話数単位で選ぶ、2023年TVアニメ10選
今年の10選は以下のとおりです。
●『お兄ちゃんはおしまい!』第2話「まひろと女の子の日」
●『カノジョも彼女』第19話「カノジョたちとの夜」
●『機動戦士ガンダム 水星の魔女』第24話「目一杯の祝福を君に May All Blessings Find Their Way To You, I'm Wishing It」
●『吸血鬼すぐ死ぬ2』第8話「オオ・ゼンラ/半田ンダダンダンダンダダーン/新横浜に月はまた昇るか?」
●『トモちゃんは女の子!』第9話「天使の素顔」
●『BanG Dream! It's MyGO!!!!!』第10話「ずっと迷子」
●『僕の心のヤバイやつ』第7話「僕らは入れ替わってる」
●『もういっぽん!』第10話「勝つ以外ある?」
●『REVENGER』第5話「Love Never Dies」
●『私の百合はお仕事です!』第6話「嘘は必要ないのですか?」
ルール
・2023年1月1日〜12月31日に放送されたTVアニメ(再放送を除く)から選定。
・1作品から選べるのは1話のみ。
・順位はつけない。
<各話のコメント>
『お兄ちゃんはおしまい!』
第2話 「まひろと女の子の日」
脚本/横手美智子 絵コンテ/伊礼えり 演出/伊礼えり 作画監督/山﨑匠馬
妹のみはりが開発した薬で突然女の子にされてしまった引きこもりお兄ちゃんのまひろ。必然的に女の子ならではの日常やイベントを体験していくわけですが、この2話では銭湯の女湯に入ったり、女の子の洗髪の仕方を教わったり、さらにはサブタイどおり生理を体験してしまうというかなりの踏み込みようで、何やら後ろめたさを感じつつも刺激的でした。
映像的にも目を引くところが多くて、みはりが暖簾をくぐるシーンやまひろが男湯に入るか女湯に入るか混乱してるシーンなんかはカメラワークがなかなか凝っていてお気に入り。そして何よりも兄妹で女の子イベントをこなすごとに二人の間で少しずつ失われていた何かが戻ってきているように感じられるのがいいんですよね。
3話以降もお兄ちゃん改造計画の真意がより明らかになってきて兄妹の関係が徐々に変わっていく様子が丁寧に描かれていきます。それと中学生女子にエロ本を片付けさせるみたいな刺さる人には刺さるシチュエーションなんかも最高でとても楽しめた作品でした!
『カノジョも彼女』
第19話「カノジョたちとの夜」
脚本/大知慶一郎 絵コンテ/鈴木孝聡 演出/奥村よしあき 作画監督/パク・ソンファ、ペク・ヨンジュ、キム・ジョンウ、チョ・ウンギョン 総作画監督/萩原しょう子、渡辺まゆみ、百々真広、重松遥、朝山公晴
二股容認のネオラブコメ2期。ミリカと紫乃の直也へのアプローチに焦点が当てられて見やすかったです。異なるタイプの両者が交錯して織りなすドラマは見応えがあって、特に紫乃の忍ぶ恋がとても切ない。(ラッキースケベをこなしつつもww)どんどん深みにはまっていき、一線を超えてしまう彼女の姿はまるで文芸作品のヒロインみたい。
でもこの作品の持ち味はやっぱりアホ全開の勢いにあるんだよなあ。そういう点でこの19話はすごく気に入ってます。沖縄旅行の夜、紫乃、ミリカ、渚、サキサキの順に一人ずつ交代で直也と一緒に寝ることになるんだけど、四人ともそれぞれカノジョらしさ全開のコントを繰り広げててめっちゃ楽しい。
特にトリを務めたサキサキはさすが正ヒロインの貫禄。令和の時代に公園に落ちてたエロ本だよ!貧乳パラダイス365だよ!私だと思っていっぱい使ってだよ!そしてブラウスのボタンをひとつ外してしおらしく写真を撮られたサキサキに対して、雑なコラ画像でサイテーなオチをつけた直也にあやねるパンチ、爆笑でした!!
『機動戦士ガンダム 水星の魔女』
第24話「目一杯の祝福を君に May All Blessings Find Their Way To You, I'm Wishing It」
脚本/大河内一楼 絵コンテ/京田知己、伊藤慎之助、小林寛 演出/安藤良、綿田慎也、伊藤慎之助、池野昭二、齋藤昭裕、中西基樹 キャラクター作画監督/戸井田珠里、平山円、堀井久美、吉田雄一、小谷杏子、髙久美弥、西島加奈、長尾浩生、佐々木貴宏、大野勉、中村佑美子、中本尚 メカニック作画監督/鈴木勘太、久壽米木信弥、前田清明、倉本和希、平岡雅樹、松田寛
初めてのガンダムが『水星の魔女』な私にとって、1期はしんどい終わり方だったし、2期が始まってすぐにソフィは退場するし、これから本当のガンダムが始まるとかツイートしている人も結構いて、毎週ドキドキしながら観ていました。そして23話が終わった後に出た次回予告のタイトルが「最終回」??いったいどんな結末を迎えるんだろう…
翌週、24話が始まる。いきなりスレッタが気絶、ミオリネが拘束されたけど、何だかハッピーエンドになる予感がしてくる。それは4号登場で確信に変わる。そこから先は見たいものを只々見せてくれる。細かいことはよくわからないけど、何が起きているのかはわかる。結構な号泣のまま後日談に突入。最終話のエンディング曲は「祝福」。
そしてサブタイが明らかに。「目一杯の祝福を君に」。出されてみるとこれしかないっていうのを出してくるのって凄いことだよね。エンドカードまでが最高。いやーこういう作品をリアルタイムで体験できたのは貴重で嬉しい。あと関係ないけど、わかる人だけお楽しみくださいってテロップが出る鬼奴のモノマネ芸を爆笑できるようになったのも嬉しい!
『吸血鬼すぐ死ぬ2』
第8話「オオ・ゼンラ/半田ンダダンダンダンダダーン/新横浜に月はまた昇るか?」
脚本/鷹目利 絵コンテ/坂田純一 演出/佐々木純人 作画監督/宮前真一、柳昇希、金慶鎬、宮島彩 総作画監督/中野繭子
「半田ンダダンダンダンダダーン」面白かったです。Y談おじさん、すごいよね。一枚上手を漂わす感じとか、今回は私の負けだと引き際を弁えているような老獪さ。愉快犯としては一番厄介なヤツじゃないかしら。半田親子が催眠の魔の手に落ちるのか、実は途中までハラハラしながら見てました。ギャグアニメなのに〜!!
