小学生でも5分で分かる鳥インフルエンザの恐怖 (再掲)

新型インフルエンザのパンデミックがにわかに現実味を帯びてきたみたいなので、
http://www.mypress.jp/v2_writers/beep/story/?story_id=1826759
ちょうど一年前に書いた記事を再掲してみる。

  • そもそもウイルスって何?

ウイルスってのは自分を構成するタンパク質と、それをコードする最低限の核酸のみを持った
構造体だ。自分の生存における「必要最低限」のものしか持ってないんだから、
もちろん自己複製能だって持ってない。ウイルスは、宿主となる動物や植物の細胞に寄生して、
その細胞が持つ複製システムを利用して自分を増殖させていくんだ。
生物と無生物の中間のような存在と捉えるのが分かりやすいかな。

  • インフルエンザウイルスの特徴は?

インフルエンザウイルスは二つの大きな特徴を持っているんだ。そしてその二つの特徴は、
感染において非常に有利に働くんだ。
一つ目は「突然変異が起こる確率が非常に高い」ということ。
二つ目は「感染能力が非常に高い」ということ。

  • インフルエンザウイルスの構造はどうなってるの?

インフルエンザウイルスを理解するうえで知っておく必要のあるタンパク質はたったの二つ。
一つ目はHA(ヘマグルチニン)、二つ目はNA(ノイラミニターゼ)だ。
上のニュースに「H5N1型」って単語が出てるけど、それはつまり
HAのNo.5とNAのNo.1を持ったウイルスだってことだ。
今現在、HAは16種類、NAは9種類知られている。よって少なくとも
16×9=144種類の違ったインフルエンザウイルスが存在することになる。
それじゃあHAとNAの詳しい説明に入ろう。

  • HAとは?

さっき上でも書いたように、ウイルスは何かの細胞に寄生しないと
増殖できない。この、寄生するために必要なタンパク質がHAなんだ。
HAは宿主となる細胞膜表面に吸着し、細胞内に侵入する足がかりとなる。
でも、HAだって万能じゃないので細胞全てに吸着できるわけじゃない。
例えばH1型は鳥にもヒトにも吸着、侵入できるけど、
一方でH5型は鳥やブタの細胞にだけ吸着でき、ヒトの細胞には
侵入できないんだ。これが鳥インフルエンザ恐怖のキモとなるんだけど、
説明は後ほど・・。

  • NAとは?

NAは、宿主細胞を利用して増殖したウイルスが、その宿主細胞膜を突き破って
外に出るために必要なタンパク質だ。つまりHAで侵入し、NAで脱出することで
1サイクル
完結するわけだ。

さっき上で書いたようにH5型はヒトには感染しない。
でも、「トリ」「ブタ」「ヒト」の三役者に、「突然変異が起きやすい」という
インフルエンザウイルスの特徴を掛け合わせると、あーら不思議、
ヒトに感染する可能性がバンバン出てくるんですねぇ。


説明を簡単にするために、トリさんは几帳面な型、ブタさんは二面性を持つ型、
ヒトさんには自己中な型になってもらいましょう。
H5型などの「」型ウイルスはトリ、ブタにしか感染できない。
(注:この「」型は一般的なインフルエンザウイルスの分類のA−C型とは別です。)
一方で「」型ウイルスはブタ、ヒトに感染できる。
さて、あるブタが偶然にも同時に「」型ウイルスと「」型ウイルスに
多重感染してしまったとしよう。すると、このブタの体内で
」型ウイルスと「」型ウイルスとが核酸の再分配を起こすこととなってしまう。
そうした突然変異で生まれた新型ウイルスの中にはもちろん、「」型の
性質を持ったままヒトに感染する能力を有したものがいても不思議ではないよね。
つまり、ヒトが体験したことの無い」型ウイルスがブタの体を経て
ヒトに感染する可能性があるんだ。


