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宇宙を制するものは世界を制する その3

前回のブログで、イーロンマスクがシアトルで「インターネットを宇宙上に、作り替えることになるだろうit will be like rebuilding the Internet, in space.」と述べた言葉を引用したが、なぜシアトルなのだろうか。結論を言えば、シアトルはマイクロソフトやアマゾンを初め多くのI T技術者が集う場所。イーロンマスクは宇宙技術の発展は、ロケットエンジンのような内燃機関のエンジニアだけでなく、IT技術が重要になると見据え優秀なソフトウエア技術者を求めていた。

 

スペースX社のロケットエンジンは比較的小型のエンジンを束ねるクラスターエンジン。比較的小型のエンジンを使う場合、1機のエンジンの値段は下がり、且つ量産効果が出る。またクラスターエンジンでは前回のスターシップ打ち上げで証明されたように、1機、2機と動かなくても他のエンジンでカバーでき信頼性が向上する。問題は小さなエンジンを多く束ねると、エンジン間の出力調整管理が複雑になる。その管理をソフトウエアの問題と捉え、リアルタイムにエンジン管理をするソフトウェアシステムを作り上げたスペースX社はロケットの価格優位性、信頼性、柔軟性、即時対応性を一度に手に入れた。これはロケット開発を内燃機関の工学問題としてだけ捉えていたのでは生まれてこないアプローチだ。

 

しかしI T産業の中では既に先例がある。グーグル社だ。グーグル社の革新性は安価なP Cを束ね、クラスターとすることで性能をあげ、データーセンタ規模のクラスタ群が一つのスーパーコンピュータとして動くような仕組みを作り上げた。グーグル以前ではコンピュータの性能を上げるには、より大きく高価なコンピュータを購入し、置換えること(スケールアップ)が一般的であった。それをグーグル社は置換えではなく、クラスタ群に安価なP Cを付け足すこと(スケールアウト)で対応した。スケールアウトの方が費用対効果が高いのは明確だ。I T技術者でもあったイーロンマスクがロケット開発においてスケールアウトの概念を持ち込んだのは当然であろう。

 

以前の通信衛星ではG E O(地球から遠い衛星軌道)が主流で、L E Oは主にセンシングや気象観測に使われていたが、現在L E O(地球の地表に近い衛星軌道、高度約500キロ)において通信衛星の革命が起きている。通信衛星を地球から遠く離れたG E Oの軌道に乗せ、地球の自転と合わせた形で衛星が地球の周りを周回(公転)した場合(具体的には高度約36,000キロメートルで速度約3キロメートル/秒の円軌道)、通信衛星は地上から見上げて、常に静止しているように見える(静止衛星)。また高度が高いため、静止衛星1機で地表の約40%をカバーできる。そのため地球全体をカバーするために必要な衛星の数が少なくてすみ、また地上に設置するアンテナもパラボラ型で固定式と単純なものとなる。

 

翻ってL E O軌道を飛ぶ衛星は、地上から見て、静止しておらず、また地表から近いため、地表全体をカバーするには多くの衛星が必要となる。地上に設置するアンテナは衛星の位置を追跡するため首振り機能が必要となる。また衛星間では次に同じ位置に飛んでくる衛星との引継ぎをリアルタイムで管理しなければならない。最近のアンテナ技術は半導体技術の進化もあり、フェイズド・アレイという電波を重ね合わせることで電波に指向性(方向)を持たせ、送受信の効率化が図られていため指向性管理も必要だ。さらに衛星は高速で移動するので近づいてくる時には周波数が高くなり、衛星が離れていく際には周波数が低くなる(ドップラー効果)。このような場合、衛星の位置、速度を元に送受信した周波数からドップラー効果の影響を取り除かなければならない。

 

このようにL E O軌道上で高速に移動する衛星通信で信頼性の高い無線通信を確立するためにはリアルタイムでさまざまな計算を行うソフトウエアが必要になる。通信衛星のGEO軌道からLEO軌道への移行の裏では、宇宙産業においての通信用ソフトウエア群の集積とパッケージプロダクト化が既に始まっているのであろう。Star linkブロードバンドサービスの成功に代表さえるように、宇宙を調査研究の学術の場としてだけでなく、ビジネスフロンティアとして強く認識する時代が来ている。