『トモちゃんは女の子!』
第9話「天使の素顔」
脚本/清水恵 絵コンテ/平田豊 演出/五十川久史 作画監督/杉田葉子、岡田由紀子、大庭小枝、諸葛子敬、前原薫、神谷美也子、福島陽子、髙橋沙也香 総作画監督/神谷美也子
みすずのトモに対する気持ち、キャロルの御崎先輩に対する気持ち、それをお互いに感じ取りながら、何となくお互いを居場所にして仲良くしている二人。不安定で思い通りにならない状況が続くモヤモヤ感と苛立ちは、小さな誤解がきっかけで抑えきれなくなって噴き出してしまう。ここまでにちょいちょいと小出しにしてた前振りを最大限に生かしたこの8話でした。
もうどこを叩けば痛がるのかお互いにわかっているだけに、キャロルが恐ろしい娘でハラハラさせられたし、急所を撃ち抜くみすず砲の破壊力も凄まじかったです。素顔を隠す強固な扉を爆破して御崎先輩を突入させる作戦は何とか成功。扉に鍵を掛けさせちゃったのはママさんだったのね。振り幅の大きいジェットコースター展開。切れ味のいいお話で面白かったです!
『BanG Dream! It's MyGO!!!!!』
第10話「ずっと迷子」
シナリオ/後藤みどり 絵コンテ/梅津朋美 演出/梅津朋美 CGディレクター/大森大地、遠藤求 作画監督/茶之原拓也、依田祐輔
そよりんの「なんで『春日影』やったの!?」は私が選ぶ今年の流行語大賞だったし、祥子が見ている前でMyGO!!!!!が『春日影』を演奏したシチュエーションもめちゃくちゃエモかったので、7話にしようかと思ったりもしたけど、やっぱりこの10話を選びました。
燈がソロでステージに立ち、楽奈ちゃんが吸い寄せられてタッキーも引っぱってくる。そして最後には愛音、そよりんもステージに上がって一緒に演奏する流れは激アツだったもんね。あと、愛音とバチバチにやり合って「私が終わらせてあげる」と息巻いていたのに、虚弱な燈に引き摺られ、愛音にすんなり引っ張り上げられちゃう、そよりん可愛い。
最悪とも言える形で崩壊したのに、嫌いなところがあるしイライラさせられることばっかりのメンバーなのに、不思議な求心力が働いてバンドが居場所になっていく。ギスギス展開が続いて見てられない気分にさせられたこともあったけど、そういうこれまでのバンドアニメにないところがすごく新鮮でエポックメーキングな作品の一つだったと思います。
『僕の心のヤバイやつ』
第7話「僕らは入れ替わってる」
脚本/花田十輝 絵コンテ/吉川博明 演出/久保太郎 作画監督/大藤佐恵子、大沢美奈、野口孝行、藤部生馬、茂木琢次、真島ジロウ、前田園香、岡田絵里香、降籏秀吉、白絲みく、studio cat、スタジオマスケット
山田がなんだかんだと市川に触れたがるのが笑えます。手を引っぱってもらってそのまま体当たりは可愛いけど、ジャージ間違いには早くから気づいてたんじゃないかなあ。身長の計りっこでは測定バーが固いとか言って市川の肩に手を置き、頭なでなでのやりたい放題。たまらず前屈みになった市川が「ちゃんと立てば、もっとあるから…」www
「山田しか見えない」「もう言えない」とかめっちゃエモかったですが、この7話以降、山田の行動の意図がわかりやすくなって、エモさの性質が変わっていった気がします。よくわからない山田の変曲点。そういえば、狭い部屋の中で「マジキモい」の練習もしないで太ももの間に市川を立たせてたの、一体何だったんだろう?!
『もういっぽん!』
第10話「勝つ以外ある?」
脚本/皐月彩 絵コンテ/工藤鉱軌 演出/内藤大介 作画監督/齊藤里枝、那花優統、武川愛里、大前祐美子、満田一、柴田健児、藤崎賢二、菅原正視、李少雷、高成喆、李炯鎬、グレーン 総作画監督/小宮山楓乃
泣いたわ、激アツやん。早苗の激闘が姫野パイセンに燃料投下。「勝つ以外ある?」「気ィ早ェーよ」からのこれまでの全てを注ぎこんだ渾身のいっぽん!後輩たちへの感謝、先生がみんなの合わせ技だって締めるのもグッとくる。全ての描写からパイセンの人物像が滲んでくるのが最高に良かったなあ!
『REVENGER』
第5話「Love Never Dies」
脚本/大樹連司、虚淵玄 絵コンテ/松尾晋平 演出/横野光代 作画監督/西岡夕樹、遠藤江美子、玉利和枝、sataりすく、ジャカルタカルカッタ軽田
利便事屋「恨噛み小判」システムって、依頼と実行をひとりでプロデュースすることが容易にできちゃうんだよね。そんな裏の手口を躊躇なく使って、鳰は堂庵をシステムに乗せてしまう。幽烟たちにそれを止める由もなく、鳰が堂庵を殺してお仕事完了だけど、最後に何とも言えない虚無感が広がって、そういう意味ですごいお話でした。
幽烟のために堂庵を殺し、惣二のために仕事を作った。でもその結果、一座の連中は仕事を失い、惣二は報酬で高価なカステラを買って文無しのまま。この誰も得してない状況って、今の世相でも結構起きてるわけで、ラストの「それでも私は、鳰に人として生きてほしいと思っています。」という幽烟の台詞、いろいろ考えちゃいますね。
『私の百合はお仕事です!』
第6話「嘘は必要ないのですか?」
脚本/ハヤシナオキ 絵コンテ/佐野隆史 演出/池田重隆 作画監督/郁山想清、水拓磨、酒井KEI、Zearth Sato、磯野智、櫻井祐哉、小堤悠香、苗木陽子 総作画監督/岩崎たいすけ、水上ろんど、徳田拓也、原田峰文
4話から続く美月と陽芽ちゃんのギスギス展開。そこに巧妙に再現されたあの頃のシチュエーションが出現、どうする陽芽ちゃん!…っていうところでこの6話ですわ。リーベ女学園という舞台であろうことか始まった私情丸出しの本音ぶちまけ対決。同じことを繰り返そうとする陽芽ちゃんに悲鳴をあげていたら、美月からまさかの大胆告白が炸裂!!
蟠りがとけて、二人が抱き合って大泣きしてるの見たら、当然もらい泣き。ギスギス展開が執拗に続いたもんね。カフェの営業が終わって、二人が並んで座ってるシーンが素敵です。ニッコニコの陽芽ちゃんとチョー面倒くさい美月に爆笑。あと陽芽ちゃんが発した文字にしづらい驚きの気持ちを表す語〜www、いやー最高でした!