免疫系は一度経験した異物に対する防御は非常に強いけど、
(おたふくかぜやはしかに一度かかると、生涯二度とかかることはないよね。)
初めて入ってくる敵に対しては滅法弱いんだ。だから新型インフルエンザウイルスに
感染しても、それに対して体はどう反応していいか分からない。
自然治癒力に任せておけばいいって問題じゃないんだね。


さらにマズいことに、インフルエンザウイルスの特徴その2「感染能力が非常に強い」。
みんなHIVウイルスが怖いっていうけど、このウイルスは空気中ではほとんど
感染力を持たない。一方インフルエンザウイルスの主な感染経路は「飛沫感染」と
接触感染」。つまり、Aさん(患者)のくしゃみや鼻水そのもの、だけでなく、
Aさんがくしゃみを手で防ぐ -> その手で机を触る -> Bさんがその机を触る

  • > Bさんが何かの拍子で口を触る だけで、Bさんは感染する可能性があるんだ。

感染者が爆発的に増えても不思議じゃないよね。
世界中でひとつの病が大流行することをパンデミックって呼ぶんだけど、
このトリインフルエンザがいつ「パンデミック」になってもおかしくないのが
今現在の状況なんだ。

  • 対応策はないの?

対応策は主に次の二つ。
一つ目はみんなも聞いたことがあると思うけど「『タミフルリレンザ』の備蓄」
二つ目は「インフルエンザワクチンの備蓄」だ。


タミフルリレンザはどちらとも上で述べた「NA」の阻害薬なんだ。
つまり細胞内でウイルスが増殖しても、そのウイルスは外に脱出できないから
それ以上症状は悪化しないというわけ。
・二つ目はその名の通り、インフルエンザウイルスに対するワクチンを
予め接種することで、新型インフルエンザに対抗しようという試みだね。


世界中で、これらの対応策を取ってるわけだけど、もちろんそれで万全なわけじゃない。
備蓄数が絶対的に足りないということは置いておくとしても、
そもそもこれらの薬が新型インフルエンザに効くかどうかが曖昧なんだ。


まずタミフルについてだけど、上に書いた通りこの薬は直接ウイルスを
殺すわけじゃなく、あくまで増殖を防ぐ、という役割しか持たない。
よってウイルスが十分増殖して、症状が重くなってから服用しても時既に遅し
タミフルじゃぁどうすることもできないんだ。
予防的に罹患前に飲むとタミフル耐性菌が出現する可能性も高くなるし、
飲むタイミングが非常に難しい薬なんだ。
ワクチンにだって問題はある。何度も言うけどインフルエンザウイルスは
「突然変異する確率が高い」。よって大流行する新型ウイルスは、接種したワクチン株とは
全然違うものである可能性だって十分あり得るわけだ。ということは、つまり全然効かないかもってことだ。
まぁ医療側が後手後手に回るのは自明の理だ。完璧に予想できればこの世から
病気なんて根絶できる。

  • じゃぁ結局のところどうしたらいいの?

結局のところ自分の身は自分で守るしかない。そしてその手段は普遍的なものなんだ。
「敵を知り己を知れば百戦して危うからず。」
つまり、まずはインフルエンザに対する正しい知識を身につけること。
これは、このエントリーで一部クリアーしたことになる。
もっと詳しいことは様々なサイトで紹介されている。無駄に不安になったり、
また逆に完全な無知でいることは自ら窮地に立っているようなものだ。
情報は最大の武器である。


そしてそれを踏まえたうえで防御法を遂行する。何も大層な事をする必要は無い。
・うがい手洗いの励行
・外ではマスクを欠かさない。
・適度な運動、十分な栄養の摂取により、ちょっとやそっとの感染ではやられない体を作る。
これらの基本を忠実に行うことが何より最大の防御である。