 

米国のロケット開発においてベンチャー企業が、3Dプリンターの活用、炭素素材の活用、ターボポンプの電動化など、ロケット開発において新しい試みがなされるのは、ベンチャー企業として現金がショートしてしまう前にどれだけ早く、事業化・商品化できるかという切実な要請がある。「First Principle」から遡り問題を定義し、最適解、最短解、最小費用解を求めてイノベーションへの挑戦が促される仕組み作りが宇宙産業においても求められる。

 

ロケット発射管理、ロケット自動破壊管理、ロケット発射プロジェクト管理など、様々ノウハウをソフトウエアパッケージ商品としてまとめ、事業化していくかなどの発想を個々の技術者に持たせるには、今のJ A X Aのような仕組みが最適なのか再考する時期に来ているのではないか。産業にはサプライチェーンを通じてヒエラルキーが構築される。半導体産業のように、外国の宇宙産業が日本の宇宙産業に依存するような関係性を構築していかなければ、日本の宇宙産業の未来は底辺に落ち着き、経済安全保障の問題ともなる。気がつけば日本のロケットや衛星が、米国や中国の管理ソフトウエアや製造装置、部品、材料を購入しなければ発射できないということにならないように宇宙産業を長期的な視点で育てていく必要があると考える。

 

参考:

https://ja.wikipedia.org/wiki/%E3%83%95%E3%82%A7%E3%83%BC%E3%82%BA%E3%83%89%E3%82%A2%E3%83%AC%E3%82%A4%E3%83%AC%E3%83%BC%E3%83%80%E3%83%BC

https://ja.wikipedia.org/wiki/%E3%83%89%E3%83%83%E3%83%97%E3%83%A9%E3%83%BC%E5%8A%B9%E6%9E%9C

https://ja.wikipedia.org/wiki/%E5%85%AC%E8%BB%A2

 

宇宙を制するものは世界を制する  その2

2015年1月にイーロンマスクがシアトルで「インターネットを宇宙上に、作り替えることになるだろうit will be like rebuilding the Internet, in space.」と述べた。2023年度から振り返り、この発言の重大さに気づいている人はまだ少ないのではないかと思い解説する。

(参考リンク)

https://www.geekwire.com/2015/elon-musk-plans-get-mars-via-seattle-spacex-founder-said-private-event/

 

インターネットは海底ケーブルで繋がれており、海底ケーブルは光ファイバーでできている。光ファイバーの中心にはガラスでできており、その中を光が通り通信を行う。ガラスの中を通る光は、進むにつれて暗くなってしまうので、太平洋横断など長距離の場合、増幅器(リピーター)を介して光を増幅する必要がある。数十、数百のリピータを通って、移動する光の移動速度は遅くなる。また光はガラスの中で屈折するのでその屈折がさらに光の速度を遅くする。

 

光は真空の中でこそ、光の速さで移動する。イーロンマスク氏は物理の原則から考え、

「宇宙(真空)での光の速度は光ファイバー内での光の速度よりも速い。だから長距離インターネットは衛星間のレーザ通信の方が速くなる」と宇宙空間での通信の未来における優位性を見通した。ビジネスの商機を物理原則から考え、ビジネスを構築、軌道に乗せるイーロンマスク氏のスケールの大きさ、天才ぶりに改めて驚かされる。

 

イーロンマスク氏のスペースX社を通じて長距離通信が海底ケーブルから宇宙に移行することは副次的にA Iビジネスにも大きな影響を与えると自分は考える。通信データを使ってリアルタイムにA Iを学習させることができれば、A Iの賢さは学習に使われるデータ量に依存し、また使い勝手の良さはリアルタイム性に依存するため最高のA Iができるのではないか。

 