今年も本当にいいお話が多かったと思います。
それでは皆様よいお年をお迎えください。
話数単位で選ぶ、2022年TVアニメ10選
今年の10選は以下のとおりです。
『アキバ冥途戦争』第8話「鮮血に染まる白球 栄光は君に輝キュン」
『機動戦士ガンダム 水星の魔女』第7話「シャル・ウィ・ガンダム?」
『邪神ちゃんドロップキックX』第2話「錠剤はすべてラムネです」
『SPY×FAMILY』第2話「妻役を確保せよ」
『ダンス・ダンス・ダンスール』第5話「死ね、ねーだろっ」
『チェンソーマン』第8話「銃声」
『ヒーラー・ガール』第5話「空は青く山は緑、川の戦い銀河ステーション」
『ぼっち・ざ・ろっく!』第9話「江ノ島エスカー」
『リコリス・リコイル』第3話「More haste, less speed」
『連盟空軍航空魔法音楽隊ルミナスウィッチーズ』第6話「夢色コントレイル」
ルール
・2022年1月1日〜12月31日に放送されたTVアニメ(再放送を除く)から選定。
・1作品から選べるのは1話のみ。
・順位はつけない。
<各話のコメント>
『アキバ冥途戦争』
第8話 「鮮血に染まる白球 栄光は君に輝キュン」
脚本/日高勝郎 絵コンテ/坂田純一 演出/佐々木勅嘉 作画監督/矢野康平、鍋田香代子、野田友美、Lee Min Bae、Shin Min hyeon
映画、アニメ、漫画、プロ野球、高校野球、草野球のパロディやあるあるを一挙手一投足すべてに盛り込んだ、アニメスタッフ乗り乗りの野球回。鮮やかなダブルプレーやピッチャーがプレート前の地面を足で平す何気ない所作とか、野球の魅せ方にも並々ならぬ意気込みが感じられて素晴らしいです。
でも、試合の方は最初からど突き合いの応酬なんだよね。それがフェアプレーに徹するなごみに感化されていったんだけど、刃物で刺されて息絶えた宇垣とみやびを目の前にして「死んでないっ」って試合を続行したり、その宇垣をベンチに座らせてるのスッゲー狂気だし、不謹慎ながら爆笑でした。
そしてこの「死んでないっ」って台詞、ナイスゲームを乱入者の暴力で台無しにされたくないという思いが、野球の試合に「メイドの未来」を託したなごみの思いへと繋がって、なごみに向けられた言葉になってるのがすごくいい。渾身の野球描写とシュールな面白さが同居した稀有な野球回だったと思います。
『機動戦士ガンダム 水星の魔女』
第7話「シャル・ウィ・ガンダム?」
脚本/米山昴 絵コンテ/大倉雅彦 演出/吉沢俊一 作画監督/菱沼義仁、戸部敦夫、中島里恵、尾崎正幸、丸山修二、斉藤和也、宍戸久美子、秋津達哉 メカニック作画監督/片山学
これまで「ガンダムシリーズ」には興味をひかれなかったんだけど、今回の『水星の魔女』は、キービジュアルがカッコよかったので見てみたら、メッチャ面白い。なんだか学園を舞台にした青春群像劇の趣だし、百合ゆりしてるミオリネとスレッタのふたりを見ているだけで、最高に楽しい。
このお話では、今まで斜に構えていたミオリネが真正面から大人と向き合い、スレッタとエアリアルを守ろうと頑張るんだけど、素直に感動しました。彼女の決断が、誰かの思惑にハマるものだったとしても、手にしたモノの先に厳しい苦難が待ち受けていたとしても、こうした若者たちが風向きを変えていくんだよなあ。彼女らしい大人の作法がとても印象的でした。
そしてサブタイトルも洒落てますよね。まさかビジネスのお話になるなんて想像もしてなかったから、見終わってなるほどって思いました。
『邪神ちゃんドロップキックX』
第2話「錠剤はすべてラムネです」
脚本/村上桃子 絵コンテ/永居慎平 演出/大久保亮 作画監督/KIm suho、杉山直輝
情緒不安定すぎるぴの。おくすり風ラムネのむちゃ食いとか、ゲーム風の回復ツールを太ももに打ち込むとか、鳥兜?でリエール様を毒殺未遂とか、可愛いけれど相当ヤバい。そんな密室芸人ネタの隠喩で笑わせるセンスが冴えてたし、死を恐れているのに死んでやるとか言う面倒くさい娘認定で納めるオチもよかったです。
『SPY×FAMILY』
第2話「妻役を確保せよ」
脚本/山崎莉乃 画コンテ/古橋一浩 演出/原田孝宏 作画監督/嶋田和晃、三浦龍 総作画監督/嶋田和晃
スパイ、殺し屋、超能力者が疑似家族を作るというアイデア、素晴らしい映像、力の入った劇伴、視聴者にストレスを与えないお話の進め方、心情も状況を全部喋っちゃうんだけど、うるさく感じないナレーション、もうそのまんまオーディオドラマにしてもいけちゃうんじゃないかしら(笑)。
疑似家族がホンモノの家族になり、最後に切ない別れの物語になるのかと想像していたら、どうやら当面そういうのはなさそう。でもどのエピソードも文句なく面白かったと思います。その中でも、この2話はお気に入り。ヨルさんとはやみんの魅力全開、婚約指輪?をはめるラストシーンは最高に良かった。
『ダンス・ダンス・ダンスール』
第5話「死ね、ねーだろっ」
脚本/森江美咲 絵コンテ/大谷肇 演出/大谷肇 作画監督/杉野信子、迫江沙羅、川元まりこ、後藤有宏、日向正樹、鈴木春香 バレエ作画監督/桑原剛、小笠原篤 総作画監督/長谷川ひとみ、石川佳代子、黒岩裕美、小美野雅彦
後半のクライマックス、潤平が引き金を引いて始まったアドリブ劇。舞台音楽と圧倒的な映像に煽られて、憎悪の塊ロットバルトに魅入ってしまいました。幕が下りると少し静まり返った後、観客が一斉に歓声を上げてアンコールを求めるんですが、視聴者の私も同じ気持ちになったのは初めてかも。すごかったなあ。
『チェンソーマン』
第8話「銃声」
脚本/瀬古浩司 絵コンテ/御所園翔太 演出/御所園翔太、佐藤威 作画監督/新沼拓也、野田友美、伊藤公崇、中山智代 総作画監督/山崎爽太、杉山和隆、駿
生活感のないミニマリスト、シンプルな家具や小物、朝食にサンドイッチと水、料理とかしなさそう、でも冷蔵庫の中に作り置きのタッパーあったような。観葉植物がたくさん、テーブルにお花を飾ってる、可愛らしい。デリカシーのないデンジに友達でいこうとか…ね。いなくなって、悲しいね…。
お話が大きく動きだしたし、アキくんとサムライソードとのバトルも見応えあったし、幽霊の悪魔のビジュアルも美しかったし…なんだけど、最後は姫野先輩の四肢がひとつ、またひとつと消滅していく姿を呆然と見ていた記憶があります。姫野先輩がここで退場するなんて思ってもいなかったので衝撃でした。