  • 最後に

インフルエンザは非常に恐ろしい病気であることは間違いない。
スペイン風邪においては全世界で5000万人程が死んだといわれている。
100年前に比べ、ヒトの流れは比べ物にならないほど早い。
新型ウイルスがどこかで出現した瞬間、そのウイルスは世界中にあっという間に広がり、
地球全土をパニックが襲うであろう。パンデミックを防ぐ術はない。
しかし、そうなることを事前にシミュレーションできれば、問題はそこまで深刻にはならない。
何よりも落ち着いた行動、適切な判断が命を救う。
最も恐ろしいものはウイルスそのものではなく、パニックに陥り正常な行動が取れないことである。
小学校で耳にたこができるほど聞かされた真理
「予習はやってきましたか?」
これが生死を分けることになるのだ。

知らなかった! 食生活の謎

なかなか面白い記事があったので、メタボ系研究室に籍を置くものとして補足エントリを書く。題名はホッテントリメーカーから持ってきたもので特に意味は無い。けど、知ってて損は無い知識だと思う。補足する記事は「もしかしたらあなたの人生を変えるかもしれない、やる気、集中力、簡単養成講座」disってるわけじゃないからね><
では、補足スタート。

脳は糖分で動いている。

うん、そのとおり。心臓から送られる血液は、BBB(blood-brain barrier;血液脳関門)というバリアを通過して初めて脳に入ります。血液中に流れる不純物が、人体の中で最も大事な器官といっても過言ではない脳にドバドバ入っちゃうと脳が壊れちゃいますよね。だから脳の前には厳しい「関所」が存在するのです。で、そこを通過できる栄養素はブドウ糖グルコース)だけ、ということ。*1

次に

ブドウ糖は貯めておけない

これも正しい。正確に言うと「貯めておけない」じゃなくて「ブドウ糖の形で貯めるのは効率が悪いから、あえて貯めない」ですけど。人間を初めとする生物は何万年もの間、絶対的に食物の少ない環境で生き延びて進化してきたため、できるだけ栄養素を体に溜め込もうとします。*2
小腸から吸収された糖分や脂肪分は全て最初は肝臓に送られます。糖分(デンプンなど)とはグルコースのような単糖が数多く連なったものですが、吸収される頃には分解され単糖か二糖*3となっています。しかし、このままでは蓄積しにくいので、単糖を再び繋ぎ合わせてグリコーゲンとして肝臓に蓄積します。
しかし、上で述べたようにグリコーゲンで蓄積するのは効率が悪いのです。グリコーゲンよりも効率がいい蓄積物、それがにっくき「脂肪」なのです。どれぐらい効率がいいかというと、グルコース一分子からはエネルギーの素であるATPが32個しか出来ないことに対して、なんと脂肪酸一分子*4からは106個も出来るのです。圧倒的すぎるww*5
よって肝臓では、とりあえず分のグリコーゲンを合成すると残りの糖分は全て脂肪酸に作り変えるのです。そしてその脂肪酸は血液で体中にある脂肪細胞に運ばれて・・・三段腹が完成するというわけです。

ここまではすんなり。で、補足したい点はここ!

ブドウ糖が切れると脳は栄養を失い、死滅していきます。
そうならないために、脂肪より先に筋肉を糖へまず分解、
内臓へも悪影響がでてくるそうです。
これは体の機能を犠牲にしてまで、脳が緊急事態だということ。

賢明な方なら「ん??」と思ったのではないでしょうか。「効率のいいエネルギー源である『脂肪』をこのお腹に蓄えてるのに、どうしてこれを分解して頭に運んであげないのよ!!」と。上二つの説明を素直に理解するとそう思って当然でしょう。
しかし、そこが人体のフシギ、そうはならないのです。糖→ピルビン酸→アセチルCoA→ATP、また、脂肪→アセチルCoA→ATPは可能なのに、「アセチルCoA→ピルビン酸」は不可能なため、「脂肪→糖」は不可能なのです。でも脳では糖しか受け取らない・・。どうしよ・・。という最終手段として人体は「筋肉」を自食してアミノ酸を取り出し、それを原料としてグルコースを作り出すのです。つまりこういうこと。

あまりにも分かりにくいですねwでも科学とはそういうものです(違
つまり脳以外で起こりうる「エネルギーの不足」なら「脂肪の燃焼」で対応できるのですが、「糖の不足」には「筋肉の分解」しか方法がないのです。なんだか理不尽ですね・・。