スペースX社はすでにブロードバンド事業を軌道に乗せており、またアメリカ大手の通信会社Tモバイルと一緒に、近未来に直接携帯との通信も行えるサービスも発表している。アマゾンはプロジェクトKuiperを発表し同様のブロードバンドを計画しており、長期的には競争が促され、技術革新が更に加速していくと考える。

宇宙を制するものは世界を制する

軍事的に最も強大な破壊兵器は弾道核ミサイル。ミサイルは目的地まで誘導されなければならない。G P Sを使ってミサイル自身が位置を把握する方法もあれば、衛星を使って誘導する方法もある。どちらも宇宙技術だ。相手のミサイル発射の探知や発射基地の探索も衛星を使って行われる。

 

衛星は高度が低くければ安価なカメラやレーダでも性能が出せる。ただ高度が低いと引力や大気の影響を受けやすく、衛星の燃料がなくなればすぐに地上に落ちてしまい、使用期限が短い。だから衛星を頻繁に軌道に乗せる手段、ロケット技術でどれだけ費用対効果を高めるかが大事になる。

 

衛星のカメラもレーダ用アンテナも大きければ大きいほど、性能が上がる。しかし大きくなれば重くなるし、費用がかさむ。だから再利用可能な大きなロケットを作り、一度に多くの衛星を運び、一キロあたりの同一軌道投入コストを下げることが必要となる。

 

アメリカがすごいのは、ロケット技術という国防の一番目一丁目において、民間の活力を利用し、かつそれに呼応する起業家が出てくる(アメリカに来る)こと。国がリスクをとって実績のない企業にロケットを発注したり、SPACという実績がなくても先に上場して株式市場で資金調達ができる仕組みを作った。ある意味、米国は血気盛んな(そして往々にして権威を嫌う)起業家たちに、国防の底力を見出したと言える。このことはハンニバルの脅威に対応するため、法律運用を曲げ、若いスキピオ・アフリアヌスに権限を与えたローマ帝国の寛容性(clementia)に通じる。そしてその寛容性こそが、アメリカが大国であり続けるための要諦と自分は見ている。

 

ロケットは成功、失敗がわかりやすい。現在イーロンマスク氏が率いるSpaceX社が打ち上げ実績 、頻度(Cadence)が突き抜けている。それでは他のロケット会社がつけ入る隙間はあるのだろうか。自分はあると考えている。

 

衛星軌道には赤道から北にプラス、南にマイナスの角度がある。地球は自転しているため、衛星の進む向きと自転の向きが重なれば、比較的長い時間衛星は頭上にとどまる。つまり衛星でカバーしたい地域が日本ならば日本の上空をできるだけ長く横切るような角度、高度をつける必要がある。それぞれの衛星はカバーしたい範囲が異なり、また必要な大きさや個数、そして打ち上げ時期など、さまざまな要件の組み合わせがあり、一つのロケット会社が全ての需要を満たすことはない。軌道上の衛星は、一つの機器でより多くの人に使ってもらえる、とても影響力が大きい技術であり、打ち上げ費用が下れば、より多くの需要が喚起されると考える。

 

安く大量に生産することで製造業の市場を広げてきた日本が、宇宙産業においても民間の力で大量生産で価格を押し下げることができれば、大きな産業となすことができるのではないだろうか。まずはそのための環境整備が必要と考える。

カンボジアでのバイク購入

カンボジアでは125CC以下のバイクには免許が不要。ただ路上の警察官とのトラブルを避けるために、免許をできるだけ取得するようと領事館のサイトにはある。

 

https://www.kh.emb-japan.go.jp/consular/untenmenkyo1.pdf

 

どのようにして免許を取ればいいのか、イオンモール2にある運輸省の免許更新センターに聞きに行った。英語窓口で「125CC以下では免許はいらない」と言われたので、自分が「それでもカンボジア警察は罰金要求しますよね?」と聞くと、「その場合は運輸省のホットラインに電話してください」と言われた。

 

https://www.mpwt.gov.kh/en/home. (Hotline 1275)

 

