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ヨムヨムエブリデイ

面倒くさい小説

4月からの新体制の準備で毎日忙しく、日曜日にもミーティングがありなかなか休めなかった。今日は久しぶりの休日。電池切れでずっと寝ときたい。アラームをかけずに起きると午前10時。その後も食事以外は寝床でだらだらする。朝のうちは陽が射していたが、午後から風雨強まり嵐のようになる。寝ころんで佐藤正午『冬に子供が生まれる』(小学館)を読む。

以前、WEBきららの佐藤正午の連載「ロングインタビュー 小説のつくり方」(後の『書くインタビュー』)を毎月楽しみに読んでいたところ、ちょうど『月の満ち欠け』の映画が公開される頃に突然「ロングインタビュー 小説のつくり方」を休止して小説の連載を始めますと発表され、その小説が『冬に子供が生まれる』なのだった。
最初は佐藤正午の小説を久しぶりに読める!とわくわくして読んでいたのだが、あまりに入り組んだ設定と、それをWEB画面で追うもどかしさとで連載2回目で早くもギブアップ、これは紙の書籍にまとまってからじっくり読まねばと思っていた。
それでいま紙の本を読んでいるわけだけど、やはりまわりくどくて、ややこしくて、思わせぶり、匂わせにイライラ&混乱して、えっどゆこと?左利き、右利き?マルユウ?って幾度も前のページに戻って確認しなければならず、なんともじれったい読書なのだ。でも、この面倒くささを含めて、佐藤正午の小説を読む楽しさだと思う。翻弄され楽しんで、窓の外で風が唸る午後に読み終えた。ふうーっ。
おやつに、コーヒーをいれて、昨日買っていたイチゴのショートケーキを食べる。ケーキはイチゴのショート一択。

次は、と手に取ったのが伊藤比呂美『森林通信 鷗外とベルリンに行く』(春陽堂書店)。横書き。いつもの比呂美節。愉快愉快。

シリーズものに嵌まる

なにかに「ハマる」。がっつりハマるぞーと前のめりに張り切ってもハマれるものでもないし、油断していたらいつの間にかズブズブとハマッていたりする。いかにも自分が好きそうな要素がてんこもりなのにハマれなかったり、まったく好みではないのに気づけばハマッていたりもして、「ハマる」のは自分自身なのに、予測不能というか、自分でコントロールできない。そこが面白い。

アーナルデュル・インドリダソン『悪い男』を読んでいるのだけれども、これ、いま一番ハマッている翻訳ミステリ。アイスランドが舞台のエーレンデュル捜査官シリーズの七作目。日本で最初に翻訳された『湿地』を読んで気に入り、それから刊行されるたび順番に読み継いできた。新刊がでると嬉しい。派手な展開があるわけでもなく、じっとり湿度高めで地味、なのにものすごく惹かれる。今回はエーレンデュルは登場しない。
自分は北欧ミステリが好きなようで、これまで、ヨハン・テオリンのエーランド島四部作や、ニクラス・ナット・オ・ダーグの三部作や、ヨルン・リーエル・ホルストの警部ヴィスティング未解決シリーズ、アルネ・ダールなどにハマッた。絶対ハマるでしょうと思われるヘニング・マンケルのヴァランダーシリーズには全然ハマらなかったのが不思議。相性の良し悪しがあるのだろう。

二〇二四年二月

先週からゆっくり読んでいた柴崎友香『続きと始まり』(集英社)がとうとう終わってしまった。
ライ麦畑のホールデン少年は、ノックアウトされる本を読み終わったとき、それを書いた作家が大親友で、電話をかけて話せるようだといいのにと言ってたが、電話が苦手な私は、電話の代わりに作家や登場人物の名前を呼びたくなってしまう。『続きと始まり』を最後まで読み、本を閉じたとき、思わず柴崎さ~ん、れいさ~ん、河田さ~んと呼んでいた。年に何度か「読んで、呼ぶ」本に巡り会える喜び。ディテールが素晴らしくてどのページにも「あっ」と立ち止まるところがあった。

 こうして、何かが起きて、画面を見続けるのは自分がこれまで生きてきた中で何度目だろう。
 地震があり、事件があり、テロがあり、戦争が始まり、そのたびにこうしてひたすら画面を見る。二〇一一年の震災のときからは、流れてくる報道の映像だけでなく、インターネットで情報を探すことも増えた。
 しかし、それで何かが変わったことはない。
 自分はいつも見ているだけだ。画面越しに、遠く離れた安全な部屋の中で、「情報」を見ているだけ、時間が過ぎていくだけだ。(p.330)

二〇二二年二月ニ十四日の午後、ウクライナの戦争の始まりを一人の部屋で見るシーンで柳本れいの章が終わっている。それから二年後、能登地震があり、戦争はまだ続いている。れいさんもどこかで見ているに違いない。

柴崎さんと古賀及子さんの対談が四月に行われるそうだが、この組み合わせを企画した方すごいです。

Three cheers for our side

昨日は面倒くさくてずっとさぼっていた車の点検に行ってきた。せっかく点検してもらっても雨降りでいやだなあと気が進まなかったが、予約していたので仕方がない。最近あんまり乗ってないのでバッテリーが弱っているらしくて、それなら帰りに久しぶりにロングドライブしようと思い立ち(雨だけど)、海を見に行こうと海へと向かった。

この道の向こうには

堤防の左側はすぐ海。どこまでが海でどこからが空か境目がわからない。遥か雲の向こうにうっすら船のシルエットが見える。アン・クリーヴスの小説の舞台のシェトランドみたい、知らんけど。地図を見ると、この道の先に防波堤が海へとのびていて、その先端まで歩いて行ってみようとしたが、防波堤の入口に危険!立ち入り禁止!の看板があったのであきらめる。しばらく静かな海や鳥を眺めて車に引き返した。身体が冷え切っていたので、途中に見つけたセブンイレブンで、ホットコーヒーとピザまんアメリカンドッグを買い、かじかんだ指をカップで温めながら人心地ついた。
晴れていたらどんなによかっただろうと思うも、いやいやかえってこんな日のほうが記憶に残るものだ。雨の日の海、楽しかった。

今朝起きると昨日の冷たい雨から一転、キリリと引き締まった冬らしい晴天。なのだけれど、悲しいことに今日は出勤。電車が空いてる。

こういうの(が)いい

のりベント

『真珠とダイヤモンド』を読んだ勢いでその前の『燕は戻ってこない』と桐野作品を立て続けに読んだら色々濃ゆくてぐったり疲れてしまった。なにか平和でなんも考えずに気楽に読めるものはないかと手に取ったのが久住昌之『するりベント酒』。夕刊フジの連載から厳選しまとめられたもので、久住昌之が弁当でただただ酒を飲む話。崎陽軒の弁当、カツサンド、焼きそばパン、柿の葉寿司などベントのチョイスにそそられる。

今日はチーム長がポケットマネーでランチの弁当を支給してくれる日で、午前中ほか弁のメニューが回ってきて希望の弁当に名前を記入して次の人に渡す。特に値段の上限は決められていないのに皆の注文は、から揚弁当とか親子丼とかやや遠慮がち。あいつ一番たけえの頼みやがったと注目されるのはいやだもんね。私は読んでいた『するりベント酒』に出てきたのり弁がおいしそうだったので迷わず一番しょぼいのり弁にする。魚フライもちくわ天も海苔とごはんと一体化していてシンプルでうまいなあとあらためて思った。こういうのでいいんだよ、こういうので。