ここからは妄想だけど、人間以外の生物はそんなに脳で栄養を消費しないのかもしれない。普段摂取する糖で足りる分ぐらいしか脳を使用しない。人間は体長に比べて脳があまりに大きい。その分、使用するエネルギーも莫大なものとなる。脳の容量及び神経系の進化に代謝系が追いついていない、という解釈はできないだろうか。
―−ーーーーーーーーーーーーーーーここからネガコメ----------------------------
しかし、少しこの書き方には作為を感じますね。グリコーゲンはいくら「とりあえず分」といえども、一日分ぐらいは溜め込んでいます。つまり脳にとって、1日絶食するぐらいなら平気です。それを、「お腹が空いたら筋肉分解されるよ!」みたいな危機感を煽るような書き方で、すこしどうかな、と思います。確かに「嘘はついてない」けど・・。
後、やっぱりテレビはインパクトが必要だから、実験も分かりやすいのを出すんですよね。
それぞれ6人のグループの比較実験でどれだけの統計的有意差を主張できるのかと小一時間(ry
まぁ、信じるものは救われる。集中力とかは、特にそういうものなんじゃないかな。

                                                                                                                    • -

*1:ちなみに飢餓状態でグルコースが本当に無くなると、最終手段としてケトン体が栄養素として脳に送られます。そんな人は口からケトン臭(甘酸っぱい匂い)がします。ダイエットし過ぎてほのかに甘い匂いを漂わせている人は栄養が本格的に足りてません。要注意ですよ!

*2:その証拠として、血糖値を上げるホルモンはグルカゴンをはじめとして数多く存在することに対して、血糖値を下げるホルモンはインスリンの唯一種類しかない。

*3:単糖が二つ連なったもの。麦芽糖とかスクロースとか。

*4:ここではパルミチン酸

*5:どれぐらい効率がいいかというと、普通の人間でも、カロリー的には二ヶ月間の絶食に耐えうる、肥満の人なら一年間は大丈夫ぐらい。(もちろん水分や必須ミネラルなどは補給したとして。)

続報:サイエンス2.0

前エントリの続き。
日曜日に企画大会で発表してきた。
その時のスライドはこちら(いつものごとくずれてるけど。)

評判はそこそこ。非常に面白い試み、という意見を頂いた。
しかしやはり「理想論すぎる」という意見が多数。
イデアの流出問題が最大の懸念材料。
教授の意向を無視して個人では勝手にアイデアは書けない。
若手の連携を作りたいが、簡単にはいかない。現在ある各若手研究者の集まり(リアル、ML)との連携して進めていくか。

総括:「openwetwareがどの様な運営をしており、どのような書き込みがなされているのか、また問題点、改良点のpick upをして具体的に案をマッシュアップする。それが出来たら、社長に見せてみよう。若手だけでは解決できない障壁は、産官学の協力で乗り越えよう。」

日本版science2.0サイトを立ち上げよう!プロジェクト発足

science2.0という取り組みがある。
wikiSNSを使い、閉鎖的なアカデミック業界を打破しよう、というプロジェクトである。
詳しくはこの辺りを。
以下、メリット、デメリットなどを織り交ぜつつ企画書。
先行サイトであるopenwetwareはあるが、大半の日本人には敷居が高いんじゃないかと思い。(えぇ、英語苦手ですみませんね!)
賛同者はゆんゆんまで。