運転免許を取るには、まずヘルメットが必要だろうとヘルメットショップに行くと、しきりに中古のホンダCB150を勧めてくる。150CCは免許が必要でしょうというと、カンボジアの警察に捕まったら数ドル払えばいいだけだから免許は必要ないという。「どこで免許が取れるのですか」と聞くと近所のドライバースクールを教えてもらったので、その足で申し込みに行った。

 

スクールでは「バイクの先生はいない。車の先生だけ」と言われたが、免許は簡単に取れるという。「Cambodia Driving Rules」というアプリを携帯にダウンロードして交通標識、交通規則を自習した。スクールは運転免許試験に代理で申し込みをしてくれるだけだ。プノンペンでドライバースクールを検索しても、どこの場所も運転練習場がない、小さな店舗だけなので不思議に思っていたが、理由が理解ができた。スクールといっても基本、運転免許試験申し込み手続きの代行業なのだ。

 

試験場所はプノンペンの北「Heavy Truck Training Center」。実技試験コースもあり、奥には大型車が見える、立派な場所だ。学校からは午前7時までに到着し、指定の電話番号をかけろと言われていたが、電話がつながらない。学校に確認すると午前9時からスタートという。待っていると1時間ごとに試験があり、7時、8時はカンボジア人で、9時からが外国人(多くは中国人)が試験を受ける番であった。9時前に学校が派遣したエージェントがきたので、パスポートを渡した(他の外国人のためのエージェントも複数いたので、間違われないようにする必要がある)。筆記試験は全てコンピューターで選択式。終わるとその場で結果が出る。運よく筆記に合格すると次は実技試験と言われた。「一度もバイクに跨ったことはない!」と主張すると30分だけ練習の時間をくれるという。

 

マニュアルかオートマか聞かれたので、マニュアルと答えるとヤマハのバイクが用意された。エンジンをかけても、すぐにエンスト。これではダメだと急遽スクータに代えられた。スクータに跨って、気ままに教習所のコースを走ったら、止められて、後ろに乗れと。試験コースには順番があり、また標識に従い、停止しなければならないことを教えてもらった。最後にスラロームがあり等間隔に並んでいる円錐型コーンの間をジグザクに走らなければならない。練習時間中に一回も成功しなかったが、スピードを落とすのにリアブレーキを踏みながらアクセルを吹かすと比較的車体が安定することに気づいた。

 

実技試験が始まると、自分以外は皆、車の試験だった。自分の番がきたが発進しない。エンジンのかけ方を自分は知らなかった。キーを試験官に回してもらい、発信し問題なく試験コースを終えた後、最後にスラロームの前に立たされた。ルールは2回まで足をついてよく、また2回まで挑戦できる。奇跡的に一回も足をつかず、初めの挑戦で成功させた。数日後、学校を通じで免許証が送られてきた。免許証はTypeAで2輪、3輪車を運転できる。免許は一年間しか有効ではない。来年こそ、マニュアル車で受けたい。

 

この運転免許取得は、カンボジアの道路標識等を学ぶに大変役に立った。全ての運転者が勉強すべきだと思う。

 

バイクを買うには新車登録、ナンバープレート登録がない分、新車より中古の方が簡単と聞いていたので、Khmer24のモバイルアプリでナンバープレート付きの中古ホンダグロムを購入した。家の前まで運んでくれ、かつ乗り方までタダで教えてくれるという。バイクは本人が最初の購入者なのバイク登録書の名前が販売用紙に記載される名前と同じになり都合が良い。販売用紙を記入し、お互いに親指で母印し、バイク、鍵x2、バイク登録カードを確認したのちに、ABA銀行のモバイルアプリを使ってUSD 1800を振り込み取引完了。最後にお互いのIDや取り交わした書類を写真に収め、テレグラムで共有した。

 

https://dooorblog.com/expat/life/1518/

 

運転技術に自信がなく、また日焼け防止のため胸部プロテクター等を買った。ただ現地の人はヘルメットもなく、サンダル、短パンで運転する人が多いので、正直自分は何を大袈裟にやってるのだろうと思わないこともない。眼鏡もオンデーズで遠距離用のものを揃えた。

 

https://www.kmxhelmets.com/

 