『ヒーラー・ガール』
第5話「空は青く山は緑、川の戦い銀河ステーション」
監督・絵コンテ/入江泰浩 シリーズ構成・脚本/原田暢 演出/入江泰浩 作画監督/宮原拓也 メカ作画監督/石口十、松田未来
ノスタルジア疑似体験。映像演出の良さに加えて、いつもは音声治療として用いられる歌が、この5話ではミュージカル風の挿入歌として歌われたのも自然な感じでよかったなあ。お話はサブタイどおり牧歌的、弟くんの淡い恋心の味付けもされてて面白い。しかし深夜アニメって、ホント「銀河鉄道の夜」好きだよね^^
シリーズ構成・脚本/吉田恵里香 絵コンテ /平峯義大 演出/平峯義大 作画監督/伊藤弘樹
8話がすごく良かったんだけど、この9話の雰囲気も好きだったのでこっちを選びました。リョウはともかく、虹夏ちゃんがやっぱりインドア人で展望台の景色もそこそこに帰りたがるところなんかちょっと面白いし、藤沢までの小田急車内でぼっちと喜多ちゃんの心が通い合う感じがとてもいいんだなあ。
『リコリス・リコイル』
第3話「More haste, less speed」
脚本/枦山大 絵コンテ/足立慎吾、丸山裕介 演出/丸山裕介 作画監督/水谷雄一郎、滝口弘喜、小沢久美子、山村俊了、しまだひであき、TOMATO アクション作画監督/岩澤亨、柴田海 総作画監督/鈴木豪、晶貴孝二
この作品、1話2話でのガンアクションや錦木千束(cv安済知佳)のキャラに引き込まれ、3話で登場人物たちの感情や奥行きが見えたことで期待値MAXって感じになりました。もちろん、その後も面白かったんですが、最終話まで見て振り返ると新鮮味的にもこの3話がピークだったと思えます。
登場するキャラが生き生きとしていてホントに素晴らしいんだなあ。噴水での千束とたきな、模擬戦前の罵り合い、司令の千束評、帰りの電車のシーン…。特に千束の「スカッとしたなあ」に「えぇ」と返したたきな(cv若山詩音)が印象的。絶妙なニュアンスが滲み出る決めの一言だったと思います。
『連盟空軍航空魔法音楽隊ルミナスウィッチーズ』
第6話「夢色コントレイル」
脚本・絵コンテ/春藤佳奈 演出/松村幸治 作画監督/清水勝祐、和田賢人、関口渚、浅井昭人、鮫島寿志、綾部美穂
前半パートでは、誰にも打ち明けられない葛藤に苦しむマリア、怒ってばかりのマリアにモヤモヤを募らせるマナ。後半パートでは、対照的な二人が一緒に描く美しいコントレイルと情緒極まるやり取り。最初から最後までエモーショナルなカット満載、機微をうがつキャラの表情にもゾクゾクさせられました。
今年も本当にいいお話が多かったと思います。
それでは皆様よいお年をお迎えください。
話数単位で選ぶ、2021年TVアニメ10選
今年の10選は以下のとおりです。
『ウマ娘 プリティーダービー Season 2』第8話「ささやかな祈り」
『かげきしょうじょ!!』第5話「選ばれし乙女」
『小林さんちのメイドラゴンS』第6話「合縁奇縁(片方はドラゴンです)」
『白い砂のアクアトープ』第16話「傷だらけの君にエールを」
『SSSS.DYNAZENON』第10話「思い出した記憶って、なに?」
『のんのんびより のんすとっぷ』第5話「ものすごいものを作った」
『プラオレ!〜PRIDE OF ORANGE〜』第12話「PRIDE OF ORANGE」
『BLUE REFLECTION RAY』第21話「まだ何もものに していないよ」
『MARS RED』第3話「夢枕」
『ワンダー・エッグ・プライオリティ』第7話「14才の放課後」
ルール
・2021年1月1日〜12月31日に放送されたTVアニメ(再放送を除く)から選定。
・1作品から選べるのは1話のみ。
・順位はつけない。
<各話のコメント>
『ウマ娘 プリティーダービー Season 2』
第8話 「ささやかな祈り」
脚本/杉浦理史 絵コンテ/及川啓 演出/佃泰佑 作画監督/中島順、宗圓祐輔、坂本俊太、桐谷真咲、鈴木光
春の天皇賞は、史実にドラマが融合した圧巻の展開。ライスがマックイーンをかわすシーンは何度見ても素晴らしい。レコードタイムの優勝。覚悟のブーイング。傷つきながらも観客に一礼し、立ち去ろうとした姿に送られたウマ娘たちの拍手。そしてブルボンからの祝福とライスの涙。
夢に向かって前に進んでいく人が、逃げ出したくなるような困難に直面した時、寄り添ってくれる人の支えや願いが力と勇気を与えてくれる。いつか、あなたのように誰かを照らせる人になりたい。そんな道半ばのライスシャワーの物語。7話、8話と練られた脚本、演出や挿入歌に至るまでアニメスタッフの総力と熱意と愛が込められた珠玉のエピソードでした。
『かげきしょうじょ!!』
第5話「選ばれし乙女」
脚本/森下直 絵コンテ/森田宏幸 演出/安藤貴史 作画監督/塚本歩、茂木海渡、福井麻記、下地彩加、三橋桜子、日高真由美 総作画監督/高田晃
小野寺先生の必死の励まし。彩ちゃんの吹き抜けるような天使の歌声。ワンシーンでビシッと決める無駄のない構成に、相応しい演技で応えるベテラン・実力派の声優陣が素晴らしい。小野寺先生(cv飛田展男)も山田彩子(cv佐々木李子)も紅華の中ではちょっと地味めな感じだけど、ここぞという見せ場での切れ味は抜群。泣けました。
『小林さんちのメイドラゴンS』
第6話「合縁奇縁(片方はドラゴンです)」
脚本/山田由香 絵コンテ/石原立也 演出/山村卓也 作画監督/池田和美
カンナちゃんと才川さんがお弁当持って川の合流地点まで歩いていくことに。出会ったおじいちゃんから昔のことを聞いて、自分も変わることを想像してみるシーンが印象的です。カンナちゃんと才川さんの頭の中に思い浮ぶことはそれぞれ違う。でもお互いが暮らしやすい社会ってこうして育まれていくのかも。将来はもっと楽しみって締め括るのがいいなあ。
『白い砂のアクアトープ』
第16話「傷だらけの君にエールを」
脚本/柿原優子 画コンテ/室井ふみえ 演出/熨斗谷充孝 作画監督/宮崎司、中山みゆき、大東百合恵、杉光登、タカハシアキラ
