ミックマック
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幼い頃に父を地雷で失い、大人になってから偶然頭に銃弾を食らった主人公バジルが、それらを作る武器商人たちに仕返しをするというフランスのコメディ映画。監督は「アメリ」で有名なジャン=ピエール・ジュネ。アメリは見たことがないが、この監督の独特の世界観と映像の美しさにまず魅入られてしまった。そして次にストーリーの面白さ、テンポの良さ、極めつけのハッピーエンド、どこを切り取っても素晴らしい映画で、なおかつ映画にしかできないこの尺の長さと練りこみ具合、これぞ映画である!
同時にこの映画は武器や兵器、戦争や権力に対する痛烈な批判にもなっている。大企業の社長たちにホームレスらが「仕返し」するというのは、それだけでなんとも痛快な話ではないか。またこの映画のブラックなユーモアの向こうには、ラストシーンで仲間たちが周到な準備のもとに表現したような、圧倒的な数の「ただ黙って撃たれる側」が控えている。
ポトラッチを解釈する人類学がわれわれに教えるのは、力を持たないものが力を持っていなければいないほど、その潜勢力(puissance)は強いものとなっていくということだ。何も言えず、打ちひしがれ、ただ朽ちていく存在による、低すぎて見えないほどの位置からの強烈なアッパーカットは、権力という抑圧と解放の構造の中で、それが映画で表現可能であるという意味において、今日も静かに醸造されている……。
試験
翌日に試験とかあると、ひとつの日記が生まれる。
一年に一度、自分の思考の志向性を確認するため、ドゥルーズのアベセデール、AとGだけを観る。今回ぐぐっと来たのは、いつでも人を駆り立てるのは、たったひとつの憎むべき状況、恐るべきありのままの現実なのだ、というフレーズ。
アルジェリアという場所に誘拐という現実があって、それに対して「許せない」というひとつの感情がある。けどそこで「こういう人たちがいるから日本のグローバル化があるのに」とかは、まあひどい間違いなわけで。彼らが誘拐されたことが許しがたいのは、彼らが日本のグローバル化に貢献しているからなんじゃなくて、人が人の自由を奪って、政治の道具にして、帰りを待っている人が耳を塞いでも聞こえるような角度で首を切り裂くからなので。
そういう、間違ったことをいう連中が寄ってたかって悪い方向に感情を走らせて、香田証生さんが死んだ。僕もずっと頭の中に封印していたけど、盟友フジタカ君とオオサカ・十三(じゅうそう)駅でフラフラしながら呑んだくれていたときに、思い出させてくれた。「あのとき、社会みんなが、香田証生さんを殺したんですよ」。自己責任の台風が上陸しセカイ系男子がブルブル震えながら自分だけのシェルターに籠っていたあの頃、僕も香田証生さんを殺したし、殺した動画を何度も見たり聞いたりすることによって殺しを反復した、殺し続けた。そうやって香田証生さんは死んだ。
いまさら香田証生さんを象徴化するのは愚かしいし失礼だ。けど歴史から何も学ばないことはそれよりも愚かだ。
今回のアルジェリアの誘拐事件では、実はみんなちょっと気が緩んでいた。だって日本は経済大国で、アルジェリアを発展させてあげようという最中で、さらに誘拐されたのは超エリートサラリーマン。さすがに手荒な真似はあっち(アルジェ)もそっち(なんとかアルカイダ)もしないでしょう(笑)といった感じが見て取れた。
けれど、現実は違った。アルジェリアは小泉純一郎だった。しかも他国の国民がいようと全然関係ないスーパー小泉だった。だから「テロには屈しない」という今じゃおもちゃみたいな大義を振りかざしてテロリストをボコボコにしようとしてさすがにテロリストもジャパニーズを殺しちまった。アベは気弱なお父さんみたいな顔で「強く抗議する(震え声)」とか「遺憾の意を示す(涙)」とか言ってみたけど、果てしなく離れたアルジェリアには届かない。経済を戦争に見立てる醜悪な論法を展開するネオリベ保守は貴重なコマを失ってしまったね。僕も悲しい。
僕はといえば、それでも人が殺されたというのは悲しむべき事態だと思うし、かといってテロが正しいとも正しくないとも言えないし、ネオリベには腹が立つし、明日の試験の勉強なんてしたくないし、好きなことして生きていたいし、人のことなんてどうでもいいし、もっと愛したいと同時にもっともっと一人になりたい、本を読みたいと同時にもっと遊んで遊んで遊びまくりたい。そういえば明日は試験なんだった。落ちてもいいんだけれども。
実録・連合赤軍
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パンドラの匣
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シルビアのいる街で
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かたや、時間とは何かというのは、それ専門の研究が行われるくらい難しいものらしいです(ベルクソンをかじった程度なので私には何もわかりません)。われわれは西暦2001年12月31日から一瞬にして西暦2002年1月1日へとジャンプする、ということを平然とやってのけているわけですが、その際に西暦がカウントアップして、日付がリセットされるという奇妙さについては全然気になりません。西暦の方は直線で、永久に前に進み続けるのに対して、日付は円環状になっており、永遠にぐるぐると同じ時を進み続けます。
草木けぶる夏の田舎の風景はまるで永遠に繰り返されるようですが、そこでは何一つ同じものはない、というジレンマが……。
「シルビアのいる街で」は8年前にバーで一度会っただけの女を探し続ける男を追いかけるだけの映画です。時間を考えさせる映画でした。
神の子供たちはみな踊る
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ペルシャ猫を誰も知らない
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