またバイク保険(包括パッケージでバイクの盗難、賠償責任など)の一年契約をした(自分の場合年間USD113だったが、個人によって異なる)。メールでテレグラムの番号と、購入したバイクのナンバープレート登録証明を送信すれば、テレグラムを介して見積もりがもらえた。支払い先はいつかの銀行から選べる。

 

https://www.infinityauto.com/knowledge-center/understanding-insurance/motorcycle-insurance-policy

 

最後にバイクの乗り方に参考にしている主な動画サイトは以下:

 

https://www.youtube.com/@MuscleBike

https://www.youtube.com/@ahirutaicho_bike

https://www.youtube.com/@tsukinowaproduction

 

他人の目を気にせず、まずは自信がつくまで安全な場所で練習したい。最初の遠出の目的地は、ホンダディーラーショップで車体の点検と消耗品の交換。考えられる限り、安全には万全を尽くしたい。

 

一連の手続きを振り返ってみて試験の厳格さ、手続きの電子化。売買のスピード感。またナンバープレートやID等にQRコードも付与され、QRコードをスキャンすることですぐに詳細なデータを確認できる。カンボジア行政のあり方が、着実に進歩してしていることが感じられた。

不動産投資

自分のはじめての不動産投資がカンボジア

 

不動産は株や定期預金と比べ、 現金に変えることが難しい。また一回の投資額も大きなものになりがちでリスク分散が難しい。とは言ってもカンボジアの不動産は先進国と比べればまだ比較的安価だ。

 

購入する前は ロケーションや、価格にばかり目が行くが、購入後の住みやすさ、住居者の安全が確保されているか等の考慮も大事。住居は身近かな商品だが、同時に高い専門性が必要とされる。不動産は投資としては難しい部類に入ると購入後に実感している。

 

考慮すべき重要点として、数え上げればキリがないが、例えば

 

火災について:

 

火災が起きた際、避難経路は複数あるか

火災探知機はついて設置されているか

煙を遮断するための扉はあるか

消火器は設置されているか(よく煙を遮断する扉を開けために使用されるー笑)

 

エレベーターについて

 

ゴミの運搬と住民の導線は隔離されているか 

大きな家具などを運び込む際の導線は確保されているか

緊急連絡先はいつも通じるか

定期的に 安全点検されているか

 

上記項目は、設計段階で考慮が必要なもの、物件を受け渡した後に、 マネージメント会社の日々のオペレーションで対応するものなど、長期的な計画‧実行が必要だ。

 

初めて売買契約書(Sale Purchase Agreement -SPA)を見たとき、長々と購入後のことが書かれていことに驚いた。具体的には、 建物の美観を損なう外観変更の禁止(外側だけでなく通路側も含む)。 不動産購入者で構成される委員会の運営方法、そして意思決定の方法。 共用施設の保全の仕方。購入者、一人一人が不動産価値を守るために必要な責任を事細かく規定している。

 

外国人が購入する物件はオーナーの国籍も多様になる。上記のような詳細を売買契約書で明確にし、長期に渡り不動産価値を保全することに必要な項目について一律に購入者に合意させておくことは重要なことだ。問題が起きた際は、よりどこりになる事前合意文書が必要となるからだ。

 

購入前

 

自分は不動産購入をする際、カンボジアに来ずに不動産購入を決めた。たとえ短期的にカンボジアに滞在しても、初めての都市はどこが中心地かよくわからない。中心といってもビジネスの中心、 ショッピングの中心、 高級住宅街の中心と定義を先にしないと、いくらでも中心と呼ばれる場所ができる。ちなみにプノンペンバンコク、東京都の中心といえば王宮、皇居になるだろう。だが王宮、皇居の周りが一番、住み良い街かというとそうではない場合もある。

 

また購入前には認識していなかったが、リスクとして一番大きいのは開発事業者が、建物を最後まで完成させるのかどうか否か。開発業者の資金基盤が弱く、銀行から借りれがないと、もしくは購入者から入金がないと、建設業者に支払いができないような状況だと工事が頓挫することは避けられない。支払いを済ませている購入者にとっては物件が完成しないなど言語道断だが、上場会社で財務諸表を開示してる会社でもなければ、個人で会社の財務状況を購入前に確認することは難しい。