知夢がシングルマザーだったということに驚かされたし、散りばめられてる子育てあるあるがとてもリアルで一気にお話に引き込まれました。そして何よりも、知夢が憧れだった仕事を一度クビになっていたこと、それでも諦めずに再チャレンジして今の仕事を手にしたことを知って、こんなん応援してしまうやろってなってました(笑)。
だから、飼育部長のウッカリが発端とはいえ、知夢の事情や仕事への思いについて、周囲が理解し、彼女の助けになるよう行動し、自然に受け入れてくれたことがすごく嬉しかった。いやーまさにサブタイどおりのお話。
ちなみにこのサブタイ、Twitterでどなたが呟いておられたんですけど、AパートとBパートの間に出るサブタイの二つの赤い丸はりんごで、知夢と薫を表してるそうです。なるほど、センスを感じさせる演出だなあ。
『SSSS.DYNAZENON』
第10話「思い出した記憶って、なに?」
脚本/長谷川圭一 絵コンテ/五十嵐海 演出/佐竹秀幸 作画監督/五十嵐海 メカ作画監督/五十嵐海 総作画監督/坂本勝
突如現れた怪獣が影だけを残して人間を取り込んでいく。取り込まれた人間は過去を追体験し、その記憶に囚われてしまう。そんな非日常世界を表現する映像と音響がとってもエモーショナルでゾクゾクさせられます。特に水門の上で香乃と夢芽が語り合うシーンは好きだなあ。あのピアノの音色を加えたのは天才的すぎる!って思うのです。
『のんのんびより のんすとっぷ』
第5話「ものすごいものを作った」
脚本/山田由香 絵コンテ/二瓶勇一 演出/ソエジマヤスフミ 作画監督/松本弘、平田かほる、松下純子、楠田悟 総作画監督/古川英樹
「こまぐるみ」だらけのほたるんの部屋(なんか増えてない?)。ものすごいものが今まさに誕生しようとしていることに驚愕と興奮を覚え、打ち震えるほたるんの表情。もうアバンだけで十分面白いです。
そして、夏休みの自由研究「メカこまぐるみ」の爆誕。これが家の外に出たことで、ほたるんは追い詰められることに。こまちゃんの鋭い洞察に万事休すと思いきや、やっぱりいつものこまちゃんだったという。いやー最高でした。
『プラオレ!〜PRIDE OF ORANGE〜』
第12話「PRIDE OF ORANGE」
監督・絵コンテ/安齋剛文 シリーズ構成・脚本/待田堂子 演出/西野武志 作画監督/周昊、藤川良子、河野絵美、三島千枝、本田翼、青木真理子 総作画監督/田中紀衣、大沢美奈
白熱の真っ向勝負。よくある怪我やチートな必殺技の応酬なんて必要なし。作戦がうまくいく。作戦が見破られる。イライラと焦り。2分間の退場のチャンスとピンチ。ラスト1秒、リバウンドを押し込んでの決勝点。とにかく純粋にアイスホッケーの試合が面白い。
そして何よりも作り手がアイスホッケーとそれに関わる人たちをリスペクトしていることが感じられ、それが作品の魅力に繋がっているのがすごくいい。選手だけでなく、監督、スタッフ、応援団、選手の家族、メディア、みんなキャラ立ってたもんなあ。
試合後のビクトリーダンスは曲もカッコいいし、作画も頑張ってました。長いエンドロールは劇場版の趣き。オリジナルアニメとして、最終話をきっちりと締めたのも好感でした。
『BLUE REFLECTION RAY』
第21話「まだ何もものに していないよ」
脚本/和場明子 絵コンテ/羽多野浩平、石山タカ明 演出/石山タカ明 作画監督/栗原裕明、笠野充志、青木里枝、沓澤洋子、Dogwood、Big Owl、スタジオエバーグリーン、24FPS、K-PRODUCTION、セブンシーズ 総作画監督/村上雄、坂本哲也、菊田幸一
最終話で陽桜莉が紫乃の手を掴み、紫乃が願いを託すまでの重厚なストーリーがあったからこそ輝きを増す至福の日常回。ちょっとしたやり取りとか仕草で登場人物たちの機微を表現するのがメッチャ上手い。見ててホント楽しい。
出てくる料理も、青椒肉絲、筑前煮、ぬか漬けなど妙なこだわりを感じます。ぬか床に「ぬかさん」なんてあだ名をつけるアニメ、他に聞いたことないよね(笑)。
『MARS RED』
第3話「夢枕」
シリーズ構成・脚本/藤崎淳一 絵コンテ/羽多野浩平 演出/貞光紳也、羽多野浩平 作画監督/矢島陽介、岡郁美、荒木裕
「あなた…あの世から会いに来てくださったの?」今の気持ちを貞心と良寛の和歌にのせて伝え合う二人。山寺宏一さん(山上役)と大原さやかさん(冨子役)の演技が素晴らしくて、教養ある大人の逢瀬の情感たっぷりです。
すごいなあと思ったのは、山上が一人になってしまった冨子を案じて再婚してもいいんだぞと言った時。冨子は貞心の歌と共にこう答えます。「いつまでも、私はあなたの冨子です…」しおらしくも実に情熱的。いやーこういう台詞、一度でいいから言われてみたいものです(笑)。
『ワンダー・エッグ・プライオリティ』
第7話「14才の放課後」
脚本/野島伸司 絵コンテ・演出/小林麻衣子 作画監督/鄧佳湄
最後のシーンでリカがママに突きつけた執行猶予。裏を返せば、リカ自身の猶予期間でもあります。リカなりに精一杯ママに寄り添って、一緒に頑張りたい気持ちを伝えたのかなあ。何とも遠回しな伝え方だけど、ママはちゃんと受け取ったような気がします。そんな妄想が膨らんで、味わい深い余韻が残るラスト、すごく印象的でした。
今年も本当にいいお話が多かったと思います。
それでは皆様よいお年をお迎えください。
アニメでも "MINI(ミニ)" は大活躍なのです!・・パート14
アニメに登場する "MINI" の記事の第14弾です。 アニメに "MINI" が登場し続ける限り、見つけては必ず更新していきますよー(笑)。
…と言ったものの、実はこの一年、新作アニメで "MINI" の姿を見つけることができなかったんですよ〜(涙)。このところずっと仕事が忙しかったのもあって、視聴本数が減っているのも原因としてあるのかなと思いますが、本当に登場してない可能性も否定できない気がしています。もう生産中止になって20年以上経ってますもんね。
そんなわけで、すっかり諦めかけていたんですが、ある日 Twitter をぼんやり眺めていたら、NETFLIX アニメに "MINI" が登場しているとの呟きが目に止まりました。画像も載せてあって、確かにグリーンの "MINI" が線路の上を走っています。マジか(歓喜)!
