ローソン

2013/01/15

どうして、聴覚障害者は医者になれないのですか?

DEAF DOCTOR YES OR NO?

日本では、聴覚障者が医者になれ確率はとても低いですが、アメリカでは、100%で医者になれます。
実は、日本には『障害者欠格条項相対的欠格条項』という法律が存在していまアメリカにはそのような法律は無く、『障害者差別禁止法』という法律があります。そして、アメリカには聴覚障を持つ医者は数多く、います。 
私は医者になりたい。日本の法律でなれないと決まっているって、本当ですか!?」
十数年前にネットで偶然見つけた、ある聴覚障の男子校生の言葉です。当時の厚生省が管理する医師法で、こう書かれてありました。 
医師免許、医師法、第3条:目が見えない者、耳が聞こえない者又は口がきけない者には、医師の免許を与えない。(資格取得時の制限)
医師国家試験・予備試験、医師法、第13条:目が見えない者、耳が聞こえない者及び口がきけない者は、医師国家試験及び医師国家試験予備試験を受けることができない。(資格取得時の制限)
視覚・聴覚障者に治療されることに不安を覚えてしまう健常者たちも多いと思います。医療の世界は普通の職業とは違い、人間の命に関わる、特殊な世界だからです。医療現場でのリスク、コミュニケーション困難な医者を主治医に持つことに対する健常の患者さんやその家族の不安やストレス、患者さんからのクレー ムも出されてしまうリスクなどもあります

果たして、聴覚障者が医者になることは本当に不可能でしょうか?

「耳の聞こえないお医者さん、今日も大忙し」の表紙

アメリカに住んでいる聴覚障を持つ医者、フィリップ・ザゾウ氏の自伝本です。フィ リップ・ザゾウ氏の父親が医者で、自分も医者になりたいという夢を持つようになったことは彼にとって、自然なことでした。しかし、彼が目指した医者への道 は想像以上に険しく厳しいものでした。数知れないほどの苦労を経験し、それでも諦めず、家族や周りのサポートのおかげで、ようやく医者になれたのです。小さな町で家庭医として開業し、その後、大学の臨床学教授として、患者の診察と学生の指導に関わっています。

聴覚障害を持つ医者、フィリップ・ザゾウ氏

 アメリカには『障害者欠格条項』は無く、聴覚障者に医者の免許を与えないとは一言も書かれていません。つまり、医者になるかならないかは本人の意思で自由に決められます。

本が作った『障害者欠格条項(絶対的欠格条項』により、夢に希望を持っていた多くの障者たちはこの理不尽な法律の壁にぶつけ、夢を諦めてきてしまったのです。そんな中、聴覚障の男子校生の言葉をきっかけに、障害者欠格条項をなくす会という運動が誕生しました。アメリカから来日した聴覚障つ医者たちも積極的に厚生省に足を運び続け、2001年に絶対的欠格条項は改正され、視覚障者や聴覚障医者の免許を与えないという項目が無くなり、条件次第で国に認められれば医者になれるという形に変更されました。しかし、医者の免許を取得できも、なかなか受け入れが難しい病院や施設、また、働きやすい環境が完璧に整っていない現実です 

あるブログ10年目の内科医からのメッセージ内容を見つけましたので、一部をそのまま引用させていただきます。
医師を志す当事者はよくても、患者様はどんな気持ちか、考えていただきたい。
特に今回の臨床研修医制度になってから、ストレートではなく、ローテートになり、
否応なしにターミナルの患者様を担当することもあるわけです。
患者様やご家族は自分たちのことで精一杯なのに、
先生に気を使わねばならないなんてというもいらっしゃるわけです。

自分たちの職業選択の権利を主張するのは当然のことかもしれませんが、
医療の世界は普通の職業とは異なります。
きれいごとではすみません。
あなた方が、がんばる、励まされた、で喜ばれるのも大事なことかもしれません。

でももっと大事なことがこの世界にはあります。
それは、患者様との信頼関係であり、
安心し信頼し納得される医療を提供することです。
そのことを考えていただくことを私は望みたいです。
コミュニケーションが困難なDr.を主治医に持つ患者様、
ご家族の気持ちを考えてください。
その上で病院実習や臨床研修に望んでください。

そして、できることとできないことを身をもって、
目をそらさず見極めてください。
年数がたてば、一人で診察、当直、後輩の指導をせねばなりません。
身体障害者であっても医師になる権利があり、
国試にも合格しているから、研修医として頑張ってもらいたいという気持ちと、
患者様に他の研修医が担当するよりストレスをかけているのではないか?
という気持ちが私たち指導医の中でも葛藤していることがある
ということを理解していただけたらと思います。
耳 の聞こえない私たちも健常の医者に対する不安が常にあります。特にコミュニケーションがそうです。手話や筆談が必要です。手話通訳という方法もあります が、やっぱり自分の身体のことは他人に知られたくない、できるだけ通訳者を介さずに話がしたい、自分の言っている事が医者にどう伝わっているのか分からな いという不安を持っている方々もいます。だからこそ、聴覚障害のお医者さんが必要だと私は思うのです。最近は、そんな不安を理解してくれ、手話を覚えてくれる医者さんも少しずつですが、増え始めています。手話で話せる安心感はとても大切なことで、安心感が無いと、コミュニケーションは成り立たないと思います。

そして、滋賀県にある琵琶湖病院には聴覚障害者のための『聴覚障がい者外来』があります。聴覚障がい者外来医者になってから失聴したという藤田先生によって用意されたものです。手話・筆談・絵を使ったものなど、すべてに対応してくれます。このように対応していただける病院が少しでも増いただけたら、多くの聴覚障害者は安心 できると思うのです

去年のある日のこと、知人の娘さんに会ってきました。彼女は難聴の小学生で、手話なしで普通に会話ができるタイプの子です。純粋な目を輝やせ、当たり前のように医者になることを夢見ています。私は彼女に「本気で心から医者になりたいと思っているのなら、今から英語を覚えて。そして、アメリカの大学で学び、医者になるのよ。」としっかり伝えておきました。最近、英語を覚えるために勉強を始めたと聞いています。きっと、彼女の歩む道 は辛いことも苦しいこともたくさん経験されていくのでしょう。それらを糧にして、試練を乗り越えて、耳の聞こえない人達の気持ちがわかる、立派なお医者さ んに成長してくれることを心からそう願っています。

絶対的欠格条項が改正され、相対的欠格条項として、まだ現存している中聴覚障害を持つ医師歯科医師、看護師、薬剤師臨床検査技師どが次々と誕生しています。また、障害学生支援も活発で、医者になる日を夢見て、勉強を続けている聴覚障の学生たちや指導の先生たちが一緒に患者さんと信頼関係を築く方法や医療現場で出来る方法を試行錯誤しながら常に考え続けています。

現在も見直しを進められているこの法律を、あなたはどう思いますか