 

売買契約書のサイン

 

契約書は公証人を入れてサインをした。初めての公証制度(Notary)。自分は台湾の公証人を使用し、台湾では役所が契約書の一部を保管する。売手が合意するなら、契約書上で裁判管轄を日本やシンガポール等の海外にすることができる。

 

引渡し

 

引渡し後に問題がないか確認する必要がある。洗濯機を設置して使ってみたら、蛇口の根本から水漏れがしたりと、実際に使ってみないとわからない点が多い。また所有権の観点から見れば、鍵をもらい、引渡し完了後も購入者の所有権が確定したわけではない。ハードタイトルという権利書を手にするまでは、物件を買ったという証拠は販売会社と交わした売買契約のみだ。契約当事者の販売会社は倒産や資産を譲渡するができるのだから、早期にハードタイトルを取得して、権利を確定することが必要だ。

 

購入後

 

考えても仕方のないことかもしれないが、カンボジアは新しい建物をどんどん建設されている。都市が発展していくことは嬉しいことだが、運が悪ければ景観を遮る形で隣にビルが立つ可能性もある。新しい道路や高架、橋も日々つくられ、人と交通の流れも刻々と変わっていく。都市計画に関する文書は公開されているが、それでも購入物件に与える影響を見通すことは難しい。

 

様々な考慮すべき点を書いてきたが、最後に不動産投資の魅力を述べたい。不動産投資は形が見える投資だ。建設工事が止まっている時期には、よく工事現場を通るルートを散歩した。心配で足が勝手にそちらに向くのだ。建物から光がチラッと見えたりすると「工事再開したのか!それとも幻覚か!」など一喜一憂した。債券投資などの所有は所詮画面上での数字であるため、一日の歩数が増えたりすることはない。不動産は実際に貸出したり、住んでみたりと活用できる、より身近に「所有」を実感するできる特別な投資だと考える。

なぜカンボジアの金利は高いのか

カンボジアは現地通貨もあるが、ドルが経済の中心だ。2023121日現在、カンボジア市中銀行1年物米ドル定期金利(満期払い)は以下である。

 

ACLEDA 5.6

https://www.acledabank.com.kh/kh/eng/ps_defixeddeposit?t=

 

ABA  5.5

https://www.ababank.com/en/fixed-deposit/

 

SBI LYUOR 5.75%

https://www.sbilhbank.com.kh/en/fixed-deposit/

 

MayBank 5.5%

https://www.maybank2u.com.kh/en/personal/deposits/fixeddepositaccount.page??type=casa

 

なぜカンボジア金利は高いか?

 

大学の経済学部では一物一価の原則を習う。同じものが二つの市場で異なる価格で取引されていれば、安い市場で買って、高い市場で売ればリスクなしで儲かる(裁定取引)。裁定取引を通じて安い市場では需要が上がり価格も上がり、価格が高い市場では供給が増えるため値段が下がる。

 

ドル金利が海外ではカンボジアより金利が低いのだから、ドルを金利が低い海外市場で調達し、カンボジアの高い金利で運用すれば良いのにと。また金利がさらに低い、円で調達しドル転してカンボジアに送金することも可能だ。そうすることでカンボジアにはより多くのドル資金が流入し、市中銀行はドル預金を潤沢に持ち、金利は下がっていくであろうが、なぜそうならないのであろうか。

 

具体的に言えば、アメリカ大手銀行(例えばCitiバンクなど)の支店を開設し、Citiバンク米国本店がカンボジア支店に資金を供給し、そこから短期金融市場(インターバンク市場)を通じてカンボジア市中銀行に資金提供する。もしくはカンボジア市中銀行CITIバンクカンボジア支店に当座貸越の極度設定(貸出金額を上限設定して、その上限以内で、いつでも当座貸越しができる)することで、決済のための資金繰りを確保できれば、カンボジア市中銀行金利は下がっていく。これはカンボジア経済の発展にも重要なこと。カンボジア市中銀行が低金利で資金調達ができるということは、貸出金利も抑えられ、カンボジア企業の発展を促進する。シンガポールにできて、カンボジアにはなぜできないのだろうか。