手掛かりは NETFLIX アニメとグリーンの "MINI" という二つしかありませんでしたが、なんやかんやと探し回って見つけ出したのが『B: The Beginning』という作品です。リリースされたのは2018年3月だったようですが、気づかなかったなあ。
この作品、なかなか面白くて全12話一気見しちゃいました。犯罪捜査モノとしてのお話もよかったし、背景美術も素晴らしかったです。もちろん肝心な "MINI" が走ってる姿も見られます。
というわけで早速ですが、1話からです。
お話に登場する "MINI" はホワイトルーフのアーモンドグリーンでリアにスペアタイヤを積んでます。乗っているのは、星名リリィという新米捜査官です。いつも明るくて元気なんだけど、直情型で無鉄砲みたいな印象もあって、ちょっと油断させられるキャラ。でも舐めてかかっちゃいけない。物事をよく考え、そのひらめきは仲間から一目置かれています。そんな人物像は、いかにもアニメに登場する "MINI" 乗りっぽい感じがしますよね(笑)。
こちらは4話から。
フロントグリルはヒゲ付き、ボンネットに白ストライプ。もしやエンジンをいじってるんでしょうか、中央になんか載ってますね。リアはセンターマフラーになってます。
内装はノーマルな感じですね。ウッドパネルに三連メーター、ステアリングやエアコンの吹き出し口もそのまんま、ルームミラーも小さいままだし、特に何も手を加えてない雰囲気です。ドアの内張りや赤いレザーシートからすると何かのリミテッドモデルなんでしょうか。
続いて8話から。
サイドを見ると、メッキドアミラー、8スポークホイール、アウターヒンジ、メッキモールと私的には統一感のない印象がありますけど、彼女らしいセンスなのかなーと思ってみたり。
お話の中では、"MINI" は街中はもちろん、山道やトンネル、はたまた線路の上までも走ったりします。派手な走りはしないけど、見ているだけで楽しくなります。
でもこの8話で "MINI" は見納めに…
映像がカクカクしてしまってすみません。実際はバキューン、ドドドド、ドドドド、チュンチュンチュン、ドカーン、すごい迫力なんです。この後、どうなってしまうのか興味のある方は、どうぞNETFLIXの本編をご覧になってください。
そして最終話、クラシックカー好き(私は詳しくはないですけど)にはちょっとしたご褒美がありました。 "MINI" を壊されちゃったリリィが新しい車を買ってたんです。
「じゃ、じゃーん。買っちゃいましたー、58年式〜!!」
なーんと、まさかの "イセッタ" 登場!! アニメで初めて見たわー!!
彼女曰く、「カスタマイズしてるから140キロくらいは出る」って話ですが、今の車の安全性を考えたら、そんなスピードではちょっと怖くて乗れないって思っちゃいますね。
ところでよく見るとナンバープレートが「LILIY1968b」になってます。彼女のこだわりが感じられていいなあ。ちなみに左の絵ではフロントドアの開閉向きが右開きになっちゃってますが、人物配置上、変えちゃったのかもしれないですね。
エピローグでは事件の顛末についてのリリィの考察が語られ、お話はきれいに締めくくられます。いやー面白かった。記事的には "MINI" で締まってないですけど、まあいいか(笑)。
ということで、取り留めのない内容を最後までお読みいただき、ありがとうございました。今後も "MINI" が登場するアニメが現れたら紹介して行きますよ。
ではまた!
話数単位で選ぶ、2020年TVアニメ10選
今年の10選は以下のとおりです。
『アサルトリリィ』第5話「ヒスイカズラ」
『映像研には手を出すな!』第8話「大芝浜祭」
『かぐや様は告らせたい?』第6話「伊井野ミコを笑わせない 他」
『GREAT PRETENDER』第10話「CASE2_5:Singapore Sky」
『ゴールデンカムイ』第32話「人斬り」
『球詠』第12話「悔いなく投げよう」
『ドロヘドロ』第7話「オールスター⭐︎夢の球宴」
『22/7』第7話「ハッピー⭐︎ジェット⭐︎コースター」
『波よ聞いてくれ』第12話「あなたに届けたい」
『ラブライブ!虹ヶ咲学園スクールアイドル同好会』第6話「笑顔のカタチ」
ルール
・2020年1月1日〜12月31日に放送されたTVアニメ(再放送を除く)から選定。
・1作品から選べるのは1話のみ。
・順位はつけない。
<各話コメント>
『アサルトリリィ』
第5話「ヒスイカズラ」
監督・脚本/佐伯昭志 シリーズ構成/佐伯昭志、東冨耶子 絵コンテ・演出/長原圭太 作画監督/高野晃久、佐藤隼也、秋葉徹 総作画監督/崎本さゆり、常盤健太郎
Aパートの3分ほどのシーン。とても気に入っています。梨璃の誕生日に贈るラムネを探しに朝早くから甲州へ出かける夢結。電車を乗り継ぎ、日傘をさして葡萄畑の道を抜け、住宅地の一角にあるお店に立ち寄ります。
透き通った瓶、弾ける炭酸、カラコロと鳴るガラス玉、警戒区域表示、薄暗い店の奥にいる主人との会話、梨璃と一緒の姿が心に浮かんで「もう一本いただけますか?」と少し昂ってしまう口調。そんな佇まいに思わず魅入ってしまいました。
直後のBパートでは一転、夢結のそれでいいのかと思える人のよさ、自分の感情の扱いに戸惑う初々しさ。彼女には悪いけれど少し笑ってしまいます。力が入りすぎちゃうハグって、不慣れな人のあるあるかも(笑)。
『映像研には手を出すな!』
第8話 「大芝浜祭」
監督・シリーズ構成/湯浅政明 副監督/本橋茉里、山城風我 脚本/城戸雄一郎 絵コンテ・演出/長屋誠志郎 作画監督/木下絵李、河本零王、寺尾憲治
この作品に惹かれるのは、モノづくりの情熱が伝わってくるからだなあ。予算と期限に苦しみながら、自分の睡眠時間を削って徹夜する、時には人の持ち時間を奪い取ってでもやる。最近はコスパだ、効率だと声高に言う人が増えてきて、それは正しいけれど、根幹にはそれを吹き飛ばすくらいの情熱があるべきと思っています。
水橋氏は渾身のアニメーションを描き上げ、両親がそれを観て、娘を表現者として認めるくだりが印象的です。「どうだった?」と娘に聞かれ、「頑張ったね」なんてことは言わない。きちんとアニメーションに対する批評をして、「いい演技だった」と賛辞を贈る。個人的にハッとさせられたシーンでした。
『かぐや様は告らせたい?』
第6話「伊井野ミコを笑わせない 他」
監督/畠山守 脚本/中西やすひろ 絵コンテ/畠山守 演出/仁科邦康 作画監督/斉藤準一、石川洋一、Park as-lee 総作画監督/矢向宏志
