるキャラが失踪。その後周辺に出没し、話題となるが、主題は様々な人間模様。13編の連作だが、基本は暖かなもの。お約束通り、最後に関連付けようとするが、少し欲張りすぎか今一つ関連がよくわからない。ゆるキャラの中に入った対人恐怖症の青年が成長していく姿は微笑ましい。まあ普通の出来。

 

 

 

 

ブギの女王笠置シヅ子

ブギの女王笠置シヅ子の伝記。SKDのレビュー出身。戦前はスイングの女王として、戦後は「東京ブギウギ」が大ヒットする。喜劇役者としても実力を発揮。ある年齢で歌手から引退、脇役として過ごす。個人としては吉本の御曹司と恋愛、相手の早世により未婚の母となる。美空ひばりとの確執にもページを割く。何事にも一図で誠実な生き方は周囲の人を引き付ける。NHK朝ドラの原作。朝ドラは多少の脚色はあるものの忠実に描いていた。

 

 

Z世代のアメリカ

アメリカ政治のキャスティングボードを握るZ世代。思想は世界的な社会正義を重んじラディカル、既存の政党に囚われない。また現状より貧しくなる可能性がある世代。分離が進むアメリカ社会のあってその重要性はますます増す。本書は様々な問題に焦点をあてながら彼らの思想、人生観を探ろうとする。マスメディアの報道では知りえない社会の断層。興味深い。

 

-国際協調主義をDNAに組み込む

-キャンセルカルチャー(自らに批判的な言論をこう呼ぶ)

-習近平:グレートファイアーウォールで情報封じ込め

-オバマ=ドローン大統領(兵器としてのドローン多用)

-まず小さな主語で語り、一隅を照らす(中村医師)

 

 

 

墓じまいラプソディ

主題は墓じまいと夫婦別姓。先立たれた妻に嫁ぎ先の墓には入りたくないと遺言されたところからドタバタが始まる。一方適齢期を過ぎた孫娘二人は、結婚後の姓の問題で結婚に踏み切れずにいる。家族の固定観念に固まった男性陣を女性目線でするどく批判。ある意味耳の痛い内容。テンポよく展開で一気に読ませる。

 

 

怖いへんないきものの絵

怖い絵シリーズの派生版。中野京子と「へんないきもの」の早川いくをの対談で、珍しい生物を描いた絵画を解説する。あまり有名な作品は無いが、逆に稀少性は高い。ユーモアたっぷりの本文と豊富な図版で一気に読ませる。内容的には軽め。

 

 

 

清張鉄道1万3500キロ

松本清張の全作品を精査。登場人物が乗った鉄道を記録し、机上の白地図乗りつぶしを楽しむ。自らに課した判定ルールはかなり厳しい。戦後すぐ国鉄がまだ大動脈だった時代から、新幹線の開通まで、旅情あふれる清張の文章が引用される。一方で作品の粗筋も紹介されるが、そこはどれも似たような設定で、なかなかミステリーの世界に入っていけない。まあアイディア賞といえる一冊だが中途半端な印象。所期の目的からすればもう少し鉄道にシフトしても良いのでは

 

 

 

 

 

聖地旅順と帝国の半世紀

日露戦争から、太平洋戦争まで、激動の歴史を旅順、大連に視点を当てて描く。三国干渉によりロシアの租借地となり、激戦を経て日本の統治下に、21箇条の要求で火事場泥棒的に租借を延長。中国人民の反感を買う。日本人にとってはある意味聖地となるが、時代とともに忘れ去られていく。一方海軍将校として参戦した水野廣徳は軍人でありながら、第一次大戦を視察することで対米融和を提案す。国力の差から敗戦を予見していた。終戦直前に旅順に神宮を建築など。知らない事実も多い。

 

-ブレーキ無しの桃太郎主義。自己批判しない日本