 

金融の原則によれば、金利が高いのはリスクが高いから。そのリスクとは突き詰めるとカントリーリスクとなる。以下、具体的なリスクを3つ挙げる。

 

リスクその1

 

米国にはForeign Corrupt Practices ActFCPA (海外腐敗行為防止法)、英国にはUK Bribery Act 2010UKBAと明確に国外でも腐敗(汚職、情収賄)に携わるとを禁じている。新興国で典型的なのがファシリティーペイメント(行政のプロセスをスピードアップするため現地公務員が法的根拠なく比較的少額の支払いを求める行為)。当然ながらこのような支払いは領収書などがないので、会社で払うことになると会計情報の整合性に影響する。

 

新興国からすれば、法律が未整備で、税収も低く、公務員の給与が低い中、ファシリティペイメントは個々の公務員の切実な要請から由来する慣行であり、防ぐのが難しい。1日に多く書類を処理したからといって、給与が上がるわけでもないのだから。これは先進国と発展途上国の商慣行の違いだが、発展途上国では問題なくとも、米国に戻れば海外での違法行為の従事となる。

 

リスクその2

 

Citiバンクカンボジア支店が仮に開設されれば、カンボジアで貸出業を行う。その中で直接貸出をした企業、もしくは貸出した銀行の融資先の企業が、森林伐採などの環境破壊、違法行為、未成年就業、人権侵害などをおこなっていた場合、融資をした銀行は間接的に資金提供を通じて、幇助したことになる。そうなれば米国での追及は免れず、銀行の信用、風評に大きな傷ができる。またそうなれば米国だけでなく、他の先進国での事業にも影響が出る可能性もある。

 

リスクその3

 

2020523日のアクレダ銀行の株価を見ると22,600リエル(5.65ドル) 2023116日の株価は10,840リエル(2.71ドル)となっている。過去3年間、コロナ禍にも関わらず、国内経済は高成長を続け、アクレダ銀行も順調に成長している。しかし株価は半額以下だ。企業が成長しているなら株価も本来は上がるはずである。そうでないのは、本来ならば、質、量とともに十分な情報をもとに適正価格が形成され、企業価値が価格に反映されるべきなのだが、価格が情報集約機能を果たせてないことを示唆する。銀行からすれば、上場企業の場合、貸出には株を担保とするのだが、株価が十分な質と量の情報に基づいて価格形成されていないとすると、株価にどれだけ担保価値があるのか判断しかねる。

 

以上、リスクを列挙してきたが、カンボジアは一つ一つ対応をしている。リスク1ではマネーロンダリングに関する金融活動作業部会(Financial Action Task Force on Money Laundering)という国際的な仕組みを通じて取り組みがなされている。リスク2では2018年に策定されたRectagular Stragetyにて 反腐敗戦略が明確化されており、リスク3においてはJICAや国際機関の協力のもと指標を作成したり、最近では信用調査機関(credit bureau)も設立され情報の集約も始まっている。

 

カンボジアのカントリーリスクが低くなり、海外から巨額の投資が流入し、経済が急速に発展するのが一番良いシナリオだ。逆にリスク1、2、3などのをあまり注視しない投資に中国の一帯一路がある。経済成長戦略のジレンマとして、リスク1、2、3に対応するとしながらも、特にシアヌークビルの投資などに見られるように、カジノや、中国の一帯一路の投資に依存していること。このジレンマにどのように対応していくかがカンボジアの未来の分かれ道になると考える。

 

追記:自分はブロックチェーンなどのICT技術が上記リスク対応の鍵となると考える。

参考:

https://www.businesslawyers.jp/articles/47

https://www.nbc.org.kh/english/economic_research/banks_reports.php

https://www.fatf-gafi.org/en/publications/Mutualevaluations/Fur-cambodia-2022.html

https://www.khmersme.gov.kh/wp-content/uploads/2022/09/Rectangular-Strategy-Phase-IV.pdf

https://blog.goo.ne.jp/economistphnompenh/e/f8ebce107aa31ceced114336638fa4cf

 