企画名:サイエンス2.0

立案者:ゆんゆん

コンセプト:ルネサンス時代の「サロン」をweb上で復興する。

ゴール:閉鎖しきった科学業界を打破し、openなコミュニケーションの取れる科学コミュニティを創造する。

背景:科学業界、とくに競争の激しい医薬、生物系分野は非常に閉鎖的である。この原因は、査読付き論文、特許しか業績とならない体質にある。誰よりも早く成果を出さなければならないという強迫観念が秘匿主義となり、周囲の研究者(違うラボの人)には進捗や失敗例が全く分からない状況となる。よって同じテーマを行っているラボは「協力者」ではなく「ライバル」という位置づけになり、重複した実験や失敗を繰り返す事となる。
これはコスト的に見ても、時間的に見ても非常に非効率的である。
科学は実験からではなく、実験について議論するところから生まれる。コミュニケーション不足で切磋琢磨されない業界は進歩が遅い。
また一般人もこの閉鎖的な科学界に嫌悪感、不信感を抱くこととなり、結果科学離れが促進されてしまっているという面もある。

解決策:ネットで自身の研究を公開し、広く議論できるコミュニティを形成する。誰もが編集可能なwiki pageを作成し、自分の進捗状況、失敗例、アイデアを逐一書き込んでいく。
メリット:
・ 研究室独自のプロトコル、失敗例が集約される事で、同様の実験を後から行う人がスムーズに行うことができる。
・ 自分が行った実験のlogを残せる。スパンの長い実験の場合、論文になるまでに長い年月がかかる。論文という形にはならなくても、自分のwiki pageを見せる事で成果を主張する事ができる。
・ 実験だけでなく、論理的思考、アイデアのlogも残せる。自分の頭の中を見せる事で、研究者として優秀な事をアピールできる。
  →履歴書としてのブログ作り。
・ アイデアの先取権の主張が容易。Openなwebに自分のアイデアを載せる事に抵抗があると思うが、むしろ逆である。Wikiを更新すると自動的に更新日時が記入される。またbackupも自動的に取られる。これらの情報は原理的に改ざん不可能である。アナログな実験ノートの場合、そこまで厳密な主張はできない。
・ 研究計画、アイデアの議論が洗練される。自分のアイデアに対して多くの人から批判、提案が寄せられる。異分野研究者からの新しい視点により優れた知見が得られるかもしれない。研究機器やスペースの問題で自分のラボでは行えないという問題点を書くと、共同研究をもちかけられるかもしれない。
パラダイムシフトが起きやすい。査読付き論文は数人の査読者によって行われる。査読者も人間である。自説(時流)に沿った論文は通しやすいし、異論は認めがたい。よって真理を突いている異端の論文が日の目を見るまでに時間がかかる。政治ゲームも繰り広げられている。Openな場の場合、アイデアは自由に出せるし、それを閲覧する人も多い。違う立場の人達がそれぞれコミュニティを作り、反証を繰り返す事で真理までの到達が容易になる。
・ 捏造が難しい。「目玉の数さえあれば、どんなバグも深刻ではない。」webにdataを置くということは、原理的に査読者(閲覧者)が無数であることを意味する。従来の、数人の査読者のチェック機構に比べると、どれだけ捏造が難しいか容易に創造する事ができるであろう。
    etc…etc…

デメリット:
・ 情報がまとまりきらずに、玉石混淆とならないか。→検索の向上。
・ 個人情報、所属の保護。エントリに書く事での危害をどこまで減らせるか。
・ 指導教官の同意を得られないまま、勝手にUPはできない・・。どこまでが秘匿でどこからopenが可能かを明確に。説得する。

運用資金:
(1) 広告:研究試薬会社、研究機器会社、出版会社などから広告バナー代をもらう。(できれば広告収入に依存したくはない。)
(2) 寄付:wikipediaも寄付で成り立っている。が、長期的な存続を目標にする場合、これも現実的ではない。
(3) ルネサンス時代を踏襲して「パトロン」を呼ぶ。(ロレンツォ・デ・メディチボッティチェリミケランジェロなどを支援した事で有名。)不景気が叫ばれているが、「お金はあるところにはある。」パトロンは自分の目にかなった研究者に自由にお金を配分する。研究者はパトロンにお金をもらえるように自分の成果をwiki上で発表する。現実にプレゼン大会を開催するのも面白いだろう。お金をもらった研究室は、その後進捗報告を随時行う。特許や製薬に結びついた場合のお金や権利の配分を事前に定めておく。
(4) 企業基金。行う事はパトロンと同じ。研究者は自由にお金を使う事が出来る。かわりに研究者は論文を投稿する際、acknowledgeに企業の名を入れること。単純な広告に比べて、費用対効果は抜群。
(5) 分割基金。一人ではパトロンほどお金は持っていない、かといって企業も持っていない、という場合、皆でお金を出し合って(一口数万円)、研究者に投資する。収入が出た場合、皆に配分する。

具体的な戦略:
全くの未定www

自重して何かいいことあったの?