サブタイが「伊井野ミコを笑わせない」となっていて、彼女自身が笑うことをさせないっていう意地悪な意味かと思っていたら、彼女のことを周囲の者に笑わせないって意味だったんですね。信念を持って頑張っている人を笑い者にさせない。白銀御行がカッコよかったです。
白銀が自滅しかかっていたミコちゃんに手を差し伸べる行動に出たのは、かぐやたち仲間への信頼があってこそでしたが、逆にそれが仲間を不安にさせてしまう展開もうまい。かぐやのヒステリックな落ち込みっぷりがちょっと可哀想だったけど面白くって、やはりどんなに信頼関係があっても、適切な相互確認が不可欠なんだなと思ったのでした(笑)。
『GREAT PRETENDER』
第10話「CASE2_5:Singapore Sky」
監督/鏑木ひろ 副監督/益山亮司 脚本・シリーズ構成/古沢良太 絵コンテ/益山亮司 演出/桜美かつし 作画監督/野崎あつこ、神谷美也子 総作画監督/浅野恭司
エアレースのシーンが素晴らしい。シンガポールのマリーナ地区をレース会場にしちゃうという自由な発想、バックに流れる組曲『動物の謝肉祭(終曲)』が縦横無尽に飛び回る飛行機の動きにピッタリで、それぞれの思惑や願いを持つ登場人物たちのフィナーレとも重なって、とてもセンスのある選曲だなと唸らされます。
ホテルの高層階の窓からアビーとエダマメが飛び降りるシーン(ちょっとルパンっぽい感じ)も好きです。無事に着水した二人のやりとりがいい。「面白かっただか?」「あぁ」「ならよかっただ…」、誰かを赦すことは、自分を縛り付けているわだかまりから解放されることでもあります。ラストのアビーの笑顔は最高に晴れやかだったなあ。
『ゴールデンカムイ』
第32話「人斬り」
監督/難波日登志 助監督/川越崇弘 シリーズ構成/高木登 脚本/谷村大四郎 絵コンテ/安藤真裕 演出/鳥羽聡 作画監督/徳田賢朗
かつて人斬り用一郎の異名をとったヨボヨボの老人。復讐者の刃を見て覚醒すると一転して凍りつくような迫力を漂わし始めます。「列に並べ…この人斬り用一郎を殺したい奴なんぞ、たくさんいる…」脳裏を去来する幕末の幻影は死ぬ時を悟った走馬灯だったのかもしれません。只々圧巻シーンの連続に見入ってしまいました。
エトピリカ舞う根室車石での用一郎の最期は、屈指の名シーンだと思います。そして、二人の声優の演技に痺れました。死に際を求める人斬り用一郎(CV.清川元夢)とそれを感じ取っていた土方歳三(CV.中田譲治)。この老練な演技があってこそ、複雑な感情が入り混じった味わい深さが生まれたのではないでしょうか。
『球詠』
第12話「悔いなく投げよう」
監督/福島利規 シリーズ構成/待田堂子 脚本/待田堂子 絵コンテ/いわたかずや、福島利規 演出/福島利規 作画監督/藤田正幸、園田高明、千葉孝幸、山名秀和、大河原晴男、菅原早也花、津熊健徳、石井和彦、佐々木一浩、松尾真
第10話から始まった梁幽館戦は面白くて、毎週楽しみしていました。特にこの最終話は、サブタイが「悔いなく投げよう」となっていて勝敗の行方に予想がつかず、新越谷が強豪校の梁幽館にあと一歩及ばずとなるのか、はたまたジャイアントキリングを果たすのか、ハラハラ、ドキドキさせられて、純粋にアニメを見るのが楽しかった!!
この作品、野球の描写がなかなか秀逸で、選手の気持ちだけでなく、戦術やプレーの意図を視聴者に示しながら見せてくれるのがすごくよかったと思います。そして、そうした各話の積み上げが、この試合の二つの見せ場となる、希ちゃんの逆転スリーラン、球詠バッテリーと強打者中田との真っ向勝負にしっかりと収斂していっており、本当に素晴らしかったです。
監督・絵コンテ/林祐一郎 シリーズ構成・脚本/瀬尾浩司 演出/小松寛子 作画監督/小松寛子、吉田駒未、山崎杏理
そもそもこの作品で野球の試合ができるのか。「メンバーが一人足りねーんだよ」とか言ってますが、すでにメンバーとして死体や虫が入ってる時点でおかしいです。試合の方は、睡眠薬入りドリンクだの、虫退治にバ○サ○焚いたりだの、結局は爆笑コント劇場に。最後は藤田のビーンボールをニカイドウが打ち返し、打球を受けた院長がKOされてノーゲーム。ま、こうなるよなー(笑)。
ところで試合の間、煙の周囲でも騒動が勃発。あっちこっちで血飛沫が飛び散る大惨事。能井にかけられた魔法を解くため、鳥太から能井が一番大事な人の臓物が必要と言われ、心は成り行きで自分の臓物を差し出しましたが、その後に能井とラブコメ寸劇をやらされる羽目になるとは思ってもなかったろうなあ(笑)。
いやー面白かったです。なんだかんだでこのお話では主要メンバーが大集合してましたよね。オールスターってそういうことだったのか(笑)。
『22/7』
第7話「ハッピー⭐︎ジェット⭐︎コースター」
監督/阿保孝雄 助監督/高橋さつき シリーズ構成/宮島礼吏、永井千晶 脚本/大西雄仁 絵コンテ/森大貴 演出/森大貴 作画監督/三井麻未、田川裕子、川村幸祐、木藤貴之、りお、凌空凛、飯野雄大 総作画監督/まじろ
『22/7』の中でもジュンちゃんの当番回は珠玉の逸品。ストーリー、映像、劇伴、小物に至るまで、とても丁寧に作り込まれていたと思います。映像面の演出が際立ってた印象がありますが、私はお話の構成もとても気に入っています。
今日一日、メンバー全員分の仕事を一人でやり切ることになってしまったジュンちゃん。自分を奮い立たせるために手にしたのはハートの手紙。秘められた思いが、回想シーンを通して少しずつ明かされていきます。
ずっと病弱だった過去。入院中にできた友達との思い出。渡すことができなかったハートの手紙。友達の命をもらったように思えた病気の完治。そして、どんな時も楽しく生きていこうと誓った彼女に舞い込んできたのは、22/7プロジェクトメンバー選出の通知でした。
何とか今日一日の仕事をやり切って、ヘトヘトになって見つめるハートの手紙。そこにエレベーターの扉が開く。目に入ってきたのは仲間の姿。回想ではない彼女の今。仲間から「大変だったでしょう」と労われて、彼女はこう答えます。
「まったく、みんなは私がどれだけ大変な思いをしたかしらないでしょ。もう、それはそれは本当に、本当に、本当に、本当〜に…楽しかった!」
回想が追いついて彼女の今と重なる鮮やかな締めくくり。最後にハートの手紙が少しだけクシャッとなる。これから先は仲間と紡ぐ物語なのでしょう。
『波よ聞いてくれ』
第12話「あなたに届けたい」