幸福感

カンボジアに移住して5年目に入る。近年、ほぼ6年ごとに国を変えている。シンガポールのときは次はオーストラリアと考えていたが、中国語に取り組んでいたために台湾に目標を変えた。台湾の次は中国大陸か、香港を考えていたが、途上国ならば人間についての学びや気づきが多いのではと思いカンボジアに移住した。ここで気づいたことをまとめたいと思う。

 

カンボジアの首都プノンペンは歩きにくい。歩道が凸凹しており、ゆっくり歩いていてもこけたり、足を挫いたりする。またゴミが散乱しており、臭いがしてお世辞にも散歩に向いている場所ではない。そんなとき家族と共にベトナムホーチミンにバスで行き、District1に滞在した。

 

ホーチミンでは子供達はマクドナルドを見て感動し、歩行者道にゴミ箱が設置されていることにさえ感動していた。感動とは日常からの乖離なのだ。だからどんな些細なことにでも感動できる。環境さえ変われば。

 

プノンペンでは移動には主にトゥクトゥクという小型3輪車で移動する。道路にはところどころ速度制限のためにコブのようなものが設置されており、毎朝、コブを乗り越え「ガックン」とトゥクトゥクが上下に揺れ、トゥクトゥクドライバーが声をあげて喜んでいたら、しばらくして自分も一緒になって声を上げて喜んでいたことに気づいた。笑いのツボは感染るのだ。

 

また雨が溜まり、道路を水飛沫をあげて走ると自分は「わー」とか「おおぉ」などの声を上げるようになった。水たまりが楽しい。日常がスプラッシュマウンテン。水たまりが深いとトゥクトゥクのエンジンが止まってしまうため一定のスリルもある。

 

ある日のこと、家の前で段差を乗り越えようとしたが、つまずき、こけそうになったが、バランスを崩し前のめりになりつつも、なんとか踏ん張り、転けずに持ち堪えた。後ろで座って見ていた工事現場の若者たちは、自分がバランスを崩したら「おおぉ」と歓声を上げ、踏ん張り切ったら喜んでくれた。歓声を受けるようなことではないので、自分は照れながらも笑顔で工事現場の若者たちに応えた。体操選手でもない自分が、バランス感覚で歓声を受ける日が来るなんて。

 

徒歩40分のところにセブンイレブンが開店したと聞けば、炎天下の中汗だくになって、セブンイレブンまで歩いてき、店舗に入らずとも看板を眺めているだけで想いにふけることができる。また店舗に入り、人生初のプノンペンセブンイレブンデビューの商品を何にしようかと、ひと通り商品を見て考え、やはりサービスを確認しようと、カウンターで煎れてもらうアイスカフェラテを頼んだ。値段の割には大きいサイズ感。また味も台湾で飲んだ味に似ていたことに感動した。

 

プノンペンではよく高級車やスーパーカーを見かける。自分の乗るトゥクトゥクが信号待ちのため白いポルシェと並んで停車した。青信号になるや、トゥクトゥクは小型で軽量なため加速が良く、ポルシェを置き去りにしていく。そもそもプノンペン市内の速度制限は時速40キロで、道も狭いのでトゥクトゥクに分があるのだ。トゥクトゥクの値段がUSDKとして、ポルシェがUSD300Kの値段と仮定するなら、そこには百倍の資本効率があるのではと喜ばずにはいられない。

 

コロナのせいで日常が単調であったのも理由の一つだが、日常で刺激が薄いと、感受性が上がり、過去決して喜ばなかったことに関しても喜びを感じ始め、幸福感が上がる。

 

幸せとは幸福感のチャネル感度をあげ、嫌なことへのチャネル感度を下げることで成就できる。だがその感度をチャネルごとに、自分で意識的に変更することはできない。だから環境が重要となる。 上座部仏教が出家を進めているのも同様の理由によるものではないだろうか。