以下酔っ払いの戯言。何書いてんだろ。

いつの頃からだろうか、物心ついたときには既にそうなっていた気がする。
常に人の顔色を伺って生きてきた。人の目を見て自分の主張を貫くことができない。
「こういうことを言えば叱られない。」「この人(特に親、先生)はこういうことを望んでいるんだな。」今考えれば自由意志なんてなかった。自分の欲望は全て殻に閉じ込めて、人が望むように生きてきた。

子どもにとって親の存在は限りなく大きい。逆らうことなんて想像だにできないほど絶対的な権力を持っている。それは悪いことではない。親は、未熟な子どもに代わって、複雑怪奇な現実社会の道を切り開いていく役割がある。
しかし、何事にも中庸というものがある。子どもが壁にぶつかる前に全ての壁を親が取っ払ってしまうと、子どもは成長しない。

壁にぶつかったことの無い子どもは失敗を極度に恐れる。失敗する可能性が少しでもあると、行動しない。行動する前に考えて考えて、ネガティブになってネガティブになって、結果、行動しない。「行動しなかったことによる損失」という概念が薄く、現状維持に満足する。

失敗したことを隠すために小さな嘘をつく。その小さな嘘を隠すためにちょっと大きな嘘をつく。その嘘を隠すために・・・。結局隠し切れずに大問題となる。

隠す必要がないと分かっているのに、取り繕ってしまう。自分はこうあるべきだ、という理想像に縛られ、本来の自分を厚い殻の中に閉じ込める。

小さい頃から殻に閉じこもっていたため、どれが自分のホントの姿かが既に自分にも分からない。
自重していることを自覚してはいるが、自重していない自分の姿が想像できない。

「いい人」は「『どうでも』いい人」。人畜無害。殻に閉じこもっている人からは攻撃される心配が無い。だから興味をもたれない。

「自分の」人生を楽しむためには、自分の足で歩かなければいけない。
殻に閉じこもっている限りは安全。怖いものなんてない。
でも、それは自分の人生じゃない。
自分の足で歩くには責任と重圧が常につきまとう。
失敗に正面から向き合わなければならない。
誰も助けてくれない。
険しい道である。

自重してても何も始まらない。

蒟蒻畑騒動が一段落したので一言。

いやー蒟蒻畑に関する一連の騒動。ひどかった。
やれ野田聖子が悪い、やれマンナンライフの努力が足りない、やれ自己責任だ。
しかし問題の本質はもっと根源的なところにある。

それは・・人体の構造
生存に必要なエネルギーを摂取するために必要な「消化器系」の入り口と、エネルギーを燃焼させるために必要な酸素を取り込む「呼吸器系」の入り口とが、「咽頭(いんとう)」という器官で合流している。

消化器系・・・口→咽頭→食道→胃
呼吸器系・・・口・鼻→咽頭→気管→肺

食物により咽頭が詰まった瞬間に呼吸器系もその役割を果たせなくなる。常識的に考えるとあまりにも生存に不利である。

普段は「喉頭(こうとうがい)(=のどぼとけ)」という器官が誤嚥(誤って食物が気管の方に入り込むこと)を防いでいる。食物や水が入ってきた瞬間に、喉頭蓋周辺に張り巡らされた嚥下(えんげ)中枢という中枢神経がノド周辺の筋肉を収縮させて喉頭蓋を後ろに倒すことで気管を塞ぐ。結果、食物は無事食道へ運ばれ消化される。
しかし嚥下中枢が未発達な子供や衰弱した老人はそうはいかない。食物が入ってきても喉頭蓋が後ろに倒れない。誤嚥、誤飲が多発し、誤嚥性肺炎、最悪の場合窒息死が起こる。