監督/南川達馬 シリーズ構成・脚本/米村正二 絵コンテ・演出/南川達馬 作画監督/岡崎洋美、粕川みゆき、神谷美也子、高橋あやこ、徳永竜志、冨吉幸希、久松沙紀、吉田雄一、吉山隆士
深夜ラジオの生放送中、最大震度6強の強い地震と北海道全域に及ぶ停電が発生。今まで定常運転だった現場の雰囲気は一変し、麻藤や久連木の指示が飛び交う災害対応モードに。麻藤から「そこにいて喋れる以上やるんだよ」と檄を飛ばされたミナレは腹を括り、自分の声を届け続ける。
現場の底力を目の当たりにし、その責任の一端をやり遂げることで、感化されることってあるよなあ。ミナレはラジオを生業にすることを決心し、瑞穂はディレクターデビューの夢をはっきりと口にします。地震は燻っていた決心を揺さぶり、街灯りが消えて今まで見えなかった星が輝く夜空は、見失いかけていた夢を思い出させたのかもしれない。洒落た最終話だったと思います。
『ラブライブ!虹ヶ咲学園スクールアイドル同好会』
第6話「笑顔のカタチ(">▽<")」
監督/河村智之 シリーズ構成/田中仁 脚本/ 絵コンテ/京極尚彦 演出/ほりうちゆうや、京極尚彦 作画監督/石川慎亮、加藤明日美、栗原裕明 総作画監督/横田拓己、冨岡寛、吉岡毅、渡邊敬介
感情や思いを表情に出すのが苦手な璃奈ちゃん。自ら望んだソロライブでしたが、ふとガラスに映り込んだ無表情な自分の姿を見て、練習から逃げ出してしまいます。心配して彼女の家を訪れた虹ヶ咲メンバーたち。カーテンを閉じた暗い部屋にはダンボール箱の中に閉じこもった璃奈ちゃんがいて…。
昔のアニメだったら、ダンボール箱を無理やり引っ剥がして、彼女の頬を引っ叩いていたかもしれないですね。それで気持ちが通じ合って、抱き合って涙みたいな。いやホント、そういうのが普通だったような気がします。
でも、このお話ではそうはならない。彼女はダンボールを被ったまま抱きしめられるんです。優しい世界です。みんなに励まされ、彼女はダンボールを被ったまま立ち上がってカーテンを開ける。そして、電光モニター付きヘッドセットを装着してソロライブを成功させるんです。
ちょっと考えてしまいました。私には優しすぎる世界に思えたけれど、もしかしたらこのお話を見て、元気をもらったり、勇気づけられたりする人がいるのかも。自分ではどうしようもないことだけど、周囲が受け入れてくれるなら。自分ではどうしようもなかったことが、テクノロジーで乗り越えられるなら。
この作品のターゲットは10代20代の若い世代でしょうか。彼らがそういう社会を強く望んで作り上げていこうと努力し続けたら、それは本当に実現するかもしれません。「笑顔のカタチ(">▽<")」には、そんなメッセージが秘められていたような気がしました…なんてね(^^)。
今年も本当にいいお話が多かったと思います。
それでは皆様よいお年をお迎えください。
テレビアニメ ED 10選 2020
今年も選んでみましたよ。EDテーマ10選は以下のとおりです。
『インフィニット・デンドログラム』/「Reverb」
『推しが武道館いってくれたら死ぬ』/「♡桃色片想い♡」
『おちこぼれフルーツタルト』/「ワンダー!」
『かくしごと』/「君は天然色」
『空挺ドラゴンズ』/「絶対零度」
『GREAT PRETENDER』/「The Great Pretender」
『恋する小惑星』/「夜空」
『ゴールデン・カムイ』/「融雪」
『波よ聞いてくれ』/「Pride」
『放課後ていぼう日誌』/「釣りの世界へ」
『インフィニット・デンドログラム』/「Reverb」
何千万個の電飾ドローンを飛ばして、映像を作り出してるって感じが好きです。電飾の中にいるとわからないけど、その中を抜けてカメラがずーっと引いていくとネメシスの姿が現れるのですが、最初に見た時はおぉって思いました。
『推しが武道館いってくれたら死ぬ』/「♡桃色片想い♡」
「♡桃色片想い♡」ってこんなにいい曲だったっけ。たぶん、この作品のEDにあまりにピッタリだからバイアスがかかったんだろうなって個人的な感想です。「あーのひーとにはーわわゎゎ」のところ、デビッド・ボウイの「Ashes to Ashes」みたいで気に入ってます。
『おちこぼれフルーツタルト』/「ワンダー!」
ネズミの着ぐるみ姿がとっても可愛らしいです。サビの「わんだぁ〜」からの素直で伸びやかな歌声が心地いいです。前半のセクシーショットは深夜アニメならではですね。キャプチャしようかとも思いましたが自主規制です(笑)。
「君は天然色」は、当時めっちゃ話題になっていた記憶があります。映像がまた「ハートカクテル」を連想させるので、どうしたってあの頃を思い出してしまいます。でもあんまり古臭さは感じないですよね。私が年取っただけかなー(汗)。
この作品に描かれる空はとても美しくて、タキタ(雨宮ボイス)の演技も素晴らしくて、料理もなんか美味しそうだし、結構贔屓にして毎週見てたんですよね。このED曲は、別々の曲のパートを大胆に繋ぎ合わせたような感じで面白いです。
『GREAT PRETENDER』/「The Great Pretender」
初めてこのEDにお目にかかった時は、上品さを感じさせるアニメーションにフレディ・マーキュリーの歌がついていたので、カッコいいけどちょっとやりすぎだべって思いました。でも最終話まで見終わって、作品に相応しいEDだなって納得したのでした。
『恋する小惑星』/「夜空」
いい曲だなあ。「僕らが描いた未来は〜」のところで、必ず背中がゾクゾクってなるので、しばらくはこの曲ばかり聴いていた時期がありました(笑)。鈴木みのりさんのボーカルもいいですよね。大切に歌い上げてる感じがして好きです。
『ゴールデン・カムイ』/「融雪」
各話のラストにストリングスとドラムが入ってきて、このED曲が始まるのがすごくカッコいいんですよね。曲も映像も第三期(樺太編)にぴったりマッチしていて、完璧なエンディングだなあと毎週いつも感心するのでした。
『波よ聞いてくれ』/「Pride」
冒頭、ピアノとヴォーカルが静かに入ってくるんですが、すぐに曲に惹き込まれていきます。真夜中の感じとか、負けない気持ちとか、胸にひめた決意とか、そういったものがじんわりと伝わってくるのがとてもいいです。
『放課後ていぼう日誌』/「釣りの世界へ」
歌詞は釣りの心得を説いていたりしてるんですが、サウンドはちょっとオシャレな感じになってます。ホテルのラウンジでバンド演奏をバックに四人がドレスを着て歌ってるみたいな雰囲気ですよね。上手く合うもんだなあ。
今年も目を引くEDが多かったですね。10選に絞り込むのに相当迷いました。
来年も楽しみですね。