この、あまりにもお粗末と言わざるを得ない人体の構造。原因は意外なところにある。
それは・・二足歩行
図を見比べてもらうと一目瞭然であるが、四速歩行であるチンパンジー喉頭蓋が人間に比べて非常に高い位置にあるので、鼻腔から気道への通路の確保が簡単なのである。この構造の場合、誤嚥は非常に少なくすむ。

誤嚥の多いノドと引き換えに二足歩行を手に入れた人間。それは幸せな選択だったのであろうか。。

というわけで、蒟蒻畑問題の本質的な解決策とは・・

博士ネットワーク・ミーティング@京都 オフレポ

一昨日id:sivadさんの働きかけによる「博士ネットワーク・ミーティング@京都」が開催された。
詳細はここ
簡単に説明すると「とりあえず日本の科学政策やばいよやばいよ。現状どうなってんの?そしてこの先どうすんの??」という会合。


13:30にパネルディスカッションスタート。
ファシリテーター:sivad氏(赤の女王とお茶をの中の人)
パネラー:NPO法人サイエンスコミュニケーション代表理事 榎木英介氏
     株式会社フューチャーラボラトリ代表取締役 橋本昌隆氏
     特定非営利活動法人KGC理事長 柴田有三氏
といったそうそうたる面々。
以下、心に残った事をつらつらと。

文科省ポスドク問題 by橋本さん

橋本さんは科学政策の面から今のポスドク問題について解説。官僚は「少子化による学生の減少→国は研究費、教育費をカット→官僚の天下り先の減少。」という流れを防ぐため、ポスドク100万人計画を立案。つまり建前は「日本を科学技術立国にするために、学力を持ったPhDを作ろう!そのためには莫大な予算が!」本音は「やばい、このままでは教育費がカットされて、俺の天下り先がなくなってしまう!」ということらしい。
この辺の事をふまえて、彼は今のポスドク問題の戦犯は「文科省の役人→現場の力の無い教授→何も考えてない学生自身」の順に重いと説く。そして今後の活動としては、文科省の改革が第一、その次にマネジメントできない教授を首にすべき。というかバイオサイエンス系の研究室は7割ぐらい廃止してもいいんじゃないかなw、そして、上記の様な情報(ポスドクやばい、研究だけが人生だけじゃないetc..)に大学の若い頃からアクセスできるようなシステム作り、を目指している。

大学教授の在り方 by橋本さん

「今の大学教授にはマネジメント能力が不足している。」という彼の言動を聞き、勢い勇んで質問してみた。

「今現在の現場の大学教授は「学問のプロ」としてそのポストを獲得している。若い頃から研究一筋、論文の質と量でアカデミックという厳しい世界を渡り歩いてきた猛者達である。そのため、あくまで「学問のプロ」であり「教育のプロ」「お金集めのプロ」ではない。なのに、毎日の時間のほとんどを科研費などの申請と学生への教育に取られている。「学問のプロ」であるべき研究室の長が、ポストがあがるごとに研究出来なくなる現状というのはどこかいびつであるのじゃないか。研究一筋の彼らに、その3つの条件が揃わないだけで怠慢というのは酷すぎるのではないか。というわけで、大学教授のシステムを「学問のプロ」「教育のプロ」「政治のプロ」と細分化して、それぞれの専門の人が担当したほうが大学はうまいこと回るんじゃないだろうか。」

橋本さんは概ね賛成してくれたし、大学法人化によってシステム的にも可能であるようなこともおっしゃっていた。が、ここで時間オーバー。残念。もう少し、深い話を伺いたかった。
その後の自由時間に、ある助教の方から「細分化した場合、お金集める人がやっぱり力持つのよねー。一昔前の大学は事務がすごい力持ってて、教授が事務に頭下げてお金もらってたのよ。」という話を伺った。理想を語るのは簡単だが、実現にこじつけるには様々な障壁を超える必要がある。

世界中の不思議を解明する by柴田さん

柴田さんは独特な世界観を持っている。コンセプトは「世界中の不思議を解明する。」歴史上でそれを実際体現しようとしていたのは「釈迦」。現在はネットというツールを使えるため、物理的な距離の制約はなくなった。釈迦よりも実現に近いところにいる、らしい(本人談)

場の提供 by柴田さん

もう一つのコンセプトは「場の提供。」目標はルネサンス期におけるパトロンロレンツォ・デ・メディチパトロンといっても、財力が必要なわけではない。志高い人、常識にとらわれない人を巡り合わせ、場を提供する。志はあるがくすぶっている人に適切な場を提供し、波長の合う人を紹介する。自分が学問のプロになる必要は無い。ただし人を見る目が重要。平凡な材料から魔法の秘薬を合成する錬金術師のような役割といったところか。

資金繰りの極意 by柴田さん

お金の集め方も独特。お金がないところからわざわざ集めようとする必要はないし、正当法だとライバルも多い。お金が余っているところにいって壮大なビジョンを語ってケムにまけばいい。むしろ自分が語る必要すらない。ビジョンを持っている人を捕まえてビジョンを語らせればいい。日本にはうん兆円というタンス預金があるし、世界に目を向ければ不景気知らずの中東の国がごろごろ存在している。なによりもまず行動。「狭い研究室に閉じこもって頭悩ますぐらいなら有閑マダムを口説くべし。」

ネットワークとコミュニティ by柴田さん

ネットワークは名刺交換とかで形成する事が出来るただのつながり。コミュニティはもっと深いもの。ゴールを共有して、共にそこへ向かう同志のようなもの。だから会合はオープンにやるものではない、気の置けない人達とクローズドに行うべき。
その後、二人で少々話した。「今日の話題がお金の方に進んでたからああいうドバイの話とかしたけれどもホントはそうじゃない。お金の話よりもまずはその人との関係作りが先。ビジョンを共有してから初めてお金の話になる。その人の持つ哲学に惚れるかどうか、そこがないと関係は先に進まない。」機会があれば近々KCG覗いてみよう。2時間と短かったのが何よりも残念。彼らの話をもっと聞き、ディスカッションしたかった。

常識、なにそれ、食べれるの? by柴田さん

常識の枠にとらわれないことが大きなプロジェクトを行う最大の秘訣。今も気功の科学的解明に向けた研究会を開催しているらしい。何事も違う視点から見る事が大切。本人もおっしゃっていたが、彼は根っからの懐疑主義者。人の言う事なんて信用しないし、自分の言ってる事も半分ぐらいは信用していないw そういう観点で社会を見ると違った物事が見えてくるに違いない。考え方がPCR開発者のキャリーマリスに近いと感じた。既存の枠にはまっていない。むしろ自分に合ったフレームワークを創造する側の人間。新興宗教開けば成功しそうだな。

榎木さん

榎木さんは上記の二人の話に呑まれて、あまりお話しする時間がなかった。残念。
サイエンスコミュニケーションをメインの活動にNPOを運営されており、ノウハウや苦労話、彼自身の視点をぜひとも聞いてみたかった。

小さな大学という活動 by前さん

小さな大学の代表の前さんともお話。大学の方針として、専門が物理、対象が大学生、という違いはあるが、リバネスの方針とかぶるところは結構あった。リバネスはバイオサイエンス系のノウハウは溜まってきているが、物理系の科学教室はほとんどない。提携できるところは提携していきたいと感じた。

今後にむけての抱負

その他、幻影随想の中の人や、各大学の助教、准教授などそうそうたる面々ではあったが、この会だけで終わるとただの自己満足になってしまう。今後も持続的に連絡を取り、建設的な議論を重ねていく必要がある。メーリスやSNSをツールとして密に情報の交換を行っていくつもり。